若干アレンジされていますが耐えられる人はこのままどうぞ。
「はっ、はっ、はっ・・・・・・・」
早朝。
一夏と箒は習慣的にジョギングをしていた。
ドイツでも朝同じ習慣をしていたようだが軍の敷地と違い、様々な道を通るため上り坂によっては体力の消費に差がある。
「はっ、はっ・・・・・・」
箒は、自分の目の前を走っている一夏の背中を見て何かを考えていた。
あの怪獣を倒してから一夏の中には後悔の念が漂っていた。
確かにやむを得なかったという事もあったがかけがえのない親友を失ったという実感は未だに彼のことを縛り付けていたのだ。
(・・・・・・私はどうすればいいんだ・・・・・・)
彼女はそう思いながら今日のジョギングを終えた。
この裏で既に新たな事件が起こっていた・・・・・
とあるライブ会場
「もう、やってられないわよ!!」
とあるライブの会場で突如、休息をとっていたアイドルグループが会場で歌っていた別のグループを襲うという事件が発生していた。
「ちょっと、やめなさいよ!」
「うるさい!放せ!!」
パニックに陥っていた会場は警察が出動するにまで至り、凶暴化したグループメンバーを取り押さえるという事態にまで発展した。
最近このような事件が頻発に起こっていた。
この事件に隊長が未だ不在のZAT極東支部は調査に乗り出していた。
警察署
「つまり、暴れていた本人は何も覚えていないというのですか?」
「はい、全ての証人に事情聴取を執り行ってみたのですが全員暴れていた時のことに関しては全く覚えていないそうなんですよ。」
ZAT隊員 北島隊員、南原隊員は、警察官に聞きながら取調室へと赴いていた。
取調室では、捕まったアイドルグループのメンバーが事情聴取を受けていた。
「では、貴方は他のグループの方たちを襲ったことは覚えていないんですか?」
「はい・・・・・私は自分たちの出番が終わった後控室でメンバーたちと一緒に世間話をしながら休息をとっていました。」
頭を抱えながらグループの女子は言う。
「それで・・・・何かほかに変わったことは?」
「みんなで最近はやりの携帯アプリをいじっていました。それから先のことは・・・・・・・」
「ん・・・・・」
またも同じ発言を聞いたのか警官たちは困った顔をして腕を組む。
「どうやら、この事件はただことではないようですね。北島隊員。」
「あぁ・・・・・・しかし、署の報告では凶暴化した人間は、暴れる前に携帯をいじっていたという報告が上がっている。」
北島は、証拠品として署が保管している携帯を見ながら言う。
「・・・・この携帯、機種は違うが使われているアンテナはみんな同じタイプだな。」
「それもどうやら最近出たばかりの新しい機種ばっかりですね。」
北島は、署から出るとヘルメットに搭載された特殊通信機で基地と連絡を取る。
「こちら北島、本部応答願います。」
『は、はい!こちら本部です!』
通信先の方では慌てた少女の声が聞こえる。
「更識隊員、まだ慣れていないのはわかるけどもうちょっと落ち着いて話せないか?」
『す、すみません・・・・・・』
「いや、別に怒っているわけじゃないんだ。基地のアーカイブスで過去に人間が凶暴化して暴れた事件がないかどうか調べてもらえないか?」
『はい、わかりました。少し待っててください。』
更識は少し静かになると約五分後にまた、連絡を入れて来た。
『過去のアーカイブスで似たような事件がわかりました。媒体になっていたものは違いますが約40年前に同じ自動販売機で購入したタバコを吸って人が凶暴化して人を襲う事件が発生したという事例があります。』
「うん・・・・・っで、その原因は?」
『人間同士の信頼関係を崩して自滅を企んでいた宇宙人の仕業です。しかし、この宇宙人は40年前に当時地球を守っていたウルトラセブンに倒されたという報告が挙げられています。』
「その宇宙人の名前は?」
『幻覚宇宙人 メトロン星人です。』
「メトロン星人か・・・・・・更識隊員、メトロン星人についてもっと詳しいデータは?」
『待っててください、今割り出すので・・・・・・』
夕方
「・・・・・・・」
「一夏。」
夕方、一夏は箒と一緒に夕食の買い物をしていた。
「・・・・・ん?」
「かけがえのない親友を失くしたことはわかるが・・・・・流石に思い込み過ぎていないか?」
「・・・・そうだな、自分でもいい加減受け入れろって言っているんだけどどうしても吹っ切れないんだ・・・・」
「・・・・・・」
「もうすぐ千冬姉が帰ってくるかもしれねえのに・・・・・自分が情けない・・・・・」
一夏はそう言いながら歩いて行く。
そんなとき
「うわああぁぁぁああああ!!!」
少し離れたところで何か騒がしい声が聞こえた。
「なんだ?」
二人は気になって声がした方へと行ってみる。そこでは女性がまるで狂ったかのように近くにいる住人を殴りかかっていた。
「何が起こってんだ?」
一夏は、不思議そうな顔をしてその光景を見る。暴れている現場を北島隊員と南原隊員が警察と一緒に取り押さえる。
「落ち着きなさい!」
その現場の中、一夏はふっと何かを感じた。辺りをよく見回すと取り押さえにかかっている現場の隅で何やら黒ずくめの男がひっそりと現場を去るのを目にした。
「・・・・・」
「一夏?」
「悪い、先に帰っててくれ。」
一夏は買い物袋を箒に渡すと男を追って走って行く。
「あっ!ちょっ・・・・・もう!待ってくれ!!」
箒も買い物袋を持ったまま一夏を追いかける。
しばらく歩いて団地を抜け、男は一軒の古いアパートの一室へと入って行った。
「・・・・・・・・」
一夏は警戒しながら男の入った部屋の前にまで近づいて行く。
「・・・・・・・・」
『そんなコソコソしなくたって、別に逃げたりはしないよ。』
「!?」
部屋からの声に一夏は驚く。部屋戸がそっとまるで一夏を招くかのように開いた。一夏は、部屋の中へと入って行く。
居間には先ほどの男がちゃぶ台を挟んで座っていた。
「よく来たね、織斑一夏。いや、ウルトラマンタロウ。」
「どうして俺のことを知っている?」
「そりゃあ、俺も君と同じ宇宙人だからさ。」
男は、笑いながら一夏の質問に答えた。
「俺は人間だ!」
「人間だろうとウルトラマンだろうと宇宙に出ればみんな同じさ。」
「ここで何をしている!?さっきの人が凶暴化したのもお前が原因か!?」
笑う男に対して一夏は警戒を緩めない。
「何も企んじゃいないさ。ただ、人類がこのまま自滅するのかをちょっと見ていただけさ。」
「何!?」
「まあ、そうかっかしないで。何か飲む?」
男は、冷蔵庫を開けて何かを探し始める。そして、缶を三つ取り出した。
「はい。」
「な、なんだこれは?」
「何って?眼兎龍茶(メトロン茶)、毒なんか入っちゃいないよ。」
「何で三つも出すんだ?」
「そこに隠れているお嬢さんに聞いたらどうだい?」
「えっ?」
男が言うと部屋のドアが勝手に開く。そこには一夏の後を追いかけて来た箒がいた。
「あっ。」
「箒!?何でついてきたんだ!?」
「いいじゃないか。さっ、さっ、お嬢さんも中にお入り。」
「・・・・・う、うん。」
箒は中に入り、一夏の隣に座る。男は缶を開けてストローを入れると二人も缶を開ける。
「さっ、グッと飲みなさい。グッと。」
「「・・・・・・・」」
三人は同時に眼兎龍茶を飲んだ。冷蔵庫で冷やされていたこともあり、一際さわやかさを感じた。
「ん~~~~!!おいちぃい!!ふっ。」
その瞬間、男は一瞬にして赤く細長い上半身と青い下半身の宇宙人へと変わる。
「「ブッ!?」」
一夏と箒は一瞬吹き出しそうになったものの何とか堪える。
「い、一体お前はここで何をしようとしていたんだ!?」
『何もしちゃいないよ。お前さんたちや新しくできたZATに言われるまでもなく地球とおさらばするのさ。もうすぐ迎えの宇宙船がやってくるんでね。』
「ふざけるな!」
一夏は思わず立ち上がる。
「お前たちのような奴がいるから・・・・・・」
『大事なものがいなくなる・・・・っとでも言いたいのかな?』
「っ!?」
『図星?その顔からすると丸わかりだな。』
宇宙人 メトロン星人は少しからかうかのように言う。
「お、お前に何がわかるって言うんだ!」
『何もわからんさ。でも、矛盾しているとは思わんのかい?君たち人間が自然界にやっていることと怪獣が君たち人間にやっていることが。』
「はっ?」
メトロン星人はアパートの窓を開けて夕日を見る。
『俺は、ここで20年潜伏してきた。かつてこの星で死んだ父の見て来た地球の行く末を見守りにね。自然は破壊され、海は汚れ、地球の美しさがどんどん失われていく。しかし、人間の方はどうだ?楽なことを求め、その方向へ科学を進歩させてその反面、その便利さを求めるあまりに自然をどんどん壊していく。怪獣もいわゆる人類の被害者なのさ。だから人間に手を下す、そして、人間もやり返す。もう、我々が手を下さずとも地球人は自滅して、地球は我々の手に堕ちると確信したのさ。だから・・・・帰る!』
「なにを・・・・・」
『君だってよくわかっているはずさ。今の人間は心がどんどん廃れていっている。IS、女尊男卑・・・・・人間は機械に頼りすぎて、その脳は委縮し始めている。もう、戦う必要もない。今回のちょっとした悪戯でそれを悟ったのさ。』
メトロン星人はそう言うと部屋に散らかっていた物をまとめていく。
「何をしているんだ?」
『お土産さ。手ぶらで帰るわけにもいかんのでね。』
メトロン星人はそう言いながら大事そうにまとめる。
『お前さんたちだってもう、俺と同じ宇宙人のようなものさ。自然を壊して、海を汚して、少し変わったからって差別をする礼儀知らずな人類を守る必要もなかろう。』
「だからって・・・・・人間すべてがそんな考えをしているわけじゃない。」
メトロン星人に言われた影響か一夏は少し落ち着いて答える。
『それはお前さんたちの勝手な解釈さ。俺は客観的に見ているだけ。お前さんはその力を何のために使うかまでは知らんさ。』
「俺は・・・・・」
一夏は、一瞬黙りそうになるがまっすぐな目で言う。
「俺は・・・・・守りたいものを守るためにこの力を使う。お前たちのような奴らの手でこれ以上失わないためにな!」
『ほう、そうかいそうかい。』
メトロン星人は、そう言いながらまた座る。
『ん~~~~じゃ、じゃんけんしよう。じゃんけんで俺が負けたらこのまま大人しく帰る。』
「・・・・・いいだろう。宇宙人に二言はないぞ!」
『そのこと・・・・今の地球人に教えてやれ。』
一夏はメトロン星人と対峙しながら右腕を出す。
『それじゃあ行くぞ。』
「あぁ。(自分がチョキしか出せないの知っててやるなんてどうかしてるぜ・・・・)」
『最初はチョキ!じゃんけん・・・・・・ポン!』
一夏は、勝利を確信してグーを出す。
ところがメトロン星人は、人間の姿に戻ってパーを出していた。
「あっ!?」
「お生憎様、人は見かけで判断しちゃいけないってな。ハッハッハッハッハッハッハッ、イエェ~イ~!!」
メトロン星人は一瞬にして巨大化して外へと出て行った。唖然としていた二人だったが一夏はすぐにウルトラバッジを取り出して前に掲げた。
「タロウー!!」
夕暮れの街。
巨大化したメトロン星人は、暴れることなくただ、その場に立っているだけだった。
そこへタロウが舞い降りて来た。
『ディアッ!』
タロウは、臨戦態勢で構えを取るがメトロン星人は構えを取らず寂しそうに夕日を見る。
『・・・・地球の夕焼けは美しいな・・・・・父が死んだのもこういう夕焼けの時だったらしい。特に日本の黄昏は宇宙のあらゆる星でも見られない美しさだ・・・・・・』
『そんなこと言ってないでさっさと自分の星へ帰れ!これ以上時間が経つと何もしなくたって攻撃されるぞ!』
『ヒュー!随分と優しい言葉をかけてくれるもんだね~。』
メトロン星人は、独特の構えを取り始める。タロウは身構えるがその場で足踏みをしているだけで攻撃してくる様子はない。あまりにも意味不明な行動にタロウア思わず首を傾げてしまった。
そんな光景を他所に一機の円盤がこちらに向かって飛んできた。
それを確認するとメトロン星人はタロウの方へと向き直る。
『じゃあ、俺は帰るから。自分でやりたいことをやるだけやってみなさい。じゃあね。』
メトロン星人はそう言っているかのように手を振って飛び去って行く。思わず反射的にタロウも手を振り返してしまったがメトロン星人はそのまま光になって宇宙船へと入って行った。
飛び去って行く宇宙船を眺めながらタロウはそのまま別な方角へと飛び去って行った。
メトロン星人 円盤
『どうでしたか?地球での潜伏活動は?』
迎えに来たメトロン星人は乗り込んできたメトロン星人に聞く。
『まあ、楽しかったよ。帰るのが惜しくなるほどね。』
『そうでしたか。しかし、本当に攻撃しないでよろしかったのですか?』
『いいの、いいの。あの星は後何年も経てば自滅するさ。我々が手を下さずともね。』
『そうですかね?私は貴方の顔を見るからにそうとは考えづらいのですが・・・・・』
『そうかい?そんなつもりじゃないんだけどね、ハッハッハッハッハッハッ・・・・・・』
メトロン星人の円盤は、そのままそっと地球を後にして行った。
それからしばらく経った後の織斑宅
「はあ・・・・・・千冬姉。一体いつになったら帰ってくるんだろう?」
一夏は、朝食を摂りながら言う。
もうすぐ年明けになろうというのに千冬が戻ってくる様子はなかった。メールも送ってみたのだが返信すらない。
「千冬さんのことだから心配はないと思うが・・・・・・」
「もうすぐ受験だから仕方ないけど、俺はどこへ行こうかな・・・・・やっぱ、学費が安く就職率の高い私立藍越学園にしようかな・・・・・」
そんな会話をしながら二人は、学校へ行く準備をする。一夏の学年は、怪獣災害により一夏と箒、そして、その日偶然欠席して参加できなかった生徒たちをまとめてのクラスだったがそれでも普通の1クラスよりも生徒数が少ない。
二人は家を出る前にポストを確認する。すると
「ん?」
2人宛に何かはがきが入っていた。
「なんだこれ?差出人は・・・・・・・・束さん?」
なんか前回の話が暗いから今回は若干明るめにしました。
次回は取り敢えずZAT入隊編にしたいと考えています。