戦場のヴァルキュリアThe after  Attack of true valkyria   作:ピロッチ

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 義勇軍、士官候補生、懲罰部隊、外人部隊。
今やそのどれにも当てはまらないかつての英雄達の配属はいずこやら。
果たして、将軍の口から明かされる答えは如何に?



第3話 亡父の遺産

 アマトリアン駐屯地庁舎 高級士官執務室

 

「失礼します!!エレノア・ポッテル退役大尉及び

ウェルキン・ギュンター退役少尉をお連れしました!!」

 

「よろしい、通せ。」

 

「イエス、サー!」

 

 そんなこんなで、ギーゼン将軍なる人物に目通りする羽目になった二人。

 

「何が始まるんです…?」

 

「さあ、まるで見当もつかないわ。」

 

 訳が分からないが、とにかく中に入る二人だった。

 

「失礼します。エレノア・ポッテルであります。(敬礼)」

 

「同じく、ウェルキン・ギュンターであります。(敬礼)」

 

 そこにいたのは、頭頂部まで禿げ上がった白髪頭に口髭、

眼光鋭い「いかにも歴戦の老将」といった風貌の軍人だった。

 

「うむ、待っていたぞ。私がこの度ガリア陸軍総司令官を拝命した

陸軍大将ウォルフガング・グスタフ・ギーゼンである。

5年前の諸君等の活躍は良く聞いている。実に見事だった。」

 

「光栄であります。」

 

「では、時間が惜しいので早速本題に入ろう。

諸君等は先の帝国戦において実に大きな功績を残した士官であった。

そこでその実力と実績を鑑みて、

諸君等をある特別な部署に配属する事にした。」

 

「我々に…でありますか?ですが…」

 

 自分達には5年のブランクがあることを告げようとしたエレノアを手で制し、

ギーゼンが言葉を続ける。

 

「ああ、言わずとも知っておる。諸君に5年のブランクがある事も、

あの戦い以降、同じ隊に属した者同士で結婚して子を授かった者がいる事も、

全て承知の上だ。そして、それでも尚、諸君等でなければ務まらぬ程

重要かつ危険な配属先なのだ。」

 

 ギーゼン将軍の言葉から並々ならぬ任務である事を察した二人。

緊張からか冬が近いのに顔中に汗が滲む。

 

「将軍、それは…いかなる部署なのでありますか?」

 

 やっとの事で聞き返すエレノアにギーゼンが告げた回答は…

 

「うむ、その部署と言うのはな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陸軍総司令官、即ち私の直属として新設される独立機械化歩兵大隊だ。

諸君等にはその大隊で指揮官任務に従事して貰う。」

 

「「!!!」」

 

 いきなりの大抜擢に思わず叫びそうになり、慌てて口をつぐむ二人だった。

 

「しょ、将軍…それは、我々に直属の部下となれと仰るので?」

 

「そうだ。今度の帝国は間違いなく本気だ。

情報部曰く推定兵力は凡そ40万と見積もっている。

聞けば向こうは今度の戦いを『聖戦』と称し、ユグド教団の教皇庁も

正式に侵攻軍を『対ガリア螺旋軍(=現実世界の十字軍)』と認定したとか。」

 

 5年前を遥かに上回る兵数である。絶望的な数字といえよう。

 

「それだけではないぞ、敵の総司令官はあの『敬虔公』だ。

名前は知っているだろう?」

 

「け、敬虔公?!」

 

 一次大戦以来の軍歴があるエレノアはそのあだ名で誰の事か分かったらしい。

だがウェルキンは何が何だかさっぱりわからない。

 

「あの、将軍!敬虔公とは誰なのでしょうか?!」

 

「何?あの帝国きっての猛者、敬虔公を知らないのか?

前大戦の事を父親から聞いておらんのか?!」 

 

「は、はい…父は前大戦の事を殆ど教えてくれなかったので…。」

 

 そう、彼の亡父ベルゲンは息子には将来の為、

軍談よりもっと大事な事を教えるべきだと考え、

息子に大戦での事は殆ど教えていなかったのだ。その結果がこの様である。

と言う事で、ウェルキンが知っている他国の軍首脳は、

それこそ先の帝国軍総司令官マクシミリアン皇子以外誰もいない。

 

「何だ、そうだったのか。だがベルゲンの性格なら致し方あるまい。

では説明しておこう。通称『敬虔公ハインリヒ』。

本名はハインリヒ・フォン・シュレジエンJr。

 

奴を一言で言うなら、『ベルゲン・ギュンター最大の宿敵』だ。

帝国中部に領土を持つ公爵で、前大戦の際、

ガリア侵攻軍にも従軍していた歴戦の猛者である。

 

奴は全隊員がユグド教徒で構成された戦車中隊の隊長を務め、

かのベルゲン将軍率いる隊とも何度も激突し、

ガリア戦線における帝国軍のトップエースとして名を馳せていた。

敬虔公というあだ名が付いたのはこの時の事だ。」

 

「父の最大の宿敵…!」

 

「そうだ。それが敬虔公だ。今や帝国でも一、二を争う名将と専らの評判だ。」

 

 亡父の最大の宿敵にして、帝国一の将軍が40万の大軍を率いて押し寄せる。

自分の想像以上に事が重大である事を思い知ったウェルキンであった。

 

「それ程の大物が前回以上の大軍で…。」

 

「そうだ。帝国、ひいては裏にいるユグド教団は

それだけガリアを滅ぼしたくて仕方がないのだろう。

こうなった以上、我々も手段は選ばん。その一環として、

我々は諸君の様に先の帝国戦、及びガリア内戦時に卓越した戦功を上げた者、

または全国から猟兵の認可を受けた者の中から特に技量と素行に優れた

将兵と最新の装備を選抜した。」

 

「それが、独立機動大隊と仰るのですか?」

 

「如何にも。尚、参謀本部ではこの大隊を『英雄大隊』の通称で呼んでおる。」

 

「英雄…大隊…。」

 

 随分と仰々しいネーミングに心の中で若干引いた二人だった。

 

「さて、ここまでは良いな?その上で二人に紹介したい者がいる。

諸君等の直接の上官、『英雄大隊』の大隊長となる者だ。副官、中佐を呼べ!」

 

「はっ!」

 

 ギーゼン将軍の声に、副官が即座に動き別室の戸をノック。

別室にいる「中佐」を呼びだす。

 

「中佐、ギーゼン将軍がお呼びである、入り給え!」

 

「はっ…閣下、失礼します!」

 

ドアが開き、一人の士官が入室する。その正体は…

 

「(うお、デカい人!)」

 

 そこにいた「中佐」は身の丈190cm超、雑に撫でつけられたオールバックに

口髭のアラフォー男だった。そして、その顔にエレノアは見覚えがあった。

 

「貴方は…クロウ中佐?」

 

 その名はラムゼイ・クロウ。ガリア軍諜報部所属の中佐で、

帝国戦では懲罰部隊とされた秘密部隊、第422部隊「ネームレス」を預かり、

帝国軍のダルクス人部隊「災鴉(カラミティ・レーヴェン)隊」と死闘を繰り広げた高級将校である。

 

「何だ、知っていたのか。

彼が『英雄大隊』の大隊長を務めるラムゼイ・クロウ中佐だ。

帝国戦での功績を鑑みて、私の権限で連れて来たのだ。」

 

「久しぶりだな、お前さん達とは帝国戦以来だったな。」

 

「エレノア・ポッテルであります。その節はお世話になりました。」

 

「同じく、ウェルキン・ギュンターであります。」

 

「おう。お前さんが世界一の戦車撃破王、

2代目『青い一角獣』か、期待してるよ。」

 

「はい!」

 

「うむ。では副官、例の物を。」

 

「了解しました。」

 

 ギーゼン将軍が副官に命じ、何かを取り出させる。

それは少佐と中尉の階級章、そして二通の辞令だった。

 

「オホン…それでは、エレノア・ポッテル退役大尉。」

 

「はっ。」

 

「大公妃殿下の名において、貴官に本日を以て現役復帰を命ずる。

併せて、少佐昇格の上、独立機動大隊の先任中隊長に任ずる。

よく励んでくれたまえ。(辞令を手渡す)」

 

「了解しました(敬礼)。全力で任務にあたります。」

 

「同じく、ウェルキン・ギュンター退役少尉。」

 

「はっ!」

 

「大公妃殿下の名において、貴官に本日を以て現役復帰を命ずる。

併せて、中尉昇格の上、ポッテル中隊旗下の先任小隊長に任ずる。

期待しているぞ。(辞令を手渡す)」

 

「了解しました!(敬礼)」

 

「では、これより3時間後に陸軍大学のグラウンドにて大隊の結成式を行う。

迎えの車を用意したのでそれに乗って先に行く様に。

私も後から行って、そこで訓示を行う事になっておるのでな。

では、下がってくれ。」

 

「「「了解!」」」

 

 退室しようとしたウェルキン・エレノア・ラムゼイの3人。だが…

 

「おっと、言い忘れていた。

ギュンター中尉には見せたい物が有るので残ってくれ。」

 

 ここでギーゼン将軍はなぜかウェルキンだけを呼び止めた。

 

「え?あ、はい!」

 

「副官、彼を研究開発棟へ案内せよ。」

 

「はっ…。では中尉、付いて来たまえ。」

 

「了解しました…。」

 

 何の理由かは知らないが、研究開発棟に連れて行かれるウェルキンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…

 

 

 アマトリアン基地 研究開発棟

 

「さて中尉、何故ここに連れて来られたか察しは付いているな?」

 

「…大体、見当は付いております。」

 

「うむ。では中に入り、己の眼で確かめるが良い。」

 

 ギーゼン将軍に中に入るよう勧められ、恐る恐るドアを開けてみると…

 

「これは…!!」

 

 そこには、一輌の戦車が置かれていた。

ガリア流の青ベースの塗装がされたその車体は、

被弾面積を最小限に絞る為限界まで小型化、低車高化され、

鋭角的で重厚な傾斜装甲に固められていた。

履帯さえも、装甲板で防護されている。

 

 その上には亀の甲羅のような流線型の砲塔が乗り、

かつてウェルキンが見たこともないより長大で重厚な砲が据えつけられていた。

ウェルキンはその車体を一目見て悟った。かつての乗車に「似ている」。

 

「これは…エーデルワイス号?」

 

「如何にも、これが畏れ多くも公爵家から下賜される次世代戦車、

試製40式機動戦車、通称『エーデルワイスⅡ』だ。」

 

「エーデルワイスⅡ…」

 

「おい大尉、ダモン大尉はいるか?」

 

「ははっ、ここにおります!」

 

 ギーゼンの呼びかけに士官が一人駆けつける。

よく見ると前髪を一房垂らしたオールバックと言う特徴的な髪形だ。

 

「(敬礼)これは将軍、お呼びでありますか?」

 

「うむ、君等は直接顔を合わせるのは初めてだったかな?

彼がウェルキン・ギュンター中尉だ。

この度貴官と共に『英雄大隊』に配属された者だ。」

 

「ウェルキン・ギュンターであります。(敬礼)」

 

「何と!彼があの…私はルドルフ・ダモン大尉。

この度『英雄大隊』旗下の戦車中隊長を拝命した者だ。」

 

「ダモン?はっ、まさか大尉は…」

 

 その名を聞いたウェルキンは嫌な予感を覚えた。

彼の脳内に思い浮かぶのは間抜け面をしたデブのヒゲ親父、

帝国戦当時の陸軍総司令官、無能の代名詞、

故ゲオルグ・ダモン元帥(生前は大将、戦死により特進)である。

そして、その予想は正しかった。

 

「いかにも。彼の父の名はゲオルグ・ダモン。私の同期の鼻つまみ者だ。

だが、勘違いしないで欲しい。彼の通算戦車撃破総数は39輌、

ガリアでこれを超える戦果を挙げたのはギュンター中尉、貴官だけだ。

この意味は解るな?」

 

「……!」

 

 どうやら無能さは遺伝しなかったようだ。心の中でほっと一息。

 

「では大尉。この戦車の開発経緯を説明してやれ。」

 

「はっ、ギュンター中尉は帝国戦の際、かのベルゲン将軍の戦友だった

テイマー技師の最高傑作『エーデルワイス号』で忌々しい…

いや素晴らしい大功を挙げた…。

 

しかし、帝国軍の陸上戦艦との戦いで

エーデルワイス号は大破、ざまあ…いや残念な事に、

完全修復は不可能だったのだが、我々は5年の歳月をかけ、

面倒な…いや万難を排しガリア各地から『テイマーの遺産』とでも言うべき

彼の遺した設計図等をかき集め、エーデルワイス号を現代の技術で蘇らせるべく

余計な…いや、惜しみない最先端の技術と予算をつぎ込んだ。

そして完成したのが…ここにあるエーデルワイスⅡだ。

 

あー、これ以上の説明はめんど…

いや、ここにある諸元表を見た方が早いだろうから、

目を通しておいてくれ。(諸元表を渡す)」

 

「はぁ…では拝見させて頂きます。」

 

 

 試製40式機動戦車「エーデルワイスⅡ」

 

 寸法

 全長   9.00m

 車体長  6.70m

 全幅   3.20m

 全高   2.30m

 重量   42t

 

 機関

 動力   液冷ラグナリンエンジン

 最大出力 840馬力/3,000rpm

 最大速度 60/45km/h(整地/不整地)

 

 乗員   3名(操縦手、砲手、車長兼無線手)

 

 武装

 主砲 :ブレダ工廠 56口径88mm砲「kwk40」×1

 機関銃:マグデブルク工廠 12.7mm機銃「T-MAG39」(砲塔上)×1

     エルマ工廠 7.92mm機銃「ハリケーン37」(主砲同軸)×1

 

 装甲厚

 砲塔(前/側/後/上)  120/100/100/20  (mm)

 車体(前/側/後/上/底)120/100/100/20/30(mm)

 

 主砲貫通力 1km先の鋼製垂直装甲板に対し、155mm程度。

 

 

「あー、オホン。どうだね中尉?

これならば帝国軍の新型戦車が相手でも問題なく戦えよう。」

 

「はっ、ウェルキン・ギュンター中尉、全力を尽くします!!」

 

「うむ。貴官の奮闘努力に期待している。では結成式に備え、

ダモン大尉とギュンター中尉は迎えの車輌にて陸軍大学へ出発せよ。」

 

「「了解しました!」」




 この手の二次創作って、回を重ねていくとその内、
オリジナルの兵器を紹介する回が必要になるのでしょうね…

次回「第4話 結成」
続々集結する懐かしい顔ぶれ、だが、彼等の向かう先には
今までの比ではない激戦が待っているだろう。
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