ある日の魔王城。
「ぐがー、ぐがー……」
「ランス様。朝ですよ、起きて下さい」
「ぐがー、ぐがー……んあ?」
朝。身体をぽんぽんと優しく叩かれる感覚。
いつものように起こしに来たシィル、その声でランスはいつものように目を覚ます。
「……ふわ~ぁ、よく寝た」
「おはようございます、ランス様」
「……あー」
柔らかい笑顔で朝の挨拶をするシィルの一方、ランスは寝ぼけた声での返事をして。
ベッドから下りて、シィルの手伝いを受けながら朝の身支度を済ませる。それはランスにとって何ら変わりのない、至って普通の朝だったのだが。
「……ん?」
ふいに何かが気になったのか、ランスは不思議そうに首を傾げる。
「……うーむ?」
「ランス様、どうかしましたか?」
「……ううーむ……」
声を掛けるシィルを無視して、ランスは両手を前にぐっと伸ばしたり、肩をぐるぐると大きく回してみたり。
なにやらストレッチのような動きをした後、ふいに両目をしっかりと瞑って。
「──とうっ!」
「いたっ!」
そして開眼と同時に一閃。
もの凄い速度でデコピンを繰り出し、反応すら出来なかったシィルのおでこをぱちんと弾いた。
「え!? どうしていきなりデコピンを……?」
「……うーむむむ……」
シィルの悲鳴も耳に入らないのか、ランスは手をグーパーと開いてみたり、あるいは背中を伸ばしてみたり、腰を左右に曲げてみたり。
何か気になる事でもあるのか、しきりにその身体の動きを確かめている。
「ランス様、身体の調子が良くないのですか?」
「……いや、つー訳じゃねーんだけど……」
こうして確認してみた所、身体の調子は決して悪くない。
それどころか先程のデコピンの速度を見る限り、状態はむしろ真逆と言えるものであって。
「……これはそろそろか。……よし、決めたぞ」
そしてある事を考えた。
「決めた? 何をですか?」
「本日の予定。こーなるとやっぱし最初はあいつからだな」
◇ ◇ ◇
そして。その日の昼下がり。
そこは見晴らす程に広々としていて、庭木や花壇などは丁寧な手入れがされている。
そこは魔王城の中庭。広大なその城に相応しい程に広く、中には身体を動かしたり訓練を行ったりしている魔物達の姿が見える。
「お、来たか」
そんな中庭の一画、ベンチに座っていたランスは目的の相手が来たのを目にして立ち上がった。
「あぁ、来てやったぞ」
その相手の名は魔人サテラ。
近づいてきた彼女は途中で立ち止まり、自然と両者は向かい合って対峙する形となる。
それは数歩踏み込めば相手に届く距離、これから二人が行う事に必要となる間合い。
「……ランス。まさかお前が模擬戦をしようなどと言い出すとはな」
ランスが思い付いた本日の予定、それは模擬戦。
真剣勝負では無いものの、真剣勝負に近い強度で戦って力試しをする事。
そしてまず最初はあいつからだなと、一戦目の相手として選ばれたのがサテラ。彼女はやや不可解そうな表情のまま口を開く。
「けれどどういう風の吹き回しだ? ランスもこの魔王城に来てもう半年以上になるけど、これまで特訓をしたり模擬戦をしたりする事なんて一度たりとも無かったじゃないか」
「んー……まぁちょっとな。今日の俺様はそういう気分なのだ」
「気分って……またそんな適当な事を……」
つい先程、ランスから突然に「模擬戦をするから中庭に来い」と言われたサテラ。
何故いきなりそんな事を。とそう思う気持ちはあれど、ランスに突発的な思い付きに振り回されるのも慣れたのか、然程気にせずに「分かった」と答えてこの中庭にやって来た。
「でも強くなろうとする事は良い事だな、うん。だから特別にサテラが付き合ってやる」
主の胸を存分に貸してやろうじゃないか。と呟くサテラはふふんと得意げな顔。
「それでランス、準備は出来ているんだろうな?」
「あったり前だ。これはあくまで模擬戦だからな。ちゃんと手加減してやろうと思って、ほれ」
そう言いながらランスは左手を前に出してそれを見せ付ける。
その手が握るのは白い刃の模擬剣。通常ランスが使う武器と言えば魔剣カオスだが、カオスは魔人を軽々と斬り裂く魔剣である為、模擬戦で使用してしまうとまさかの事態が無いとも限らない。
故に今回ランスが使う得物は模擬の剣。刃もしっかりと潰してある安心仕様である。
「俺様はこのオモチャみたいな剣を使うのだから、お前も無敵結界は外せよな。あれがあるとこっちの攻撃が全く効かねーし」
「分かってる。ちゃんと外してあるから安心しろ。それに言われた通りシーザーだって連れてきていないだろう」
一方のサテラが使う武器は鞭。そしてその隣には常に控えているシーザーの姿が今は無い。
魔人サテラの真価といえばそのガーディアンメイク能力にあり、彼女の真の実力を味わおうというならその最高傑作品となるシーザーは外せない。
とはいえ繰り返しになるがこれは模擬戦。こっちは一人なのにそっちが二人なのはズルっこい……とランスが事前に物言いを付けた為、今回シーザーは主の部屋でお留守番である。
「……そう言えば。さっきシーザーは置いてこいよと言われた時、ちょっと気になった事がある」
「気になった事?」
「……あぁ」
そこでサテラの声のトーンが少し変わって。
「……あの時見えたランスの顔がな、なんか『シーザー無しのサテラだけなら楽勝だろー』みたいな顔をしているように見えたのだが……それはサテラの気のせいだよな?」
そう言いながら、彼女の身に纏う雰囲気が徐々に重たいものに変わっていく。
その紅い瞳がすっと細まり、魔人特有の突き刺すようなプレッシャーが放たれる。
「……ランス。まさかとは思うがお前、シーザーの居ないサテラになら勝てる、なんて考えてるんじゃないだろうな。だとしたら大きな間違いだぞ」
「……む」
強烈な威圧感に思わず生唾を飲み込むランス。
その眼に映る姿はれっきとした強敵、他を圧倒する力を持つ人類の敵、魔人。
魔人サテラはその手に握る鞭を強く振り下ろし、ビシィィッ!! と地面を弾いてみせると。
「いくぞランスっ! サテラの力を見せてやる!」
それを開戦の合図に動き出す。
しなりを利かせて右腕を振るえば、高速の凶器となった鞭の先端がランスを襲う。
「おわっとっ! おいサテラ、スタートの合図を勝手に……うおっ!」
慌てて背後に飛び退いて回避し、一方的な戦闘開始に文句をつけようとした所で、もう一撃。
ランスがとっさに頭を下げると、その頭上でビュンッ! と風を切る音が聞こえる。
「ほらほらほら! どうだランス!」
「ぬっ! くっそ……このッ!」
右からの一閃。その直後に左から飛んできたか思ったら、お次は真上からの打ち下ろし。
縦横無尽に振り回されるサテラの鞭、その先端の速度はとても目視出来るようなものでは無い。
ランスは集中力を高めて、相手の腕の振りを見て鞭が飛んでくるコースを見極める。
「あははははっ! どうしたランス! 守っているだけじゃサテラには勝てないぞ!」
「くっ、ぬぬ……っ! さ、サテラのくせして生意気な……!」
だがそれでも回避をしたり、模擬剣で打ち払ったりする事までが関の山といった有様で。
ビュンビュンと飛び交う鞭の合間、その微かな隙を突いて攻撃に転じる事などとても出来ない。
魔人サテラは武器として鞭を使う。ただ彼女は鞭を扱う特別な才能を有している訳ではない。
とはいえそこは魔人という生物の利点。外見上は十代の少女にしか見えないサテラも、実際には100年以上もの歳月を生きている。
それはつまり100年以上もの自己研鑽の時間があるという事。その中で少しずつ腕を上げてきたサテラの鞭は決して侮れるようなものでは無く。
「ちぃ……! さすがに俺様一人だと、中々、攻撃のタイミングが……ぐッ!」
今も音速に近い速度で飛ぶその鞭に対し、ランスはどうにか剣を合わせて防ぐのが精一杯。
仮にこれを仲間の誰かが、例えばガード職の者が防いでくれたなら。そうすればその間自由になるランスは攻撃に回り、持ち得るその高い攻撃力を活かす事が出来る。
だがこのような一対一という状況にある場合、ランスといえども防戦一方にならざるを得ない。それが人間と魔人の性能差というものである。
「どうだランス、サテラの実力を思い知ったか! 別にシーザーが居なくたって、この鞭一つだけでこんなに強いんだからな!」
「ぬっ……、なんの、この程度……!」
「それにサテラの鞭はな、こんな事だって出来るんだぞ──っと!」
そこでサテラは手首をくるっと返す。
「おぉ!?」
するとその鞭の軌道に変化が生じる。
ランスがそれを打ち払おうとした途端、鞭が模擬剣の刀身にシュルシュルと巻き付いていく。
「ふふん、捕まえたぞ」
「ぐ、ぐぬぬ……!」
方や涼しい表情、方や苦々しい表情となった両者の間を繋げるもの。ピンと伸びた一本の鞭。
そんな綱引きのような状態になってしまうと、どちらに軍配が上がるかは明白で。
「ランス、力比べで魔人に勝てるとは思わない方が良いぞ。──さぁ、こっちに来いっ!」
「くっ……お、おわぁ!」
引っ張り合いをする事数秒、得物を手放そうとしなかったランスは力負けし、前につんのめったかと思いきやそのまま引き摺られていく。
……ように見えたのだが、実の所それこそがこの男の狙っていた展開だった。
「よっと。うん、これが使徒と主の正しい姿だな」
無様に地を転がってきたランスの身体、その上にサテラはとすんと腰を下ろして。
「どうだランス、降参か? 降参なら──」
「うりゃ、なでなで」
そして降参を促したその瞬間、突然ランスの手が伸びてきた。
馬乗り状態になっている彼女の太もも、自分の顔の前にあるそれをいやらしく撫で回す。
「ひゃあっ!」
すると反応はとても顕著、サテラは甲高い声を上げた。
「や、ちょ、らん、止め──!」
「サテラよ、お前も学習しないやつだなぁ。このちょー敏感な身体が弱点なのだから相手を近付けさせちゃ駄目だろうに」
「こ、こらっ、そこは──やんっ!」
両手を使ってその敏感な身体を愛撫すると、その魔人は甘く鳴きながら身体をよじる。
サテラだってもう自分の身体が他人と違う事、その敏感な身体が弱点だとは分かっているはず。
にもかかわらず向こうから接近する機会を作ってくれるとは何事だろうか。というか敵を近付けさせない為に鞭を使っているのではないのだろうか。
その辺がランスには本当に不思議なのだが、ともあれこうしてサテラを捕まえた。そして捕まえた以上後はパパっと料理するだけである。
「つーかお前、前にもこんな負け方しなかったか? うりうり、うりうり」
「くっ、んんっ……! …………んゆーっ!!」
やがてその身体がぶるっと震えたと思いきや、くったりと力を抜いて倒れ込む。
こうして愛撫に負け、どうやらサテラは十分に気持ち良くなってしまったようなので。
「イッたなサテラ、イッたな? ……よしっ! んじゃ俺様の勝ちって事で!!」
ランスは魔人サテラに勝った事にした。
「これにて模擬戦しゅーりょー、お疲れ様ー……と言う事でっと……」
「ふ、ふぇ……?」
そして未だ放心状態のサテラの事を抱え上げ、そのまますたすたと歩き始める。
「ら、らんす、どこに……」
「俺様の部屋。負けたサテラちゃんには罰ゲームでセックスの刑を与えないとな」
「え、ちょ、そんなのサテラ聞いてない……!」
「サテラ、敗者のお前にものを言う権利など無い。敗者は勝者に従うのが定めなのだよ」
「あ、あぁ……!」
模擬戦の勝者たるランス。彼は敗者となったサテラを自分の部屋へとお持ち帰り。
その日の残りはサテラと色んな事をした。思う存分楽しんでとてもスッキリした。
そして。次の日の昼下がり。
「模擬戦闘……という事でよろしいのですよね?」
「そ。ガチの殺し合いじゃないから安心してくれ。言ってみりゃ腕試しみたいなもんだ」
そこは昨日と同じく魔王城の中庭。
ランスと対峙するのは今日の対戦相手、炎の力を操る有翼魔人ラ・ハウゼル。
彼女も先程突然に「模擬戦をするから中庭に来てくれ」と言われ、特に不思議に思う事なく「はい、分かりました」と答えてこの場所にやってきた。
「そう言えば聞きましたよ、なんでも昨日はサテラと戦って勝利したとか」
「その通り。あいつも頑張ってはいたけどやっぱ俺様の敵ではなかったな。がはははっ!!」
「魔人と戦ってそんなふうに言えるなんて……本当に凄いと思います。レッドアイにも勝ってしまうランスさんには当然なのかもしれませんが」
サテラとの模擬戦の詳細は知らないのか、ハウゼルは本心でもって称賛する。
彼女にとってランスとはそんな人間。サテラはおろか、あの魔人メディウサや魔人レッドアイをも倒してしまうような男。そんな相手と戦うならば、模擬戦とはいえ彼女が手を抜く理由などどこにも無く。
「私の力がどれ程通用するかは分かりませんが……全力を出したいと思います」
そしてハウゼルが身に纏う空気も変わっていく。
普段のお淑やかなものでは無く、確とした重圧のあるものに変わっていく。
「……む」
この魔人からこのようなプレッシャーを向けられるのは初めての事、ランスも自然と顎を引く。
魔人ハウゼル。生真面目で優しい性格の彼女もれっきとした魔人であり、他の生物を圧倒する魔人としての顔をちゃんと持ち合わせている。
「ランスさん……準備はいいですか?」
「おう、いいぞ。いつでも掛かってこい」
「では……いきますっ!!」
そして戦闘開始。
直後にハウゼルは背に生えた翼を伸ばし、地を蹴って一息に中空へと飛翔する。
「──ふっ!」
そしてその手に持つ巨銃、タワーオブファイヤーの銃口をランスへと向けて。
いざ引き金を引こうとした……その時。
「ちょい待ちハウゼルちゃん」
「えっ?」
寸前でランスからの「待った」が掛かり、ハウゼルは引き金に掛かった人差し指を硬直させた。
「どうしました?」
「ハウゼルちゃん。まさかとは思うが君、その銃をぶっ放そうとしてないか?」
「はい、そうですけど……」
「おいおい、あんな炎で焼かれたらさすがの俺様も死んでしまうぞ。これはあくまで模擬戦なのだから相手を殺すような攻撃はNGだ」
「あ、それはそうですね……」
言われてハウゼルもふと気付いたが、確かにここでこの銃を撃つのはとても危ない。
タワーオブファイヤーの一撃はとても広範囲に及ぶ為、この近距離で放ってしまうとランスがどう頑張っても回避の術は無い。
そして何と言っても高火力が持ち味。直撃を受ければ人間の身体などあっという間に消し炭になってしまうし、ついでに言うとこんな中庭でぶっ放しては城への被害だって馬鹿にならない。
その火炎砲は魔人ハウゼルの真の力を味わう為には欠かせないものなのだが、しかしどう考えても模擬戦で撃っていいような代物では無かった。
「……となると仕方無いですね、あまり得意では無いのですが……」
ハウゼルは銃口の狙いをランスから外し、タワーオブファイヤーを横に持って構える。
遠距離砲撃戦を得意とする彼女は滅多にこういう使い方はしないのだが、一応その巨銃は鈍器としても扱う事が可能である。
「では改めて……いきますっ!!」
そして地上にいる相手、ランス目掛けて出せる最高速度でもって一直線に突っ込んでいく。
その銃身に猛る炎を纏わせての横一閃、通称「ハウゼルの火炎斬り」それを交錯する瞬間に繰り出そうとした……その時。
「ちょい待ちハウゼルちゃん」
「──え、ええ!?」
再度ランスからの「待った」が掛かり、ハウゼルは慌てて急ブレーキ。
身体をくの字に折り曲げて、ランスと衝突してしまうギリギリでストップした。
「こ、今度は何ですか?」
「まさかとは思うが君、その銃で俺様の事をぶん殴ろうとしていないか?」
「はい、そうですけど……」
「おいおい、そんなもんで殴られたらさすがの俺様も死んでしまうぞ。これはあくまで模擬戦なのだから相手を殺すような攻撃はNGだ」
「あ、それもそうですね……」
言われてハウゼルもふと気付いたが、確かにこの銃で殴るのだって危ないと言えば危ない。
巨銃タワーオブファイヤーはその見た目に違わない程の重量を有しており、それを魔人の腕力で振り回した場合、打ち所が悪ければ人間などあっさり死んでしまう。
得意の火炎砲撃が封じられた場合ハウゼルにはこうやって戦うしか無いのだが、だがその火炎斬りも模擬戦で使って良い技では無いのかもしれない……とまで考えて。
「……あれ? でもそうなると、私は一体どうやって戦えば……」
そんな根本的とも言える疑問を呟いた瞬間、すっとその手が伸びてきた。
「捕まえたーっと!」
「きゃっ!」
ランスはすぐ目の前で止まっていたハウゼルの事をぎゅっと抱き締める。
そして片手を尻に、片手を胸に伸ばして、おまけにその口で彼女の耳たぶに齧りついた。
「ハウゼルちゃん、さすがに君はちょっとバカ正直に相手の言葉を受け入れ過ぎだな。もう少し疑う心を持った方が良いと思うぞ。うりゃうりゃ、なでなで、はむはむ」
「あ、うんっ……! そ、そこ、は……っ」
ランスの三点同時エロテクの前に弄ばれ、すぐにハウゼルの頬が赤く染まる。
「ら、ランスさんっ、待って……んんっ」
「降参かハウゼルちゃん、降参だな? 降参しないとこの場で裸にひん剥いてセックスするぞ」
「そ、そんなの駄目です……! わ、分かりました、降参しますから……!」
こうしてハウゼルの口から確かに「降参」の二文字が聞こえたので。
「よしっ! それじゃあ俺様の勝ちって事で!!」
ランスは魔人ハウゼルに勝った事にした。
「これにて模擬戦しゅーりょー、お疲れ様ー……と言う事でっと……」
「え、あの……?」
そして訳も分からず動転しているハウゼルの事を抱え上げ、そのまますたすたと歩き始める。
「ランスさん、一体どこに……」
「俺様の部屋。負けたハウゼルちゃんには罰ゲームでセックスの刑を与えないとな」
「え、そ、そんな……というかそれだと私が降参した意味があまり無いのでは……」
「ハウゼルちゃん、残念だけど敗者の君にものを言う権利など無いのだ。今この場で犯されないだけでも幸運だと思わないとな」
模擬戦の勝者たるランス。彼は敗者となったハウゼルを自分の部屋へとお持ち帰り。
その日の残りはハウゼルと色んな事をした。思う存分楽しんでとてもスッキリした。
そして。
次の日の昼下がり。
「──とまぁ、あの二人は殆どお遊びのようなノリで片付ける事が出来たのだが……」
ランスは一昨日、魔人サテラに勝利した。
そして昨日は魔人ハウゼルに勝利した。
前者の魔人はその身体にある大きな弱点、敏感な部分を刺激して勝利した。
後者の魔人はその性格、根本的に優しすぎて戦いに向いていない性格を利用して勝利した。
その2つの戦いを越えて、3戦目となる今日。
「……問題はここからだな……」
そこは魔王城の中庭。
静かに呟いたランスと対峙するその相手。
「ふふっ、お手合わせよろしくね。ランスさん」
そこには大きな斧槍を持った魔人四天王、シルキィ・リトルレーズンが立っていた。