ダイスを振ってクロスオーバーの転移主人公を決めた。 作:ジム・ビム
主人公の年齢でツッコミが入りましたので軽く説明します。
まず主人公が転移前にいた世界では、人類の寿命は約300歳となっております。
なので今回の独白にさらっと10年20年流れたという描写がありますが、現実換算で2年3年の月日が立ったという事と同じ意味であると思っていただければいいです。
振り返れば、私の歩んできた人生は幸運にあふれていたのだろう。
だが、その幸運が私に幸せを運んでくることはなかったとも思う。
コーカイテに忠を誓う者たちは、これで一族の将来は安泰だと、そうはやし立てていた。
しかし、父と母は私を嫌った。
20年先に産まれていた兄がいたからだ。
長男もまた騎士の力を有してはいたが私ほどの力ではなく、だけども父も母も兄に多くの愛を注いでいた。
赤子の時分から全ての世話は使用人に行わせ、ただの一度も私を抱きしめることはなかったという。
「黒華鼎を継ぐのは長男でなくてはならない。」
言葉には出さなかったが、父と母は態度でもって私にそう伝えた。
私を育てた使用人は、憐れみの色を魅せる目で私を見ていた。
しかしそこに愛は無かった。
私も使用人より親の愛が欲しかった。
幼い私は、こちらを見ようともしない親の気を引くために騎士の修行と勉学に励んだ。
大人の騎士に教えを乞い、毎日剣を振るい、多くの書物を読み、知識を貯めこんだ。
だけども、そんな努力の成果を見せる機会すら、私から遠く離れて暮らす両親は作らなかった。
私はそれを自分の努力が足りていないのだと錯覚し、よりいっそう勉学に励んだ。
自分が望めばどのような書物も師も用意して貰ったこともあって、その錯覚は中々解けなかった。
その頃の自分は確かに愚かだったが、その努力が今の自分を構成していると思えば無意味ではなかった。
けれども、10年、20年と時がたつにつれ私の錯覚は徐々に解けていった。
30年もたてば、私は親から必要とされていない、望まれない子だったのだと理解した。
理解したが、諦められなかった。
一度でいい、ほめて欲しい。
よく今まで頑張ったと、その一言があればよかったのだ。
結論から言えば、その思いは伝わることはなかった…。
自身が望まれない子だと理解してもなお、私は修行と勉学に打ち込んだ。
私にはそうすることしかできなかった。
兄はこの30年の間、学校へ通い、社交界へお披露目をし、多くの友を得たという。
私には同年代で親しい友などできなかった。
両親が私の出生をA.K.D.に隠していた事を知ったのは、サリオン王子の反乱に巻き込まれた両親と兄が死んだ時だった。
世話役の使用人が隠れてその話をしていたのを、偶然聞いてしまった私は悲しみと絶望に襲われ、そして一つの事実に気が付いた。
私は、親の顔を、知らない。
名は知っている。どういった家系かも知っている。
しかしどんな顔をして、どんな物を食べて、どんな暮らしを送っていたのか。
写真の1枚すら送ってこなかった両親の事を、その両親の愛を受けて育った兄の事を、私は何一つとして知らなかった。
私は涙を流しながら笑った。
狂ったようにゲラゲラと笑った。
両親の事も、兄の事も、何一つ知らずに盲目的に信じた自分が溜まらなく可笑しかった。
私は屋敷にあった紙幣と宝石を全て持って外へ出た。
親の事も家系の事も、全てがもはやどうでもよかった。
こんな屋敷を出て、どこかへ消えてしまいたかった。
幸運だったのは偽名を使って、他国の騎士に師事しにいったことが何度もあったことだ。
その際に使っていたパスポートも期限が切れておらず、一人で行くこともあったため他の星に行くことに抵抗はなかった。
また出生の報告がされてなかったこともあって、私がA.K.D.の王族であることは屋敷の使用人しか知らなかった。
例え使用人が私のことを上に報告しようが、本当に
私は、【ラトーリス・
そして私はパスポートに書かれていた名前、【リリーマ・フォン・トラス】となった。
こうして他国へ渡り、星から星へ、街から街へ流離う旅人となった。
幼いとはいっても十分な修行を積んだ騎士である。
私の身柄を狙ってきたゴロツキでは捕まえられず、逆に打倒して金を奪っては路銀のたしにしていた。
とはいえ、あまり派手に動くと懸賞金をかけられて狙われかねない。
襲われてもほとんどの場合は逃げに徹していた。
逃げる理由は他にもあった。
裏社会で動く腕利きの騎士だったり、バイターだったりと、治安の悪いところに行くとそういった自分では叶わない輩に襲われることも多かったからだ。
そういった旅を続けていたある時、安全だと思われていた宿を強襲され囚われたことがあった。
惑星カラミティ・ゴーダースの荒野にある街での出来事だった。
宿の主人が裏社会に通じており、一人で止まりに来る客を仲間の騎士と共に襲い、身ぐるみを剥いでは荒野においてけぼりにするあくどい商売をしていたのだ。
私も同じ理由で狙われ、奴隷として売る目的で捕まえられたのだった。
私は大きく抵抗しなかった。
元々目的もなく、ただ流離い―――今もそうではあるが―――死に場所を探していたのだ。
奴隷にされ、滅茶苦茶にされても別によかった。
しかしここでもまた運が巡ってきた。
以前身ぐるみを剥いだ客がフィルモア帝国の政府関係者で、運よく生きて帰った彼が警察へ宿の情報を流したのだ。
結果、私は身柄を売られる前に派遣された騎士警察官が強制捜査で踏み込み、主人と仲間の騎士は逮捕された。
私は無事に解放されたが、身寄りがいない子供の騎士ということでフィルモア帝国が保護を申し出てきたのだ。
いや、保護というより、確保と言ったほうがよかった。
フィルモア帝国にも3回ほど修行しに行ったこともあり、私のことを覚えている騎士がいたのだ。
私はその騎士の養子に入り、フィルモア帝国へ身を寄せることになった。
フィルモアでの生活は悪くはなかった。
親となった騎士はあくまで騎士の力を欲していたということもあり、あくまで保護者として接し、親として接することはなかった。
私はそういった関係になって感謝した。
親として接されるのが怖かったからだ。
学校にも通った。
たまに遊ぶ程度の友を多く得た。
心を許す親友を作ることはなかった。
やがて成長した私は正式に騎士となり、フィルモア帝国の誇るカンプ・ノイエシルチスの黒へ入ることが許された。
ギエーム・アイアン博士の作ったファティマ【オルトリーベル】を娶った時は私にお似合いだと思った。
GTM制御はぴか一だが、演算能力の幅は狭い。
単独行動に向いており、集団戦闘には向かないその能力は、今まで一人で生きてきた私そのものだった。
ノイエ・シュバルツでの日々は良かった。
周りの全員が騎士であり、ノイエ・シルチスに選ばれる実力者ぞろいだったこともあり、修練にもより熱が入った。
任務も確実にこなし、ノイエ・シュバルツでも有数の実力者と見られるようになった。
GTMガーランドの資格は取得しなかったが、幼少期に蓄えた知識を生かして整備にもよく参加した。
おかげで整備員からの覚えもよかった。
そういった日々を送っていたが、やがて大きな戦争が起きた。
任務は制圧した土地の防衛、楽な任務だと思ったが、その日の夜に謎の大部隊と戦闘となった。
数で劣る我が部隊を逃がすために単騎で殿を務め、GTMの損傷も軽微に抑えて撤退していた。
夜間での戦闘、こちらを包囲してくるGTM、それらの対処でくたびれた私は、突如として目の前に現れた白く輝く鏡に対処できなかった。
そして私はその世界から旅立った。
私は幸運だった。
私は不幸だった。
愛ってなに?