『世界の変革をお知らせします』
アコンカの花が咲く。
時代の移り変わりを知らせる花が咲く。
『新しい魔王が誕生しました。まだ正月早々ですが、LP歴は8年で終了となります』
この世界に新たな魔王が誕生した。
その瞬間から、この世界にある全ては魔王のものとなった。
『来年からRA1年となります。お間違えなきように』
アコンカの花が告げた新たな年号は──RA.
「……RA?」
「新しい年号……魔王が……RA?」
その事実が知らされる。
「……遂に来たわね」
「そうだな。予めウルザから報告を受けていたとはいえ……ううむ、やはりRAか」
とても希少な花であるアコンカの花を所有する一部の者達へと。
「……リア様、これは……」
「……そうね、間違いない」
それは例えば、各国の王室とか。
「……ランス」
他にも、AL教本山の聖堂奥とか。
新たな年号はRA.
それが、とある人間の男の名前から取られた年号だと気付いた者はどれだけ居ただろうか。
魔王。
それは魔族の王にして絶対の支配者。
この地上で最も力ある存在であり、この世界の全ては魔王の所有物だ。
であるならば。魔王のおわす所こそがこの世界の中心に他ならない。
よって今現在世界の中心となった場所、魔物界の北部にある魔王城の客室にて──
シャリシャリシャリ……。
と、包丁で果実の皮を剥く音が聞こえる。
「……なっちまったなぁ」
小気味良いその音を聞きながら、ソファにまったりと掛ける男は感慨深げに呟く。
「……なっちゃいましたねぇ」
すると隣から相槌が打たれる。
彼女は包丁を持つ手元を滑らかに動かして、シャリシャリと丁寧に皮を剥いていく。
「ま、なっちゃったもんはしょーがねーよな」
「ですねぇ。しょうがないですねぇ」
「だよなぁ。しょうがねぇよなぁ」
「ですねぇ……と、はいどうぞ、剥けましたよ」
そうして手を止める。
一口サイズに切ったそれをお皿に乗せて、男の前に差し出した。
「ん」
と呟き、男はそれをパクリと一口。
「お味はどうですか?」
「もぐもぐ……うむ、なかなか──」
その瞬間一気に酸味が襲ってきて。
「──すっぱっ!!」
思わずランスは叫んでしまった。
みかんに似たその果物の名はヒラミレモン──魔王御用達の珍しい果物である。
ここは魔王城。ランスの部屋。
……もとい、今では魔王のおわす場所。
「シィル、水、みずーっ!」
「は、はい! どうぞランス様!」
お水の入ったコップを差し出すシィル。
ランスはそれをぐびぐびと一息で飲み込む。
……そう、この男がランス。
RAという新たな年号の元となった男、魔王になっちゃった男である。
「うえ~、すっぺー。美樹ちゃんってば普段からこんなすっぺーもんを食ってたのか」
「そういえばJAPANで会った時には美樹ちゃんもヒラミレモンの酸っぱさに苦労してましたね」
ランスが今食べたヒラミレモン。それは魔王化の症状を抑える効果のある唯一の果物。
魔王としての覚醒を防ぐ為に来水美樹が定期的に食していた果物ではあるが、しかしその果肉の味はものスゴく酸っぱいという特徴がある。
その酸味は美樹の口に合わなかったのと同様、残念ながらランスの口にも合わなかった。
「そりゃこんなに酸っぱいんじゃ食うのにも苦労するだろーな。てなわけで俺様はもう食わん。シィル、残りのヒラミレモンはお前が全部食え」
「だ、駄目ですよランス様。これはランス様が食べないと意味が無いんですから……」
「うるさい。お前は魔王様の命令に逆らう気か。そんなヤツはこうじゃー!」
「わっ! うぷっ!」
ランスは皿の上にある小切りのヒラミレモンをまとめて掴むと、シィルの口の中に無理やりねじ込んでいく。
「うりゃうりゃ、食え食えー!」
「んぎゅ、ら、ランス様なにを……むぎゅ、うっ、す、酸っぱい、酸っぱいですー!」
するとあまりの酸っぱさにシィルも泣き叫ぶ。
ヒラミレモンとはそれ程の酸味らしい。酸っぱい食べ物が好きな人でも無い限りは好き好んで食べる気にはならない果物のようだ。
「うぅ……口の中が酸っぱいです……」
「シィル、早い内にその酸っぱさに慣れておけよ。この城にある全てのヒラミレモンを食い切るのはお前の仕事だからな」
「えぇー! そんな、あの量は私一人じゃ絶対に無理ですよっ! 後々必要になるかもしれないからって、ランス様が寝ている間に皆さんで大量に集めてくれたんですから!」
「いらん。俺様はもう絶対に食わん」
もしものケースを考えても、魔王になったばかりのランスにはヒラミレモンが必要だろう。
そう思って集めてくれたらしいが、それはランスに言わせるとありがた迷惑というものである。
「って、俺が寝てる間にそんな事してたのか」
「はい。ヒラミレモンに関してはホーネットさんとウルザさんが集めてくれて……。他にも大勢の魔物達や魔人達をこの城に呼び寄せたりとか、ランス様が目覚めた後の事を考えて皆さん忙しそうにしていましたよ」
「ほーん……」
自身が眠っていた時の話にランスは興味深そうに耳を傾ける。
今こうしてシィルと喋っているランスだが、これはもう一週間以上ぶりの目覚めとなる。
今から十日程前──あの日の事。
ランスは新たな魔王となる為、来水美樹から魔王の血の継承を受けた。
美樹の中にあった魔王の血を飲み込んた直後、地獄の苦しみが襲ってきた。
喉を潰され、肺が焼かれ、心臓が壊れたかのような痛みにランスでさえも絶叫を上げた。
ひたすら叫んで、藻掻き苦しんで。
永遠に止まないかと思われたその苦しみは……いつしかピタリと止んだ。
それこそが適合の証。ランスは魔王になる資質を有していたのだ。
そしてその後、ランスは深い眠りに付いた。
眠って眠って……そうしている間に、その身体は別のものに作り変えられて。
そして十日程経過した今日、目が覚めたランスは人間ではなく魔王となっていた。
「しっかし一週間以上も眠っていたとは……全然そんな気はしねーから不思議な感じだ」
「ランス様、本当にぐっすりでしたよ。この睡眠はきっと魔王化に必要な事なんだろうってホーネットさん達は言っていましたけど……」
「ま、俺様としても寝てるだけで魔王になれたのは楽っちゃ楽だったが。……けど、なんか魔王つってもあんまし変わった気はしねぇがな」
「そうなのですか?」
「うむ」
言いながらランスは左手をにぎにぎ。
そこにある感覚は……その力強さは、確かに人間だった頃のそれを遥かに凌駕している。
圧倒的な力の滾りを感じる、今はどんなものでも握り潰せそうな感じがする……が。
「そりゃまぁパワーとかは強くなったんだろうが……どうだシィル、他になんか変わったか」
そうした内的な変化とは別。それ以外の外的な変化となるとどうか。
「そう……ですねぇ。あくまで見かけ上はほとんど変わってないかなー……って感じですね」
シィルは少し首を引いて、隣に座る主人の姿をしげしげと眺める。
この度人間をやめて魔王となったランスだが、その姿形などには大きな変化は無い。
身長や体重は勿論顔付きや表情なども、あくまでこれまで通りのランスのままである。
……ただ、それでも異なる点はある。
時折その身体からオーラのようなものが、血のように紅い粒子が溢れ出る時がある。
それこそが魔王の力の根源。身体の奥から無尽蔵に溢れる絶対なる支配者の証。
「……でも、良かったです。少なくとも見た目はランス様がランス様のままで」
「なんだそりゃ。俺様がモンスターになるとでも思っとったのか?」
「え、えぇと……モンスターってわけじゃないですけど、でもやっぱり魔王になるって言われたら、なんかこう……ランス様が今よりも怖い感じになっちゃうのかなー、とか……」
魔王になる事。人間ではなくなる事。
それに不安を感じるなというのが無理な話だ。特に長らく一緒に居た者にとっては尚更。
だがそんな心配をしていた奴隷の顔をランスは馬鹿にするような目で見つめて。
「アホ。お前は俺様が言った事をもう忘れたのか」
「……あ、いえ……勿論覚えてますけど……」
そして。
あの時交わした言葉を思い出して、シィルがその頬をちょっぴり頬を赤らめた、
その時だった。
コンコン、と軽いノック音が。
「魔王様。お目覚めになられたと聞きました。……入っても宜しいでしょうか?」
「お、ホーネットか。いいぞ」
「では、失礼します」
礼儀正しくドア越しに挨拶してから、ホーネットが室内に入ってきた。
「……っ、魔王、様……」
「おう」
そして、そこにいた姿を見て息を飲み込む。
それは……ソファに掛けていたのは間違いなくランスだったが……それは。
人間のシィルには分からない感覚となるが、魔人であるホーネットにはよく分かる。
「……本当に、なられたのですね」
それは紛れもなく魔王の感覚。
魔族を支配する王の力。それがランスから……そこにいた魔王から伝わってくる。
ランスは本当に魔王になっていた。
無論疑っていた訳では無い。無いのだが、けれどもあのランスが、本当に──
「あん?」
「あ、いえ……なんでもありません。それよりも魔王様、お身体の調子はどうですか?」
「どうもこうも無い。見ての通り俺様はピンピンしてるっての」
「……どうやらそのようですね」
魔王になる直前、血の継承に苦しみ喉が裂けんばかりの絶叫を上げていたランスの姿。
それを知っている者達は皆今日まで不安が消えなかったのだが……しかしこうして元気になった姿にホーネットも安堵に胸を撫で下ろす。
「んで? 俺様になんか用事か?」
「はい。……ただその前に、お食事などはもう取られましたか?」
「あぁ、食った食った。めちゃくちゃ酸っぱいデザートまで食ったぞ」
「……そうですか」
体調に問題は無し。朝食まで美味しく平らげた。
となれば新たな魔王として、ランスがまず最初にするべき事と言えば。
「魔王様、今、お時間は宜しいでしょうか?」
「あぁ、別にいーけど」
「でしたら何分急な話ではあるのですが、王座の間まで来て頂けませんか?」
「王座の間?」
ランスが鸚鵡返しに質問すると、ホーネットは常の真面目な表情で頷いた。
「はい。大体の者が集まりましたので……魔王様さえ宜しければお姿を見せて貰いたいのです」
◇ ◇ ◇
──王座の間。
それはこの魔王城の上階にある大広間の一つ。城の中でも最も豪華な内装を施された空間。
そこは王たる者が腰を下ろす座。そして臣下たる者達が跪拝する為の部屋。
「この城に王座の間なんてあったのだな。俺様知らんかったぞ」
「私も知りませんでした。考えてみればここはお城だから当然あるはずなんですけど、私達ももう結構長くここで暮らしているのに一度も見た事ありませんでしたから……」
「魔王様が不在となって以後、王座の間は今日の日までずっと閉めていましたからね。二人が知らなかったのも当然と言えば当然かもしれません」
廊下を歩く三人、ランスとシィルとホーネット。
目的地は先程からの話の通り玉座の間。この度約八年ぶりに開かれた特別な場所。
この世界に新たな魔王が誕生した。
来水美樹から血の継承を受けて、ランスが新しい魔王となった。
となれば最初にするべき事。それはやっぱり新たな魔王の存在を周知させる事だろう。
「あれか。俺が新たな魔王様だぞがはははー! ……とか言えばいいのか?」
ランスがそう尋ねてみると、先頭を歩くホーネットは「……いえ」と小さく首を振って。
「何を語るかは魔王様の自由です。魔王様は我々の王なのですから、臣下の前で何を語ろうとも、あるいは何を語らずとも構いません」
「なーるほど。要は好きにしろって事か」
「その通りです。魔王様はありのままに振る舞えばそれで問題ありません。必要な事はそれが新たな魔王様なのだと知らしめる事であって、それをどう受け止めるかは彼等次第ですから」
魔族の王が魔王。そして魔に属する者達、魔物や魔人達は全てが魔王の臣下となる。
それは人間世界の王制度と同様だが、しかし権力によって生じる人間世界の王制度とは違い、魔族の王というのはあらゆる生物を支配するに相応しい絶対的な力をその身に宿している。
故に魔王と臣下の間には下剋上というものが起こり得ず、魔人ガイが魔王ジルから魔王の力を奪った唯一の例外を除いて、魔王と臣下の上下関係というのは何があっても変わる事は無い。
とすれば魔王たるランスは何をしようとも、どう振る舞おうとも構わない。
絶対の支配者である魔王の言動が抑制される謂れはなく、臣下がそれに合わせるべき。
それが魔物界における王と臣下の関係。要はランスが言っていた通り、魔王というのは何を好きにしたって構わない存在と言えた。
「現在、ほぼ全ての魔物達は未だ美樹様の事を魔王様だと思っているはずですからね。新たな魔王様が誕生した事を周知する為にも、魔王様が王座に座る姿を臣下達に見せる必要があります」
「ふーむ、周知ねぇ……」
「はい。その為に魔物界の各地に知らせを出して主要な面々を集めております。魔王様の命無く行った事ではありますが、しかしこの程度の事で魔王様の手を煩わせる必要も無いと思いましたので」
「まぁそれは構わんのだが……」
初めて足を踏み入れる王座の間とか、そこに集められた魔物達とか、諸々。
そんな事よりもランスが気になったのは、はきはきとした淀みない口調で喋るこの魔人の事。
「なぁホーネットよ。お前なんだか妙に張り切ってないか?」
「勿論です。私は魔人筆頭、魔王様に誠心誠意仕える事こそが使命ですから」
「……そ、そうか」
思わずランスが言葉に詰まる程、ホーネットは真っ向からド直球の答えを返してきた。
何やらやる気になっているらしい魔人筆頭があれこれ手を回した事によって、魔物界の各所から多くの者達がこの魔王城に集められた。
「今回呼び出したのは魔物界における重鎮達や各魔界都市の有力者達など、そして魔王様の手足となるべき魔人達も招集しています」
「わぁ、なんか凄そうです。さすがは魔王って感じですね、ランス様」
「そういや魔人って事は、もしかしてケイブリス派のヤツらも呼んでるのか?」
「えぇ、勿論です。美樹様に代わる新たな魔王様が誕生したとなっては、もはや派閥云々と言っている場合ではありませんから」
絶対の支配者が誕生した以上、魔人同士の諍いなど意味を成さないもの。
故に今回ホーネットはケイブリス派に属していた魔人達も同様に招集した。元より派閥戦争はすでに終結済み、新たな魔王の前で魔人達を分けて扱う意味も無い。
「集まった魔人は元ホーネット派から私、サテラ、ハウゼル、シルキィ、ガルティア、メガラスの六名に加えて、元ケイブリス派からサイゼル、レイ、パイアール、ケッセルリンク、カミーラの計十一名となります」
「ほうほう、聞いた限りだと俺が知ってる名前は全員揃ってるって感じだな。つーかケッセルリンクとかカミーラまで来たのか」
「はい。あの二人は魔人四天王ですからね。他の魔人達よりもむしろ率先して魔王様に恭順するべき立場にありますから」
とそこでホーネットは一度立ち止まって、
「……それで、ですね」
その先の言葉を言い難そうに表情を曇らせる。
「なんだ?」
「……その、今回の招集には応じず不参加となった魔人がいまして……」
「……ほーう? 魔王様の呼び出しに応じなかった魔人がいるってか」
「はい。……ただその、一応それぞれに事情があるにはあるのですが……」
新たな魔王が初めて公の場に姿を現す、言わばお披露目式のようなもの。
新魔王にとっての晴れの舞台に不参加を決め込んだ不届きな魔人、それは以下の三名となる。
「まず一人目はワーグです。ワーグはこちらが送った手紙には返信を返してきたのですが、やはりその能力の都合上魔王城に来させるのが難しく……」
「あー、まぁワーグはしょうがねーな。なら今度俺様の方から会いに行ってやるとするか」
「えぇ、是非そうしてあげて下さい。手紙の返事でも魔王様に会いたがっていましたから。……そして、二人目はますぞゑです」
「……ますぞゑ?」
って何だっけ? とランスは首を傾げて、
「魔王様はご存じないかもしれませんね。ますぞゑというハニーの魔人が存在しているのです」
「……あー、なんか居たなぁそんなの」
すぐに思い出したのか、ポンと手を打つ。
魔人ますぞゑ。派閥戦争ではどちらの派閥にも属さなかったハニーの魔人。
「……あれ? そいつってちょっと前に俺様が倒さなかったっけか?」
「そうなのですか?」
「うむ。まぁ前回のあれは抜きにしても、それ以前にも戦ったような戦ってないような……」
よくよく考えてみると過去に何度か倒したような気がしないでもない。
だがその都度復活している不思議な魔人、それがハニーの魔人ますぞゑ。
「……まぁいいや。んで、そのますぞゑは呼び出しに応じなかったと」
「と、言いますか……ますぞゑは奈落に住んでいると言われているのですが、奈落とは地の底の果て。ここからはとても遠い場所になりますので、その……」
「なるほど。そもそも時間的に招集するのが無理だっつー話か」
「そういう事です。呼び出しの手紙を持たせた魔物兵達もまだ帰ってきてませんから、ますぞゑを呼ぶとしたら相当な時間が掛かると思います。無論魔王様がそうせよと命じられるのであれば、如何なる手を使ってもますぞゑを呼び付けますが……」
「いや別にいい。あんなお化けハニワみたいなヤツに会いたいとは思わん」
ランスがそう答えると、ホーネットが「魔王様ならそう仰られると思っていました」と答えた。
ハニーの魔人にはランスも興味を示さないだろうと半ば分かっていたので、ホーネットもますぞゑの呼び出しに関しては躍起にならなかった。
このように誰からも興味を持たれず無関心に扱われる事によって、今日も奈落の底でのんびりしている魔人、それがますぞゑという魔人だった。
「そして三人目は健太郎さんです」
「健太郎? ……って、そっかそっか。そういやあいつも魔人だったっけか」
「えぇ。私も知らなかったのですが、いつの間にか魔人になっていたようですね。健太郎さんに関しては今もこの魔王城に居るのですが、彼は今美樹様のそばに付きっ切りとなっていまして……」
「美樹ちゃんに? もしかしてあの後なんか問題でもあったのか?」
あの後。美樹から魔王の血を継承した後、その後美樹がどうなったのかランスは知らない。
もしやまだあの子の問題は解決していないのか。なんて思う間もなく「問題という程の事ではないのですが……」とホーネットが呟いて。
「血の継承を行い人間に戻った事が影響してか、美樹様は今体力を落としているそうでして。まだ十分に歩くのも辛い状態なようです」
「そっか。それで健太郎が付きっ切りって訳か」
「はい。……無論、今からでも王座の間に呼ぼうと思えばすぐに呼べるのですが……」
「それも別にいいや。健太郎なんぞ居ても居なくても同じだからな」
という事で、ワーグとますぞゑに加えて小川健太郎も不参加が決定。
それぞれ特殊な事情がある者達を除いて、全ての魔人達が今回の招集には参加している。
それだけ新たな魔王というのは魔人達にとって、いや誰にとっても大きな関心事なのだろう。
「……と、着きましたね」
「お、ここが王座の間か」
そこでランス達の足が止まった。
一行の前には一際大きな扉が。その扉の奥には絶対の支配者たる者が腰掛ける王座がある。
「魔王様が到着しました」
言いながらノックをすると、両開きの扉が向こう側から開かれる。
「……では魔王様、どうぞ」
そして魔人筆頭は道を開けるように脇に控えて。
「うむ」
ランスは──魔王は鷹揚に頷いた。