「よーし。これで問題無くあのリス野郎との再戦と行けるぜ」
「……っ」
再戦。
魔人ケイブリスと──再び刃を交える。
「ランス……」
手首の治療を終えて、戦える状態に戻ったランスはすぐにそう言った。
その意気込みは心強い。心強いが……しかし。
「なんだホーネット、その顔は」
「……ランス。貴方は……もう一度ケイブリスと戦うつもりなのですか?」
「あ? んなもん当たり前だろうが」
「………………」
当たり前とまで言い切る程に強い意思。
それはどうしてなのだろうかと、この時ホーネットは純粋に不思議に感じていた。
「……ですが」
「ですがじゃない。戦うっつったら戦うのだ」
「しかし……」
「しかしじゃねーっつの」
ランスが自信家である事は知っている。
……知ってはいるが、それでもこの状況で。
魔人ケイブリスとの再戦。
再戦とはつまり、一度戦ってみて勝てなかった相手と再び戦うという事。
一度敗北を喫して、その強さを痛感して、それでもランスの瞳は全く死んでいなかった。
「つーかホーネット、お前さては一度負けたぐれーでビビってんのか?」
「いえ、そういう訳では……」
「じゃあどういう訳だ。もう諦めましょうー、とか言うつもりじゃねーだろうな」
「……まさか」
その挑発めいた言葉に対しては、ホーネットも当たり前かのように言い返す。
「ケイブリスを倒す事、それは私の使命です。使命とは諦める事が許されるものではありません」
一度敗北を喫して尚、それでもホーネットは諦めるつもりなんて毛頭ない。
元より魔人ケイブリスが強いという事は分かっていた。一対一の状況であればきっと、こちらが劣勢だろうとも半ば理解していた。
その上で戦いに臨んでいるホーネットにとって、一度敗れた程度でその心が折れる事は無い。
「そもそも敗北云々を言えば、私はすでに一度ペンゲラツリーの地で敗北を喫していますからね」
「そういやそうだったな。一度負けたぐれーで諦めるような性格はしてねーか」
「えぇ、これは私にとっての使命ですから」
それはホーネット派を率いる者としての使命。
あるいは魔人筆頭としての使命、もしくは魔王ガイの娘としての使命か。
とにかくそれが使命だからこそ、ホーネットは命尽きる時までケイブリスと戦うつもりでいる。
「けれど……貴方はそうではないはずです」
しかしランスの方はどうか。
ランスはそんな使命を負ってはいない。ただホーネット派に協力してくれているだけだ。
それなのにどうしてこれ程までに戦意を余しているのか。どうしてその心が折れないのか。それがホーネットには本当に不思議だった。
「特に……相手はあのケイブリスだというのに」
魔人ケイブリス。最強最古と称されるその強さは人間など到底及びもつかないもの。
いいやその強さは人間はおろか、魔人という括りの中でも飛び抜けたものだった。
その戦闘技術も、その肉体の強靭さも、その巨剣の迫力も何もかもが想像を超えていた。
ホーネットでさえそう感じるのに……何故。
魔人ケイブリスと一度戦って尚、この意思の強さは……ただの人間であるはずのランスが、何故。
「……正直な所、このままでは再度戦った所で勝ち目は薄いと思っています。それなのに──」
するとそんな言葉を遮って。
「いいや、勝てる」
ランスは言った。
『勝てる』と強く宣言した。
「……ランス」
「勝てるだろ、あんな雑魚リス一匹如き。俺様の手に掛かれば倒せないはずがない」
使命などは無い。
命尽きる時まで戦い抜くつもりなども無い。
そんなランスの戦意がそれでも折れない理由。
それはこの程度の逆境など、この程度の苦戦などはとっくに経験済みだから。
前回の第二次魔人戦争。
自分や周囲の仲間達はおろか、この世界で暮らしている人類全てにおける滅亡の危機。
それをも救ってみせたランスにとって、この程度のピンチが一体何だというのか。
「それに一度ヤツと戦ってみて俺は確信したぞ。これなら絶対に勝てるってな」
そして先程ケイブリスと刃を交えた事で、前回の戦いと比較して分かった事がある。
ケイブリスの強さはあの時と全く同じ。前回の時と比べて何一つ手応えに違いは無かった。
であるならば、一度それに勝利した自分がもう一度ケイブリスに勝てない道理は無い。
「何よりこっちはまだ用意してきた切り札をなんも使っとらんからな。まだ万策尽きたわけでもねーのにここで諦めるなんてアホのする事だろ」
「ですが……それでも、それでも貴方が積極的に戦う理由にはならないはずです。ここからは私一人で戦ったって構いません。最後までホーネット派に協力してくれるのは有り難いですが、しかし……」
そう言って表情を曇らせるホーネット。
その本心としては──もう、ランスには。
それはホーネット派の主としてではなく、ただのホーネットという女性として。
その強さとか、魔剣がある事の優位性とかそういう話は無視して、もっと単純に──
「ランス。あなたは……人間ではありませんか」
もっと単純に、ただその身を案じていた。
なにせ人間とは。ケイブリスが振るう巨剣の直撃一つだけで命を散らしてしまう存在。
どれだけ攻撃力があろうとも、その耐久力は魔人と比較にならない程に脆弱な存在。
だからこそホーネットは、ランスにはここで安全な場所に退がって欲しいと思っていた。
そう──思ってしまったのだが。
「人間、ねぇ」
「えぇ。種族としての差がある事はどうしようもありません。ですから──」
「ていっ」
「いたっ」
ホーネットはデコピンを食らった。
「……え、あの……」
「あのなぁホーネット。お前はさっき俺様が言った事をもう忘れたのか?」
常に隙がないはずの魔人筆頭に見事デコピンを食らわせた男、ランス。
その表情は苛立つというよりもむしろ、物覚えの悪いホーネットに呆れたような表情で。
「俺は最強無敵の英雄だと言ったろーが。魔人筆頭のお前よりも上なんだっつの」
「……勿論、私とて貴方の強さは分かっています。分かってはいますが……」
「いーや違うな。お前はこの俺の強さをまるで分かっちゃいない」
うむうむ、としたり顔で頷くランス。
自分は英雄。前回の世界であらゆる魔人をなぎ倒してきた最強無敵の英雄。
そして更に言うならば──
「ホーネット。本当の事を言うとな、このランス様は最強無敵の英雄を超えた存在なのだよ」
「……英雄を超えた存在、ですか?」
「うむ。それがどんな存在か、お前に分かるか?」
「…………いえ」
「ほーれみろ、やっぱりこの俺の強さを分かっていないではないか」
最強無敵の英雄の、その更に上。
自分はそこに立つのだと豪語するランスは、にぃっと子供っぽく笑って。
「俺様は──主人公だからな」
「……主人公?」
「そ、主人公だ。主人公だから俺様が勝つに決まっているのだ。がーはっはっはっはっはっ!」
そして、いつものように大笑い。
一度敗れて撤退した先であっても、ランスはこれ程までに上機嫌に笑える。
その精神こそ、英雄を超えた主人公であると嘯く者に必要な要素なのだろうか。
「……あの、主人公というのは、一体……何に対しての主人公という事なのでしょうか」
「何の、とかはどうでもいいのだ。とにかく主人公なのだ。それぐらい分かるだろう」
「……いいえ、全く分かりません」
一方でそんな精神性は持たないホーネット。
自らを主人公だなんて言い張る気にはならないホーネットは首を左右に振って。
「……ですが、そうですね。貴方がどうあっても引く気は無いという事だけは分かりました」
「うむ、分かればよろしい」
「……私が間違っていました。貴方に余計な気遣いは無用という事ですね」
そして、一度その目を閉じる。
「……ふぅ」
一呼吸置いて瞼を開く。
その金色の瞳は真っ直ぐランスを見つめていた。
「でしたら……私も覚悟を決めましょう」
覚悟など、とっくに決めていたはずだった。
しかし甘かったなとホーネットは改めて感じた。
それはこれより先、魔人ケイブリスを倒すまで戦い抜く覚悟──ではなくて。
自分以外の者、誰の身に何があったとしても厭わない、そういう覚悟がまだ足りなかった。
これまで一人で戦う事が多かったホーネットにとって、その覚悟の重みは無縁のもの。
けれどもその重みは……隣に立ち並ぶ者の重みは不思議と嫌な心地にはならなかった。
「となればここからはもう一蓮托生ですね」
「んなもんとっくの昔からそうだろっつの。俺様が何ヶ月魔王城に居たと思ってんじゃ」
「ふふっ、それもそうですね」
そこでようやくホーネットも表情を綻ばせる程度に心の余裕を見せて。
「……では、次こそ勝ちましょう」
「うむ」
「美樹様の為にも、そして先代魔王ガイ様の遺命を果たす為にも、共に──」
──共にケイブリスを倒しましょう。
と、そんな再戦の誓いを結ぼうとした途端。
「おっと、ストーップ」
「……?」
そこでランスから待ったが掛けられた。
「ホーネット、それ止めろ」
「それ、とは?」
「今お前が言おうとしたやつだ。魔王ガイうんたら~っての、それは駄目だ。ノー」
どうやら魔王ガイうんたら~は駄目らしく、両腕で大きなバツマークを作るランス。
しかしどうしてノーなのか。理由が分からないホーネットは「何故ですか?」と小首を傾げる。
「魔王ガイ、な」
「はい」
「なんかムカつく」
「えっ」
「つーか最近、俺様はその魔王ガイと比較される事が妙に多いのだ。特にシルキィちゃんとか」
「比較……ですか。それは……確かにそうかもしれませんね」
ふと考えてみると、それはホーネットにも思い当たる点があった。
ランスと魔王ガイとの比較。そんな事をあの決戦前夜の夜に考えてみた事がある。
それはランスとガイ以外に深く知り合った男性が居ない、つまり他に比較対象が居ないからという理由もあるのだが、単純にこの二人は似通っている一面を持つという理由が大きい。
「うむ、ムカつくのだ。大体このランス様と誰かを比較するなんぞけしからん話だ」
けれどそれはランスにとっては気に食わない。
会った事も見た事もない、知らない魔王と比較されたって何も嬉しくない。
特にそれがすでにこの世にいない相手である為、実際にどちらが上なのかを証明する事が出来ないのもまた気に食わない。
「なんでも魔王ガイってのは顔面の半分がモンスターで、固い性格をしているかと思いきや唐突にハッチャける躁鬱野郎だって話じゃねーか。そんなん絶対にろくなヤツじゃねーぞ」
「そ、れは……、確かに父上の特徴を言い表すと間違ってはいないのですが、しかし……」
「そんな理由で今、魔王ガイと比較した全てにおいて俺様が勝つぞキャンペーンを実施中なのだ」
「……そ、そうですか。そのようなキャンペーンを実施していたとは……知りませんでした」
いつの間にやらランスはそのようなキャンペーンを実施していたらしい。
魔王ガイと比較した全てにおいて自分が勝つ。それはランスにとっての見栄やプライドの問題。
何も死者と張り合わなくても、とホーネットなどは思ってしまうのだが、しかしランスにとっては死者だろうとムカつく相手はムカつく。ムカつくならば張り合うのに理由はいらないのだ。
「てなわけで。ここでお前に『魔王ガイの為~』とか言われると俺様のテンションだだ下がりだ」
「……それは、困りますね」
「だろ? 困るだろ? だからもっとなんか違うアレにしてくれ」
「しかし、なんか違うアレと言われましても……」
顎の下に手を置いて、ホーネットは困ったように眉根を寄せる。
先程言おうとしていた言葉。それは改めて戦い抜く事を約束する言わば再戦の誓い。
そういう事を考えた時、ホーネットの頭の中に浮かぶ言葉と言えば父親の遺言しかない。
なにせホーネットとは、ホーネット派とはその遺命を果たす為に戦ってきたのだから。
しかしそれではランスのテンションが下がってしまうらしい。
だったらどうすれば──
「いっそのこと俺様の為に戦ってみるとか」
「……貴方の為、ですか?」
「うむ。ここで魔王ガイの為~とか言われるよりはそっちの方がテンション上がるはずだ」
「そうですか……まぁ、それでいいのなら……」
他に言うべき言葉も思い付かない。
だったらここは言う通りにしておこうとホーネットは頷いて。
「……では」
「おう」
手を伸ばせば触れられるような距離の中。
ランスとホーネットは真正面から見つめ合って。
そして。
「……ランス。私は貴方の為に戦います」
言った。
そこには一切の照れなど無い。
至極真面目な表情でそんなセリフを言った。
「おぉ」
するとランスは軽く目を見張る。
「ホーネット、お前って結構こっ恥ずかしいセリフを言うヤツだな」
「なっ、貴方がなにを……これは貴方が言わせたのではありませんか」
「いやそりゃそうなんだけど……こうもバカ正直に言われるとなんかおもろいっつーか……」
「お、おもろい……」
──折角言ってあげたのに。
貴方の為に戦いますなんて言ってみたのに、それで返ってきた反応が『おもろい』とは。
最初苛立ち、しかしすぐに冷静になったホーネットはすっとランスから視線を外した。
「……もういいです。ほら、先に進みますよ」
そして一人、すたすたと迷宮の奥へ進んでいく。
「あ、おい、待てって」
「待ちません」
「待てっつの。そもそもこの迷宮は二人で進まないとクリア出来ねーぞ」
「でしたらとっとと付いて来て下さい」
「とっとと、って……なんかお前、言葉づかいが雑になってきてねーか?」
「なってません」
「いーやなってる。昔のお前はとっとと~なんて言わなかったはずだ」
「そうですかね」
「ああそうだ。昔のお前はもっと丁寧で真面目なヤツだった」
「そんな事はありません。口には出さないだけで心の中ではずっと思っていましたから」
「え……?」
などと、あれこれ言い合う姿。
それは出会った頃のランスとホーネットからしたら信じられないような姿をしていて。
「てかホーネットよ。さっきの宣言に関してちょっと引っ掛かる点があるのだが」
「なんですか?」
「お前が俺の為に戦うのは良いとして、じゃあ俺は一体なんの為に戦えばいいのだ?」
「知りません。好きに戦って下さい」
「好きにってお前、んな投げやりな……」
「よく言いますね。私を投げやりな気分にさせたのは何処の誰だと思っているのですか」
その後も互いに口数は減らず、他愛もない会話を交えながら二人は迷宮の奥へ進んでいった。
──そして。
「……お」
迷宮が出してきた試練を軽くクリアして。
そうして辿り着いた電卓キューブ迷宮最奥部、そこには宝箱が一つ置いてあった。
「もしかして、これが……」
「うむ。この宝箱の中にあるのがお前専用の武器ってわけだ。ほれホーネット、開けてみ」
「えぇ」
ホーネットは宝箱を開く。
するとその中に入っていたのは──
「これは……武器、というより……」
「服……だな」
「……ですね」
その中にあったのは武器ではなく衣服。上下でセットとなっている専用の衣装。
勿論それはただの衣服ではない。各所に施された装飾類が特殊な魔法具で出来ており、装備した者の身体能力を向上させたり魔法の威力を高める効果があるらしい。
それは剣を使っても戦うが、しかし魔法も扱うホーネットに最適な代物と言えた。
「どれどれっと……ほう、中々にナイスなデザインじゃねーか」
「そうですか?」
「うむ。俺様はこういう格好好きだぞ」
「……そうですか。それは……何よりです」
そしてその服のデザインはランス好みの──つまりは中々に際どい格好をしていて。
白と紫紺色を基調としたその衣服が守るのは女性にとっての大事な部分のみ。胸元はおろか腹部まで完全に開けていて、魔人シルキィが好んできている衣装のような形式に近い。
私服というよりかはビキニタイプの水着のようなホーネット専用衣装──その名も『Xの服』
「……何故X〈エックス〉?」
「分からん。でもほれ、胸のこの部分の布がXの字に重なってるからじゃねーか?」
「……でしょうかね。まぁ、この際名称などはなんであっても構わないのですが……」
Xの服をその手に持ちながら、ホーネットは興味深そうな目で眺める。
「……ですが、確かに……この服からは特別な力を感じます」
「そりゃお前専用の武器な訳だしな。せっかくだし今ここで着てみたらどうだ?」
「そうですね。着るだけで強くなれるという話ですし──って、ここで?」
ランスの言葉に頷きかけた瞬間、ホーネットはその声色を変えた。
このXの服は着用する事により、自身の身体能力や魔力を向上させてくれる衣装らしい。
であるならば、ケイブリスとの再戦を前に当然着替えておくべきなのだが……しかし。
「……ここで、ですか?」
「うむ。ここで」
「……ここで、着替えろと?」
「うむ」
ランスは「当たり前だろーが」と言いたげな表情で即答してくる。
「ここで……」
今、ここで、この服を。
何一つ視界を遮るものなんてないここで……このXの服に着替えろと。
「……ランス」
「なんじゃ」
「……後ろを向いていてください」
「は? なんで?」
「何故って、それは……着替えるからですよ」
「んなの好きに着替えりゃいいだろ」
「ですから着替えますから、後ろを──」
「だから好きに着替えろって」
「………………」
何を言ってもランスは一向に譲らない。
……いや、というよりもこれは。譲る譲らないの話ではなくて、これはむしろ──
「あのなホーネット。そんなスケスケな服を着といて今更着替えの何を恥ずかしがるってんだ」
ホーネットが何を躊躇っているのかが全く理解出来ない。
そう言うかのような口ぶりで。
「………………」
「……っておい、何処へ行く」
「貴方はそこにいて下さい」
そして結局、ホーネットはその場を離れた。
来た道を戻って通路の角を曲がった所、誰の視界にも入らない場所で着替える事にしたらしい。
「……普段からあんな服を着ておいて、何故今更着替えを恥ずかしがるのだ? 分からん……」
ホーネットの複雑な女心に対してランスが真剣に首を傾げる事……数分。
「……お」
「……どう、でしょうか」
通路の奥からそそくさと、若干照れ混じりの表情でホーネットが戻ってきた。
「……なんだか、落ち着かない……ですね」
その様子は普段通り冷然と構えているとは言えないもので……有り体に言えばもじもじしていた。
Xの服とは隠す必要のある所以外は全て大胆に晒しているようなデザインで、さすがのホーネットでも照れてしまうのはやむ無し。
……と、いう訳では無くて。
ホーネットが照れている理由、それは単にこれまでとは違う衣装に着替えたから。
馴染みのない格好でランスの前に立っている事に彼女は照れているようだ。
「おぉ、よく似合ってんじゃねーか」
「……本当ですか?」
「うむ。実にホーネットらしくてグッドな格好だと思うぞ」
「……そうですか、良かった……」
よく似合っている。
その言葉をくれたのが存外に嬉しく感じて、ホーネットは胸を撫で下ろす。
「まぁさすがにスケスケとはいかないようだが、ちゃんとお前好みのエロエロな衣装だし」
「……私好み? どういう意味ですかそれは」
「え? だってお前って肌が良く見えるようなエロい服しか着たくねーんだろ?」
「………………」
そして「よく似合っている」の真意を知って、すぐに複雑な表情に変わった。
「……ランス。私は別に、そんな……なにも露出の多い格好を好んでいる訳ではありません」
「うわ、説得力ねー言葉。あんなスケスケ衣装を普段から着ておいてよくそんな事が言えるな」
「あれは……あれは魔人筆頭として、格の違いを明示的に示す為に着ているのであって……」
「分かった分かった。別にお前が露出好きだってのはもう知っとるから、そう無理すんなって」
「私は無理などしていませんっ!」
思わず声を荒げるホーネット。
ともあれ、こうして彼女は自身の専用武器であるXの服を手に入れた。
無事電卓キューブ迷宮の攻略も終わった。となれば──次に待ち受けるのは一つ。
「よっしゃ、んじゃあ行くぞホーネット。あのリス野郎にリベンジじゃ」
「えぇ、そうですね」
『Xの服』について。
これはハニホンXの表紙でホーネットが着ている衣装そのままをイメージしています。