ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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カスケード・バウの戦い①

 

 

 

 

 拳を打ち付ける度に血しぶきが飛び、続けて電撃が激しく迸る。

 

「雑魚共がッ! 次に叩き潰されてェヤツはどいつだ、オラァ!」

 

 待ちに待った戦争の最前線、無人の荒野を行くが如きに周囲の魔物兵を蹴散らす魔人──レイ。

 こと戦場にあってはその魔人の居場所はとても分かりやすい。何せその拳を振るう度、目も眩むような雷光と電撃音が発生する。

 

 それは自らの存在を積極的に誇示して、目的の相手を誘き出す為のもの。

 そうやって存分に暴れた甲斐あって、ようやくレイは相手方の魔人とエンカウントした。

 

 

「──止まりなさいッ!」

「あぁ?」

 

 自らに向けて聞こえてきた制止の声。

 それが見上げる程度の上方から、そして聞き覚えのある女性の声だった事に嫌な感じを覚えて。

 

「……チッ、よりにもよってテメェかよ」

 

 その姿を目にした途端、レイは吐き捨てるように呟いた。

 自らの進路を塞ぐように中空を飛ぶ相手、巨銃を手に持つ有翼魔人ラ・ハウゼル。

 ホーネット派に属する魔人の一人だが……しかしこの相手はレイが求めていた相手では無い。故にそのテンションは急激に落ち込み、身体から迸る雷光も陰りを見せていた。

 

「……レイ。私が相手では不服ですか?」

「あぁ不服だ、不服に決まってんだろ。俺からしたらテメェは一番の大ハズレだ」

 

 魔人レイが戦場に求めるもの。それは主に一対一での肉弾戦、原始的な力比べ。

 タイマンでのケンカこそが自らの衝動を最も発散出来る行いであり、だからこそ今回の戦争でも以前のように魔人ガルティアか、あるいは魔人シルキィとかと戦いたかった。

 だというのに相手が魔人ハウゼルとは。この魔人は空を飛んで魔法で戦う女、およそレイが期待していた相手の対局に位置するような相手である。

 

「つーかこれはアレか。俺を苛立たせる為の作戦かなんかかよ」

「そんなつもりはありません。ただ、他の皆にはそれぞれの役割があるというだけです。ですから大ハズレでも何でも、貴方の相手はこの私がします」

「……ケッ、そーかよ」

「えぇ。貴方は私が止めます。ここから先に進ませはしません」

 

 そうと告げる魔人ハウゼルの声には確たる決意が宿っていて。

 常日頃から優しく穏やかな性格の彼女も、戦場に立てば業火を操る炎の魔人となる。

 その顔は凛としたものとなり、その姿からは確かな威圧感と高まる魔力が伝わってくる。

 

 ……と、いうのが普段の魔人ハウゼルなのだが。

 

 

「つーか……オイ、ハウゼル」

「なんですか?」

「テメェ、何を照れてやがる」

「え、えぇ!?」

 

 思わずレイがそう指摘した通り、今日のハウゼルは何故か照れていた。恥じらっていた。

 その顔は凛としたものとは言えず、戦う前からそれはもう真っ赤になっていた。

 

「べ、別に照れてなんていませんよ!?」

「そう言う声がもう上擦ってんじゃねーか」

「そ、そんな事は……そんな事はありませんっ! 私は普段通りですから、えぇ!」

「……そうは見えねーけど」

 

 むきになって否定してきたりと、その態度がもう何やらおかしい。

 謎に恥じらっているハウゼルの様子は意味不明だったが、けれどレイはすぐに関心を無くした。

 

「……けど、ま、俺にとっちゃどうでもいい事か」

 

 これは単に戦う相手というだけ。だったらその恥じらいの理由など気にする必要も無し。

 残念ながら熱いケンカなどは望めはしない相手なのだが、それでも魔人である以上、そこらの雑魚を潰して回るよりかは楽しめるはずだ。

 

「とっとと始めるぜ。せいぜい楽しませろ」

 

 そう言ってレイは腰元のバックルの中に収納している櫛を引き抜く。

 それを使って戦闘の際に邪魔な前髪を逆立てる。それがレイにとっての戦闘前のルーティン。

 

 ……だったのだが。

 

「レイ、生憎と闘いになどはなりません。何故なら私は貴方の弱点を知っていますから!」

 

 その機先を制すかのように、赤面しているハウゼルがそんな言葉を告げてきて。

 

「……あ?」

 

 レイは前髪を掻き上げる途中でその手を止めた。

 

「俺の弱点だ?」

「え、えぇ、そうです」

 

 こくこくと、ぎこちない所作で頷くハウゼル。

 その瞳に映る相手、魔人レイは格闘を得意としていて、更には雷撃を扱うのが最大の特徴。

 そんなレイに隠されている秘密。その弱点こそが数日前にランスから授けられた秘策。

 そして更に言うならば、それこそが彼女の赤面の理由だったりもする。

 

「……ただ、この手はあまり、そのっ、使いたくはないのです。ですからその……ここで自ら負けを認めて貰う訳には……」

「ザケンな。俺にどんな弱点があんのか知らねーが、やる前から負けを認める訳がねェだろ」

「……ですよね。レイならそう言うと思っていました。……ならば仕方ありません……!」

 

 覚悟を決めたハウゼルは持参した鞄の中からあるものを取り出す。

 それは事前にランスが用意していたもの。「これを使えばビリビリ野郎なんぞ楽勝だ、楽勝。がはははーっ!」と大笑いしながら太鼓判を押す、そんなとっておきの秘策。

 

「こ、こっ、これです!」

 

 相変わらず上擦った声のまま、真っ赤な顔のハウゼルはそれをビシっと突き付けた。

 

「……なんだそれ、本?」

「え、えぇ、そうです。レイはこれが欲しいのでしょう? でしたら私の言う事を聞きなさい」

「ああん?」

 

 ハウゼルが自分の弱点だというモノ、それは本。

 けれど自分は別に欲しがっていた本など無いし、あったとしても闘いより優先する事など無い。

 これは一体どういう事なのか。理解不能な言い分にレイが眉を顰めていると、空に浮かんでいたハウゼルがすーっと近付いてきて。

 

「……ほ、ほら、これです」

「……おォ」

 

 まるで要らないものを押し付けるかのようにその本を手渡されて。

 自分の弱点らしきそれを受け取ったレイは、パラパラとページを捲ってみる。

 

「……あん? おいコレって……」

 

 その本の中身に目を通して、最初こそ訝しげにしていたレイも、

 

「…………おい」

 

 その本を自分に見せてくる意味、その本を自分が欲しがっているという理由。

 それを理解したレイの表情には次第に変化が──そのこめかみに血管が浮かんできて。

 

 やがてその本をゴミみたいに雑に放り捨てると、

 

「──おいテメェ、俺をナメてんのかッ!!」

 

 バヂンッ! と弾ける雷電。静電気で逆立った前髪の下から表れた鋭い目付き。

 あっという間に怒りの頂点に達したレイは噛み付かんばかりの勢いで怒鳴った。

 

「えっ!? あれ!? レイはその本が欲しかったのではないのですか!?」

「ンな事をいつ俺が言った!! こんなもん欲しくも見たくもねェに決まってんだろが!」

「けど、だってランスさんが、これを見せればレイは必ず言いなりになるからって……!」

「フザけんな!! んな訳ねェだろ! つーか何処のどいつだそのランスってのはッ!」

 

 怒声を上げる度、レイの全身からバチバチッ! と幾条もの雷が迸る。

 その怒りの原因、彼が先程投げ捨てた本の中に載っていたもの。

 それは女性が──特に年端も行かぬ少女達が裸になっているヌード写真の数々。

 

 それこそが対レイ用の秘策としてランスが用意していたもの、幼女愛好者向けのエロ本。

 警察長官のウルザにゼス国内で押収した物を取り寄せてもらった、発禁もののエロ本である。

 ちなみにランスの元々のオーダーは()()()()()ロリコン向けのエロ本だったのだが、さすがにそこまでニッチな需要に応えるエロ本はゼス国広しと言えども存在していないようだったので、その本の中であられもない姿を晒すのは皆が見目麗しい少女達である。

 

 だが勿論、そんなロリコン向けエロ本で魔人レイが言いなりになるはずがなく。

 つまり、ランスは魔人レイの性癖を完全に誤解していたのだった。

 

「ハウゼルッ! 俺がこんな下らねーモンを欲しがるような男に見えるか!? あぁ!?」

「い、いえその、本当は私も半信半疑で……!」

「半信半疑だと!? そりゃてめェ半分程は俺がロリコンだと思ってたって事か!?」

「い、いいえっ! 決してそういう訳では……!」

 

 あらぬロリコン疑惑を掛けられて激怒するレイ、その怒気の前にたじたじなハウゼル。

 とその時。そんな二人を仲裁しに……もとい、更なる混乱を引き起こしに。

 

「──あぁもう! 馬鹿ハウゼル!」

 

 遠い空の彼方から、ハウゼル待望のあの魔人が助っ人として飛んできた。

 

「だーからランスが用意した秘策なんか真に受けるなって、あれ程言ったじゃないの!!」

「あ、姉さん! やっぱり来てくれたんですね!」

「そーよ来てあげたわよっ! ほんとーに全く、あんたはお姉ちゃんが付いていてあげないと駄目駄目なんだから!」

 

 その言葉こそつっけんどんなものの、その声色は何処となく嬉しそうで。

 戦場に姿を現した魔人サイゼル。もはや派閥戦争に参加するつもりもホーネット派に肩入れするつもりも無いのだが、しかし先のレッドアイ戦と同様妹の事が心配になりすぎて、結局はこうして妹の援軍に来てしまったようだ。

 

「サイゼルだと? オイ、お前は死んだんじゃなかったのか?」

「お生憎様、この通り生きてるわよ。ケイブリス派に戻るのが面倒になったから死んだって事にしていただけ」

「面倒ねェ……で、その様子じゃあ今度はホーネット派に付いたって訳か」

「別にそんなつもりは無いわよ。けれど私はハウゼルの味方なの。だから今はあんたの敵ってわけ」

「……ハッ、そーかい」

 

 姉妹仲を元に戻したサイゼルの事情を聞いて、レイは白けたように呟く。

 ロリコン疑惑を掛けられて燃え上がった怒りと闘志、それはまたしても消沈してしまっていた。

 突然の乱入者、元は味方だった魔人サイゼルが敵に回った事はどうでもよかったのだが、これでは一対一のタイマンじゃない。それがレイにとっては一番萎えてしまう要素。

 加えて言えば相手は二人共に殴り合いなどとは無念の女魔人。これでレイにやる気を出せというのが無茶というものである。

 

「……まぁいい、それでも闘いは闘いだ。オラ、とっとと掛かってこい」

「レイ、言っとくけどこっちは二人掛かりだから。文句は言わせないわよ」

「好きにしろよ、興味もねェ。……ハァ、今日は運が無かったな……」

 

 今日はもう気分が萎えたので適当に戦って、適当な所で切り上げよう。

 そんな事を考えていたレイに、ここで更なる萎える要素が。

 

「行くわよハウゼル! 私達の力を見せてやろうじゃないの!」

「あ、はいっ!」

「……ん?」

 

 そうして戦闘開始。

 すると姉妹は背に生えた羽を羽ばたかせ、ふわーっと空高くまで上昇していく。

 

「お、おいおい……」

 

 やがてそれは見上げる程の高さまで、レイの拳がとても届かないような高さまで。

 遠距離砲撃戦を得意とする姉妹達にとって、戦闘となれば高度を取るのは当然なのだが、そうなると翼を持たぬレイとしては困りものである。

 彼の攻撃は基本的に接近戦特化、故にこれ程高く飛ばれてしまうと戦いようがない。本気でイカヅチを起こしてみれば届くかもしれないが、現状そこまでのやる気を出す事は出来ない。

 

「てめぇら、せっかくの闘いでそりゃねぇだろ。せめて下りてきて戦えよ」

 

 故に半ば無駄だと思いながらも、そんな言葉をボヤいてみたのだが。

 

「あ、確かに……これはちょっと卑怯ですね」

 

 それは期せずして心優しき魔人ハウゼルの心に届いたらしい。

 そもそもが2対1の戦いなのに、更には相手の手が出せない上空からの一方的な闘い。

 流石にそれはズルすぎると感じたのか、ハウゼルはすすすーっと下に下りてくる。

 

「レイ、これで宜しいですか?」

「お、おォ……そりゃ宜しいけどよ、俺が言っといてなんだがおめェこそそれでいいのか?」

「はい、私は構いません。こっちは二人掛かりですからね、それならせめて地上で闘いましょう」

 

 その目線を同じ高さに合わせて、敵だというのに微笑で以て語り掛ける。

 その姿はまさに品行方正を旨とするハウゼルらしい姿だったのだが。

 

「って、馬鹿ハウゼルっ! 構わない訳がないでしょうが!」

 

 慌てて下まで降りてきた姉、サイゼルの方にはそんなつもりなど欠片もない。

 2対1なのは一人きりで孤高を気取っているのが悪い。空を飛べないのは翼を持たないのが悪い。

 そうシビアに考えるのが姉であり、だからこそ相手に合わせる理由など何も無い。

 

「ほらハウゼル、とっとと飛びなさい! 上空に上がっちゃえば飛ぶ事が出来ないレイに私達が負けるはず無いんだから!」

「でも姉さん、それはあまりにも卑怯じゃ……」

「あのねぇ、そんな事は気にしなくていーの!」

 

 ただ根本的な問題として、この姉妹は基本的に考え方が噛み合わない。

 相反する属性をその身に秘める点からしても、それはもうどうしようもない事なのである。

 

「卑怯だろうがなんだろうが、楽に勝てるんだからそれでいいでしょ!?」

「けどっ、私達は二人掛かりですし、せめて下で戦わないとレイが可哀想では……!」

「レイが可哀想だからって何だって言うのよ! こんなヤツ上空から撃ちまくってとっととノシちゃえばそれでいいの!」

 

 そして更に困った事に、この姉妹は姉妹が揃ってしまうと時たまこうなってしまう。

 お互いがお互いを好き過ぎるが故なのか、お互いしか目に入らなくなってしまうのだ。

 

「……オイ、おめェら……」

 

 思わずレイが困惑気味に声を掛けても、姉妹からの反応は無し。

 こうなったらもう最後、ハウゼルとサイゼルの瞳には互いの事しか映っていない。

 

「ほんとーにあんたは頭が固いんだからっ! せっかく私が協力してあげるって言ってるのになんでわざわざ面倒な闘い方を選ぶのよ! この馬鹿、バカバカ!」

「っ、姉さんだって、協力してくれるって言うならこんなギリギリじゃなく、もっと早くに言っておいてください! 姉さんが協力してくれるかどうか分からないからこの闘いでの私の役割が中々決められなかったんですからね!」

「そんな事知りませんー! ていうかそれを言うならあんただって出撃の日時ぐらいちゃんと教えときなさいよ! 急に城から居なくなっちゃってめちゃくちゃ寂しかったんだから!」

「い、言いましたよ! 私少なくとも二回は言いましたよね!?」

「言ってないっ! だって私知らなかったもん!」

「だからそれは姉さんが忘れていただけです! 大体この前だって……!」

 

 あーだこーだと、ごちゃごちゃと。

 二人の言い争いはすぐに当初の地点を離れ、二人だけの世界へと突入していく。

 

「………………」

 

 そんな中、完全に蚊帳の外となったレイは、

 

「……くっだらねぇ。これだから女ってのは」

 

 それはもう心底呆れ果てたように呟いた。

 もはや闘いなどという気分では無いので、一旦出直そうとレイは思った。

 とにかく今日はもうツキが無かった。エンカウントした相手が悪すぎた。

 

「明日はガルティアかシルキィとやりてェな。まぁこの際サテラでもホーネットでもいい。つーかもう、こいつら以外なら誰だっていい……」

 

 そんな言葉を呟きながら、魔人姉妹達に背を向けてとぼとぼと歩き出したレイだったが。 

 

「……お」

 

 ふと視界に入ったそれ。地面に捨てられている発禁もののエロ本。

 レイはヤンキー座りでしゃがみ込んで、何となくもう一度その中身に目を通してみる。

 

「……しょうもねぇ。俺がこんなもんを欲しがるとても思ってのか」

 

 そしてやっぱり先程と同じ気分になって、ポケットから取り出したタハコに火を付ける。

 その本の出来自体は良いのだろう。美少女を呼んで差し支えない子供達が欲情を沸き立てるようなポーズをとったり、中には男と交わっている写真すらも載っている。

 そういう嗜好がある者にとっては喉から手が出る代物かもしれないが、それでもレイには欠片も性的興奮など湧いてこない。何故ならレイはロリコンでは無いから。

 

「せめて後10は育ってねぇとな。じゃなきゃ立つもんも立たねーよ」

 

 とはいえ魔人レイとて男であり、その男の部分は何も枯れているという訳ではない。

 例えば人間の女が目の前にいたとして、気が向いたなら犯す。その程度の事はしたりもする。

 ただそれでも淫蕩に耽ったりする訳では無い。無いなら無いで別に構わない。

 

 それは戦い然り、あるいは性交然り、根本を辿ってみれば同じもの。

 結局の所、レイはただ求めているだけなのだ。

 自らの胸の内、そこに沸き立つ激しい衝動を存分にぶつけられるような相手を。

 

 あるいは──

 その衝動をものともしないような相手を。

 それを求めているだけで。

 

「……はぁ」

 

 タハコの煙をぷかりと吹かせて。

 今も背後で言い争うハウゼルとサイゼルの声を聞きながら、魔人レイはぽつりと呟いた。

 

「……どっかにイイ女はいねぇかなぁ……」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 魔人姉妹達のイチャつきに踊らされ、魔人レイが大いにテンションを落としていたその頃。

 レイが戦いたがっていた魔人の一人、ガルティアは西の戦場で戦っていた。

 

「ふっ!」

 

 ギザギザの刃が浮かぶ蛮刀、ハワイアンソードを鋭く一閃。

 ケイブリス派魔物兵達を軽く蹴散らしながら、ガルティアは難しい表情をしていた。

 

「……うーん、どうしたもんかな」

 

 自分は魔人。魔人の相手は同じ魔人であって、ここに居る魔物兵達は相手にならない。

 だから今ガルティアがやっている事は魔人レイがやっていた事と同じ。雑兵を蹴散らしながら敵軍を荒らして、向こうの魔人を見つける、もしくは見つけてもらう。そんな方針。

 

「……レイとかレッドアイとかなら、簡単に見つかるんだろうけど」

 

 こういう手に乗ってくれるのは好戦的な性格の魔人であり、その筆頭と言えば魔人レイ。

 実のところ、魔人レイは開戦と同時に突っ込んで来ると分かっていたので、ガルティアがそちらを受け持つという案もあった。

 しかし対レイに関してはランスから受け取った秘策があるというので、ハウゼルが担当する事になった。故にガルティアはこうして自らが相手するべき魔人を探していたのだが。

 

「さすがに難しいかな。ケッセルリンクは夜しか出られねーし、残りの奴らも出不精なヤツばっかだからなぁ」

 

 今日はまだ初日の段階。先を見据えて向こうが魔人を温存する事は十分にあり得る。

 勿論それでも自分がすべき事は変わらない。相手が出てくるまで、あるいは腹が減って帰陣する時間になるまで、ここで暴れまくるだけ。

 

 けれどもこの分じゃあ今日は空振りに終わりそうだな──

 ……と、ガルティアのそんな考えは期せずして裏切られる事となった。

 

「……ん?」

 

 ふと気が付くと、周囲からケイブリス派魔物兵達の姿が消えていた。

 無敵結界を持つ魔人とて、物量で押し込めば足止めは可能なのだと、そう言わんばかりに前進し続けていた魔物兵の壁がいつしか後退していて。

 

 そうして引いた魔物兵達の壁の奥。その向こう側から新たな軍団が前進する。

 その軍団は魔物兵ではなく、鋼鉄の身体を持つ機械人形──PG〈パーフェクトガール〉

 

「……おぉ、こりゃビックリだな」

 

 まさかこの魔人が出てくるとは。その光景に思わずガルティアも驚く。

 この機械人形達の主、それを探していた身としてはまさに望外の幸運で。

 

 そうして見えてきたその姿──白衣を着込んだ不健康そうに見える少年。

 

「やぁガルティア、久しぶりだね」

 

 ケイブリス派に残る魔人の一人、パイアールはふっと口の端を曲げた。

 

 

 

 

 

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