戦場のヴァルキュリアThe after  Attack of true valkyria   作:ピロッチ

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 さて、いよいよ英雄大隊の結成式。
久々の再開ですっかり変わってしまった者もいるそうです。
果たして、大丈夫なのか?


第4話 戦友集結す

 ランドグリーズ郊外 ガリア陸軍大学敷地内

 

 

「ここか…」

 

 迎えの車から降り、ウェルキンは人生で初めて陸軍大学内に足を踏み入れた。

 

「どれどれ、グラウンドは…こっちか。」

 

 案内図を頼りにグラウンドに集合すると…

 

「隊長さん!久しぶりじゃないか!!」

 

「みんな待ってたのよ、こっちこっち!!」

 

「おう!やっと主役のお出ましか、来ると思ってたぜ!!」

 

「ウェルキン、待ってたのよ!」

 

 何とまあ、そこには懐かしい顔触れがずらりと揃っていた。

 

「ロージー!! ユーノ!! 

それに、ラルゴにアリシアまで!!皆いるじゃないか!!」

 

「も~う、どこ行ってたのよ?!」

 

「御免御免、今度僕が乗る新しい戦車を見せて貰ったんだ。」

 

「何だ、新車のお披露目か、そりゃ外せないな!(笑」

 

 そこにいたのは錚々たるメンバーだった。

ガリアのトップシンガー、ブリジット・”ロージー”・シュタークはもとより、

ラルゴとアリシアの元第7小隊の下士官だった3人は勿論の事だが、

元一般兵にも懐かしい顔が勢ぞろいだった。

 

 例えば、ウェルキンの大学時代の同窓生ユーノ・コレン、

アリシアの友人でエヴァンス社の社長令嬢スージー・エヴァンス、

ネルソン姉妹の姉で戦後に女優デビューしたイーディ・ネルソン。

その他、かつてのメンバーでガリアに残っていた者は皆集結していた。

そして、階級も5年前から1ランク昇格して、

ロージーは軍曹、イーディは伍長、他2名も上等兵になっていた。

 

「元第7小隊の奴は全員一階級昇進の上でこっちの配属だってさ。

俺にもとうとう角が生えちまったよ!…あと、アリシアもな。」

 

「………………。(ジト目でラルゴを睨む」

 

「そ、そんな目するなよ、決めたのは俺じゃねえぞ!」

 

 角が生えるとはガリア軍で軍曹が曹長に昇格する事を意味する隠語である。

ガリア軍の階級章は五角形のワッペンの縁取りとユニコーンの角の数

(将官はユニコーンの翼と角)で表されるが、

この階級章に角のマークが付くのは曹長からの為、この隠語が生まれたのだ。

 尚、尉官であるウェルキンやルドルフには3本、

佐官であるエレノアとラムゼイには4本付いている。

 

「そうだったのか、でも凄いじゃないか!またみんなと一緒に戦えるなんて、

…でも、本当はこんな日は来てほしくないんだけどね。」

 

「違ぇねえ。」「全くだよ。」

 

 そして、懐かしい顔はまだ他にもいた。

 

「よう!しばらくぶりだな隊長さん。俺を覚えているかい?」

 

 そこにいたのは曹長の階級章を付けたダルクス人の中年男。

ウェルキンには片目をつぶる癖のあるその顔に心当たりがあった。

 

「ああ!…ザカ、ザカじゃないか!!」

 

 その名はザカ。かつてのファウゼン解放作戦で共闘した

ダルクス人レジスタンスの一人である。

 

「覚えててくれてよかったよ!

ザカ曹長、今度はお宅の戦車の砲手として一緒に戦わせてもらうぜ!(敬礼」

 

「ああ、勿論だとも!!」

 

 

 

 

 

 一方…

 

「…まさかとは思っていたが、またしてもお前と一緒とはな。」

 

 呆れ顔のゼリ大尉。理由は言うまでもないだろう。

何と2日前に令状を渡したばかりのアバンがいたのだから。

しかも肩口には中尉の階級章が。つまり…

 

「一体全体、どこのどいつがお前に俺の中隊の先任小隊長なんか任せたんだ?」

 

「ああ、基地に付いたらいきなり呼び出されてさ。基地の偉い人から、

『お前は凄い手柄を挙げたから、中尉に昇進の上、

功績を上げた奴だけが入れる部隊に配属してやる』

って言われてここに連れて来られたんだぜ。」

 

「…先行き不安だ。」

 

「そんな顔すんなってゼリ!! G組で一緒だった仲だろう?」

 

「ああ、だから不安なんだ!」

 

 お互い相変わらずである。そこに背後から誰かの声が。

 

「そうだぞ~、久しぶりに会ったんだから、もっと喜ぶ喜ぶ!!」

 

「…おい、俺は2日前にこいつに会ったばかり…って、ああ!お前は?!」

 

 ゼリが振り返りつつツッコむと、そこにいたのは…

 

「「エイリアス!!」」

 

「へへ~ん。私もこっちに来たんだぞー!」

 

 エイリアス。ライトブルーにも見える銀髪と紅い眼を持つ彼女は

欧州において伝説視される超能力者の民族、ヴァルキュリア人の子孫である。

 

 彼女はアバン達がランシールG組にいた内戦当時、

ヴァルキュリアを研究する帝国の科学者、クレメンティア・フェルスターと共に

ランシールの学長ローレンス・クライファートの協力の下、

旧校舎に実験体として秘匿されていたが、同年8月の反乱軍襲撃の後、

非道な実験が明るみに出た事でクライファートは自殺、

フェルスターは逃亡し、行き場を失った彼女は生徒としてG組に入り、

アバン達と共に反乱軍と戦った。

 

 終戦後は特に仲の良かったクラスメイトの一人、

コゼット・コールハースと同居。今では一介の女子高生として生きている。

なお、当時母と呼んでいたクレメンティアの苗字をとり、

今エイリアス・フェルスターを名乗っている。

そして、彼女がここにいると言う事は…

 

「久しぶりね、アバン君!」

 

「コゼット!やっぱりお前もこっちに来てたのか!」

 

 当然、彼女の同居相手であるコゼット・コールハースも。

彼女は卒業後夢だった女医を目指し故郷ユエル市の医科大学に通っていたが、

召集命令を受けた事で休学させられ、後方支援士官として配属された。

 

「こうして3人揃うのは3年ぶりだな!」

 

「まあな。ただ、ここが陸軍大学で、

しかも戦時召集でなければもっと良かったんだがな。」

 

「「それを言っちゃあ、おしまいよ。」」

 

「……………。(ムカッ」

 

「でもエイリアス、しばらく見ないうちに大きくなったな!」

 

「ああ…特に、な…」

 

 ランシール卒業から3年、エイリアスももう16歳になり、

2人が見ないうちにすっかり成長していた。特に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どたぷ~ん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「(何を食ったら、そこまでデカくなるんだ…)」」

 

「ホント凄いよね~。私が今80台半ばだけど、全然違うもん。」

 

 これまで欧州各地の戦いで確認されたヴァルキュリア人がそうであるように、

彼女もまた、とても豊満な体つきになっていた。

「お前のような16歳がいるか」とツッコみたくなるその胸囲は90cmオーバー。

当然、周囲の視線を浴びに浴びていた。

すっかり固まるゼリにアバンが声を掛ける。

 

「おいゼリ、どうした?」

 

「ああ、今のこいつを見てると、ユリアナを思い出してな…」

 

 ユリアナとは当時のA組級長で、ランシール襲撃事件で戦死した

ユリアナ・エーベルハルトの事である。彼女のバストも歳不相応に豊満だった。

そんなゼリを見てアバンはふと何かを閃いたようだ。

 

「…ああ、うん、俺も解るぜ…お前の言いたい事が…」

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、お前は胸のデカい奴が好みって事だな!!」

 

「ザッケンナコラー!」

 

 

 

 その様子を木陰からじっと見つめる女の影が。

 

「羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい…。

 羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい…。

 羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい羨ましい妬ましい悍ましい疎ましい…。」

 

 木陰に隠れてブツブツと恨み言を呟く様は見るからに不気味である。

見かねた兵士の一人が声を掛ける。

 

「あの、何してるんですか?」

 

「ひゃうぅぅぅっ?!!」

 

 いきなり背後から声を掛けられて思わず奇声を上げる何者か。

当然、アバン達にも気づかれる訳で…

 

「君はっ…」

 

「ああ!!フランカじゃないか!!」

 

なんとその正体はかつてのG組同級生フランカ・マルティン。

ゼリ同様内戦後に正規軍に入隊し、

最初から士官として勤務している数少ない人物の一人である。

彼女もまた、士官の一人としてこちらに配属されて来たのだった。

 

「は、ハーデンスにゼリ…大尉、久しぶりね…」

 

「おう! 所でそんな所に隠れて何してたんだ?」

 

「そ、それは…」

 

 さっき声を掛けた兵士がそれに答える。

 

「ああ、こちらの士官殿が、さっきからずっと木の陰で

羨ましいだの妬ましいだのとずっとブツブツ言ってたんで…

気になってしょうがなくてつい声を掛けたんであります。」

 

「?」

 

「ああ、成程な…」

 

 どうやらゼリはその一言で全てを察したようだが、

アバンとエイリアスはさっぱり気づいていない。

 

「ん?ゼリは分かるのか?」

 

「ああ。分かりたくもないがな、確かに分かったよ。」

 

 ゼリとコゼットは覚えていたのだ。

フランカが自分の胸の小ささにに劣等感を抱いていたこと。

同時に、そしてそれを指摘されると激怒する性分だと言う事に。所が…

 

「そうか…その…何だ、元気出せよフランカ。

人間、大きけりゃいいってモンじゃないからさ。」

 

「「あ…」」

 

 ド天然の代名詞なアバンが全てぶち壊しにしてしまった。

アバンはアバンなりに励ましの言葉を掛けたつもりだが…。

 

「……………。」

 

 フランカは俯いたまま動かない。

泣かせたと勘違いしたアバンが駆け寄るが、決して泣いていた訳ではない。

 

「ハーデンス…。」

 

 顔を上げたフランカは顔を赤らめつつ、思いっきり怒っていた。

 

「フランカ?」

 

「この…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スパパパパパパパパーン!!!!!!!

 

「アババババババババーッ?!!!!!」

 

 哀れなド天然、アバン・ハーデンスは平手打ちの連打を浴びた。

 

「(うわ~…。)」

 

「もう知らない!!」

 

 そう言い残し、フランカはすたすたとその場を後にした。

 

「アバン…お前って奴は…」

 

 張り倒されてぶっ倒れたアバンに呆れて声を掛けるゼリ、

しかしアバンの口からは斜め上の一言が。

 

「うう…フランカの奴、身長の事で…

あんなに悩んでたのか…後で謝らないとな…(ガクッ」

 

「………。(アバン、お前はどこまでバカなんだ??)」

 

「???」

 

 結局エイリアスは最後まで何のことか気づかずじまいだった。

そして、その様子を遠巻きに見ていたエレノアが一言。

 

「あの青年、まるで昔のラルゴね…」

 

 何があったんだこの夫婦。

 

 

 

 

 

 そして、独立機動大隊『英雄大隊』の結成式が始まった。

会場となった陸軍大学講堂には陸軍の高位幹部が大勢参加し、

一番のVIP、ギーゼン将軍も最後に会場入りした。

 

「これより、本大隊結成にあたって陸軍総司令官、

ウォルフガング・グスタフ・ギーゼン閣下より訓示がある。一同、起立!」

 

 司会役のラムゼイの声でその場にいた全員が立ち上がる。

そして、ギーゼン将軍が壇上へと上がる。

 

「諸君。知っての通り、東欧帝国連合は帝国一の将とその名も高き

敬虔公ハインリヒ2世以下40万の大軍で以てガリアへの再侵攻を企てている。

そして、帝国の膝下にあるユグド教団はこの戦いを『聖戦』と称し、

彼等はヴァルキュリアの加護を得ていると公言して憚らない。

 

彼等に一つの明確な目的がある事は明らかだ!

全ての人間が民族や家柄に束縛される状態を『秩序』と呼び、

歴史の真実を神の名を騙って覆い隠し、歪曲する事を『正義』と称し、

今一度ガリアに…否、全欧州に押し付けんとする事である。

 

しかし、臆してはならない!!その様な秩序も正義も我等には不要である!!

帝国と教団がそう言い張るのなら、我が国も断言しよう。

彼等が自身を正しいと信じるなら、我々も等しく正しいのだと!!

 

これはコーデリア女公殿下の、そしてガリアが目指す理想でもある!

我が国が『民族や家柄等に束縛されず、誰しもが対等に共存できる』

世界の先駆けとなる事を陛下は望んでおられる。

例え他国全てが誤りと断言しても、我らは断じて屈しはしない!

 

その結果、万国の万人が認める正義が、ひいては全人類が敵に回ろうとも、

ガリアの民を脅かす物に対しては、我等は如何なる状況でも断固戦うべし!!

何故ならば、我等こそガリアの国土、国民を守る唯一の砦だからである!!」

 

 ギーゼン将軍は言葉を一旦区切り、大隊長ラムゼイ以下の隊員を見渡す。

そして再び口を開いた。

 

「諸君等はこのガリア公国より集められた公国史上最精鋭の部隊の一員として、

公国史上稀に見る過酷な任務に従事しなければならない立場にある。

その過酷さは、前大戦での特殊部隊『第422部隊』をも上回るやも知れん。

 

だが、諸君等はかつての戦いで大功を上げた

欧州一の精兵であると私は確信している。

故に、我々はここに諸君等を結集したこの大隊を立ち上げる物である。

 

私が諸君等にできる事は、精々こうやって激励する事と、

任務を言い渡す事くらいだろう。だからこそこれだけは言っておこう…

精強なる隊員諸君、一人でも多く生きて還って来い。…以上!」

 

 

 

 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

 

 ギーゼン将軍の言葉に、周囲が歓声で答えた。

 

「ゼリ!!帝国の奴らにもう一度ギャフンと言わせてやろうぜ!!」

 

「ああ、当然だ。俺たちは戦場なんかで死ぬべきじゃない!!

明日もその次の日も、生きて戦い抜こう!!」

 

「頼んだぜ、中隊長!!」

 

「おう!!」

 

 

「ふっふっふ…とうとう時が来た。このルドルフ・ダモンが大功を挙げ、

父上の雪辱を、そして誇り高きダモン一族の栄光を取り戻す時が来たのだ!!

帝国の奴らめ、目に物を見るが良い!!」

 

「……ねえウェルキン、さっきからあの人、独りで何を話してるのかな?」

 

「アリシア、近寄っちゃダメだ。

あの人は『あの』ダモン将軍の息子さんなんだ。」

 

「うわぁ……。」

 

 

「…まさか夫婦になってまで、一緒に戦うことになるとはね…」

 

「おうよ、『少佐殿』。くたばる時は一緒だぜ。 」

「ああ、解ってる…。だが、皆で生きて帰ろう。

私達も、そしてあの隊員達も。」

 

 かくして、後に公国史上最強と謳われる『英雄大隊』はここに結成された。

この時、この場にいた誰も想像もしていなかっただろう。

自分達がかつての帝国戦とは比較にならない、

正真正銘の修羅場に身を投じる事になってしまった事を。




 あれ?クルトとクロードは?と言う人に言っておきます。
クルトは亡命したので今ガリアにはいません。
クロードも今は所要でエディンバラにいます。
彼等が合流するのは、恐らく作中の暦で年をまたいでからになるでしょう。

 次回「第5話 怨敵蠢動す」。
ガリアへの再侵攻を企てる帝国の思惑と、
そしてガリアに襲い来る敵、敬虔公が姿を現す。


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