落書き怪獣 ゴンゴロス
凶悪宇宙人 ザラブ星人
登場
とある町の小学校の教室。
少年たちの間では十数年ぶりに姿を現した怪獣に熱中し、一部で再び怪獣ブームが巻き起こっていた。
「見ろよ!俺の絵、レッドキングだぜ!!強そうだろう!」
一人の大柄なガキ大将らしき少年が自慢そうに自分の描いた絵を見せる。レッドキングはその昔、ウルトラマンと戦った怪獣の一体だ。
「僕はゴモラだぞ!」
「ベムスターだ!宇宙大怪獣だぞ!」
「バルタン星人だぁ!フォッ、フォッ、フォッフォッ・・・・・」
「俺なんかキングジョ・・・・・・・あれ?この怪獣はなんだ?」
「「なにこれ?」」
「どれどれ・・・・・」
ロッカーの上に張られている絵の中で一枚見たこともない怪獣の絵に少年たちは注目する。その怪獣は、今まで見たこともない外見で強そうに見えた。っというかやけに気合が入っている。
「あっ、これ雄二の描いた奴だ!」
一人の少年がそう言うと一同は一人机で絵を描いている少年の席へと行く。
「おい、雄二!あの怪獣なんて言うんだ?」
「あんな怪獣見たことないぞ?」
「教えろよ。」
雄二と呼ばれた少年は絵を描くのをやめて一同の方を見る。
「・・・・・ゴンゴロス。」
「ゴンゴロス?」
「僕が考えた怪獣なんだ。」
雄二はなんかがっかりした顔で言う。
「そう言えば雄二の父ちゃんって、タラバマンの怪獣作る人だったよな!」
「うん。僕、父ちゃんにゴンゴロスをテレビに出してって頼んだんだけどダメって言われたんだ。」
「え~!どうしてだよ!?あんな強そうなのに?」
「そう言えば知ってるか?タラバマン、もうすぐ最終回なんだってさ。」
「「「え~!マジで!?」」」
「それで最終回までの怪獣作っちゃったからもう出せないんだって。」
「残念だな~。」
「でも、タラバマンに出したら負けちゃうぜ?」
「あっ、ヤバい!休み時間もう終わりだ!?」
「ヤバッ!」
「戻れ、戻れ!」
少年たちは会話を中断して急いで席へと戻って行った。
そして、学校が終わった雄二少年は、公園で怪獣の絵を描きながら学校から持ち帰ってきたゴンゴロスの絵を眺める。
「・・・・・・ゴンゴロスが本当にいたらいいのにな~。」
この怪獣 ゴンゴロスは雄二君が書いた最初の怪獣だった。
とある特撮番組で怪獣のデザイナーを担当しているお父さんの影響もあって雄二君も自分のオリジナルの怪獣を書きたいと思って幼稚園の頃から書き始めた。それで最初に書いたのがこのゴンゴロスだ。最初は、泡をモチーフにした怪獣だったが年々雄二君の作画の技量が上がったことにより今の姿へとなった。
雄二君はどうしてもゴンゴロスの動く姿が見たくてお父さんにゴンゴロスを番組に出してもらえないかと頼み込んだ。
しかし、残念ながら今やっているヒーロー番組が間もなく終了することもあって実現できなかったんだ。
「大人ってつまんないな~、子供が考えた怪獣の一匹や二匹出してくれたっていいのに・・・・」
雄二君はそう言うとゴンゴロスの絵を持ってお家へと帰って行った。
「・・・・・・・」
その姿を怪しい人影に見られていたとも気づかずに。
雄二宅
その日の夜、雄二君はベッドの脇にゴンゴロスの絵を飾って寝ていた。
『・・・・・・・』
そこへ何者かが侵入し、ゴンゴロスの絵を眺めていた。
『・・・・・中々、強そうな怪獣だな。これなら、奴の練習台にピッタリだ。いや、うまく行けば奴を出さずに地球侵略ができるのかもしれん。』
そして、ゴンゴロスの絵にスライムのようなものを垂らす。物体はゴンゴロスの絵に満遍なく浸かるとすっと乾いて何事もなかったような状態になる。
『クッククク・・・・・・楽しみにしていてくれたまえ、雄二君。形が違うとはいえ君の願い事が叶うのだからね。』
そう言うと影は姿を消した。
翌日のZAT基地
「更識、数日前に確認された飛行物体の消息はまだ掴めないのか?」
ZATステーションでは、数日前に地球に来襲した宇宙船の行方を追っていた。
「はい、レーダーの周波数を最大にして調べているのですが未だに反応が掴めません。おそらく隠密に行動できるよう強い妨害電波で遮断している可能性があります。」
「うん・・・・・・束、妨害電波遮断装置の改良はまだなのか?」
千冬は通信機で研究室に籠っている束に聞く。
『もうちょっとでできるんだけど・・・・肝心なところがまだ微妙なんだよ。早くて明日かな?』
「・・・・わかった。出来次第スカイホエールに取り付けてくれ。こちら、本部。ウルフ777、応答せよ。」
千冬は研究室から外をパトロールしているウルフ777に連絡を取る。
『こちらウルフ777、異常なし。』
『現場を調べてはいますが宇宙船の残骸は愚か反応もありません。』
「束の計算が正しければ宇宙船がその辺一帯に堕ちてきたのは間違いないそうだ。何か変わったことがあったらすぐに連絡しろ。」
『『了解。』』
『ついでに二人でデートしててもいいよ~!』
「『『ブッ!?』』」
束の割り込み回線で千冬と通信をしていた一夏と箒は思わず噴き出した。
「た、束!!」
『あっ、やば・・・・・』
束は慌てて通信を切る。
「・・・更識、他の隊員たちにも引き続き捜査を続けるよう指示を出しておいてくれ。」
「分かりました。隊長は?」
「篠ノ之博士にお灸を据えに行く。」
そう言うと千冬は、司令室から出て行った。
その後、回線から束の悲鳴が聞こえてきたのは数分も経たないうちだった。
その日 午後
雄二君たちの学校は保護者面談の時期もあって雄二君は家に帰ろうとしていた。
「・・・・・・」
『雄二君。雄二君。』
「あれ?」
奇妙な声に雄二君は後ろを振り向くがそこには誰もいない。
「おかしいな?」
雄二君は、再び歩き始める。しかし、またもや奇妙な声が聞こえて来た。
『雄二君、雄二君。』
「ん?」
雄二君は再度後ろを振り向くがやはり誰もいない。
「ん~。誰かの悪戯かな?」
『ハッハハハ、悪戯じゃないよ。』
「わあぁ!?」
改めて前を向くとそこにはツリ眼と星形の口が特徴で、頭部と胴体が一体になっている怪人が立っていた。
「う、宇宙人だぁ~!?」
『待って待って。別に君を襲いに来たんじゃないんだ。』
「嘘だ!僕は知っているんだぞ!お前はザラブ星人だぁ!」
雄二君は、指をさしながら怪人 ザラブ星人に言う。
凶悪宇宙人 ザラブ星人
その昔、ウルトラマンに化けて暴れた凶悪な宇宙人の一人だと言われている。
『待ってくれ。確かに私の仲間が君たち地球人を騙そうとしていたのは事実だ。だが、人間に悪い奴がいるようにザラブ星人にだっていい奴もいれば君の知っている悪い奴もいるんだ。』
「でも、信用できないよ!ZATに通報してやるぞ!」
雄二君は、走って逃げようとするがザラブ星人は焦る様子を見せずに答える。
『では、こうするのはどうだ?君の描いた怪獣に会わせるというのは?』
「・・・えっ?」
ザラブ星人の言葉に雄二君は足を止める。
『実は昨日、公園で君が怪獣の絵を描いているところを見たんでね。会いたいんだろ?君の描いたゴンゴロスという怪獣に。』
「ほ、本当?」
父に頼んでも実現できなかったゴンゴロスに会えるという言葉を聞き、雄二君の目は輝いていた。
『あぁ、本当だとも。絵を出してごらん。』
「うん!」
雄二君は誘惑に乗って持っていたゴンゴロスの絵をザラブ星人の前に見せる。
(クッククク・・・・・間抜けなガキだな。そいつには昨日の夜、おおぐま座M81星雲にしか生息しない宇宙アメーバを忍ばせといたのだ。コイツはあらゆるものを学習してその姿へと変える。そして、私の光線を浴びればたちまち巨大怪獣へとなるのだ!さあ、暴れろ!ゴンゴロス!その手でお前を生み出したそのガキを捻り潰せ!!)
ザラブ星人は、指から怪光線を放つ。怪光線はゴンゴロスの絵に命中し、周囲はまばゆい光に照らされた。
「うわぁ!?」
グルル、グロロロォ!!!
次の瞬間、絵だったゴンゴロスは実体を得て、街のど真ん中に姿を現した。
「おい、なんだありゃ!?」
「怪獣だぁ!?」
「ひぃやあぁあ!?ZATに連絡しろ!!」
「逃げろぉお!!」
突然出現したゴンゴロスを見て町の住民は大慌ての大パニック状態へとなった。しかし、その中でただ一人雄二君だけは大喜びしていた。
「ゴンゴロスだぁ!僕の描いたゴンゴロスだ!僕のゴンゴロスが出てきたんだ!」
グロロロロォオ!!
ゴンゴロスは、足元にいる雄二君を見つけるとしゃがんできた。
『よし!そのままそのガキを捻り潰せ!!』
グルルルル・・・・・
『あり?』
ザラブ星人の予想とは裏腹にゴンゴロスは、雄二君に顔を近づけながら唸っていた。
「僕のことがわかるんだね!やっぱり僕の描いたゴンゴロスなんだ!」
グロロロロォ!
ゴンゴロスは舌を出して嬉しそうに雄二君を舐める。
『ど、どういうことだ!?・・・・・・ハッ!まさか、あのガキの絵に対する愛着まで学習してしまったのか!?だとしたらこいつはあのガキの言う事しか聞かない役に立たないポンコツ怪獣・・・・・・くそ!思惑がズレたか!』
ザラブ星人は悔しそうに足踏みをしているとも知らずに雄二は満足した様子だった。
「ありがとう!ゴンゴロスに会わせてくれて。」
『えっ!?いや・・・・・その、どういたしまして。』
雄二の反応を見てザラブ星人は困った顔をする。
(落ち着け・・・・・落ち着くのだザラブ星人!これを逆に考えるんだ。コイツを練習台にして奴の強化に利用すれば問題ない!その後で・・・・・)
「でも、ゴンゴロスをいつまでも出すのは不味いよ。早く元の絵に戻して。」
『う、うむ・・・・・いいだろう。ただし、条件がある。』
「条件?」
『ゴンゴロスに会わせたお礼として明日の朝6時にこの町の近くの山で私の連れてきた怪獣と戦ってほしい。もし私が勝てば地球を頂く。だが負ければこのまま大人しく星に帰る。』
「えっ!?なんだよ!結局地球侵略に来てたんじゃないか!」
ザラブ星人の目的を知って雄二君は思わず怒る。
『フッフフフフ・・・・・・・私は「侵略しない」とは一言も言っていないぞ?さあ、どうする?もし、断るのなら、私が連れてきた怪獣をすぐにここで暴れさせて君の両親は愚かお友達、先生、ご近所の皆さんを死なせることになるぞ?』
「そ、そんな・・・・・・」
ザラブ星人の挑戦状に雄二君は、思わず怖くなる。
『言っておくが私が連れてきた怪獣は強いぞ。さあ、私の挑戦に乗るのか?乗らないのか?』
「・・・・・わ、わかったよ・・・・・行くよ、行けばいいんだろ。」
『フッフフフ・・・・・勇敢だな君は。言っておくが来ない場合でも私は怪獣を街で暴れさせるぞ。精々、残りの時間を大好きなゴンゴロスと一緒ににらめっこしているんだな。ハッハハハハハ!』
ザラブ星人はそう言うと怪光線をゴンゴロスに浴びせるするとゴンゴロスは光りだし、元の絵に戻った。
『では、また明日会おう。楽しみにしているよ。ハッハハハハ・・・・・・』
ザラブ星人は煙のように姿を消して行った。その場に残された雄二君は、ゴンゴロスの絵を拾い不安な表情になった。
「どうしよう・・・・・・ゴンゴロス・・・・・・」
夕方
「本当です!儂は確かに昼間こんくらいの怪獣を見たんですぅ!!」
「はいはい。でも、いなくなっちゃったんでしょ?」
「ばかもん!儂が幻でも見たとでも言いたいのか!!」
「いや、そんなつもりは・・・・・」
怪獣出現の通報を聞いて近くの現場に待機していた一夏と箒は住民の聞き取り調査を行っていた。
しかし、現場に到着した時は暴れた形跡もなければ、怪獣がどこへ行ったかもわからないのだという。そのおかげで一夏と箒は半信半疑状態だった。
「なぁ、一夏。」
「なんだ?」
「みんな怪獣を見たとは言っていたが・・・・この街の様子を見て信じられるか?」
「俺だって疑いたくなるよ。でも、基地から送られてきた衛星写真では確かに写っているんだ。」
一夏は一枚の写真を見せる。
そこには確かに昼間出現したゴンゴロスの姿があった。
「ひょっとしたら姉さんのいたずらの可能性もあり得るだろ?合成とか。」
「う~ん~。でも、それだったら見たって言う住民の証言は何なんだ?束さんが悪戯するにしても怪獣のホログラムを態々見せる必要なんてないはずだろ?」
「そこなんだ。みんな揃いに揃って突然いなくなったと言うんだからな。」
二人は車を止め、周囲をパトロールする。当然のことながら怪獣が暴れた痕跡は愚か、足跡すら見つからない。
「そっちは、どうだ?」
「私の方もダメだ。猫の子一匹いなかった。」
「ん~。もしかして例の宇宙船と何か関係するのか?」
2人が考えながら歩いていると箒が夕方の公園のブランコに誰かいることに気がつく。
雄二君だ。
「一夏、こんな時間に子供が公園に。」
「なんだって?」
二人は公園の中へと入って行く。雄二君は泣きながらブランコに座っていた。
「坊や、こんな時間に公園にいるなんてどうしたんだい?」
一夏は、雄二君に声を掛ける。
「あっ。」
「お母さんやお父さんが心配しているぞ?早く帰った方が・・・・・・」
「・・・・・・・帰れないよ。」
「帰れない?どういう事なんだい?」
泣いている雄二君の言葉を聞いて一夏は、不思議そうな顔をする。
「・・・・・!?一夏、この子が持っている絵・・・・」
「ん?・・・こ、この怪獣は!?」
一夏は、雄二君が持っていたゴンゴロスの絵を見る。
「坊や、この怪獣の絵、どうしたんだい!?」
「・・・・・僕が書いたゴンゴロスだよ。」
「どういう事なんだ?基地から送られてきた写真そっくりだぞ!?」
箒は戸惑いながら写真と見比べる。絵の通りと言うより瓜二つだ。
「明日、僕とゴンゴロスが勝たないと地球がザラブ星人に侵略されちゃうんだ。」
「ザラブ星人?・・・・・坊や、詳しく話を聞かせてもらえないか?」
一夏は、ハンカチで雄二君の顔を拭きながら聞く。
活動報告からリクエストを送ってくださった読者さんありがとうございました。