そして──それから小一時間後。
「はへー……えがったぁ……」
「はぁっ、はっ、はぁ……」
たっぷりと気持ちイイ事をしてツヤツヤ顔になったランス。
一方その隣では息も絶え絶えになったホーネットがぐったりしていた。
共に裸のそれは男女の濃密な交わりの姿。言うまでもなくセックスの事後の姿である。
「……んー? そういやぁなんでセックスする流れになったんだっけ?」
「……はぁ、ふぅ……」
「あ、思い出した。ホーネットが意地っ張りだったからだ。そうだそうだ、お前のせいだ」
つい先程まで、ランスとホーネットはちょっとした言い争いをしていた。
メロメロになっているはずなのに『好きです』とは言わないホーネット、ランスはその言葉を言わせようと躍起になって「言えー!」だの「いやです」だのと言い合っていた。
すると業を煮やしたランスは「だったらベッドの中で言わしたるわー!」とそんな流れで二人はベッドイン、そして小一時間経って今に至るという訳である。
「途中からすっかり忘れていたけど、結局セックス中も『好き』とは言わなかったな」
「はぁ……、はぁ……」
「これがシルキィちゃんならセックス中は積極的に言ってくれるってのに……全く強情なやつめ。ホーネットって結構そういうとこあるよな」
「……はぁ、……はっ……」
「……おい、大丈夫か?」
こちらに言葉を返さずひたすら荒い呼吸を繰り返すホーネット。
その様子に思わずランスが心配すると「……は、ぃ……大丈夫、です……」と弱々しい声が。
「なんだ、バテたか」
「……はい。……その、久々、でしたから……少し……すこし、激しかった、です……ね……」
「がははは、そーかそーか。確かにちょびっとハッスルし過ぎてしまったかもしれんな」
「えぇ……」
今回のセックスは熱く激しかった。これまでに無いぐらいに盛り上がった。
ランスはピンと来ていないようだがそれは紛れもなく魔王化した事による影響。魔王になったランスは人間だった頃よりも体力が桁違いに上昇して、ついでに言えば性欲も上昇した。
その莫大なエネルギーはさすがの魔人筆頭でも受け止めきる事が出来なかったのか、行為を終えたホーネットは身も心もくたくたになっていた。
「けど……まだイケるような気がする」
「っ!」
……が、どうやら魔王の方はまだまだこれからが本番のようで。
「よっしゃ。ホーネット、とっとと息を整えろ」
「……まさか」
「うむ。第五ラウンド……じゃねぇか、第六? いや第七か? とにかくもう一戦いくぞ」
「………………」
すでに片手の指の数を超えて、それでもまだ抱き足りないのか。
魔王の性欲とはかくも強烈なものなのか。ホーネットは血の気が引く思いがした。
「……あの、ランス」
「なんだ?」
「いえ、その……あ、そういえば」
疲労困憊に加えて何度も力強く打ち付けられた腰が悲鳴を上げている。
乗り気の魔王様には申し訳無いのだが、さらなる連戦はさすがにキツい。
故に何か話題を変えようとして、そういえばとホーネットはある事を思い出した。
「ランス、先程貴方は私に用事があると言っていませんでしたか?」
「用事? いや、ねーけど」
「え……そうなのですか? 何かしら用事があるから私の部屋を訪ねたのでは?」
「うんにゃ、特には無いぞ。強いて言うならセックスという用事はあったかもしれんが」
「そうですか……」
この部屋を尋ねてきた時「用事がある」と言っていたのは聞き間違いだったのか。
ホーネットはそんな事を思いながらも更に思考を巡らせて。
「……あ、それなら……貴方は昨日、元ケイブリス派魔人達の処分を決定する為に彼等との面談を行いましたよね?」
「あぁ、個人面談な。それがどーした?」
「その個人面談に関して……とある魔人から不満の声を耳にしまして」
「不満だぁ?」
「えぇ。といっても大した事ではありませんが……」
それはランスが個人面談を開始した直後、王座の間に残っていたホーネットの耳に届いた声。
魔王を補佐するのと同時に魔人達を取り纏めるのも役目となる魔人筆頭にとって、魔人達の愚痴やクレーム処理を行うのも彼女の役目で。
「……どうしてアイツらが先なんだ、順番がおかしくないか、魔王様と謁見するならまず自分達からではないのか……と、そんな不満です」
「その口振りは……サテラか」
「はい。有り体に言えは貴方と顔を合わせて話をしたいという事でしょうね。貴方が眠っている間、サテラは勿論他の者達も心配していましたから」
ケイブリス派魔人と面談するよりもまず先に自分達と会ってくれるべきではないのか。なんたってこっちは一週間以上もずっと心配していたのに。
サテラの不満はそんな所。要はホーネットが言っていた通り、魔王として目覚めたランスと会って話がしたいのにーという事である。
「でもそっか。そういやまだサテラとか他の女魔人達には会ってなかったか」
「まだ貴方が目覚めて数日ですからね。そういう意味では王座の間でのお披露目を優先させてしまった私にも責があると言えるかもしれませんが」
「ふむ……考えてみればそうだな、全てにおいて俺様の女達を優先するのは当然だ。つーかなんであんなクソどうでもいい男魔人共と面談するのを優先したのだ俺様は」
魔王として目覚めて早々、然程興味も湧かない男魔人達との個人面談という暴挙。
あの場での思い付きとノリだけで取った行動を自省しつつ、ランスはベッドから身体を起こす。
「んじゃまぁいっちょサテラ達と会ってくる。ホーネット、お前も行くか?」
「あ、いえ。私はまだ仕事がありますので」
「そか」
まだ腰が痛くて立ち上がれそうにない……というホーネットの本心には気付く事もなく。
ランスは軽い調子でベッドから下りると、そのまま彼女を残して部屋を後にした。
◇ ◇ ◇
その後、ランスは食堂にやって来た。
お昼を飛ばして時刻はそろそろ夕食時、目当ての魔人達が居るとしたらここのはず。
「さてさて、居るかな……って、お?」
ランスが食堂に足を踏み入れた途端、その場の空気がガラリと一変した。
それまで聞こえていた一切の雑音が消えて、見事にしーんと静まり返ったのだ。
「おぉ……これも魔王効果か」
見渡せば目が届く範囲に居る全ての魔物達がその動きを止めていた。
それは忠誠心故か、あるいは本能的な恐怖故か。誕生して間もない新たな魔王様の不興を買わぬようにと、息を潜めてじっとしている魔物達。
そんな様子を横目に眺めながらランスは食堂の奥へと進んでいって。
「お、いたいた」
「あっ! ラン……ではなくて、魔王様!」
「これは魔王様。お食事ですか?」
「いや、二人に会いに来たんだが……そうだな、ついでに飯も食っちまうか」
居たのは魔人サテラ、そして魔人シルキィ。
ランスも一緒の席に腰を下ろすと、すぐ隣からこれまでに感じた事の無かった熱い視線が。
「遅ればせながら魔王様っ! 無事お目覚めになられた事とても嬉しく思います!」
「お? おぉ」
「魔王様! これからサテラは誠心誠意魔王様にお仕え致しますから!」
「……おぉ。それは構わんのだが……けどなんだお前、そのけったいな喋り方は」
突然の敬語。そして誠心誠意お仕えしますとかどうとか。この魔人がこんなにも礼儀正しくこんなにも殊勝になった姿を見せるとは。
まるで中身が別人に変わったようなサテラの態度にランスは目を丸くする。
「けったいな喋り方などしていません。これがサテラの普通ですから」
「ウソつけ。お前の普通は『ランスっ! ここで会ったが百年目だ! 今日こそお前をやっつけてやるぞ!』ってな感じだろうに」
「そ……そんな事はありません。そんなサテラはサテラではありません」
「なんかホーネットもそうだったけど、お前の変わり様はそれ以上だな。なぁシルキィちゃん、魔人ってのは全員こんな感じになるのか?」
「それはそうでしょう、私達魔人は貴方の配下、貴方の忠実なる下僕なのですから」
一方でシルキィは元々が礼儀正しい性格なのであまり変わった印象は無い。
とはいえ魔王に対する忠誠心は強い。彼女の瞳からはそんな意思が伝わってきていた。
「それとも魔王様は我々のこういう態度はお気に召しませんか?」
「お気に召さんとまでは言わんが……敬語を使うサテラってのはなんだか不気味な感じがする」
「なっ……!」
「それに魔人に限らずこいつら魔物共も、ここまで分かりやすい反応をするとは。やっぱし魔王ってのはすげーんだな」
「えぇ、それはもう」
この魔物の世界において、魔王というのは全てにおいて優先される絶対的な存在。
力と血。その強制力によって成り立つ徹底した支配構造は人間世界のそれを遥かに超える。
その感覚は元人間だったランスには馴染みのないものだが、一方で魔人であるシルキィ達に言わせれば至って当然の事のようだ。
「ここ数年は先代魔王である美樹様が不在でしたからね。その頃にやってきた魔王様にはご存じない事かと思いますが、先々代魔王であるガイ様が存命だった頃の魔王城はこんな感じでしたよ」
「あぁ、ホーネットの親父か。まぁホーネットはあの性格だし、それの親父が居たならそりゃお固い空気にもなるだろうが……」
魔王城とは魔王の住処。であれば魔王が存在していてこその魔王城と言える。
その独特な空気を肌で感じつつ、それでもランスは軽い調子で呟く。
「んでも俺様はあんましピリピリとした空気は好きじゃないのだ。魔物共はともかくとしてお前らはそう畏まらんでいいぞ」
「そう言われましても……魔王様は魔王様ですから、サテラ達魔人が畏まらない訳には……」
「それな、似たような事をついさっきホーネットにも言われた。あいつには他の奴らが居ない時はこれまで通りの態度にするって事に落ち着いたから、お前らもそんな感じで構わんぞ」
「成る程、公私を分けた態度を取って構わないという事ですね。分かりました、ではこれから先はそのようにさせて貰います」
人間だった頃から接してきたから分かる。きっとランスは女性からあまりに畏まった態度を取られるのは好まないのだろう。
そうと察したシルキィはすぐに頷いた。それがどのような要求だろうと、魔王の望みに応える事は魔人の役目の一つである。
「……しかし、となると魔王様、二人の時は『ランス』と呼んでも構わないって事ですか?」
「別にいいけど」
「……本当に? 怒りませんか?」
「んな事で怒ったりせんわ。俺様は女性限定でとーっても器の大きい魔王様だからな」
「ふふっ、女性限定でと言う所がいかにも魔王様らしいですね。けど公私を分けても良いというのは助かります。多くの者が居る中で魔王様に対して畏まらないというのは私達にとっては難しい事ですから」
「みてーだな。こうして考えると魔人っつーのも中々めんどくせー生き物だなぁ」
魔人の忠誠とは半ば強制されているもの。絶対の存在たる魔王に服従しない魔人などいない。それこそ最強の魔人だったケイブリスだって魔王相手には逆らおうとはしない。
そんな魔人の悲哀についてランスがしみじみ考えていると、食堂の入り口の方に見知った姿が。
「お、ハウゼルちゃんとサイゼルだ」
「本当だ。二人も食事をしに来たようですね」
やって来たのは魔人ハウゼルと魔人サイゼル。
「……あ、魔王様」
「げっ!」
二人はランス達の存在に気付くや否やそれぞれ異なる反応を見せた。
言うまでもない事だが一応補足しておくと、前者が妹の反応で後者が姉の反応である。
「なぁシルキィちゃん。あいつ魔人のくせして今俺を見て『げっ!』って言ったぞ」
「……サイゼル、今は魔王様の御前よ」
「うっ、そうね……じゃない、ええっと、ソウデスネ……コンニチハデス、マオウサマ……」
「おい、なんじゃその片言は」
感情の乗らない声で挨拶するサイゼルの目は見るからに泳いでいた。
どうやら過去に色々因縁があったランスを魔王として崇める事にかなりの抵抗感があるらしい。
「姉さん、この方はもう魔王様なのよ」
「分かってるわよ……ええっと……今後は誠心誠意お仕えさせていただきます、ハイ……」
「うむ。にしても生意気だったサイゼルもこうなっちまえば形無しだな、これからはお前の事も沢山可愛がってやるから覚悟しとけよ。ぐふふのふ」
「うわぁ~い、うれしいでーす……」
とても嬉しくなさそうに喜ぶサイゼル。
魔王になったランスから身体を求められる事は目に見えていたので、もはや諦めの境地である。
「勿論ハウゼルちゃんもだ。まぁ君の方は文句を言ったりはしないだろーが」
「……はい。魔王様の命令であればどんな事にも従います」
「よーしよし、いい子だ」
一方でハウゼルは素直に頷く。
元ホーネット派の魔人達は全員、共に派閥戦争を戦い抜いた人間の事を認めている。
程度の差こそあれ皆ランスへの好感度は高く、こうして頭を垂れる事にも抵抗は無かった。
「けれど……魔王様は……なんだか……」
「なんだ?」
「あ、いえ……本当に魔王様は、その、人間だった頃とお変わりないなと思いまして」
「あ、それ私も思った、……じゃない、私も思いましたでございますです」
「それ、似たような事を色んなヤツから言われる。んでサイゼル、お前は敬語がおかしいぞ」
「それだけ変わりないお姿に皆が驚いているという事ですよ。魔王になったらその外見や性格などが変容する事も多いそうですから」
「うん、ほんとに……」
言いながら魔人達はランスの顔を眺める。
魔王の力の波動こそ確かに感じるが、それがなければ魔王だと認識出来ないのではないか。
そう思ってしまう程、ランスは人間だった頃と変わらない姿をしていて、
「外見の方はともかく、性格の方はもうちょっとテコ入れがあっても良かったと思うけど」
「あんだとぉ?」
「イイエ、ナンデモナイデゴザイマス」
「変に変わるよりは変わらないに越したことは無いですよ。少なくとも私はそう思います」
「うむ、まぁそれはそうだが……変わらんとは言っても俺様は確かに魔王になった訳でな。これからは魔王らしく色んな事をするつもりなのだ」
ただ、それでもランスは第八代魔王。
その身には魔王の力を、この世界を支配して思うがままに出来るだけの力を秘めている。
「魔王らしく、ですか。例えばどのような事をするつもりなのですか?」
「そりゃあ勿論女だ! 世界中の女達とセックスするのだ、がははは!」
「……それって魔王らしいの? あんたが人間だった時と変わって無くない?」
「魔王らしいだろーが。これ以上に魔王らしい事がどこにあるってんだ」
世界中の女を手に入れる。それはこの世界を支配する魔王らしい行いと言える。
がしかしサイゼルが言った通り、その目標は人間だった頃とあまり変化が無いのも事実。
こうして自分が世界の支配者になった以上、望めばこの世界の在り方すらも変えられる訳で。
「……ふーむ」
果たして魔王らしさとはなんだろうか。
そんな事を考え始めた所で……ランスのテーブルに夕食が運ばれてきた。
◇ ◇ ◇
そしてその後。夕食をぺろりと平らげて。
入浴などを終えて自室に戻ってきたランスは一人目を輝かせていた。
「さーてと! そろそろ楽しい楽しいセックスの時間だな!」
そろそろ時刻は就寝時。ここからは大人の男のお楽しみな時間。
それは魔王になっても変わらない、ランスには絶対に欠かせないお決まりの日課である。
「がははは! にしても困っちまうなー! なんせもう候補が多すぎるからなぁー! どいつもこいつも食べ放題だからなぁー!!」
我は魔王。となれば今やこの城の中にいる誰でもなんでも食べ放題。
仲間の人間達は勿論の事、配下たる魔人達を食べたって良いし、ここはあえての女の子モンスターという選択肢だってある。
「どうするどうする……誰を食べる……それともセットメニューってのもアリか……うぬぬ……」
あらゆるご馳走が食べ放題。あぁ素晴らしきかな魔王ライフ。
めちゃくちゃ強くなったり、魔軍の支配者になったりと様々な恩恵があるけれど、ランスにとって魔王になった事による一番の恩恵はエロ、やっぱりエロなのである。
「そうだなぁ……こうなったらいっそルーレットとかで決めちまうってのもアリかもな。デッカい的を回してダーツを投げて決めるとか」
と、そんな事を考えていたランスは、
「よし、ならシィルに的とダーツを用意させるか…………って、あ」
ようやくそれを思い出した。
今日の昼間、ホーネットの部屋を訪ねた際の用事とは一体何だったのかを。
そして、次の日。
「ホーネット、入るぞー」
昨日に引き続き、ランスはもう一度ホーネットの部屋を訪れた。
「あら、魔王様」
「おぉ、シルキィちゃんもいたか」
「はい。ホーネット様と少し話があって」
「魔王様……ですからご用事の際はこちらに来るのではなく呼び出して下さいと……」
ホーネットは困った表情になりながらも指示を出して、部屋内に居た使徒達を退出させる。
どうやらランスは自分達からあまりに畏まられるのは好みでは無いらしい……とそんな話を今しがたシルキィとしていた為、なるべく私的な対応を取れるようにした方が良いと思ったからだ。
「魔王様、私も退出した方が良いですか?」
「いや別にいいぞ。つーかホーネットよ、お前の使徒達が居たって気にしねーけど」
「魔王様が良くても私が気にするのです。……それで、どうかしましたか? ……ランス」
まだ呼び慣れないのか、少しぎこちなさのある声でホーネットはその名を呼ぶ。
「うむ、昨日の用事を思い出してな」
「あぁ、やはり……」
そしてランスは口を開いた。
なによりも一番に優先すべき、最も大事な話を。
「実は……ちょっとした問題が発生したのだ」
「問題?」
「俺様は魔王になっただろ? 魔王になってめちゃくちゃ強くなったのはいいのだが……どうにも力の扱いに慣れなくてな」
魔王になったランスがまず直面した問題。それは自らの力の扱いの困難さ。
人間だった頃とは別物、比べ物にならない程に増したパワーの制御が上手くいかない。
その結果やたらと躊躇してしまって気持ちの良いセックスが出来ない……という相談である。
「あの個人面談の時、色々あってケッセルリンクがちょー美人な女になってよ」
「……ケッセルリンクが美人に?」
「あ、ホーネット様、私は見ましたよ、女性になったケッセルリンクを」
「シルキィ、では本当なのですか?」
「はい。正しくは女性になったのではなく元の姿に戻ったとの事ですが……あれは驚きました」
「まーな。あれにはさすがの俺様もビックリ仰天だった。んでその時ケッセルリンクを抱いたのだが、そしたら力の扱いに慣れなくてセックス終わりにあいつから『少し痛かった』と言われちまったのだ」
「……あぁ、そういう事ですか、成る程……」
吐き出すように呟いたホーネットの言葉には深い実感が混じっていた。
昨日の行為時、何度も何度も強く打ち付けられた彼女の腰も相当痛い事になっていた。
あの時はひたすらに激しくするのが今日の趣向なのかと、それがランスの望みなのかと思ってホーネットはそのまま耐えていたのだが、この分だとどうやらランスにそのつもりは無かったようだ。
「それに単純なパワーもそうだが、魔王ってのは他にも色々と能力があったりするだろ? けど俺様そこら辺の事についてもよく分からん」
「ああそっか。考えてみればランスさんは急遽土壇場で魔王になったようなものだもんね」
「ですね。それにそもそも少し前まではずっと人間世界に居たのですから、魔王について知らない事が多いのが当然でしょう。であれば確かに知っておく必要がありますね」
魔王という存在について、魔王であるランス自身が理解を深める事。
それは言うまでも無く大事な事。何をするにしてもまず最初はここからである。
「分かりました。では魔王の力について、少し説明しましょうか」