ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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難敵への挑戦、再び

 

 

 

 

 それはある日の事。

 

「ふんふふ~ん………」

 

 ランスが気ままに魔王城内をぶらついていると、とある魔人の後ろ姿が目に入った。

 

「お、シルキィちゃん」

「っ!」

 

 そう声を掛けた途端にびくっと、彼女は大袈裟な程に肩を跳ね上げる。

 

「……ふふふ」

 

 そしておもむろにこちらをふり向くや否や、何故か意味深な笑みを浮かべた。

 

「……もう慌てる必要も無いわね。こんにちは、ランスさん」

「おう……って、慌てるって何の事だ?」

「ううん、別に何の事でも無いの。だって何も無かったんだからね」

「あー、もしかしてここ最近君の様子が変だったけどあれの事か?」

「……まぁ、ね。私ったらちょっとおかしな思い違いをしちゃってて」

 

 あぁ恥ずかしいわ、と呟きながら、シルキィは片手でそっと頬を押さえる。

 

「……昨日ね、シィルさんからとても興味深い話を聞いたんだけど……何でも今の世の中には『避妊魔法』なんてものがあるらしいじゃないの」

「あぁ、避妊魔法な。俺も普段からシィルに掛けさせている魔法だが」

「そうよねぇ! さすがのランスさんでも避妊魔法は使っているわよねぇ!」

「そりゃ使っているが……それがどうしたのだ?」

「いいえ? 別にどうしたって事は無いの。ただその、便利な時代になったなぁと思って……」

 

 あぁなんと素晴らしき避妊魔法。なんと素晴らしき人類の英知の進歩。

 シルキィは何やら年寄りじみた事を言いながら、実感の籠もった様子でこくこくと頷く。

 

 それはこの魔人四天王が、そしてあの魔人筆頭が抱いてしまったとても恐ろしい疑念。

 だったのだが、しかし避妊魔法の存在を知った事で問題はあっという間に解決。シルキィはようやく普段通りの様子でランスの前に立つ事が出来るようになったのだった。

 

「……けど本当に良かったわ。ランスさんがそういう所は常識を持ち合わせている人で」

「なんだそりゃ。それではまるで俺様が常識の無いヤツみたいではないか」

「まぁ……その、ね。けど本当に、私もホーネット様も色々と大変だったんだから」

「そういや最近はホーネットの様子も変だったな。前はイケた脱衣所でのセックスもここ数日は駄目だ駄目だの一点張りだったし」

 

 ランスがそんなセリフを口にした途端、シルキィは「んっ!」と喉を詰まらせる。

 それはあの日、すでに当の本人の口から直接聞いている話。しかしそうと知っても尚大きな衝撃を与えてくるような話で。

 あの時は直後により大きな爆弾発言を受けた事で思考がそちらに向いてしまったのだが、改めて考えるとその点にも気になる事があるような。

 

「そう言えばランスさんって……ホーネット様ともそういう事をしちゃったんだって?」

「セックスの事か? 勿論したぞ、そりゃもうメチャクチャに、ハチャメチャにしたな」

 

 改めて聞き直してもランスは包み隠さず堂々と、むしろ少し自慢気にそれを語る。

 

「ここまで長らく掛かったがな、俺様は遂にあのホーネットを抱いた男となったのだ。どーだスゴいだろう、がははは!」

「……そうねぇ、凄いかどうかって言われると……間違いなく凄い事だとは思うんだけど……」

 

 果たして諸手を挙げて賛辞すべき事なのか、シルキィとしてはとても複雑な心境である。

 あのホーネットが誰かと一線を越える。それはホーネットの自由意思で決める事であって、他人が口を挟む問題は無いと重々承知している。

 特に自分はその事に関しての相談をホーネットから受けた事だってある。あの時深く悩んでいたホーネットの姿を思い返すと、事情はどうあれ一歩踏み出せた事は良い事なのかもしれない。

 

(……けどねぇ、ホーネット様もランスさんとそういう事をしちゃったって事は……)

 

 とはいえあのホーネットが一線を越えた。そしてそのお相手はやっぱりランス。

 するとホーネットも、そしてサテラも、そしてハウゼルも、そして勿論自分も。ホーネット派に属する女魔人全員がランスと肉体関係を持つ事になったという事で。

 

(……良いのかなぁ、こういうのって。ランスさんと出会ってすぐにそういう事をする羽目になっちゃった私が言えた事じゃないんだけど……)

 

 真っ先にその魔の手に掛かった我が身を振り返りながら、シルキィはその心中で嘆息する。

 竿姉妹。という卑猥なキーワードについては存じ上げない彼女であっても、そういった関係性になっている事は分かる。そしてそういった関係は良からぬものであるという事も。

 

(……真っ先にそうなった私はともかく、ホーネット様は知っててそうしたはずだし……ホーネット様が何も言わないなら私が変に気にするような事じゃないのかしら。……けど、うーん……)

 

 たとえ複数人と肉体関係を持った所で、ランスという男がちゃんと避妊をしていた以上、妊娠などの問題が生じる訳では無い。

 残るは倫理的な問題なのだが、それだって言ってしまえば人間世界でのルールの話。人間世界で構築された倫理観にここ魔物界で縛られる必要などあるのだろうか。

 

 ……などと、言い訳しようと思えば釈明の言葉は沢山浮かんでくる。

 とはいえ真面目な性格のシルキィにはそのように開き直る事など出来ないし、同じように真面目な性格の者が多いホーネット派魔人達、他の皆の胸中は如何ばかりか。

 

「……はぁ。なんて言ったらいいのか……本当に困ったものだわ……」

「なんだ、何か悩み事か?」

「うん。主に貴方の事で。……というかランスさんは悩みが無さそうでいいわね」

「まぁな。俺様にとって唯一の悩みだったホーネットの問題が解決したからな。こうしてホーネットを抱いたという事はだ、俺様は遂に──」

 

 ──ホーネット派の魔人達を完全制覇したのだ、がははははーっ!

 みたいな感じで、大笑いを上げようとしたランスだったが。

 

「──ん?」

 

 その時、何か強烈な違和感を覚えて。

 

「……あああーーーー!!!」

 

 すぐにその違和感の正体に気付き、驚愕の叫びを上げた。

 

「ど、どうしたの? 急に大声を出して」

「……忘れてた。まだあいつとのセックスを達成してねーじゃねーか」

 

 それを忘れていた自分自身にびっくりしたのか、ランスは唖然とした様子で呟く。

 

 自分は念願の末に強敵たる魔人筆頭を倒した。

 しかしこの魔物界における強敵は魔人筆頭だけでは無く、もう一人存在している。

 それはラスボスの裏に潜む隠しボスの如き相手、強烈な眠気を纏うあの魔人が。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 という事で、すぐさまランスはその隠しボスの家までやってきた。 

 ピンポーン、とチャイムが鳴らされ、ととととっと玄関まで足早に向かってくる音。

 

「いらっしゃい、ランス」

「おうワーグ、久し振りだな」

 

 出迎えてくれたのは小さな背丈、常日頃から厚地のコート姿の少女、魔人ワーグ。

 

「わーいわーい、ランスが遊びに来てくれたー!」

 

 そしてその隣には彼女の本心を代弁するペット、夢イルカのラッシーの姿。

 その言葉通り内心凄くハッピー、友達が遊びに来た事にとても嬉しがっているワーグなのだが、そこはそれ。あくまで表面上はそうとは見えないすました表情、それが乙女心というものである。

 

「……なんかこのイルカ、最近俺様に懐いてきてねーか?」

「そうね、前に何日間も一緒に旅をした事が影響しているのかも。けどランス、ラッシーは危険な生き物だから触ったりしちゃ駄目よ」

「え、コイツって危険なん?」

「そうよ。魔人の私じゃないとペットとして飼う事なんて絶対に出来ないわね」

「……へー、見かけによらないっつーかなんつーか……てかそういう事はもっと早く言えよ」

 

 随分と今更な指摘に驚きながらも、ランスはすたすたと進んで食卓の椅子に腰を下ろす。

 この家に来た回数はもう10回以上、すでに勝手知ったる他人の家のようなものである。

 

「なぁワーグ、何か飲むもんくれ」

「分かった、ちょっと待ってね」

 

 ワーグは冷蔵庫の扉を開いて麦茶を取り出し、二人分のコップに注ぐ。

 それをランスの前に差し出すや否や、すぐに手が伸びてきてゴクゴクと喉を鳴らしていく。

 

「……ぷはー、生き返るー。ここまで急いできたから喉が渇いていてな」

「急いで来たって? なにか急用でもあるの?」

「急用っつー訳でも無いのだが……まぁアレだ、早くお前に会いたかったのだ、がはははは!」

「……そう」

 

 途端にワーグはすすっとそっぽを向く。

 それは照れ隠しの仕草なのだが、そうして横を向くと普段真っ白なその頬が如実に赤くなっているのがよく見える。ランスからしたらむしろ分かりやすいアピールである。

 

「そう言えば……あの子の様子はどう?」

「あの子?」

「ほら、前に私達がレッドアイの下から助け出してきたあの子よ」

「あぁ、ロナの事か。そーだな、あの時よりも大分健康にはなったはずだぞ。まだちょっと色々な面で治療が必要だから今はこっちにはいないのだが、その内元気になったら会えるだろう」

「……別に元気ならそれでいいのよ、わざわざ会う必要までは無いわ。あの子が私の眠気に耐えられるとは思えないしね」

「そか。まぁロナの事は置いといてだな……」

 

 前置きの世間話はこれくらいにして、そろそろランスは本題に入る事にした。

 

「……実はなワーグ、俺様はついこの前まである難攻不落の山にずっと挑んでいたのだ」

「難攻不落の山? 翔竜山にでも登ったの?」

「翔竜山か、まぁ似たようなものだな。とにかくその山はとても険しい山だったのだが……この度ようやく頂上に辿り着いたのだ」

「そうなんだ……それで?」

「うむ。それでな、そうして制覇した山の頂からの絶景を眺めていたのだが……すると未だ登っていない山がすぐそばにあった事に気付いたのだよ」

 

 今もランスの目の前、そこにはホーネットという山とは別次元で難攻不落な山が聳えていて。

 

「つー訳でワーグよ。俺様とセックスをしようじゃないか」

 

 そんな言葉を呟いた途端、その山は「こほっ」と可愛らしくむせ返った。

 

「ちょ、ちょっと待ってランス、話の繋がりが全然見えてこないんだけど。あなたさっきまで山に登っていたんじゃなかったの?」

「話の繋がりなどこの際どうでもいい。とにかく俺はお前とセックスがしたい、どうしてもしたくて堪らなくなったからこうして会いに来たのだ」

「ひゃ、ひゃわぁ! そ、そんな……そんなに求められても……そんなそんな、照れるよー!」

「おい、なんでイルカが照れているのだ」

 

 ランスがそんなツッコミを入れると、飼い主たるワーグも恥ずかしくなったのか「……ラッシー、黙りなさい」と命じてペットの口を閉じさせる。

 

「……はぁ。セックス、ね」

 

 そして赤らんだ頬のまま深く溜息。

 あまり話したい話題では無いのか、ワーグの声色が先程までよりも重くなる。

 

「……前にもあなたからそんな事を言われた事があったけど……まだ諦めてなかったのね」

「この俺が諦める訳があるか。ワーグよ、お前の事は絶対に抱く。絶対にだ」

「……ふーん。そんなにランスは私とエッチな事がしたいんだ?」

「したい。スゴくしたい。ワーグのような可愛い女の子とだったらセックスしたいに決まっとる」

「へぇ~……」

 

 そう興味なさげに呟く表情はちょっと得意げだったのだが、しかしその胸中はとても複雑で。

 こうしてランスから可愛いと言われたり、求められたりするのは率直に言って悪い気はしない。しないのだが、しかし素直に喜ぶ事も出来ない。

 喜びたいと思う自分の感情、そして相手の想いが重石になってしまうという事もある。

 

「……けどランス、忘れたの? 前にあなたが私とエッチな事をしたいって言ってきた時、色々試したけどどれも全部駄目だったじゃないの」

「……む」

「そう熱く求められてもね。ランスが私の前で長くは起きていられない以上、私とセックスをするも何も無いでしょう?」

「……ぐぬぬ」

 

 するとそんなワーグの胸中と同様、その事実を突き付けられたランスも苦々しい顔となる。

 今こうして会話をしている間にも襲い掛かってきている強烈な睡魔。それはこの魔人と自分との間に立ち塞がっている分厚い障壁。

 

 例えばつい先日にランスがようやく倒した強敵、魔人ホーネット。

 彼女とのセックスに長い時間を要した理由、それは父親からの教育の影響で人間を遥か格下の存在だと見ており、当初はその眼中にも無かった事。

 そしてそもそも性格的に堅物であった事など、言ってみればホーネットという女性の内面に纏わる問題がとても大きかった。

 

 しかしワーグの問題はそれとは大きく異なる。

 その内面という意味ではもはや問題無いのではないかと、すでにランスはそう睨んでいる。

 しかしこの魔人の問題はそこでは無く、その身体から放たれるフェロモンが原因。言ってみれば物理的にセックスが出来ないという事で。

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 たとえ彼女から性交の許可を得たとしても、それでも彼女に手を出す方法が無い。

 ランスが前々から手をこまねいている睡魔の壁、魔人ワーグの難攻不落さはそこにあった。

 

「そこなんだよなぁ……お前の眠気、これさえどうにかする方法があれば……」

「無いわよ、そんな方法」

「ちなみにワーグよ。もしお前の眠気をどうにかする方法が見つかったとしたら、その時はお前とセックスしていいって事でいいんだよな?」

「……さぁ、どうかしらね」

「おい、なんだその答えは。ちゃんとイエスかノーで答えなさい」

「……どうせそんな方法なんて無いんだから、私がどう答えようが意味なんて無いでしょ?」

 

 イエスと言うのは恥ずかしいし、さりとて完全にノーと言のは嘘を吐く事になってしまう。

 そんな心境のワーグははぐらかすように曖昧な答えを返したのだが。

 

「いーや、それはまだ分からんぞ。肝心のお前が俺とのセックスに協力的になってくれたら……それなら一つだけ方法があるかもしれない」

「え……?」

 

 続くランスの言葉を受けて、はっとしたように目を見開く。

 

「うそ、それって……どんな方法?」

「うむ。だからそれをお前が考えてくれ」

「……は?」

「だからな、お前が俺とのセックスに協力的だってんなら、その方法をお前に考えて欲しいのだ」

 

 そして更に続くランスの言葉を受けて、ワーグはがっくりと項垂れてしまった。

 

「あ、あっきれた……あなたが私を抱く方法をこの私本人に考えろって言うの?」

「そういう事だ。俺もここに来るまで色々考えてはみたのだが、やっぱりこの前試したのと似たような方法しか思い付かん。だからいっそお前に聞くのが一番なんじゃないかと思ってな」

 

 もはや自分には思い付く方法が無いので、後はそっちで考えて欲しい。

 そんな実に人任せな解決方法ではあるが、ランスは至極真面目な表情。何故ならそこにはそれ相応の大きな理由がある。

 

「だってセックス出来ない原因はお前の身体から出る眠気、体質な訳だろ? だったら俺や他の誰かよりもお前自身が一番詳しいはずではないか」

「それは……まぁ、そうかもしれないけど……」

 

 魔人ワーグが有する睡眠体質『夢匂』と呼ばれるフェロモンの香り。

 それは彼女以外には実例が見当たらず、ランスにとっては完全に未知なる代物。医者でもない彼にその対処法を考えろと言うのが土台無理な話で。

 となると当の本人に考えてもらうのが一番。自らの体質に長年付き合ってきたワーグなら、きっと解決策を閃くのではないかと考えての事だった。

 

「なぁワーグ。なんか思い付かねーのか? お前の能力を抑える方法とか」

「無いわよそんなの……私だってこの体質にはずっと苦労してきて、それでも思い付いた方法と言えばこうして厚着をする事くらいなんだから」

「ならお前の眠気が効かないようになる方法とか」

「それだって……思い付く事なんて何も……」

 

 この魔物界において最も恐ろしい魔人だと評される存在、魔人ワーグ。

 その理由の一つがこの眠気であり、ならばそれに打ち勝つ術など簡単に見つかるはずもない。そんな簡単に無力化出来るのならば最も恐ろしい魔人などと呼ばれはしないのだ。

 

「……けど、そうね……私の眠気も絶対の能力って訳ではないから……」

 

 とはいえ、そんな魔人ワーグがこの魔物界において最強の存在かというとそれは異なる。

 その強烈な睡眠体質だって効かない相手は存在している。魔王は勿論の事、あの魔人ケイブリスにだって効かなかった。

 その事からも分かるように、この眠気はとても強烈ではあるものの絶対に抗えないという代物では無いはずで。

 

「例えばそうね……ランスが今よりもものすごーくレベルを上げるとか」

「それは……それはちょっと最終手段にしてくれ。それはあまりにも時間が掛かりすぎる、なんかもっと簡単な方法で頼む」

「頼むって言われてもねぇ、そういう地道な方法が一番近道だったりするんじゃないの?」

「やだ、めんどい。大体それでは前に俺が考えた方法と変わらんではないか。自分の体質に詳しいお前だからこそ思い付く方法はないのか」

「だから無いってば、そんな…………あっ」

 

 話途中でワーグはその表情を如実に変える。

 その脳裏にはピーンと閃きが、魔人ワーグだからこそ思い付くアイディアが一つだけあった。

 

「お、なんだ、何か思い付いたか?」

「……ううん、そういう訳じゃ……」

 

 しかしワーグはそれを答えようとせず、少しばかり沈んだ表情で首を左右に振る。

 先程思い付いた方法、それは彼女にとってあまり手を出したくない方法。そして何よりランスにも良からぬ影響を及ぼしかねない危険な方法。

 だからこその否定であったのだが、しかしそんな気遣いはその男には全く不要なもので。

 

「その様子じゃ何かを思い付いたんだろ? とりあえず教えてくれ」

「……この方法じゃ多分無理よ。だから……」

「いいから教えろって。無理かどうかの判断は俺様がするから」

「……そうは言うけどね、教えたらランスはきっと試してみるって言うと思うわ。けれどこれは危険な方法だから、もっと別の……」

 

 ワーグとしてはあくまでランスの安全第一、友達の身を案じての言葉だったのだが。

 

「危険がどうした。大体それを言ったらレベル上げだって危険っちゃ危険じゃねーか。この俺様がたかが危険程度で臆するかっての」

「ランス……」

 

 そう答えるランスの表情は実に肝の据わった様子で、思わずワーグも圧倒されてしまう。

 この男にとってエロとは生きる理由そのもの。その為ならばどれ程の危険があろうと何のその。

 その覚悟の強さ、その意思の固さはこうして顔を合わせているだけで強く伝わってくるもので。

 

「……本当に、本当に危険な方法なのよ? それでも良いの?」

「あぁ良いぞ。お前とセックス出来るってんならどんな手だって試してやるとも」

「……う」

「ふぇぇ、そんな、そこまで私の事を……!?」

「だからなんでイルカが照れるんだっての」

 

 そんなツッコミも聞こえないのか、ワーグは真っ赤な顔を両手で隠して「うぅ……!」と唸る。

 

 自分は決してランスとそういった事をしたいと思っている訳ではない。ないと言ったらない。

 ただここまでどストレートにアピールされるとさすがに困るというか、何と言うか。

 ランスにここまで言わせておいて、それで協力しないというのも気が引けてしまう。

 別にそういう事をしたい訳じゃないんだけど、けど友達の期待を裏切る訳にはいかないし。

 

 そう、これはあくまで友情の範疇にある行為。

 だから問題無いというか、これはもうしょうがない事というか。

 そのような思考の帰結に至ったワーグは、こほん、と一度咳払いをして。

 

「……そう、分かった。どんな方法でも構わないというのなら……あれを試してみる?」

「えー、いいのかワーグ? あれをランスに使っちゃうのはマズいと思うけどなー」

「……私もそう思うけど……でも当の本人にここまで言われたら……断れないじゃない」

「そうだそうだ、俺様が良いっつってんだから別に構わん。……で、あれって何だ?」

 

 はてなと首を傾げるランスに向けて。

 この魔物界で最も恐れられているその魔人は、その恐怖の本当の理由を口にした。

 

「それはね……私のもう一つの能力を使う事。夢操作能力であなたの頭の中を改造するのよ」

 

 

 

 

 

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