死の奔流が、背後より迫る。このまま走っても間違いなく逃げられないと、モモタロスは悟った。
ただし、自分の行動次第で士だけなら逃がす事も可能という事も、モモタロスは悟っていた。
僅かな刹那、モモタロスは口を開く。
「……おい士、今から俺の言うことよく聞けよ」
≪なんだ!?そんな事より今は――≫
「いいから聞きやがれ。いいか?このままじゃ俺達二人ともやられてお仕舞いだ。だけどよ、お前だけなら逃がせるかもしれねえ」
≪……お前、何をする気だ≫
「俺が盾になってやるよ。その隙に行きやがれ」
≪待てっ、モモタロス――≫
士の制止も聞かず、モモタロスはディケイドの肉体から飛び出し、大の字に身体を拡げ、その場に仁王立ちする。
地を砕き、モモタロスに迫るセイバーの宝具。ディケイドはライドブッカーを開き、現状を打破する為の切り札を探す。しかし、そんなものは無い。どう足掻いても、今のディケイドにはモモタロスを救い、自分も助かる為のカードは揃っていなかった。
(駄目なのか……!今の俺には、力が足りないのかっ……!)
士の心に不満や怒り等が混ざった感情が渦巻く。悔しながらも、今はモモタロスが救おうとしてくれるこの命を優先しなければならない事は、士にも分かっている。
無力感を噛み締めながら、ディケイドはモモタロスに背を向け、走り出そうとした。
しかしその時、黒い閃光の如き『何か』が、ディケイドを飛び越え、モモタロスの前に着地した。
「――
次の瞬間、前方に巨大な魔力障壁が出現する。それはセイバーの宝具を受け止め、膨大な魔力を別方向に受け流し、ディケイド達を護った。
「お前は……」
障壁が消え、宝具同士がぶつかり合う衝撃で産まれた土煙が薄くなると、ディケイドは障壁を発生させた盾を携える者の顔を見つめる。そんな事が出来る人物は、一人だけしかいない。
「先輩、モモタロスさん、ご無事ですか?」
「マシュマロォ!」
「マシュ……」
ディケイドの思った通り、二人を護った人物は、つい先程宝具を使いこなせるようになった少女、マシュ・キリエライトだった。
「ほう……私の宝具を防ぐとはな」
「あれが……セイバー、ですね」
土煙の中からセイバーが姿を現す。その表情には感心と、僅かな焦燥が見え隠れしているようにも見えた。
「……そうか。その盾を以て私の宝具を防いだか。ならば納得だな…最後の最後で、手が緩んでしまったか……」
マシュの盾を凝視し、何かを理解したセイバーは何処か安心したような笑みを浮かべ、地面に突き刺した剣に寄りかかりながら膝をついた。既にセイバーの魔力は、限界を迎えていたのだ。
「フッ……私も最早、限界か…結局、どう運命が変わろうと私一人では同じ末路を迎えるという事か……やれ」
剣を杖にしながら、身体をふらつかせつつもセイバーは立ち上がる。その様子を、マシュは何処か寂しそうな表情を浮かべ、沈黙していた。
ディケイドはセイバーの意思を汲み取ったのか、『ケータッチ』と呼ばれるスマートフォンに酷似した端末を取り出し、画面に刻まれた九人のライダーの紋章を順番に押していく。
『KUUGA!AGITO!RYUKI!FAIZ!BLADE!HIBIKI!KABUTO!DEN-O!KIVA!』
『FINAL KAMEN RIDE:DECADE!』
全て押し終えた後、ディケイドの紋章を押し、ディケイドライバーのバックルを取り外し、ベルトの右サイドに移動させ、代わりにケータッチをバックル部に装着させると、ディケイドの身体は変化していく。
緑の複眼はピンクに変わり、額にディケイドのカードが装着され、さらに右肩から左肩にかけて一直線に九人のライダーカードが現れ、ディケイドは『コンプリートフォーム』へとパワーアップした。
「……やるぞ、マシュ」
「……了解、しました!」
『FINAL ATTACK RIDE:DE DE DE DECADE!』
「ハアァアアァァ―――ッ!!」
「シールダー、キィィィック!!」
ディケイドはエネルギーをくぐり抜けながら、マシュは足に炎を纏わせ、同時に必殺のキックをセイバーへと叩き込む。セイバーは吹き飛びはしなかったものの、後ろへよろめきながら告げる。
「気を付けるといい……『グランドオーダー』は…聖杯を巡る戦いはまだ、始まったばかりだ…破壊者よ…お前が、何処まで力を尽くせるか、見物だな……」
そう告げると、セイバーの身体からは魔力の光が漏れ、溢れた魔力はその場で爆発を起こし、セイバーの姿は消えた。