佇む姿。
今やそこに立つ者は一人。
「………………」
元々の荘厳絢爛だった姿は失われて、ほぼ半壊状態となったカミーラ城。
尖塔や外壁が崩され、瓦礫の積み重なる大広間に立つのは一体の魔人──ケイブリス。
「………………」
崩壊の喧騒もとうに消え去って、今では不気味な程の静寂が漂うその場所で。
長らく沈黙していたケイブリスは……やがてその口をゆっくりと開いて。
「……俺様は、勝った」
そう、呟く。
「そうだ。俺様は勝ったんだ」
思わず、呟く。
何度も、呟く。
「俺様は勝った。ホーネットを倒したんだ」
自らの勝利を、呟く。
自らの言葉で勝利を宣言する。
まるで念押しするかのように何度も何度も。
「そうだ。勝ったんだ。……そのはずなんだ」
自らが勝ったのだと宣言する──しかし、その行動の意味とは。
念押しするという事はつまり、内心では自らの勝利を疑っているという事に他ならなくて。
「……なのに」
そこでケイブリスは表情を歪めて、ギリッと憎々しげに奥歯を噛み締める。
血管までもが浮き上がるその顔には勝利の歓喜も余韻も全く見られない。とてもじゃないがこれを勝者の表情とは呼べないだろう。
「なのに……ッ!」
しかしそれも致し方ない事か。
何故ならケイブリスは。先程からの言葉とは裏腹に勝利など手にしてはいないから。
いや、戦いには勝利した。
先程の一戦ではスクイレルザンの一撃によってランスとホーネットを見事に撃破した。
けれどもその勝利の意味とは。それはただ単に相手を上回ったというだけのものでしか無くて。
「……ヤツら、何処に逃げやがった……!」
あそこまで追い詰めたのに、しかしランスとホーネットを見失ってしまった。
だからまだケイブリスは勝利を掴んでいない──あの二人に止めを刺してはいない。
まだ……派閥戦争は終わっていない。
「……チッ」
苛立ちを表すかのように大きく舌打ちを一つ。
しかしケイブリスはその苛立ちを、胸の内にある癇癪を弾けさせて暴れたりはしない。
何故ならそれはもうとっくにやったから。今はもうすでに大暴れした後だから。
あの時。通路の一番奥の部屋にあの二人を追い詰めたはずなのに、そこで見失って以後、ケイブリスは湧き上がる強烈な怒りと激情を手当り次第にぶつけまくった。
なにせあと一歩の所まで追い詰めたのに逃げられてしまったのだ。その怒りは凄まじく、そのせいあってカミーラ城は半壊状態となってしまった。
(……どういう事だ)
幾度と吠えて幾度と当たり散らした分、今ではある程度頭の中は落ち着いて。
そうして冷静になった思考で考える。ケイブリスはもう長い時間ここで考えに浸っていた。
(奴らは何処に消えやがったんだ)
何故、あの二人の姿が見つからないのか。
寸前までは確かに声が聞こえた。あの部屋から聞こえてきた声は聞き間違いなんかじゃない。
それなのに数秒後にはもう姿が消えていた。これは一体どういう事なのか。
(運良く隠し通路でも見つけたのか……なんて、あの時は考えたもんだが……)
そんな可能性を考慮してケイブリスは探した。
あの二人を見失った後、この広いカミーラ城の隅から隅まで探し尽くした。
それも自らの手で。城内に居たカミーラの下級使徒達の手も借りず、むしろ邪魔してくる奴らは尽く蹴散らし、ケイブリスはありとあらゆる場所を探し尽くした。そして破壊した。
それなのに、いない。
どれだけ探しても、どれだけ壊してもランスとホーネットの姿は一向に見つけられない。
あの二人の捜索に夢中となっている内に、ふと気付けばカミーラにも逃げられてしまっていた。
けれど今はカミーラなどどうでもいい。今のケイブリスにとって大事なのは宿敵の行方だけだ。
(そもそもが……こうしている今だってホーネットの気配が全く感じられねぇ。あれ程に強い気配はそう簡単には消せねぇはずだ)
本音を言えば捜索中から、その気配を全く感じない時点でここには居ないのだと察していた。
ただそれでも慎重な性格が影響してか、念には念を入れて探してはみたものの……結果は先程から述べている通りで。
突然、魔人筆頭の強い気配を感じなくなった。
考えられる理由としては──
(……すでにホーネットは死んだ、か)
宿敵たる魔人筆頭はその命運を使い尽くして、すでにこの世から消えているという可能性。
仮にそうだとしたらその場合、死んだ魔人は遺体が残る事は無くその身を魔血魂へと変える。
魔血魂とは小さなガラス玉のような代物だ。それなら瓦礫の隙間に埋もれてしまって、これだけ探しても見つからない可能性は十分に有り得る。
(だが……)
だがしかし。あの時、敗走する寸前のホーネットの様子はどうだったか。
スクイレルザンを食らって戦えなくなってはいたものの……しかしそれで死ぬかと言うと。
特にケイブリスが絶対の自信を持つこのスクイレルザンという必殺技は──
(……それに男の方も見つからねぇのはおかしい。そっちの死体は残るはずだろう)
一方でもう一人の人間、ランスは人間である以上その遺体が消える事は無い。
だとしたら遺体が見つかるはずで、見つからない以上はまだ生きているという事になる。
(まぁ男の方はホーネットを抱えて逃げるだけの体力が残ってた訳だし、そもそもあの時に聞こえてきた声はあの男の声だった訳だし、そりゃ生きてるだろうが……)
ランスの方はまず間違いなく生きている。
だとしたらその姿が見つからない理由は……あの男はすでにこの城から逃げ出したのか。
さすがのケイブリスも脆弱なプチプチ共の気配までを察知する事は出来ないので、その可能性も一応有り得ると言えば有り得るが……。
「……いや」
そこでケイブリスは頭を振って。
「違う。それは違ぇな」
自らの言葉で自らの思考を否定した。
ホーネットの姿が無いのはすでに魔血魂となっているから。一方男の方は逃げているから。
つまり、自分はもう勝利を手にしている……というのは楽観的な考え、危険な考えだろう。
ケイブリスはそのようには考えない。他の誰ならともかく、慎重の上に慎重を重ねるこの魔人だけは宿敵の生死を楽観的に考える事など出来ない。
(ヤツらはまだ生きているはずだ。その上でここからどうにかして逃げ出しやがったんだ)
今の状況を慎重かつ臆病な思考で考えると、そのような答えが成り立つ。
それを前提とした場合、あの二人がここから逃げ出すのに考えられる手段としては何か。
ただの逃走では無い、その気配が察知出来ない程の遠くまで一瞬で逃げる手段となると──
(……瞬間移動、ってか?)
瞬間移動。あるいはワープ。
物理的な距離を無視してしまえる、そうした移動手段についてはケイブリスにも覚えがある。
例えば特殊な魔法陣を描いた二点を結ぶ、魔物兵を輸送する為の転移陣などが存在している。しかしとても大掛かりな下準備と輸送人数に応じた莫大な量の魔力を必要とする為、この派閥戦争においては採用を見送っていたのだが……。
「……けど、ホーネットなら」
しかし、あの魔人筆頭であればどうか。
その強大な魔力を以てしたら、瞬間移動の魔法だってあるいは可能なのではないか。
「可能性は……あるよな」
可能性ならば、ある。ケイブリスとしてはそう言うしかない。
最強最古を誇るこの魔人と言えども、魔法の才に関してはあまり恵まれていない。
故に魔法について詳しくはない。LV1でしかないケイブリスにはLV2の事は分からない。その才能でどれだけの事が出来るのか、瞬間移動が可能なのかどうかは想像で語るしかない。
だからこそ可能性の話として、ホーネットが瞬間移動の魔法が使えるとするならば。
それならば一応、あの部屋の中から一瞬で姿を消した方法にも説明は付けられるだろう。
「可能性だけなら……ある」
──しかし。
仮にそうだとすると、それは──
「……チッ」
そして再度の舌打ち。
今度のそれはただの苛立ちだけではなく、もっと別の……臆病な心の表れ。
瞬間移動。物理的な距離を無視して移動する、突然に姿を消す事が可能となる魔法。
という事はすなわち、それを使えば逆に突然現れる事だって可能なのではないか。
そんな思考の流れになるのも当然の話で。
(……くそ)
仮に今。自分の背後に突然、瞬間移動の魔法を使ってホーネットが現れたとしたら。
そのような仮定だって、この状況からは成り立つという事になってしまう。
(……くそっ)
それはケイブリスにとって恐ろしい仮定だ。
今この瞬間にも奇襲を仕掛けようと、あの魔人筆頭が魔力を高めているかもしれないなんて。
だったら何処から来る──
やはり死角となる背後からだろうか。
それとも首を狙って上から来るか。
そしてそれは何時現れる──
今日か、明日か、明後日か……更に先か。
それとも一番油断している時を狙ってだろうか。
などと、そんな事を考えてしまうと──
「……くそッ!!!」
堪らず大声で吠える。
しかしそうやって吠えながらも、ケイブリスは身の回りの警戒を解く事が出来ない。
あの二人との戦いが終わってもう結構な時間が経っているのに、見えない相手の奇襲に怯えるケイブリスはこの場から動く事が出来ない。
ランスとホーネットがまるで埒外の方法を使ってあの部屋から移動した事により、臆病な性格のケイブリスは身動きがとれなくなってしまっていた。
「クソがぁ……!! 俺様が、この俺様が勝ったはずなのに……ッ!」
魔人ホーネットに勝った。
宿敵たるホーネット派の主を倒した。
それなのに今……むしろ戦っていた時よりも強く恐怖心を感じてしまう。
自分は確かに勝ったはずなのに。あまりにも理不尽な現状にケイブリスは歯噛みする。
「どうする……どうすりゃいい……!」
これから自分はどうするべきか。
カスケード・バウに向かおうにも、ホーネットの行方が不明なままでは動くに動けない。
敵派閥の主の居場所が分からないままでは、派閥戦争の決着だって付けようがない。
しかし、だとしてもどうすればいい。
このままでは、ホーネットの奇襲に怯えて永遠にここでじっとしているしか無いのでは──
……と、そんな事を考えた、その時だった。
「……あん?」
ここから少し離れた地点。
ほんの数秒間パッと眩しく発光する光源が目に入った。
「なんだ今の光は…………って、ッ!?」
瞬間、ケイブリスの全身がぞわっと粟立つ。
「……まさか」
居る。感じる。
先程までは消えていた気配が──魔人ホーネットの気配を確かに感じる。
「っ、くるか!?」
即座にケイブリスは右の巨剣ウスパーと左の巨剣サスパーを構えて。
それと同時だった。
消えた時と同じく、それは突然に現れた。
「がーっはっはっはっはっは!」
積み重なった瓦礫の上から。
そんな馬鹿笑いが聞こえてきて。
「……は、はは」
そのムカつく声を耳にして、ケイブリスは苛立つよりもむしろ安堵してしまった。
目に見えない敵よりも、目に見える敵の方が遥かにマシだと感じた。
「お、いたいた。馬鹿リス見っけ」
「……ハハハ。なんだテメェら、尻尾巻いて逃げ出したんじゃなかったのかよ」
瓦礫の上に立つ二人の姿。
そのシルエットは紛れもなく一度見失ってしまったあの二人。
ランスと、ホーネットがそこに立っていた。
「逃げただぁ? バカを言うな、何故この俺様が貴様なんぞから逃げねばならんのだ」
「あぁ? オイオイ、テメェさっき俺様に背を向けて無様に逃げ出した事をもう忘れたのか?」
「うむ、忘れたな。俺様はお前と違ってそんな下らん事を一々記憶しとらんのだ」
こうして再び自分の前に現れて、それでも男の方の様子は相変わらずだ。
相変わらずのデカい態度、大して強くもないくせにただ偉そうにしている。
「てな訳でさっきの戦いは無し、今度こそ貴様をぶっ殺すぞ。……なぁホーネット?」
「…………えぇ」
「……あん?」
そして気になったのはもう片方。
ランスの隣で口数少なく答えるホーネット、こちらは少し様子がおかしい。
まず服装が変わっている。先程まで着ていた普段通りの格好ではなく、より動きやすそうな布面積の少ない服に着替えている。
その表面的な変化も気にはなるのだが……一番おかしいのはホーネット自身の様子だ。
不思議とその肌が紅潮していて、更には各所に玉の汗が浮かんでいる。
そして顔色も赤らんでいて、よく聞けばその呼吸も整ってはいなかったりと。
とにかくホーネットの様子はこれまでとは違う、妙に艷やかな雰囲気でそこに立っていた。
「……へっ、ぶっ殺す、ねぇ……くくっ」
そんな相手の分析を終えた後──
勝機が未だ手の中にある事を知ったケイブリスは堪え切れずといった感じに吹き出して。
「……クククっ、ぎゃははは!! ぐぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ!!!」
そして、腹の底から嘲るように大笑いした。
──バカな奴らだ。なんてバカな奴らなんだ!
一度無様に負けたというのに、どうやら全く懲りてはいないらしい。
先程と比べて何かが大きく変わった訳でもない、それで勝ち目があるとでも思っているのか。
大体ああも情けなく逃げ出したのなら、そのまま姿を暗ましてしまえばいいものを。
それでもあえて戦うというのなら、奇襲の一つでも仕掛けてくればいいものを。
一度負けたというのに逃げず、それでいて再び真っ向から向かってくるなんて。
コイツらは一体何がしたいのか。ケイブリスにはバカの思考が全く理解出来なかった。
「ぶっ殺すだとぉ!? そりゃあこの俺様のセリフだ!! 次こそは絶対に逃さねぇぜ、テメェら二人を完璧にぶっ殺してやるからよぉ!!」
「言ってろ雑魚が! このランス様の辞書に敗北の二文字は無いッ!」
ランスが腰から魔剣を引き抜く。
そして再戦の火蓋が切って落とされた。
「とーーうっ!」
掛け声と共に、ランスは瓦礫の山の上から高々とジャンプ。
跳躍の勢いに合わせて魔剣を振り下ろし、直後発生する巨大な刃の如き衝撃波。
「オラァ!」
すぐさまケイブリスも応戦開始。
飛び掛かっていたランスの一撃を──ランスアタックを右の巨剣で受け止める。
「ぐぬぬ……!」
「なんだぁ!? そんな攻撃でこの俺様に勝てると思ってんのか……よッ!!」
必殺技との鍔迫り合いは互角。
けれど双剣使いであるケイブリスにはまだ左の巨剣が残っている。
右での鍔迫り合いを維持したまま、左でランスの胴を落とすかのように横薙ぎの一閃──
「ふっ!」
を、防ぐようにホーネットが飛び込んでくる。
細身の剣を身体の真横に構えて、自らの腰よりも太い巨剣の一撃を真っ向から受け止めた。
「ぐっ、ケイブリス……っ!」
「この、死にぞこないがぁ……ッ!」
睨み合い、共にその力を振り絞る。
膂力ではケイブリスに分がある、とはいえさすがにランスとの鍔迫り合いを維持したままでは思うように剣が振れないのか、右と同じように左の巨剣も押し合いのような形となる。
そしてこのような膠着状態となった場合、有利となるのはそこで別の力を扱える者の方で。
「……──」
(っ、マズい!)
ホーネットがその口の奥、声にも出さない程の小声で呪文の詠唱をしているのが分かった。
瞬間ケイブリスは背後に飛び退く、と同時に眩く発光する白の魔法球。
「──はぁ!」
放たれる白色破壊光線。
威力も狙いも申し分無しの一撃。
回避しきれないと悟ったのか、ケイブリスは身を守るように左腕を突き出す。
「ぐッ!!」
直撃。
分厚いレーザーを受け止めた左腕、その焼くような痛みはつい先程までとは違っていて。
「──ぐ、ググッ、おぉぉオオオ──!!」
(なんだとッ──!? ホーネットの魔法の威力が上がってやがる──ッ!!)
重みが違う。破壊光線の圧が増加している。
先程はダメージを負いながらも受け止める事が出来たはずの一撃に、しかし今度はその圧に押されてケイブリスは体勢を崩してしまう。
「スキありー!!」
「チィ……!」
その隙を狙ってランスが迫る。
合わせてケイブリスも攻撃を繰り出したが、不安定な体勢で振るった右の巨剣には力が乗らず、軽く回避されてすぐに反撃が。
「でりゃッ!」
けれどたかが人間の攻撃なんて──
と思いかけて、しかしその武器は魔剣だったと考え直した瞬間、右腕に鋭い痛みが走った。
「ぐッ!」
やはりこれだけは。魔剣カオスの切れ味だけは侮る事は出来ない。
鍛え上げたこの肉体を、剛毛に覆われた二の腕を易々と斬り裂くあの剣だけは恐ろしい。魔人にとっては何処までも天敵だ。
「行けるぞホーネット! このままガンガン押して押しまくる!」
「えぇ!」
向かってくる相手、ランスとホーネット。
二人はこの通り、一度敗れても尚戦う気でいるらしい。ガンガン押せば勝てる気でいるらしい。
「……ハッ」
そんな二人の会話を聞いて、ケイブリスは思わず笑ってしまった。
「イキがってんじゃねぇよ! 雑魚共がァ!!」
一度この二人から勝利した事で、臆病な思考の段階なんてとっくに過ぎ去って。
今は普段よりも増長した思考、それがケイブリスの心気を普段よりも高ぶらせていた。
理由は分からないがホーネットの魔力が強化されている。
そしてランスが振るう魔剣は相変わらず驚異だ。
……が、それがどうした?
その程度が一体なんだって言うんだ?
その程度で勝てると思っているのか。
この俺様に、最強最古の魔人ケイブリス様に敵うとでも思っているのか。
「特に……このスーパーデンジャラスな一撃に敵うとでも思ってのかァ!!」
最強の魔人が繰り出す最強の一撃。
この必殺技を前にして、雑魚共に抗う術などがあるとでも思っているのか。
「だりゃッ!」
ケイブリスは深く身を沈めて、力を溜めて一気に大ジャンプ。
天井が崩壊した事で上限が無くなり、先程の戦闘時よりも更に高く跳躍する。
「ランスっ!」
「あぁ、来るぞ!」
その攻撃動作を目にして、表情を変えたランスとホーネットはすぐにアクションを起こした。
ランスはその手に握る魔剣に力を溜めて、
方やホーネットは瞼を閉じて、周囲に浮かぶ6つの魔法球全てを眩く発光させて。
「なにしたって無駄だァ!!」
この技に死角は無い。これは最強の自分に相応しい最強の必殺技。
特に相手が二体しかいないこの状況なら、放つだけで必勝となる無敵の技。
「今度こそ死にやがれェッ!!」
尻尾を振るう力を利用しての回転落下斬り。
双剣より繰り出す二条の莫大な衝撃波。それこそがケイブリスの必殺技スクイレルザン。
回避も許さず、計2名の相手を問答無用で戦闘不能状態に追い込む必殺の一撃。
それを振り下ろす、寸前──
「……掛かりやがったな」
と呟き、ランスは口元をにぃっと曲げた。