「やったわね、マシュ。おめでとう」
「スゲーじゃねーかマシュマロ、お前強えんだな!」
「やるじゃねえか嬢ちゃん、よくやったな」
「はい、ありがとうございます――」
マシュが宝具を使えるようになった事に対して、皆が祝福の言葉を送る中、照れつつもマシュは頭を下げる。しかしそこで体力が完全に尽きたのか、マシュは倒れた。
「うおおおい!しっかりしろマシュマロ!」
「マシュ!」
「だ、大丈夫です……少し休めば、また動けます……」
幸いモモタロスとオルガマリーが急いで受け止めたが、マシュは苦笑いを浮かべ、平気そうに笑いかける。
しかし、何か違和感を感じたキャスターは士の方に顔を向け、言った。
「……あの嬢ちゃん、凄かったぜ。褒めてやらねーのか?」
しかし当の士は、周囲を胸に下げているピンクのカメラで撮りながら、興味無さげに言った。
「……別に。サーヴァントは宝具が使えて当たり前なんだろ?なら当たり前の事が出来るようになっただけだろ」
「ちょっと……何よその言い草は?」
しかし、士の言い分が癪に障ったオルガマリーはマシュから離れ、睨みを利かせながら士の前に立つ。
「仮にもアンタのサーヴァントが身を挺して護ってくれたっていうのに、マスターのアンタは感謝やお礼の一つも無いわけ!?そんなサーヴァントとの信頼関係も築けないような奴、マスター失格よ!」
「……別に、あの程度なら俺だけで充分だ。寧ろあそこで宝具を使えてなかったら俺が犬死にする所だったんだが」
「何ですって……!」
「この際はっきり言ってやる。お前らは邪魔なんだよ、俺はこの先一人で行く。ついてくるなよ」
そう吐き捨てるように言い放つと、士はさっさと大聖杯があると言われた洞窟へと向かっていった。
「お、おい……言い過ぎだぜ士!」
ピリピリとした空気から逃げるように、モモタロスもマシュをオルガマリーに任せ、士を追いかけ走る。その様子を見ていたキャスターは無言で佇んでいた。
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やがて士とモモタロスが見えなくなると、疲労困憊の状態のマシュは盾を支えに立ち上がった。
「マシュ、まだ無理をしては駄目よ。第一、あんなマスターの為に戦うことなんてないわ。貴方が傷付いても平気でいる最低のマスターなのよ?」
オルガマリーは肩を貸してマシュを支えながら言うが、マシュは苦し紛れのような笑みを浮かべてオルガマリーから離れる。
「……所長、私は大丈夫です。先輩の事なら、それなりにわからせていただきましたので。さぁ、行きましょう!早く先輩に追いつかないと!」
そう言いながら走り去っていくマシュに、オルガマリーは開いた口が塞がらなかった。
「ど……どういうことなの……?なんで、あんな事言ったマスターを信頼できるわけ……?」
『あー、あー……所長、ちょっと良いですか?』
オルガマリーが呆気に取られながら呟いていると、ロマニからの通信が入り、画面が映る。
「な、何よ……?」
『そのですね……一応僕も医療スタッフなので、士くんやマシュのバイタルチェックや健康状態の管理は今も欠かさず行っているんですけど……先程の士くんの発言というか暴言はですね、その時のバイタル的に多分……照れ隠しかと』
「……………はぁ?」
オルガマリーは素っ頓狂な声を上げた。
そして思った。
「アイツ……めんどくさっ!!」
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一方その頃、士はついてくるモモタロスに目もくれず洞窟内部をずかずかと突き進んでいた。
「おい士、聞けよコラッ!」
「…………」
「……聞けってんだよコンニャロー!!」
「ああもうやかましい……何だ」
「最初から反応しろよ、ったく……お前よぉ、なんでマシュマロのこと避けてんだ?」
モモタロスが疑問を投げかけると士は足を止め、前を見ながら呟くように言った。
「……ああするしか無かったとはいえ、マシュに宝具を覚えさせる方法が強引過ぎた。あそこで俺がさっさとバーサーカーを片付けていれば、もう少し安全に覚えられた筈だ……別に、負い目を感じてる訳じゃないからな。覚えておけ」
そう言うと士はまた歩みを進める。モモタロスは少しその場に立ち尽くしたが、小さく笑うとまた士を追いかけた。
―――その光景を見ている者の存在も知らず。
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「―――下らん友情ごっこは終わりだな。さっさと消えてもらおうか」
影の弓兵はそう言いながら黒き弓に矢を番える。『千里眼』の力で遥か遠くの目標へと狙いを定め、弦を引く。
―――しかし、それを邪魔する者が二人。
「そうはさせないよ」
「邪魔すんな、良いとこなんだからよ」
「何ッ……!」
銃弾と光弾が弓兵へほぼ同時に放たれる。飛び退き回避した弓兵は、洞窟の中に広がるこの空洞の天井近くに現れた者を見上げる。
「やぁ、王様を守る忠実な騎士様。お城のお宝を頂きに来たよ」
「残るはテメーとセイバーの二騎だけだ。覚悟しな」
そこに居たのは蒼い怪盗と青い術者。彼らは合流し、別のルートからこの空洞へと辿り着いたのだ。
「馬鹿な……!入り口はライダーが守っていたハズ、どうやって……」
「無論、倒させてもらったよ。こう見えて僕は手段は選ばないのでね」
「一対二ってのは少し流儀に反するが、この際言ってもいられねえ。何しろオレ達も必死なんでな」
余裕の笑みを浮かべながら二人は飛び降り、着地する。杖と銃を構え、弓兵と一触即発の空気が空洞を満たす中、士とモモタロスもまた合流した。
「……海東!」
「ありゃ、盗っ人野郎にマジシャン野郎じゃねーか!どうやって先回りしやがった!?」
「っ……!おのれ、ディケイドまで合流したか……」
士とモモタロスに気を取られた弓兵の隙を二人は見逃さず、素早くそれぞれの弾を撃ち、爆煙を発生させて目眩ましをしてから、士達の横へと並び立った。
「やるぜ、鬼。女にばっか任せてオレ達男がサボってちゃしょうがねえ!」
「おうっ!ここからは俺達のクライマックスだぜぇ!!」
「行くよ士。たまにはレディの道を切り開こうじゃないか」
「……あぁ」
士はディケイドライバーを巻き、モモタロスはモモタロスォードを構える。
男達の戦いが、始まろうとしていた。