ウルトラ・ストラトスNo.6   作:赤バンブル

1 / 12
ウルトラマンとIS作品は多いのにタロウだけ省かれていたから書いてみました。

篠田さん、今後もタロウ演じるつもりないって言っていた気がするけどもう一度東光太郎やってほしいな・・・・・。


誕生!ウルトラ6番目の弟

かつて地球は異次元人ヤプールの手によって恐怖へと陥れられていた。

 

だが、ウルトラマンAとウルトラ兄弟の力により阻止され、ヤプール率いる超獣軍団は全滅。地球の防衛についていたウルトラマンAこと北斗星司も地球を離れて行った。

 

それから時は経ち、世界は大きく変化する。

 

200X年、科学者 篠ノ之束が開発したマルチフォーム・スーツ「IS」が登場。

 

その今までの兵器を凌駕する性能に世界各国は驚愕。ISを兵器として扱うようになる。

 

だが、女性しか展開できないというデメリット、そして、開発者である束自身の消息により社会は女尊男卑へと変化、かつて地球の防衛を務めていた全世界的守備組織「TAC」も解体され、世間は怪獣や宇宙人、超獣への脅威を忘れ去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・あの日、奴が姿を現すまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は20XX年、ドイツ。

 

ここにある少年と少女が謎の組織に囚われていた。

 

少年の名は織斑一夏。少女は篠ノ之箒。

 

両者とも優れた姉を持ち、世間から比べられて劣等品と見られていた若者たちである。

 

何故彼らが捕らえられているのか?

 

それはいわゆる人質というものである。箒の方は巻き添えに近いものだが。

 

この二人はここドイツで開かれるISの世界大会 第二回モンド・グロッソに出場する千冬を応援するために来たのだが会場へ向かう途中に誘拐された。犯人の目的は千冬の決勝戦進出への棄権だった。

 

それを今政府に要求しているところなのだが政府からの答えは未だに返ってこない。もし、断ったらこの二人の命がない。

 

「・・・・・一夏・・・・・」

 

すぐ後ろでロープで縛られている箒は不安な表情で一夏の方を見ようとする。一夏は手探りで箒のロープを何とか解こうとしていた。

 

「私たち・・・・・・ここで死ぬのか?」

 

「まだ、そうと決まったわけじゃないだろ。千冬姉はきっと助けに来てくれるさ。俺たちもやれることはやろう。」

 

「・・・・そうだな、千冬さんが私たちのことを見捨てるはずないからな。」

 

箒を落ち着かせながら一夏はポケットにしまっていたバッジを取り出して箒のロープを斬ろうと動かし始める。

 

 

実は、このバッジにも二人のちょっとしたエピソードがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは二人がまだ小学生だった頃の話である。

 

「一夏、もっと速く走れないのか!?」

 

「走るも何もさっきから全力で走ってるよ!!」

 

まだ、小学校中学年ぐらいの一夏と箒は慌ただしく学校を抜け出した。

 

原因は、箒が男子生徒と喧嘩をした罰として居残り掃除をやらされていたからだ。

 

「急がないと千冬さんが道場にきちゃうぞ!!」 

 

「そもそも箒が居残り掃除なんかやらされなかったらこんなことにはならなかったんだぞ!」

 

「うっ・・・・・だ、だって・・・・・・男女なんて・・・・・」

 

2人が急いでいるのは箒の実家の道場の時間だ。

 

箒の父 柳韻は別に子供だからという理由でそこまで怒りはしないのだが一夏の姉の千冬は別、「せっかく教えてもらっているというのに遅刻とは何事だ!」とこぴっどく怒られるのだ。普段は弟に甘い彼女だがこういう学ぶときに限っては真剣に怒る。

 

「この間、なんて竹刀持って学校まで来たからな・・・・・早くしないと殺されちゃうよ・・・・・」

 

「千冬さん・・・・・怒ると地獄の閻魔よりも怖いからな・・・・・」

 

二人は、そう言いながら点滅しかけの横断歩道を渡る。しかし、横断歩道を渡って次の角を曲がろうとした瞬間、一夏は自転車と出くわした。

 

「あっ!?」

 

「あっ!?」

 

運転していた男性は飛び出してきた一夏に急ブレーキをかけるもののぶつかってしまう。呆気に取られていた箒は急いで一夏の所へと行く。

 

「い、一夏!?い、急げ!早くしないと・・・・」

 

「う、うぅ・・・・・・」

 

運転していた男性がやばいと思って逃げたこともあるが箒は怪我をした一夏を無理やり肩を貸して我が家を目指す。

 

「痛!!」

 

あまりの痛みに一夏は倒れる。よく見ると右足が大きく擦り剝いており、そこから血が流れていた。

 

「何やっているんだ!早くしないと千冬さんが来ちゃうんだぞ!!」

 

「いて・・・・・・」

 

急かす箒の声を聴きながらも一夏は傷の痛みに耐えられず泣き出す。

 

「泣くな!男だろ!そのぐらいの傷で・・・・・・」

 

「うぅ・・・・いてえぇよ・・・・・・」

 

「・・・・・・・どうしよう・・・・・」

 

一夏の顔を見て流石の箒も不安な表情になる。家まではまだ距離があるし、かといって学校に引き返すには遠すぎる。

 

そんなオロオロしている箒の元へほとんどの生徒の下校を確認して帰路に着こうとしていた学童擁護員の女性が通りかかった。

 

「どうしたの?」

 

2人に気づいて女性は、駆け寄ってくる。

 

「あっ、いつも学校行くときに横断歩道にいる緑のおばさん。」

 

「痛・・・・・・・」

 

「大変、ひどい怪我じゃない。」

 

緑のおばさんは、怪我の一夏を見るなり急いで彼を近くの公園に連れて行く。

 

「ちょっと、痛いけど我慢してね。」

 

緑のおばさんは、水道で首に巻いていたスカーフを濡らすと一夏の傷口の汚れを優しく落とす。

 

「いて!」

 

「だらしないぞ、一夏。そんな傷で根を上げて・・・・・・」

 

「女の子がそんな言い方をしちゃダメよ。」

 

「えっ?」

 

緑のおばさんに言われて箒は思わずきょとんとした。

 

「女の人は強い人もいるけど時には人を思いやる優しさが必要なの。あなた、あの道場の人の娘さんでしょ?あの人、普段は厳しい態度をとっているけど人を無暗に傷つけず、困ったときがあれば相談に乗ってくれるとてもいい人なのよ。」

 

「お、お父さんが・・・・・・・」

 

「貴方もその娘さんなら強くなる前に優しさも覚えなくちゃね。」

 

「優しさ・・・・・・」

 

「そう、人を思いやる優しさ。」

 

緑のおばさんは、そう言いながら一夏の傷口を綺麗に洗い終えると手拭いで傷にゴミがつかないように巻いて行く。

 

「・・・・・・・不思議だな。」

 

「ん?」

 

「・・・・・・なんか、物心ついた時から見たことがないのに・・・・会ったこともないお母さんに似たような感じがです。」

 

「あら・・・・・そういうあなたも私の息子によく似ているわ。」

 

「本当ですか?」

 

「えぇ・・・・・・」

 

 

「こら!一夏!!」

 

「「!?」」

 

少し離れたところから聞こえる怒鳴り声に一夏と箒はギョッとする。公園の入り口の方を見るといつものように胴着姿に竹刀を持った千冬がやってきていた。

 

「ち、千冬姉・・・・・・」

 

「千冬さん・・・・・」

 

「お前たち、もう学校終わっているはずなのに何をやっているんだ!」

 

「こ、これは・・・・・・その・・・・・・」

 

「えっと・・・・・・」

 

「あらあら、ごめんなさいね。この子が怪我をしていたから・・・・・」

 

緑のおばさんが千冬の方を見ると千冬は思わずポカーンとした。

 

「お、お母さん!?」

 

「はい?」

 

「・・・・・・はっ!し、失礼しました。失踪した母によく似ていたもので・・・・・・」

 

千冬は思わぬことを行ってしまったとばかりに頭を下げる。

 

「一応手当てはしたけど傷口が膿んじゃうかもしれないから帰ったら消毒をしてあげて。」

 

「は、はい。」

 

「ありがとう、おばさん。」

 

「どういたしまして。・・・・・あっ、そうだわ。坊やに良い物あげる。」

 

緑のおばさんはポケットからバッジを出すと一夏の胸ポケットに付けてあげる。

 

「お守りなの。大切に持っててちょうだい。」

 

「わあぁ・・・・・」

 

一見、星の形に見えるバッジに一夏は思わず目を輝かせた。

 

「ありがとう。」

 

一夏は、立ち上がると箒と一緒に千冬の元へと行こうとする。

 

「坊や、やりかけたことは最後までおやりなさい。途中でやめたらだめですよ。」

 

「は、はい!」

 

「お嬢ちゃんも優しさを忘れないようにね。」

 

「・・・・はい。」

 

箒は少し恥ずかしそうな顔で緑のおばさんの声に答えた。二人はそのまま千冬と共にその場を後にして行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しのこと。

 

束が公表したISによって社会は大きく動き、箒と一夏は離れ離れになった。

 

一夏は、周囲から千冬と比べられながらもやり始めたことは最後まで辞めず、箒も一人になっても教えてもらった優しさを大事にした。

 

 

そして、数年後の現在、偶然再会した二人はお互いの成長を確認しながら会場へと向かっていたのだがそこへ謎の組織が二人を捕らえ今に至るのだ・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在

 

「おい、見ろよ!織斑千冬が優勝しているぞ!?」

 

誘拐犯たちは、テレビを見ながら舌打ちをした。

 

「くそ!日本政府め!俺たちの要求を無視しやがったな!!」

 

犯人の一人は歯ぎしりをしながら言う。

 

「どうする?あのガキ二人。」

 

「こうなった以上、もう用はねえ!さっさと始末しろ!!」

 

「いや、待て。小娘の方はまだ利用価値がある。」

 

「何?」

 

「あっちの方は少し調べて見たがあの篠ノ之束の妹だ。うまくいけば取引に使える。」

 

「だが・・・・・あの篠ノ之束が早々取引に応じるのか?」

 

犯人たちがゴチャゴチャ話している中、犯人たちが隠れている倉庫のすぐ近くにある石油コンビナートの海上で何やら巨大な影が動いていた。

 

「とりあえず、坊主の方は始末しておくか。」

 

「あぁ、ちょっとかわいそうだが冷酷な姉貴が悪いからな。精々地獄で恨んで・・・・・・」

 

「大変だ!?」

 

外で見張りをしていた一人が慌ただしく部屋に入ってきた。

 

「何してる!見張りを・・・・・」

 

「ちょ、ちょ、超獣だぁ!?」

 

「「「「はっ?」」」」

 

慌ただしく入ってきた一人に犯人一同は呆気にとられた。

 

「お前な・・・・・・目、大丈夫か?」

 

「こんな平和なご時世に超獣なんて出てくるわけねえだろ?」

 

「そうそう。お前、まさか見張りが嫌になって飲んでたんじゃないだろうな?」

 

「本当だって!すぐ近くのコンビナートででっかい影が・・・・・・・」

 

「ハッハハハハハ、仕事がチャラになっちまったもんでどうかしちゃったのかもな。また、上の女共に叱られるぜ。」

 

「「「ハッハハッハッハッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィイイエェエエ!!!

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

突然響いた甲高い鳴き声に犯人一行はコンビナートの方を見る。

 

そこには50メートルぐらいはありそうな巨大な角を生やした超獣が海から這い出て来て石油を捕食していたところだった。

 

「あ、あ、あぁ・・・・・・・・・」

 

「嘘だろ・・・・・・」

 

「ちょ、超獣だぁ~!!」

 

「「「「うわあぁぁあ~!!!」」」」

 

犯人たちは縛っておいた一夏たちをほったらかしにして一目散に逃げだして行った。

 

そんな男たちの元へ上司と思われるISを装備した女性二人が来ていた。

 

「アンタ達何やってんのよ!?人質は?」

 

「そ、そんなことどうでもいい!早く逃げねえと超獣に喰われる!!」

 

「はっ?何言ってんのアンタ?」

 

「信じるも信じないのもアンタたちの勝手だけど、俺たちはもう、この仕事から下がらせてもらうぜ!!」

 

「あっ、人質はまだ倉庫にぶち込んであるから。どうぞ、お好きに。」

 

そう言うと男たちは急いでその場から逃げて行ってしまった。女性たちは呆気にとられるもすぐに一夏たちが捕らえられている倉庫へと向かう。

 

「全く、これだから男は役立たずなんだから。」

 

「ほんとよね、そもそも超獣なんてもう何年も昔に絶滅したものじゃない。今更出てきたところでISに勝てるはずが・・・・・・」

 

そう言いかけたとき、すぐ近くのコンビナートが勢いよく爆発した。何事かと振り向いてみるとコンビナートの方から超獣がこっちに向かって歩き出していた。

 

「あ、あれが超獣・・・・・・」

 

予想以上の大きさに女性の一人は唖然とした。

 

このご時世、超獣は愚か怪獣すら見るのは珍しく、大体の者は某恐竜映画に出てくる恐竜よりちょっと大きいぐらいの認識しかなかった。

 

「こ、こっちに向かって来るわよ・・・・。」

 

「大丈夫よ、どうせ図体がデカいだけなんだから。ISに敵うはずないわ。」

 

そう言うともう一人の女性は、装備しているラファール・リヴァイヴの装備で超獣 オイルドリンカーに攻撃する。しかし、オイルドリンカーは、苛立ったのか進路を女性たちのいる倉庫の方へと変えて迫ってきた。

 

「えっ?効いてない?」

 

「た、多分効いてないように見えるだけよ!?攻撃し続ければあんな奴すぐに死・・・・・」

 

そう言いかけたとき、相方の女性が一瞬で炎で黒焦げとなった。ISには絶対防御という機能が備わっており、搭乗者はこれによって守られている。にもかかわらずオイルドリンカーの火炎は絶対防御を通り越して一瞬にして焼き殺した。

 

「う、嘘でしょ・・・・・・・・」

 

残された女性はぞっとしてその場から逃げようとする。しかし、オイルドリンカーは飛行中の彼女を素手で捕らえた。何トンにも及ぶ力が一気に彼女を襲った。

 

「ぎゃああああ!!!」

 

絶対防御が役に立たず女性は苦しむ。そんな女性を無視してオイルドリンカーは、捕まえた獲物を口へと運んでいく。

 

「何でよ!なんで私が死ぬのよ!こんな木偶の坊に!こんな化け物に!!なんで!なんで・・・・・・」

 

その叫びもむなしく彼女はオイルドリンカーの口の中で磨り潰されて行った。そして、噛み切れなかったスーツをぺっと吐き出す。

 

当然、突然現れた超獣を誰も気づかないはずもなく通報を聞いたドイツ軍はIS部隊を率いて現場に急行していた。

 

「各機、今回の目標は訓練にはない物だ。警戒しつつ撃滅せよ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

ドイツのIS部隊は空軍との連携でオイルドリンカーへ攻撃を仕掛ける。オイルドリンカーはハエでも飛んできたのかという勢いで火炎を吐きながら追いかける。その足は一夏たちのいる倉庫を踏みつけた。

 

 

「なんだ?この音は!?」

 

中で必死に脱出しようとする一夏たちの真上を瓦礫が降ってくる。

 

「うわあぁぁぁあ!!」

 

「一夏!わああああぁぁああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビナート 近辺

 

現場の近くではドイツ軍が超獣の侵攻を止めるべく、臨時基地を設置していた。

 

「現場の状況はどうなっている!?」

 

「現在、我が部隊が目標の侵攻を食い止めていますが目標は予想以上に大きく現場周辺の被害は広がる一方です!」

 

「くっ!IS部隊は何をやっている!?」

 

現場の上官は、苛立ちながら部下に言う。

 

「現在、目標と交戦していますが目標の攻撃は絶対防御で防げる代物ではなく徐々に被害が・・・・・・」

 

「なんとしてでも、目標を撃退するんだ!!このままでは我が国は、世界に大恥を晒すことになるぞ!」

 

「わかっています!しかし、超獣との戦闘は既に何年も昔のことですので・・・・・」

 

そこへ、別の部隊が現場に到着した。

 

「上官殿、ただいま到着しました。」

 

「うむ、すまないが出れるものはこのYポイントに向かってくれ。目標を殲滅するためにX爆雷を使用する。」

 

「なっ!?」

 

上官の言葉に先ほどまで話していた部下は思わず口を開く。

 

「上官!本気ですか!?Xは、超高性能爆薬で一発が小型水爆並みの威力・・・・・あらゆるものを焼き尽くし、その辺一帯は最低でも十数年は草一本も生えない不毛の大地となる・・・・・・・政府からも開発の中止が言い渡されたほどの代物ですよ!!」

 

「わかっている!だが、このまま目標が進行を続ければ我が国はさらに被害が出る。ならばいっその事・・・・・」

 

「上官殿、モンド・グロッソの会場からブリュンヒルデが到着しました。」

 

「何!?すぐにここへ通せ!!」

 

「はっ!」

 

部下はすぐに現場に会場から出て間もない一夏の姉 織斑千冬を連れてくる。

 

「これはこれは・・・・・まさかブリュンヒルデ自らがこちらに来るとは・・・・・」

 

「上官殿、私は飽くまで借りを返しに来たにすぎません。」

 

喜んでいる上官に対して千冬は険しい顔つきで言う。

 

「貴殿の弟の所在かね?確かに伝えたがあの辺一帯は・・・・・・」

 

「わかっています。ですが、まだ、超獣に殺されたとは言い切れません。現場への捜索隊だけでもお願いしてはいただけないでしょうか?」

 

「貴殿は何を言っているんだ!?目標は既に市街地へと向かおうとしているのだ。一刻も早く仕留めなくては・・・・・」

 

「ですが、Xを使用すれば私の弟は愚か逃げ遅れた国民まで見殺しにするに等しいです。私が残った部隊と共に奴に攻撃を仕掛けてできるだけ郊外の方へ誘導します。どうか・・・・・」

 

「しかし・・・・・」

 

「上官殿、ここはブリュンヒルデ ミス・オリムラの言う事にも一理あります!ここでXを使用すれば、我々は同士である国民を見殺しにするのと同じです。幸いXはまだこちらに輸送中です。輸送部隊と連絡をつけて郊外に仕掛ければ・・・・・・・」

 

「うむ・・・・・・・」

 

「上官殿、私はあなた方に感謝しています。しかし、ここでそれを決断するのならばそれも意味がなくなります。ここはひとつ・・・・・・」

 

千冬は頭を下げて頼み込む。

 

「・・・・・・・・致し方ありませんな。確かにこのままXを使用することはわが祖国としても国民を見殺しにしたという恥になる。」

 

「上官殿!」

 

「貴殿には我が祖国が誇るシュヴァルツェア・ハーゼ隊と行動してもらう。その間に我々は周囲の住民の避難、貴殿の弟の捜索隊を派遣する。但し、待っても2時間だ!それ以上は待つことはできない。それでも構わないかね?」

 

「お時間がいただけるのなら結構です!」

 

「うん。君、直ちにハーゼ隊にスクランブル要請を。ミス・オリムラを案内してくれ。」

 

「はっ!」

 

部下に案内されて千冬はその場を後にする。

 

「直ちに目標の侵攻ルート周辺のエリアに避難勧告!戦闘中の部隊には目標を郊外へ誘導するように伝えろ!」

 

「はっ!戦闘部隊に発令!目標の侵攻ルートを郊外へ誘導せよ!繰り返す!・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ・・・・・・・一夏・・・・・・生きてるか?」

 

箒は瓦礫をどかしながら何とか立ち上がる。途中まで切れかけていたロープは瓦礫によって二人が倒れたと同時に切れたため腕は自由になっていた。

 

近くを見ると一夏のお守りのバッジが落ちている。

 

「一夏・・・・・一夏!」

 

箒は瓦礫をどかして一夏を探す。しばらくどかしてみると一夏が落ちて来た瓦礫に串刺しにされているところを発見した。

 

「一夏!」

 

「お・・・・・・・・・俺・・・・・・・死ぬのか?」

 

焦点の合わない目で一夏は箒を見る。

 

「そ、そんなわけあるものか!すぐに助けが来てくれるはずだ!」

 

箒は、そう言いながら周りを見渡す。しかし、誰も来る様子がなかった。

 

「ほ、箒・・・・・・・・お、お前だけでも・・・・・・・逃げ・・・・・・・」

 

「馬鹿なことを言うな!馬鹿なことは・・・・・・・・うぅ・・・」

 

認めたくないとばかりに箒は泣き出す。久しぶりに会えた幼馴染が死ぬなんて、そんなことはないとどうしても思いたかった。

 

「俺・・・・・・・最後まで・・・・・千冬姉に迷惑を掛けちゃったな・・・・・・・・ハ、ハ・・・・・」

 

一夏の声が途絶えそうになる。

 

「死ぬな!やっと・・・・・やっと会えたのに・・・・・・・誰か!誰か早く来てくれ!!誰か!!」

 

箒は一夏を抱きしめながら助けを求める。だが、返ってくるのは彼女の叫びだけだった。

 

「姉さん!は、は・・・・千冬さん!!誰か!!誰か一夏を助けてくれ!!」

 

箒が叫んでいる傍ら一夏は様々な記憶が目を通り過ぎて行った。

 

 

姉と一緒に過ごしてきた日々。

 

箒との交流と別れ。

 

親友たちとの楽しかった思い出。

 

次々と見えてきた中で最後に見えたのはあの緑のおばさんだった。

 

「おばさん・・・・・・・・俺・・・・・・・最後までやれたかな・・・・・・・・・・・・」

 

その瞬間、一夏の手に握られていたバッジが光り出し、2人を何か暖かな光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりの眩しさに箒は一瞬目を塞ぐが次に目を開くと周りには銀と赤の体色をした巨人五人が一夏を囲むように立っていた。

 

以前、姉が興味本位で自分に熱烈に話してくれたことがある。

 

ゾフィー。

 

ウルトラマン。

 

ウルトラセブン。

 

ウルトラマンジャック。

 

ウルトラマンA。

 

かつて、地球を守ってきたヒーローたちが自分たちの目の前に立っている。

 

さらにそこへ何やら聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『ウルトラの兄弟たちよ・・・・』

 

「この声・・・・・もしかして・・・・・緑のおばさん?」

 

『ウルトラ6番目の弟・・・・・“ウルトラマンタロウ”が今誕生するその時を見るがよい。』

 

「ウルトラマンタロウ?」

 

『お前たち兄弟はこうして生まれたのです。』

 

緑のおばさん?が言うと同時にウルトラ5兄弟は右手を掲げて何やら光のエネルギーを一夏に注ぐ。すると止まろうとしていた一夏の心臓が再び動き出した。

 

「一夏の心臓が動き出した!?」

 

『見よ、ウルトラの命が誕生を・・・・・・・』

 

一夏の心臓の鼓動が激しくなっていくにつれて体が光り出していく。そして、体が完全に光で見えなくなると何か凄まじい光が箒を襲った。

 

「うわぁあ!?」

 

あまりの衝撃に箒は気を失い、光となった一夏は徐々にその姿を変え、空へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィイイエェエエ!!!

 

「くっ!」

 

一方、千冬はドイツのハーゼ隊と共にオイルドリンカーを郊外へと誘いだしていたがオイルドリンカーの猛攻に徐々に押されつつあった。

 

「あともう少し・・・・・あともう少しで誘導ポイントに到着する・・・・・・」

 

ハーゼ隊のISは既に活動限界寸前にまで陥っており、千冬の乗機「暮桜」も損害レベルがCへなろうとしていた。

 

「ここで・・・・・踏ん張らなければ・・・・一夏が・・・・・・」

 

既に満身創痍になりかけていた千冬にオイルドリンカーの腕が迫ろうとしていた。

 

「し、しまった!?」

 

千冬は急いで回避行動を取ろうとするが既に機体も限界であるため、反応が鈍い。

 

「こ、ここまでか・・・・・・」

 

死を覚悟して彼女は諦めかけるがそこへ巨大な火の玉が迫ってきた。火の玉は人の姿へと変わっていき、オイルドリンカーに向かってキックをお見舞いする。いきなりの攻撃にオイルドリンカーは後方へと吹き飛ばされ、千冬は九死に一生を得た。

 

「・・・・・なっ!?」

 

千冬は目の前に現れた巨人を見る。

 

赤い体に胸のプロテクター、頭部の二本の角。そして、胸に青く輝くカラータイマー。

 

それは以前友人である束が話していたウルトラセブンに似ているが角などで相違点が多い。

 

「あの巨人は・・・・・・・」

 

『ディアッ!!』

 

巨人は、オイルドリンカーに向かってジャンプをした上で繰り出すスワローキックを仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、ここに十数年の時を経て、ウルトラ六番目の兄弟 ウルトラマンタロウの物語が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 




取り合えず、お試しとしてウルトラマンタロウ誕生編。

一夏と箒は小学生時代に緑のおばさん(ウルトラの母)に会ったという設定にしました。

ロックマンX書いているから次回はいつあるか分からないけど自分的には捏造設定出し過ぎたと思っている。

温かい目で見てね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。