ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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夢のハーレム計画

 

 

 

「てな訳で、王座の間だ」

「はい」

「ですね」

 

 という訳で、王座の間である。

 

「やっぱり魔王っぽい事をするならここだよな。こうして座ってるだけでなんか魔王っぽいし」

 

 いかにも魔王っぽく、でーんと王座に腰掛ける魔王ランス。

 その両隣にはウルザが、更には呼び出しに応じてやってきた魔人ホーネットの姿も。

 

「改めて、だ。俺様が魔王になってから結構な時間が経ったな」

「そうですね。魔王様がお目覚めになられてから一ヶ月と少しが経過しました」

「うむ。この一ヶ月、俺様は何も遊び呆けていた訳ではないのだ」

「そうなのですか? 私にはそのようにしか見えませんでしたが……」

「いーや違う。それはあくまで表向きの姿、本当は機が熟すのを待っていたのだよ」

 

 先代魔王から血の継承を受けて、早一月。

 その間に男魔人達との個人面談を行ったり、魔王の力の使い方を学んだり。

 それは魔王として動く為に必要な事と言える。言わばこの一月は準備期間だったのだー、というのが魔王ランスの弁で。

 

「そして先日、ワーグの問題も解決した。これであいつもこの城で暮らせるようになった」

「えぇ、そうですね」

「うむ。これで遂に我が魔王軍の陣容が固まった事になる」

 

 魔王軍の陣容。魔王の手駒として扱える必要な魔人達も勢揃いした。

 

「となれば……」

「となれば?」

「──いよいよだ。いよいよ本格的に動き出す時がきたのだ」

 

 準備期間が終わって……今、遂に期は熟した。

 第八代魔王ランス、その威名を世界中に轟かせる日がやって来たのである。

 

「……本格的に動き出す、ですか」

「おう」

「成る程。それで私とホーネットさんを呼び出したのですね」

「そういう事だ。君等二人にはこの俺様の補佐をして貰う。人間世界の事はウルザちゃん、魔物界の事はホーネットに任せるのが適任だろうからな」

 

 そんな魔王の補佐を命じられたのはあらゆる面において優秀な才女二人。

 

「君達の働きには大いに期待しているぞ?」

「お任せ下さい、魔王様。必ずやご期待に応えてみせます」

「まぁ、そうですね。ここに残ると決めた以上私も自分の役割を放棄するつもりはありませんが……にしても、いよいよですか」

 

 魔王の言葉にホーネットとウルザはそれぞれ真面目な表情で頷いた。

 いよいよランスが魔王として動き出す。その時がくるだろう事は分かっていた。ランスという男の性格上、このまま何もせずに日々を穏やかに過ごすだけとは考え難いからだ。

 新たな魔王が誕生した以上、その力がこの世界中全てを覆わんとするのは避けて通れない道。約八年に及ぶ期間魔王が不在だった事の方が特殊なケースであり、魔王による支配こそがこの世界における本来の姿なのである。

 

「それで……ランスさん、具体的には何をするつもりですか? 先程魔王軍の陣容が固まったとか仰っていましたが、だったら魔王軍を動かすつもりなのですか?」

「あぁそうだ。ただでさえ魔物ってのはアホみたいにうじゃうじゃ居やがるからな。このまま遊ばせておいたんじゃただの無駄飯食らいだ、あるものは使わないと勿体無いだろう」

「では、どのように?」

「うむ。魔王軍の陣容が固まった事だし……」

 

 魔王軍の陣容が固まったという事は?

 次にする事と言えば──

 

「それは……」

 

 次にする事と言えば?

 

 

「……人間世界への侵攻?」

 

 ランスはむむむと首を傾げながら告げた。

 人間世界への侵攻。両世界の境界線を破って人間世界に攻め込み、人間達を虐殺する。

 つまりはメインプレイヤーの抹殺。魔王軍の使い道と言ったらそれしかない。

 

「………………」

「………………」

 

 するとそれを聞いたホーネットとウルザは。

 お互いにチラッと一瞥、共に警戒の色を滲ませた目線を交錯させて。

 

「……魔王様。それは……如何なる理由で人間世界への侵攻を行うのでしょうか」

「如何なる理由かって聞かれると特に意味は無い。けどせっかく俺様の俺様による俺様の為の最強魔王軍が出来たんだし、やっぱガーッとド派手に動かしてみたいではないか」

「な、成る程……つまり興味本位という事ですか」

「まぁそうだな」

「……ですがランスさん、人間世界への侵攻など行ったら多くの人々が犠牲になります。その中にはこの先ランスさんが抱く予定の美人な女性だっているでしょう。そういう人達が亡くなってしまっても良いのですか?」

「む。確かにそりゃダメだな。んじゃやっぱ人間世界侵攻はなーし」

 

 ノリで人間世界侵攻を行った結果、世界の宝である美女が失われるなど以ての外。故に却下。

 こうして魔王ランスによる人間世界侵攻計画は約20秒足らずで頓挫した。

 

「えぇ、それが宜しいかと」

「さすがは魔王様、ご英断だと思います」

 

 平然と答えながらもウルザとホーネットは密かに胸を撫で下ろした。

 魔軍による人間世界侵攻、その引き金を引ける唯一の存在が魔王。まさか本気では無いだろうと思いはすれど、しかし当の魔王があのランスだけに楽観視は出来ない。

 その場の勢いやノリだけで突拍子も無い事をしがちなランスが魔王となってしまった以上、その思考を出来るだけ安全な方へと導くのは自分達の役目であると二人は自覚していた。

 

「まぁ今のはほんのジョークのようなものだ。こっからは別の計画を真剣に考える」

「別の計画ですか。それはどのような?」

「ふーむ、そうだなぁ……人間世界への侵攻がNGだとなると、他には……」

 

 ランスは腕を組んで考える。 

 魔王として、これから自分がする事とは。

 

「ううーむ……」

 

 魔軍を動かして人間世界へ侵攻を行うのは駄目。

 となればどうするか。

 

 ……どうする?

 

 

「……なぁ、ホーネット」

「はい。なんでしょう」

「魔王って一体なにすりゃいいんだ?」

 

 新米魔王ランスは深く首を捻って呟いた。

 果たして魔王とは何をする存在なのか。なにをする為に存在しているのか。

 

「人間世界への侵攻をしないとなると、他に魔王がするような事なんて思い付かねーのだが」

「……魔王がなにをすればいいのか、ですか。それは中々難しい質問ですね……」

 

 聞かれたホーネットも顎の下に手を置き思案げな顔になる。

 この世界を支配する絶対の存在、魔王になった者の役割とは。魔王とは何をすればいいのか。

 ……という考え方そのものが。魔王というのはそういう考え方自体がそぐわない存在であって。

 

「この世界において魔王様というのは言わば『何をしても構わない存在』という事ですからね。それは言い換えると『何をしなくても構わない存在』でもあるという事」

「成る程。魔王がその行動を抑制されたり強制されたりする謂れは無いという事ですか」

「えぇ、そういう事です。ですから『なにをすればいいのか』と聞かれたら答えとしては『魔王様のお好きな事をすれば宜しいかと』と答える以外にありません。具体的にそれが何かというのは魔人の私に言える事では無いでしょう」

 

 魔王としてこの世界を支配して、人類の総家畜化を図った魔王だっている。

 あるいは。魔王としてこの世界を支配して、人類の生存圏を創り出した魔王だっている。

 

 その両極端な支配構造について、どちらが正しいも間違っているもなにも無い。

 ただそれぞれの魔王が好きなようにした、好きなように魔王の力を使っただけ。

 

「そうか。好きな事をすりゃあいいのか」

 

 魔王というのはそういう存在。全てがオールオーケーとなる存在。

 となればここにいる新たな魔王、第八代魔王ランスがする事とは。

 

「よし決めた。んじゃあアレだな。やっぱアレしかない」

「ランスさん、アレとは?」

「そりゃあ勿論ハーレムだ。ハーレム」

 

 人間世界侵攻計画改め──夢のハーレム計画。

 それが魔王ランスのしたい事、好きな事。つまりはそれがこの世界の新たなる形か。

 

「俺様による俺様の為の素晴らしき夢のハーレム計画スタートだ。つーわけで俺はこれから魔王として世界中の美女を全員手に入れる。それをする」

「……やはりそうなりますか。そう言い出すだろうなと半ば分かってはいましたが……」

 

 魔王の力を手に入れたランスが何を望むか。それはまず間違いなく女、美女、ハーレム。

 それは当然のように分かっていたので今更驚きは無い。むしろ来るべき時が来たか、とウルザとホーネットは気を引き締める。

 

「二人共、文句はねーよな?」

「はい、勿論です。元より私は魔王様に対して文句を言うつもりなどありません」

「無い、とは言いませんが、文句を言ってもそれで考え直してくれるランスさんではないですからね。それなら建設的な話をした方が良いでしょう」

 

 頭ごなしに否定すると返ってランスはへそを曲げてしまう。

 そんな性格を理解しているウルザは嘆息するように軽く息を吐いて。

 

「では……そのハーレム計画について、いくつか聞きたい事があるのですが」

「おう、なんだ」

「先程、世界中の美女を全員手に入れると言っていましたが……それは言葉通りに全員ですか?」

 

 一番気になった部分、ハーレム計画の対象は世界中にいる美女全員を範囲とするのか。

 その答えは言うまでも無い。魔王ランスは大きく首を振って答えた。

 

「もっちろん全員だ。この世界に存在している可愛くてキレイな女の子はぜーんぶ俺様のもの。俺様以外の野郎共には一人たりとも譲ってやらんのだ。がーはっはっはっはっ!」

 

 この世界の美人は全て自分のもの。それは人間だった頃から宣言していた言葉。

 あまりにオーバーで大言壮語に等しかったそれだって今では現実的な目標となり得てしまう。

 

 ──が。

 

「全員、ですか」

「おう。全員だとも」

「全員……」

 

 言いながらウルザはホーネットの方にちらっと視線を送る。

 

「……全員。魔王様の御力の規模を鑑みれば、それも当然と言えるかもしれませんが……」

 

 すると同じような事を考えていたのか、ホーネットもその眉間に皺を寄せた。

 

「ですが……現実的に可能な事が現実に行って正解だとは限りません。この世界に存在する美人な女性全てをランスさんのハーレムとするなど、少々困難が過ぎるように思うのですが……」

「簡単だろそんなもん。なんたって俺様は魔王様なのだからな」

 

 現実には困難だと主張するウルザの一方、魔王ランスは軽い調子で答える。

 魔王ランスが想像する夢のハーレム。その作り方はとても簡単でシンプルなもの。

 

「いいか? まず全人類を男と女に分けるだろ?」

「はぁ」

「んで男の方は捨てて、女の中から賞味期限の切れた年増とガキ、更にはブスと普通を捨てる」

「はぁ」

「そうすればほれ、そこに残ったのがぜーんぶ俺様のものってわけだ。簡単だろ?」

「……まぁ、言葉で言う分には簡単ですね」

「そうだろ? だからそんな感じでやる。今日からそういう世界にするのだ」

 

 夢のハーレム。適齢期にある美しい女性は全て魔王が総取りにしてしまう世界。

 それがこの世界の新たな形となる……のか、どうなのか。少なくとも魔王はその気のようだ。

 

「ですがランスさん、今の話を具体的にはどのようにして実現するおつもりですか?」

「それは知らん。つーかそれを考えるのはむしろ君達の役目だろうに」

「あぁ成る程。具体的にどうするかについては私とホーネットさんで計画しろと言う事ですか」

「イエース。何かと優秀な君達ならハーレム計画だって出来るはずだ。だよなウルザちゃん?」

「まぁ、そうですね。以前までならともかく魔王になったランスさんの力を使ってという事なら、確かに可能だとは思いますが……」

 

 最強の存在たる魔王の力を使えばなんだって出来る。世界を二分する事だって出来てしまう。

 だったら魔王ランス式夢のハーレム計画の実現だって不可能ではない。それはウルザも頷く所。

 人間世界にある各国の指導者に対して定期的に美女を差し出す事を強制したっていいし、もっと乱暴に全人類を総奴隷化して、その中から美女を選出するような世界に作り変えたって良い。

 

「ですが……」

 

 しかしそこでまたウルザはちらっとホーネットの顔を見た。

 

「………………」

 

 するとアイコンタクトで意図を察し合ったのか、ホーネットも小さく頷いて、

 

「……魔王様。そのハーレム計画について、私も聞いておきたい事があるのですが」

「おう、なんだ」

「魔王様は先程、この世界にいる全ての美しい女性達を我が物にすると仰っていましたよね」

「言ったな」

「ではそうして美しい女性達を我が物にして、それで魔王様はどうされるおつもりでしょうか」

「んなもん決まってるだろ。全員とセックスする」

「……ですよね」

 

 全ての美女を集めた夢のハーレムの目的。

 それは当然セックス。ハーレムに入れた全ての美女達とセックス三昧の日々を過ごす事。

 

「……では、少し計算してみましょうか」

「計算?」

「えぇ」

 

 しかしその場合、魔王ランスが言う『全て』とは具体的にどれほどのものなのか。

 どうにもその規模を理解していなさそうなランスに現実を教える為、ホーネットは答えが見えつつも一から計算して説明する事にした。

 

「ウルザさん。魔人である私には分からない事なので教えて欲しいのですが、今現在人間世界の人口総数というのはどれ位のものなのでしょうか」

「そうですね。おおよそにはなりますが、去年の時点で約3億人程だったはずです」

「なるほど、3億人ですか……」

 

 この世界で生きている人間は約3億人。

 その中で魔王ランスが欲しがっている『美人』というのはほんの一部分になる訳で。

 

「でしたら魔王様、先程仰っていたようにまずはこれを男と女で分けましょう。性別の比率が均等であると仮定して3億の内の半分、つまり1億5000万人が女性だとします」

「うむ」

「そして次、この中に適齢期の女性がどれだけいるのか、ですが……先程魔王様が捨てると仰られていた『年増』と『ガキ』というのは具体的には何歳頃を指すのでしょうか?」

「年増は30だな。30歳を過ぎた女は鮮度が落ちるから駄目。下は外見によっても変わるが……あんまりロリ過ぎるのは好きじゃない。大体15歳前後ってところだろーな」

「15歳から30歳までという事ですね。となると……ウルザさん、人間種における平均寿命というものはどの程度でしょうか」

「大体80歳と考えて良いと思います。ランスさんが女性に求めるのは15歳~30歳ですので、比率にして約18%という所ですかね」

「という事は1億5000万の女性の内、18%となる2700万人程度が15歳から30歳であると仮定しましょう。……魔王様、ここまでは宜しいですか?」

「うむ」

 

 魔王ランスは仰々しく頷く。

 総人口3億人から性別と年齢というふるいに掛けて、ここまで残ったのは大体2700万人。

 

「そして最後に外見ですね。外見は数字で表すのが難しく具体性に欠けますが……例えとして『十人に一人の美女』を選出するとしましょう」

「おぉ、なるほど」

「十人の集団の中で一番美人な一人を選ぶ。そう考えた場合2700万人の十分の一、270万人が15歳から30歳であって美人な女性という事になります」

「270万か。イイな、んじゃあその270万を俺様のものにしよう」

 

 この世界に存在している適齢期の美女。大まかに計算して総数270万人。

 その全てを我が物とする気満々の魔王は満足げに笑う……が。

 

「……ランスさん。その270万人を一体どうするおつもりなのですか?」

「あん? だから全員とセックスを──」

「270万人ですよ? 一日替わりで抱いたとして270万日、一日に10人を抱いたとしても27万日掛かるのですよ? 一年で割って約739年掛かる計算になりますが、本気で全員抱くおつもりですか?」

「…………え。な、739年?」

「はい。739年です」

「……そ、そんなに?」

 

 一転してランスは不意打ちを食らったような顔になった。

 魔王ランス夢のハーレム計画──それは現状739年掛かりとなるあまりに壮大過ぎる計画。

 

「739年か……それは、さすがに……」

「魔王様の任期は1000年ありますから、739年というのも不可能な数字ではありませんが……」

「ですがランスさんは問題無くともお相手の女性が寿命を迎えてしまうでしょうね」

「……ぬぅ」

 

 思わず唸るランス。

 現状の見立てとなる739年、それは人間が10世代以上も先へと進む長過ぎる年月。

 到底寿命の方が持たないので、このままではハーレム計画の実現は実質的に不可能である。

 

「じゃ、じゃあさっきの計算を見直す」

「というと?」

「えっと……なら10人に一人の美女は止めて、100人に一人レベルの美女に絞ったらどうだ?」

「それなら今の数字をそのまま10分の一にして女性の数は27万人、計73年ってところですね」

「73年か……それなら、なんとかなるか……?」

 

 魔王ランス夢のハーレム計画(改)──それは現状73年掛かりとなる壮大な計画。

 

「……なんとかなりますか?」

「なるっ! ……と、思う」

「ですが、その73年の間にも新しい女性は生まれてきますよ? となればその分の勘定だって増やす必要がありますよね」

「うぐっ」

「そして一番の問題点ですが、その73年の間にも女性は年齢を重ねてしまいます。ハーレム計画の進行中に適齢期だった女性は適齢期を越えてしまうでしょうし、適齢期に無かった女性が適齢期に入ってくる事になります。そうした年代の経過まで考えた場合、73年計画というのは少々現実的では無いと思いますが」

「……ぐぬぬ」

 

 30歳で鮮度が落ちると言っているのに、73年も掛かればその美貌を維持出来るはずが無い。

 ウルザの言う事は全て尤もであり、ランスにはぐうの音も出ない。

 

「じゃ、じゃあ……一日に10人じゃなくて一日に100人とセックスする」

「……100人と、ですか?」

「おう」

「……それなら、まぁ……更に十分の一して約7年で済む計算にはなりますが……」

「7年! 早いぞ! これならイケるな!」

 

 魔王ランス夢のハーレム計画(決定項)──それは現状7年掛かりとなるそこそこな計画。

 話し合いの甲斐あって、ようやく実現可能な計画の大筋が固まってきた……かに思えたが。

 

「けど本気ですか? 一日100人ですよ?」

「本気だ。俺様ならやれる」

「……では、これも計算してみましょう」

 

 果たしてそれは、一日に100人と性交するとはどういう事か。

 これまた現実が見えていないランスの為にもウルザは一から説明する。それこそが型破りなトップを支える補佐役の仕事というものである。

 

「ランスさんは普段から8時間ぐっすり睡眠を取りますからね。他にも食事や入浴、その他雑事にも時間を消費するとして……まぁ多めに見積もって一日12時間を性交に当てるとしましょう」

「うむ」

「その12時間で100人を抱こうとする場合、一時間につき8人強、大体一人につき七分半の時間で抱く必要があります」

「……な、七分半?」

「はい。七分半です」

 

 100人に1人レベルの美女とのセックス。

 それを一人につき約七分半ぽっきりでぱぱっと終わらせる。

 

「七分半……」

「はい。そうでなければ一日に100人と性交を行うのは不可能です」

 

 そうして一日につき100人抱いて、それを約7年間休み無く続ける。

 それが魔王ランス夢のハーレム……なのか。

 

「……なんか、そこまでいくと作業みたいであんまし楽しそうじゃないな」

「ですね。私も同感です」

「しかもそれって他の女共とセックスする時間を除いて、ってことだよな」

「ですね。シィルさんや魔人の皆さんと性交する時間はほぼ無くなってしまいますね」

「………………」

 

 ハーレム。それは男の夢。

 果たして夢とはかくも作業感漂うものなのか。

 自分の女と呼ぶ程に大事な女達とのセックスの時間を削ってまで叶えるようなものなのか。

 

「……どうしますか? 魔王様」

「………………」

 

 沈黙する魔王の隣、ホーネットは躊躇いがちに口を開く。

 

「魔王様がそうせよと仰るなら、これは決して実現不可能なものではありません」

「………………」

「魔王軍全軍を動かす号令を発して、今の世界をそのような世界に作り変えますか?」

「………………」

 

 その一言で世界が大きく変わる。

 その重みを知ってか知らずか、長い長い沈黙を続けていたランスだったが──

 

 

「……よしっ! 決めたぞ!!」

 

 遂に──決断した。

 

 

「はらへった。俺様は飯を食いにいく」

 

 それだけ言い残して、立ち上がったランスは王座の間をそそくさと出ていった。

 

「……逃げましたね」

「……ですね」

 

 開けっ放しにされた扉を眺めながら、ウルザとホーネットは共に息を吐く。

 

 こうして魔王ランス夢のハーレム計画は計画時点で頓挫したのであった。

 

 

 

 

 

 

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