ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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個人面談 三人目

 

 

 

 

 ──個人面談。

 それは一対一での話し合い。

 

 自らの生存権を手に入れるべく。

 一斉在庫処分セールから逃れるべく。

 魔人は自らの主たる魔王へと立ち向かう。

 

「それでは次の方、どうぞー」

 

 受付役のシィルから合図が聞こえて。

 魔王ランスの私室。そのドアを恐る恐る開いた彼の耳に届いた第一声は──

 

 

「よし。こいつはいらんな」

「……ふぅ。面談って聞いてたけど、これは初っ端から取り付く島もないね」

 

 初対面早々のお言葉に、席についた魔人パイアールは顰めっ面で嘆息する。

 

 今回の面談相手は魔人パイアール。

 ケイブリス派に属していた魔人の一人、発達した科学力を駆使する魔人である。

 

「うむ。こいつこそはいらんはずだ。なんたって男でガキだからな」

「ふぅん……性別や外見で判断するんだ。能力じゃなくってさ」

「当然だろーが。性別や外見以上に大切な事なんてこの世には無いのだ」

 

 性別や外見。つまりは男性か、それとも女性か。

 女性である場合は更にその外見が美人だったり可愛かったりするか、それともブスか。

 それが魔王ランスが配下に求める判断基準。人間だった頃から変わらない絶対的な物差し。

 

「……それで、僕を処分するって?」

「そういう事だ。それにお前は元ケイブリス派でもあるしな」

 

 その物差しの外側に立つ魔人パイアールは、現状生き残りの目がとても厳しい状態にある。

 そもそもが立場的には魔人レイと同様、魔人でありながら魔王に反逆していた身。覚醒前の前魔王に対する行いではあるものの、魔王が魔人を処分する理由としては十分なものと言える。

 

「……ケイブリス派なんて入りたくて入ったわけじゃないんだけどね。僕としては新たな魔王様に対して迷惑を掛けるつもりなんて無いから、その逆に僕の事も放っておいて欲しいんだけど」

「そうはいかん。お前は魔人で俺様の配下だ。だったら俺様が必要とする人材じゃねーとな」

「……はぁ。これならガイとかジルとかの方がまだマシだったね」

 

 分の悪い現状を自覚してパイアールは息を吐く。

 彼は自らの研究にしか興味を持たない魔人。だから本音を言えば魔王が誰であろうが、リトルプリンセスだろうがケイブリスだろうが、そして新魔王ランスだろうがどうだっていい。

 本当ならこんな面談も無視して研究所に籠もっていたい所なのだが、しかし自身の命が懸かっているとなると無視は出来ない。

 長年掛けての研究を完成させる為にもパイアールは一斉在庫処分セールを免れる必要があった。

 

「男のガキなんざ俺様の配下には必要無いのだ。それともいっそロボになってみるとか」

「ロボ?」

「うむ。ロボ。その方がまだ……いや、あんま変わらねーか」

 

 一方ランスにとって、魔人パイアールというのはロボットの姿の方が見慣れている存在。

 前回の第二次魔人戦争時、自由都市郡に侵攻した魔人パイアールはランス率いる魔人討伐隊によって討伐された。けれども死ぬ前にパイアールは自身の脳機能のバックアップを保存していた。

 そうして復活したのがパイアールロボ。魔人パイアールの発達した脳機能が完全に移植された画期的なロボットであり、その後パイアールロボは魔人討伐隊の一員として戦う事となった。

 

「まぁロボだろうがガキだろうが関係無い。俺様の配下に男はいらん……が」

 

 とはいえパイアールロボとは、魔人パイアールの脳機能を完全に移植した機械。

 であればどうしてパイアールロボが、魔人パイアールの思考が人類の味方となったのか。

 

「……が?」

「が、一応お前には多少の価値はある」

 

 その理由こそが魔人パイアールの有する価値。

 目の前にいるガキになど興味無し。最初からそっちが目当てだったランスはにやりと笑った。

 

「パイアール、お前には姉が居るだろう」

「……ッッ!」

 

 そうと告げた途端、パイアールの表情がサッと固く強張った。

 

 パイアールの姉、ルート・アリ。

 彼女こそがランスの狙い。性別も外見も問題なく魔王のお眼鏡に適う美女。

 

「……どうして、それを……!」

 

 そして彼女こそ、魔人パイアールが生きる理由そのもの。

 人間だったパイアール・アリが魔人になってまで研究を続行しようとした唯一の理由。

 

「どうして、か。魔王様に隠し事が出来るとは思わない事だなぁパイアールよ。お前に姉がいる事なんざとっくにリサーチ済みなのじゃ」

「……あっそう。誰から聞いたのは知らないけど随分とお喋りなやつがいたもんだね。……あぁそうだよ、確かに僕には姉がいる。けどそれが何? 魔王様には関係の無い事だと思うけど」

「関係無いかどうかは俺が決める事だ。違うか?」

「っ、それは……そうだけど」

 

 ルート・アリについて関心を示す魔王の様子にパイアールの警戒心が強まる。

 肉親である姉の存在は弟にとっての全て。加えて今のパイアールとってルートとは、自らの失敗と苦難の歴史とも言い換えられる。

 

 何故ならパイアール・アリの研究とは、不治の病に罹ったルート・アリを復活させる事だから。

 しかし長年研究を続けても結果は出ていない。わざわざ魔人になって無限の寿命を手に入れてまで長い月日を研究に捧げても、未だに姉とは再会を果たせていない。

 そんなパイアールにとって姉ルートの話題は一番の地雷。本当なら口にも出したくない話題なのだが、しかし相手が魔王とあってはそうもいかない。

 

「でも魔王様。興味を持ったところで今は姉さんに会う事なんて出来ないよ。今は──」

「そうだな。俺もついさっきその事を思い出したのだが、お前の姉ちゃんはぶよぶよぐにゃぐにゃの肉塊になっちゃってたんだったよな」

「……よく、知ってるね」

「うむ。んでお前はそれを治す研究をしていたと」

「……あぁ、そうだ。姉さんを治す事、それだけが僕の全てだ。僕は姉さんを治療する事さえ出来れば他はどうだっていいんだ。だから……」

 

 だから見逃して欲しい。一斉在庫処分セールは止めて欲しい。

 新たな魔王の治世を邪魔するつもりはなんて毛頭無いから、自分の事は放っておいて欲しい。

 そんな文句で魔王を説得しようとしていたパイアールだったが。

 

「俺様が治してやろうか?」

「……は?」

 

 聞こえた言葉に最初、何を言っているのか分からないとばかりにぽかんとした顔になって。

 

「お前には治し方が分からねぇんだろ? だったら俺様が治してやるよ」

「………………」

 

 そしてその次、一気に湧き上がってきた黒い感情に顔を歪めた。

 

 ──魔王が? 治す? 

 僕の姉さんを? 僕には治せないからって?

 

「……魔王様。そういう冗談はあんまり言って欲しくないんだけど」

「冗談なもんか。俺様はお前の姉ちゃんの治し方を知ってるからな」

「バカな! そんなはずは無い!」

 

 その言葉だけは聞き捨てならない。

 思わずパイアールは声を荒げながら椅子から立ち上がる。

 

「……ふぅ。いくら魔王様といえども今の言葉は看過出来ないな」

 

 けれど魔王の御前だった事を思い出したのか、頭を冷やして席に座り直した。

 

「ほう? どうしてだ?」

「だってそんなの嘘だからだ。魔王様だからって嘘を吐くのは良くない事だよ」

「嘘ではない。本当だとも」

「嘘だ。姉さんの症状はこの僕が二千年以上研究しても未だに改善出来てない難病なんだ。それをどうしてつい先日まではただの人間だった魔王様に治せるっていうんだ」

 

 ルートの症例に関しては自分こそがこの世で一番詳しい。パイアールはそう断言出来る。

 その自分が何千年も前からずっと手を焼いている状態なのに、それを魔王が、たかが元人間の魔王如きに治せるはずが無いではないか。

 そもそも姉はおろか自分とだって今日が初対面、そんな相手が自分と姉の問題にずかずかと土足で踏み込んでくるのが我慢ならない。自然とパイアールの視線にも苛立ちが籠もる……が。

 

「それでも俺様になら治せるのだよ。何故なら俺様は……魔王様だからな」

 

 しかし、その男は魔王。

 たかが魔人でしかないパイアールを遥かに凌駕する存在、この世界の絶対なる支配者。

 

「魔王様にはなーんでもお見通しなのだ。お前の姉ちゃんの治し方だろうとなんだろうとな」

「嘘だ。そんな非科学的な話はあり得ない。僕が知ってる過去の魔王の例を見ても、魔王が何でもお見通しな存在だとは思えないな」

「いいやこれは本当だ。過去の魔王共なんざ知らんが俺様はそういう存在なのだ。……なんだったら証拠を見せてやろうか?」

 

 特にこの魔王には、これまでの魔王とは少し違う特殊な一面がある。

 なんでもお見通しだと不敵に笑うランスの頭の中には特別な知識が存在している。

 

「証拠?」

「あぁ。……よし、そうだな……おぉぉ……見えてきたぁ、見えてきたぞぉ~……!」

「い、一体何を……」

 

 不審がるパイアールを尻目に魔王ランスは両目をぐっと瞑って。

 そして片手で額を押さえて、まるでテレパシーを受信するかのようなジェスチャーを見せて。

 

「……いいか、パイアール!!」

「っ!」

 

 そしてカッと開眼。

 ビシッと人差し指を突き付けて、告げた。全てを見通す魔王の凄さを、その恐ろしさを。

 

「まずお前の姉ちゃんの名前はルート! ルート・アリだ! そうだな!?」

「な、どうしてその名前を……!」

「性格はおっとり穏やかな感じで、でも芯の強さがあるいかにもお姉さんチックな感じの子だ。けれど怒らせたらこっちが謝るまでは絶対に許してくれないすげー怖い人!」

「な……、な……ッ!」

「で外見は勿論美人さんだな。腰の辺りまで伸ばした水色のロングな髪がグッドだ!」

「なんで、どうして……ッ!」

「んでなによりもおっぱいがデカいッ!!」

「バカな……どうして、そこまで……!!!」

 

 ルート・アリは二千年以上前、魔王ナイチサの時代を生きていた人間。

 それから病気の治療の為にコールドスリープ状態となり、今ではその身体は肉塊へと変貌した。

 

 だからルート・アリと言う名前も、その性格も、外見的特徴も。

 姉の人間としての情報を知っている者なんて自分以外には存在していないはずなのに。

 それなのに……どうして!?

 

「それはなぁ、俺様が魔王様だからだ!! がーはっはっはっはっは!」

 

 驚愕の表情になるパイアールをよそに、ランスは勝ち誇った顔でがはは笑い。

 それはランスが魔王だからではなく、過去に戻ってきたという事実があるからこそ。

 前回の第二次魔人戦争を勝ち抜いたからこその知識なのだが、勿論そんな事は口には出さず。

 

「くッ……これが魔王……か……!」

 

 悔しげに呻くパイアールには分からない。

 姉の事を詳しく知る理由が、まさか実際に本人に会ったからだとは思わない。

 それでエッチな事までしたからだとは、全魔人中最高の頭脳を持つ少年でもさすがに分からず。

 

「……認めるよ。僕の負けだ。確かに僕は魔王という存在を侮っていたみたいだ」

 

 魔王。それはパイアールの発達した科学力を駆使しても解析出来ない存在。

 その規格外さを読みきれなかったパイアールは自らの敗北を認めざるを得なかった。

 

「けど……それでもっ! それでも姉さんを治すのは僕が、僕こそが……!」

「二千年間研究しても治せねーならお前には無理だって事だ、諦めて俺様に任せなさい。ルートを人間に戻すにはアレを使うのだ」

「アレ?」

「あぁ。アレだ」

 

 自身満々にそう呟いたランスは、しかしすぐにこてりと首を傾げる。

 

「……あれ? あれって何だっけ?」

「いや……知らないよ」

「なんか……こう、ほれ、人形みたいなアレは……えーと、なんつったかな……」

 

 ランスが思い出したい人形みたいなアレ。それは『IPボディ』というマジックアイテム。

 対象の魂の情報を元に肉体を構成するマジックアイテムであり、肉体は崩壊してしまったが魂が残っていたルートはそれを使用する事によって見事に蘇生を果たした。

 がしかしそれはミラクル等の入れ知恵によって編み出された救出方法であり、その現場を横でぼーっと見ているだけだったランスにはうろ覚えの記憶しか残っていなくて。

 

「AP……いやIEだっけ? それとも……」

 

 魔王の頭脳というのは女性のプロフィールを記憶する事以外には働かない。

 記憶の底を掘り返してうむむと唸っていたランスだったが、やがて思い出すのを諦めたらしく。

 

「……まぁとにかく、あの肉塊から魂をキュって吸い上げて、んでなんかのアイテムにギュギュッと突っ込むのだ。そしたらぽわーと肉体が出来て、あっという間にルートの完成ってわけだ」

「……あのねぇ魔王様。そんな雑なやり方で姉さんが元に戻ったら苦労はしないって」

 

 やっぱり姉の治療方法を知っているなんてのは嘘っぱちなのでは? 

 とパイアールは一瞬怪訝な顔になったものの。

 

「……けど、魂から肉体を作る、か……確かにそういうアプローチは試してなかったかもしれないな……だとしたらまず魂のデータを解析して、そこから数値を定義化して……」

 

 今の話から新たな知見を得たのか、ぶつぶつと呟きながら自らの思考に没頭していく。

 今ランスが語ったのは紛うことなきルートの治療方法そのもの。ランスなりの擬音が多くあやふやな部分ばっかりだったものの、それでも魔人最高の頭脳を持つパイアールにとっては十分なヒントになったようだ。

 

「……中々興味深い話だね」

「だろう?」

「うん。姉さんを治療する一歩前進にはなったかもしれない。……感謝します」

 

 そして最低限の礼節は弁える気になったのか、パイアールは大きく頭を下げた。

 

「うむ。たっぷりと感謝したまえ。んで早いとこルートを復活させろよな」

「……ねぇ魔王様。仮に姉さんが復活したとしたら魔王様はどうするつもりなんですか?」

「抱く」

「えっ」

「抱く。セックスする。だからとっととルートを復活させろ。魔王様からの命令じゃ」

「……分かりました」

 

 もし姉が復活したとしても魔王には絶対に会わせないようにしよう。

 パイアールはそう固く誓った。姉の貞操を守るのは弟の役目なのである。

 

「……でも魔王様、それならここで僕を処分したりはしないって事だよね?」

「む。確かにそうなるな……ではルートが復活するまでお前の処分は保留とする」

 

 ──よしっ! 

 とパイアールは心の中でガッツポーズ。

 

「だがそうなるとお前は俺様の配下だ。俺様の為に忠実に働いて貰う必要があるぞ」

「それは分かってるよ。さっきも言ったけど僕は魔王様に逆らうつもりなんて毛頭ないからね」

「宜しい。ではお前は……そうだな……」

 

 面談の結果、ひとまずルートが復活するまで魔人パイアールの処分は保留となった。

 となると保留の期間この魔人を、男の魔人を自分の配下として役立てるとなると……。

 

「……よし。じゃあお前には俺様が使用するエログッズ開発でもさせるかな」

「は? え、エログッズ?」

「うむ。お前は色々とわけの分からんメカを作るのが得意だったはずだからな。その開発力を活かしてエログッズ開発担当大臣に就任させてやろうじゃないか」

「えぇ……僕の科学力をそんな事に使うの……?」

 

 一転してげんなりとした顔になるパイアール。

 現状の人間世界における科学力、その水準を遥かに超える魔人パイアールの驚異的な科学力。

 それをエログッズ開発に使用するなどあまりにも勿体ない話。パイアールからすればにゃんにゃんに小判かと言った話なのだが。

 

「ぐふふふ、俺様が欲しいエログッズを好きに開発出来るってのは中々悪くねぇ話だな」

 

 市販品のエログッズではなく、必要とする機能が搭載されたオーダーメイドのエログッズ。

 特にそれが魔人パイアールの頭脳で作られるとなるとどれだけ素晴らしい逸品が出来るか。

 そんな想像にランスは笑みを浮かべる。なによりもエロを至上とする新魔王にとってはこの上なく夢の膨らむ話、魔王になった甲斐があったというものである。

 

「……まぁ、魔王様に作れと言われたら作るけどさ……ちなみにどんなものが欲しいの?」

「そうだな……んじゃあ10段階、いや15段階に強弱の切り替えが可能なバイブとかどうだ」

「それいる? 普通のと何が違うの?」

「全然違うだろう! 15段階だぞ15段階!!」

「でもさぁ、それなら強弱の違うバイブを15個用意すればいいだけじゃないの? わざわざ新しく開発する必要性を感じないんだけど」

「必要性なんか知るか! 俺様が欲しいっつうんだからそれでいいんだよ!」

 

 発明に対する意義や開発者の矜持なんて知ったこっちゃなし。

 ただ欲しいから作らせる。面倒な顧客ランスは次いでこんなオーダーを出してくる。

 

「あとはそうだなぁ、いっそこれまでには無かった未知のアイテムを……例えば……あ、じゃあポチッとスイッチを押したら透明になる服とかどうだ? これでいつでも裸が見放題!」

「それに何の意味があるの? わざわざ服を透明にしなくてもさ、裸が見たいなら裸になれって命令すればいいだけじゃないの?」

「かーーっ! これだからエロの事をなんにも分かっとらんガキんちょ魔人は!」

 

 ガキはやっぱりガキだなと、ランスは大げさな素振りで頭を振る。

 服を脱がせる事と、服を透明にする事。この二つは似通っているようで大きく違う。

 服を脱がせる行為は脱衣。一方で服を着たまま裸体を露わにする行為には脱衣とはまた違った趣がある。エロマイスターを自認するランスにはその違いが分かるのだ。

 

「いいか? その服を……ならそうだな、ホーネットに着せるとしよう」

「それで?」

「それでだ。この前みたいに王座の間に大勢を集めてその先頭にあいつを立たせるとするだろ?」

「それで?」

「それでだ! そんな時に突然ホーネットの着ている服が透明になったらどうだ!! これはエロいだろう!!」

「エロいかな?」

「エロいだろうが!! あいつは自分の服が透明になった事に気付いて恥ずかしがるだろうが、それでも魔王様の前だからと逃げ出す事も身体を隠す事も出来ずにそのまま……ぐへへへ、これはエロいぞぉ~!」

「そうは言うけどさ。ホーネットなんて普段から透明な服を着ているようなものだし、そんな事態になっても顔色一つ変えないと僕は思うけど」

「……まぁ、そう言われると、確かに……ちょっと人選が悪かったかもしれん」

 

 パイアールから冷静にツッコまれ、鼻の下が伸びていたランスはすっと真顔に戻る。

 

「……いやでもエロいのは事実なのだ。とにかく、そんな服だってお前なら作れるよな?」

「作れます。……って言っておかないと駄目なんだろうね、ここは」

「うむ、その通りだ」

 

 15段階変速機能付きバイブだって。透明になる不思議な服だって。

 あんな夢もこんな夢もみんなみんな叶えてくれる……かもしれない。この魔人の科学力なら。

 

「まぁいいや。魔王様のご要望は分かったよ。それじゃあ僕もう行っていい?」

「良かろう。今後も俺様の為に誠心誠意しっかりと励むよーに」

「分かってますって。……はぁ、透明になる服か……なら電気信号によって透明になる色素を……いやそれとも繊維の方に手を加えるべきか……」

 

 こうして新魔王ランスの命により、エログッズ開発担当大臣の役職に就いた魔人パイアール。

 彼はその発達した頭脳を捻らせながら魔王の部屋を退出していった。

 

 

 

 

 

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