戦場のヴァルキュリアThe after  Attack of true valkyria   作:ピロッチ

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第7話 今一度の戦場へ

 その頃、ガリア中部国境、バリアス砂漠東端の地方都市セピエンヌ市では…

 

「早くしろー!帝国軍が来るぞー!」

 

 帝国軍の進撃に備え、住民が避難の真っ最中だった。

と言っても既に女子供は粗方避難済みで、

残っているのは大型の荷物を積み出し中の男手が殆どなのだが。

 

「おーい、そっちは終わったか?」

 

「おうさ、コイツが最後の一台だ!」

 

「よっしゃ、そうと決まれば早いとこずらかるぞ!」

 

 どうやら、積み出しは間に合った様だ。

街のそこかしこからトラックやら自家用車やらが逃げ出していく。

 

「やれやれ、何とかギリギリ間に合ったなぁ…、んん?おい、何か変だぞ…」

 

「んん、どうかしたか?」

 

「何か、暗くなってないか…?」

 

「暗いって、そりゃもう夜なんだから、暗いのは当たり前だろう。」

 

「いや、夜っつっても今日は満月だぞ、にしては月明かりが…

って、おい、あれ見てみろよ!」

 

「おい、どうした…って何だーっ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「月が、欠けていく…!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何と、月食でもないのに月が欠けていく。

他の市民達も異変に気付き、空を見上げながら押し黙る。

 

「「「「「……………。」」」」」

 

 やがて、謎の影が月を八割方隠したところで、

誰かが異変の正体に気付いて叫んだ。

 

 

 

「ああ!ありゃ飛行船だ!」「飛行船?!」「おい、飛行船って何だ?」

 

「知らんのか?飛行船って言やあ、空飛ぶ船じゃろ。」

 

「爺ちゃん、それじゃ説明になってないよ~。」

 

 直後、セピエンヌ中のサーチライトが点灯し、飛行船を照らし出す。

 

「で、でけぇ…一体何しに来やがったんだ?」

 

「なあ、何か鳥のようなマークが見えなかったか…?」

 

「鳥…?ああ本当だ!あれ?よく見ると頭が2つ…!!」

 

「頭が2つの鳥…それって、まさか…?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双頭鷲(ドッペルアドラー)!!帝国のマークだ!!」

 

 周囲も謎の影の正体が飛行船、

それも帝国製の飛行船だと気付き、再びざわめきがあたりに広がる。

 

「おい、何だよあれ…?凄いぞ、何だよ?!」

 

「見ろ!1隻2隻じゃないぞ、何隻いやがんだよ…」

 

上空を見ると、飛行船が後から続々と集結しつつあった。

 

「おい見てみろ、あれ…!」

 

「ああ!帝国のマークだ!」

 

「と言うか、何てでかさだ…

100、200mって話じゃないぞ、もっとでかい!!」

 

「おい、こっちだ!!早く写真写真!!」

 

 この時、彼らは重大な誤りを犯していた。 

それはその光景に見とれることなく、一目散に逃げ出さなかった事である。

 

「な、なあ…あれ、帝国の飛行船なんだろ?

ひょっとして、こっちを攻撃して来たりしないか?」

 

「あっ……やばい!速く逃げ…」

 

 市民の誰かがそこまで言いかけた瞬間、

飛行船の目的は向こう側から明かされることとなる。

 

 

 

 

 

 

シュッバァァァァァァアアアアアアッ!!

 

 

 

 

 

 突如飛行船が轟音と共に光り輝く。そして、周囲に火の玉をまき散らした。

 

「わあ!飛行船が!!」

 

「まさか、火事?! …いや違う!!」

 

 その通り、飛行船は普通ヘリウムガスで浮くもの。

ヘリウムガスは不燃性、爆発事故など起こしようがない。

何より、周囲にまき散らされた火の玉は…

 

「あら、あの火の玉、なんかこっちに来ないか?」

 

「え?」

 

 そして、セピエンヌ市民は己の過ちのつけを払うこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ズッドオオオオオオオオン!!!!

 

 

 

 

 

 

「ぎょわぁぁぁああああ!!!」

 

 火の玉の一発が建物に触れた瞬間大爆発を起こす。

もう解っただろう、彼らが火の玉だと思ったのはロケット弾の噴射炎だった。

それを皮切りに、そこかしこにロケット弾が着弾。

あっという間セピエンヌ市全域に阿鼻叫喚の地獄が現出した。

 

「な、何だ~~!!」

 

「ひゃあ、大変だ!! 空襲だ!!空襲だー!!」

 

 飛行船団の正体は言うまでもないだろう。

帝国軍の爆撃隊群が、大量の大型ロケット弾と爆弾を満載し、

夜陰に乗じて国境近辺の町を空襲しにやって来たのだ。

 

 

 

 

 一方その頃、ガリア首都近郊のアマトリアン基地では、

英雄大隊の各兵員の小隊及び分隊への割り当てが完了し、

小隊ごとに開戦前の最後の訓示の真っ最中だった。一例を挙げると…

 

「良いか!オレが今度お前等を率いる第二(ゼリ)中隊先任小隊長、

アバン・ハーデンス中尉だ!!オレの小隊に入ったお前等がやる事は簡単だ!!

この中に一人、ヘルメットにライオンのマークを付けてる奴が居る!!

そいつが先頭に立つからお前等はそいつに遅れないように戦え、良いな!!」

 

「「「「「う、うっす!!!!(ライオンのマーク…?)」」」」」

 

「あー、隊長殿?ちょっと質問なんですがね。」

 

と、ここで一人が手を挙げた。

 

「おう、野菜のオッサン!どうした?」

 

 挙手したのはラルゴだった。彼は曹長に昇進し、

アバン小隊の小隊先任下士官に任じられていた。

若干砕けた口調なのは下手をすれば親子ほど年の離れた若き上官への

ちょっとした悪戯心である。尤も、アバンはそんな物気にしていないが。

(というか気付かない。)

 

「この中にメットにライオンのマークが付いた奴は一人もいませんぜ。

隊長殿の仰る突撃野郎ってぇのは一体どこのどちら様で?」

 

 そうなのだ、ライオンのマークがついたヘルメットなど

どこにも見当たらないのだ。だが、答えは極めて簡単だった。

 

「ああ、そいつはな……」

 

 アバンが背後に隠し持っていた自分のヘルメットを掲げて言い放った。

 

「このオレだぁ!!」   

 

 そこには堂々と描かれた赤いライオンの横顔が。

亡兄レオンの二つ名「赤獅子」の継承者であるアバンに相応しい

パーソナルマークである。

 

「これで分かったな!お前等オレを信じてついて来い!いいな!」

 

「そいつは頼もしいぜ、お前ら聞いたな!隊長殿に遅れないように戦えよ!!」

 

「「「「「うっす!!!!」」」」」

 

 と、こういった様子であった。

 

 

 

 

「ポッテル中隊、ゼリ中隊、ダモン中隊、大隊本部共

車輌は最終チェック終了、兵員も全員整列済み…」

 

 こちらでは英雄大隊を率いるラムゼイを初め、

各隊の士官が出撃前の最終確認の最中である。

 

「よし、これでいつでも出撃可能だな。さてと…」

 

と、ここで伝令の下士官が報告にやって来た。

 

「失礼します!ギーゼン将軍がお見えになりました!」

 

「何、将軍が?分かった、通してやれ。」

 

「了解!」

 

程なくして英雄大隊の直属の上官、ギーゼン大将が会議室に入って来た。

 

「あー、クロウ中佐、出撃準備は万全かね?」

 

「おお、これはこれは。(敬礼)本大隊はたった今出撃準備が完了しました。

いつでも作戦行動可能です。」

 

「そうか、それは何よりだ。」

 

「どうか…なさいましたか?」

 

「うむ、今入った報告でな、バリアス東端のセピエンヌ市から

『帝国の国章を付けた飛行船の船団が向かってきた』と連絡が有ったのだ。」

 

「飛行船団…!規模はどの位なのでありますか?

規模によっては単なる偵察の可能性もありますが…」

 

「通報に依れば船団は大小合わせて40隻前後らしい。

間違いなく帝国軍の侵攻の先触れであろう。」

 

「40隻!帝国の編制で言えば分艦隊規模ですな。」

 

「失礼します!!将軍、セピエンヌ市の飛行船団について最新の報告です!!」

 

「うむ。(報告書を受け取る)………!!!」

 

「如何されました?!」

 

「何と言う事だ…まさかここまでやるとは…

飛行船団は大規模なロケット弾攻撃で市街地を無差別攻撃中だ。

避難中の市民に死傷者が出ていると言う。」

 

「無差別攻撃…て、帝国の奴等何て事を!!」

 

「ぐずぐずしてはおれん、早速英雄大隊に命ずる。

諸君等は速やかにセピエンヌ市へ向かい、現地の防衛戦力と協力して

向かってくるであろう帝国軍の先鋒部隊を迎撃せよ。」

 

「…了解しました!」

 

 

 

 同時刻、ガリア侵攻軍総司令部では…

 

「閣下、各爆撃分艦隊から報告が入りました。

先制攻撃は成功。目標の都市からの反撃は皆無につき損害なしとの事です。」

 

「うむ、よろしい。」

 

「尚、メクレンベルク将軍から

『もうじき弾薬が切れる為一旦補給し、再度攻撃をすべきか』

問い合わせが有りました。いかが致しましょう?」

 

「よかろう。補給完了次第第二次攻撃を許可する。

但し攻撃目標は都市ではない。向かってくるであろうガリア軍の迎撃部隊だ。

メクレンベルクには『空中艦隊は各軍団司令部と無線での連携を密にして、

迎撃部隊を発見次第空爆できるように空中で待機する様に。』と伝えよ。」

 

「ははっ。」

 

「よし、その間に地上部隊を前進させる。

先鋒は、そうだな…リューター連隊にやらせよう。

確か、連隊長のリューター中佐は前回のガリア攻めにも中隊長として

従軍経験があるはず。ならばガリアの地理にも明るいだろう。」

 

「では、そのように。」

 

「うむ、それでは前進する!ユスティジア軍団にも前進を命じろ!」

 

 

 かくして征歴1940年10月31日、東欧帝国連合はガリア公国に正式に宣戦布告。

後世に第3次ガリア戦役と称される戦いの幕が開かれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「叔父御殿、諜報監部より報告があった。

『東欧帝国ハ31日午前0時ヲ以テがりあ公国と交戦状態ニ入レリ』との事。

奴等、本当に攻め込むとはな…。」

 

 立ち上がれば身の丈2mを超えるだろう堂々たる巨漢が「叔父御」に報告する。

 

「ふむ…あの新興国め、性懲りもないな。」

 

 叔父御と呼ばれた初老の男の返答に、辮髪に口ヒゲの老人が続く。

 

「所詮は人と猿の見分けも出来ぬ阿呆共の治める国…

この期に及んでまだガリアなどと言う些事に拘わるとは笑止千万。」

 

「うむ、そうじゃの。」

 

 初老の男の合いの手に続き、総白髪の青年が言葉を続ける。

 

「聞けば総大将は敬虔公ことシュレジエン公。ガリアにとっちゃ、

こいつは正に窮地以外の何物でも無ぇな。」

 

「確かに…だがレギンレイヴ連れは判断を誤り、

自ら機甲戦術の先進性を捨てておりまする。」

 

「うむ。しかしシュレジエン公を初め一部の軍人は

機甲集中運用を未だに支持していると言う。

恐らく、此度の戦で機甲集中運用の復権を目論むのであろうな。」

 

「仰る通りです。ですが、我が方も既に

『皇軍野外教令』の教えが全軍に浸透しております。

今や奴らは敵ではありませぬ。」

 

「例の西住家が完成させた次世代戦闘教義だな。本当に上手くいくのか?」

 

「間違いありません。これへの対処など彼のビンランドにも出来ますまい。」

 

「そうだ、後は伯父貴の決断次第だ。」

 

「左様か、そち達が言うのならそうなのだろう…良し!」

 

 初老の男が立ち上がり、宣言する。

 

「天命の時は来た!予てからの予定通り、

年明けを以て我等は『欧州仕置』を断行する!!」

 

「「「おお!!」」」

 

「行けい!汝等三元帥の武を以て欧州を滅ぼし、

真実の光明を以て苦悶の内に死せしめよ!!」

 

「「「ははーっ!!」」」

 

 欧州のあずかり知らぬ所で、破滅と絶望は静かに始まっていた…。

最早、欧州の何人も逃れる事は出来ない。




 開戦前夜編、これにて終了です。
今回登場した地方都市セピエンヌですが、勿論原作ゲームには登場しません。
セピエンヌの名前の由来は、初期設定のステージ名「セピエンヌ解放戦線」
から採らさせて頂きました。

 尚、重大な報告が有ります。詳細は活動報告をご覧ください。
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