「先輩先輩、見てくださいこれ」
「なんだ?」
カルデアとの通信を安定させる為、霊脈地を探すマシュと士。その途中でマシュは歩みを止め、士を呼び止める。士が振り向くと、そこには身長とほぼ同じサイズの盾を持ったマシュが居た。
「……何処にあったそんなの」
「何か武器になるものが無いかと探して歩いていたら、このベルトから出た光の粒子がこの盾のようになりまして……」
「……どうやら、早速その盾の使い所らしいな」
士に言われて気がついたのか、剣や槍や弓を持った骸骨兵四体が前後に二体ずつの体勢で二人を取り囲んでいた。
「……意思の疎通は不可能。敵と判断します!」
「……変身はしなくても充分だな。行くぞ」
マシュは盾を、士はライドブッカーをガンモードへ変形させ、構える。
≪GI、GAAAAAAAA!!≫
一体の骸骨兵が吼え、それが開戦の合図というように一斉に骸骨兵は襲いかかる。
「やあぁっ!」
≪GAAA!≫
マシュは盾と共に槍を持つ骸骨兵へ突撃し、横から襲ってくるもう剣を持つ骸骨兵を蹴飛ばし怯ませると、素早く盾を横薙ぎして叩き壊す。
≪GIIIIAAAAA!!≫
「フン……」
何処に声帯が在るのかは不明だが、奇声を発しながら弓を構える骸骨兵は士に向けて矢を放つ。
士はライドブッカーから発射されるエネルギー弾で的確に矢を撃ち落とし、さらに骸骨兵の肩の関節を撃ち抜くと、トドメに頭を撃ち抜く。
≪GAAAAAA!≫
「お前で最後か」
二体目の剣を持つ骸骨兵は本能のままに士に剣を振るうが、後退しながら士は回避し、ライドブッカーをソードモードへと変形させ、まず剣を持つ手を斬り落とす。それでも動きを止めはしない骸骨兵を、士は二つに斬り裂いた。
「……戦闘終了。なんとか、なりましたね」
「あぁ……しかし、なんだコイツらは?」
「恐らく、魔術で動かす人形と思われます。これから先も多分襲ってくるでしょうから、細心の注意を払って進むべきです」
「あぁ。しかしお前、結構強いんだな」
「いえ、そんな事ありません。戦闘訓練では私はいつも最下位でしたし……多分、私に宿っていた英霊の力だと思います」
「そうか……」
武器を利用しつつも、基本は己の肉体で戦う姿に、士はマシュの中に入った『もう一人』の人物を突き止めつつあった。
―――――――――――――――――――――――――
一息ついてから再び士とマシュは霊脈地を探す為歩き始める。前からの奇襲に備えられるようにマシュが前を歩き士を先導する形で進んでいると、マシュは唐突に立ち止まる。
「……どうした?」
「……何か、聞こえませんか?人の声のような……」
「声だと……?」
マシュと士は目を閉じ、耳を澄ませた。
よく聞くと、炎が燃え盛る音に混じり、女性の声のようなものが近くから聞こえてくる。
「この声は……どこかで聞いたことがあるような気がするな」
「……所長の声、のような気がします。とにかく、行ってみましょう!」
マシュと士は感覚で声のする方向へ走る。
すると本当に、オルガマリーが三体の骸骨兵から逃げ回る姿がマシュと士の目に映った。
「何なの、何なのよコイツら!?なんだって私ばっかりこんな目にあわなくちゃいけないの!?もうイヤ、助けてよレフ!いつだって貴方だけが助けてくれたじゃない!」
今にも泣きそうな顔でオルガマリーは骸骨兵達から逃げ、この場に居ない『レフ・ライノール』へと助けを求める声を上げていた。
「オルガマリー所長!」
「あ、貴方達!?ああもう、一体何がどうなってるのよぉぉぉっ!」
「いいから下がってろ。マシュ、ソイツを頼むぞ」
「了解です!」
オルガマリーをマシュに任せ、士は再びライドブッカーをガンモードにすると、トリガーを押し続けて連射する。『クラインの壺』から無限に供給されるエネルギー弾は尽きること無く、骸骨兵達の体を蜂の巣にする。
「……こんなもんか。おいあんた、無事か?」
塵に還る骸骨兵達から踵を返し、士は後ろを向く。オルガマリーは士とマシュの顔を交互に見ながら、呟くように言った。
「……。………どういう事?」
「所長……?ああ、私の状況ですね。信じがたい事かもしれませんが、今は――」
「サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァントでしょ。そんなの見ればわかるわよ。問題なのは、それがどうして今になって成功したのかって話よ!
いえ、それ以上に貴方!私の演説に遅刻した一般人!」
「なんだ?」
「「なんだ」じゃないわよ!なんでマスターになってるの!?サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけ!アンタなんかがマスターになれるハズないじゃない!その子にどんな乱暴を働いて言いなりにしたの!?」
癇癪を起こすオルガマリーに対して、士はやれやれといった感じにため息を吐く。
「誤解にも程があるな。マシュ、面倒だから状況の説明を頼む」
「了解です。所長、落ち着いて話を聞いてください。その方がお互いの状況管理もしやすいですから」
「……わかったわよ」
―――――――――――――――――――――――――
「……以上です。私達はレイシフトに巻き込まれ、この冬木に転移してきました。他に転移したマスター適性者はいません。所長がこちらで合流できた唯一の人間です。でも希望が出来ました。所長がいらっしゃるなら、他に転移したマスター適性者も……」
「……居ないわよ。それはここまでで確認しているわ……認めたくないけど、どうして私と貴方とソイツがレイシフト出来たのかわかったわ」
自分達以外にも仲間が居るのではないかという僅かな希望をオルガマリーは遮り、頭に浮かび上がった結論を口にする。
「生き残った理由に説明がつくのですか?」
「消去法……いえ、共通項ね。私も貴方もソイツも、『コフィンに入っていなかった』。生身のままのレイシフトは成功率が激減するけどゼロにはならない。一方、コフィンにはブレーカーがあるの。成功率が95%を下回ると電源が落ちるのよ。だから、彼等はレイシフトそのものを行っていない。ここにいるのは私達だけよ」
「なるほど……流石です所長」
「落ち着けば賢い奴なんだな」
「それどういう意味!?普段は落ち着いてないって言いたいワケ!?」
士としては褒めたつもりなのだが、それがオルガマリーの勘に障るのか、再びオルガマリーは士を怒鳴る。しかし、ここは落ち着かなければいけないと判断したのか、咳払いをしてから士に向き直り、口を開く。
「……まあいいでしょう。状況は理解しました。門矢 士。緊急事態ということであなたとキリエライトの契約を認めます。ここからは私の指示に従ってもらいます。……まずはベースキャンプの作成ね。いい?こういう時は霊脈のターミナル、魔力が収束する場所を探すのよ。そこならカルデアとも連絡が取れるから。それで、この街の場合は……」
「このポイントです、所長。レイポイントは所長の足元にあると報告します」
マシュに指摘され、少し冷や汗を垂らしつつ余裕の表情を見せる。
「うぇっ!?あ…そ、そうね、そうみたい。わかってる、わかってたわよ、そんな事は!」
「絶対わかってなかっただろ」
捲し立てるようにわかっていたと口にするオルガマリーに、士は容赦なく指摘する。
「わかってたわよ!!……マシュ。貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒に召喚サークルを設置するから」
「……だ、そうです。構いませんか、先輩?」
「別に良いと思うぞ」
「……了解しました。それでは、始めます」
マシュが地面に盾を置くと、盾を中心に光が周囲を包み、青く輝く小部屋のような空間が形成された。
「これは……カルデアにあった召喚実験場と同じ……?」
マシュが空間を見渡していると、ロマニからの通信が入り、画面が映る。
『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったぞ!二人ともご苦労様、空間固定に成功した。これで通信も安定するし、補給物資だって――』
ロマニが喜びの表情を見せる中、マシュと士を押し退けてオルガマリーは画面の向こうに怒鳴る。
「なんで貴方が仕切ってるのロマニ!レフは?レフはどこ!?レフを出しなさい!」
『うひゃあぁああ!?しょ、所長、生きてらっしゃったんですか!?あの爆発の中で!?しかも無傷!?どんだけ!?』
「どういう意味ですかっ!いいからレフはどこ!?どうして医療セクションのトップがそこに居るの!?」
『……なぜ、と言われても僕も困る。自分でもこんな役目は向いてないと自覚してるし。でも他に人材が居ないんですよ、オルガマリー』
ロマニは死亡したと思われていたオルガマリーの生存に驚きながらも、冷静に現状を伝える。
『現在、生き残ったカルデアの正規スタッフは僕を入れて二十人にも満たない。僕が作戦指揮を任されているのは、僕より上の階級の生存者が居ないためです。レフ教授は、あの管制室でレイシフトの指揮を取っていた。あの爆発の中心に居た以上、生存は絶望的だ』
「そんな……レフ、が……?いえ、それより、待って、待ちなさい、待ってよね」
レフ・ライノールという信頼に足る人物を失ったショックから、膝から崩れ落ちかけたオルガマリーは踏みとどまり、目を見開きながらロマニに問う。
「生き残ったのが二十人にも満たない?じゃあマスター適性者は?コフィンはどうなったの!?」
『……47人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何人か助けることは出来ても、全員は――』
「ふざけないで、すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、生き残らせるのが最優先よ!」
『ああそうか、コフィンにはその機能がありました!至急手配します!』
通信画面からロマニの姿が消え、バタバタと物音が聞こえてくる中、マシュは驚きながら呟いた。
「……驚きました。本人の承諾無く凍結保存を行うのは犯罪行為です。なのに即座に英断するとは。所長として責任を負うことより、人命を優先したのですね」
「バカ言わないで!死んでさえいなければ後でいくらでも弁明できるからに決まってるじゃない!」
マシュに八つ当たりするように怒鳴り散らすと、オルガマリーはうつむき、頭を掻きむしりながら呟く。
「大体、47人分の命なんて私に背負えるワケないじゃない……!死なないでよ、頼むから……ああもう、こんな時レフが居てくれたら……!」
―――――――――――――――――――――――――
数分後、再び画面にロマニが映り、状況を報告した。
カルデアはその機能の八割を失っており、ロマニの判断で残った人材をレイシフトの修理、カルデアスとシバの現状維持に割いており、外部との通信が回復次第補給を要請し、カルデア全体を立て直すという。
『……報告は以上です』
「結構よ。私がそちらに居ても同じ方針をとったでしょう……はあ。ロマニ・アーキマン。納得いかないけど、私が戻るまでカルデアを任せます。レイシフトの修理を最優先で行いなさい。私達はこちらでこの街……『特異点F』の調査を続けます」
『うぇっ!?所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンのクセに!?』
「……ほんっとう、一言多いわね貴方は。今すぐ戻りたいのは山々だけど、レイシフトの修理が終わるまでは時間がかかるんでしょう。この街に居るのは低級な怪物だけだとわかったし、デミ・サーヴァント化したマシュと、なんか変な武器を持ってる門矢 士がいれば安全よ。事故というトラブルはどうあれ、与えられた状況で最善を尽くすのがアニムスフィアの誇りです。
これより、門矢 士、マシュ・キリエライト両名を探索員として、特異点Fの調査を始めます。とはいえ、現場のスタッフが未熟なので、ミッションはこの異常事態の原因、その発見に留めます。解析・排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからの話になります。貴方もそれで良いわね?」
「大体わかった。構わないぞ」
士は正直長いのでほとんど聞き流していたのだが頷いた。
『了解です。健闘を祈ります、所長。あと、これからは短時間ですが通信も可能ですよ。緊急事態になったら遠慮なく連絡を』
「……ふん。SOSを送ったところで、誰も助けてくれないクセに」
『……所長?』
オルガマリーは小さく愚痴のように呟くが、すぐに目線を戻した。
「なんでもありません。通信を切ります。そちらはそちらの仕事をこなしなさい」
そう言って通信を切るオルガマリーに、マシュは少し不安そうな表情で提案する。
「……よろしいのですか?ここで救助を待つ、という手もありますが……」
「そういうワケにはいかないのよ……カルデアに戻った後、次のチーム選抜にどれだけ時間がかかるか。人材集めも資金繰りも、一ヶ月じゃきかないわ。その間に協会からどれほど抗議があると思っているの?最悪、今回の不始末の責任としてカルデアは連中に取り上げられるでしょう。そんなことになったら破滅よ。手ぶらでは帰れない。私には連中を黙らせる成果がどうしても必要なの。
……悪いけど付き合ってもらうわよ、門矢 士、マシュ。とにかくこの街を探索しましょう。この狂った歴史の原因がどこかにあるはずなんだから」
オルガマリーが一通りの方針を決めたその時。
「オ話ハ終ワッタカナ?」
「……!?な、何!?」
そこに立っていたのは、人の形をした影。恐らく二人組と思わしき影は、気配も感じさせずに三人の後方に居た。
「この反応……サーヴァント!?」
「……さっきの奴等よりは強そうだな」
「さ、下がってください先輩!あの二人は、歴史に残った英雄が現界したサーヴァントなんです、さっきの骸骨兵とは次元が違いすぎます!」
そんなマシュの言葉を聞き流し、士は前に出る。そしてディケイドライバーを腰に巻いた。
「歴史に残る英雄の力を使うって言うのなら、俺も同じだ」
そして、ライドブッカーからカードを取り出す。
今、
遅くなった上にクッソ長くなったけどゆるして