たどり着いた電卓キューブ迷宮最奥。
大きな宝箱の中に入っていた運命のアイテム。
それは──
「……バスリンガル?」
それはシャイなあの子の本音を覗く彼氏御用達のとっておきアイテム。
破壊神ラ・バスワルド専用、音声認識不要型自動翻訳機(召喚機能付き)。
その名も──『バスリンガル』
「おい、これのどこが武器だってんだ」
「………………」
それは何処からどう見ても武器ではない、手のひらサイズの小型メカ。
バスリンガル──それは破壊神ラ・バスワルドとコミュニケーションを取る為の必須ツール。
無言の沈黙を読み取ってその奥にあるバスワルドの意思を液晶画面に表示する翻訳機能の他、バスワルドが天に帰還してしまった時にもいつでもコンタクトが取れるよう、スイッチ一つで地上に再召喚出来る便利機能まで搭載されているらしい。
「どう見ても武器じゃない……けどまぁ、バスワルドは武器なんか使わねーか」
「………………」
「とにかく、このメカを使えばこいつの言いたい事が俺様にも分かるってんだな?」
「………………」
「なら早速使ってみよう。どれどれ……」
ランスはバスリンガルのスタートボタンを押してみた。
すると──
「………………」
『……私は破壊神、ラ・バスワルド』
「おぉ、ちゃんと表示された。それに喋ってもくれるのか」
バスワルドの沈黙を読み取って、バスリンガルの液晶画面には文字が表示された。
そして液晶の両側にあるスピーカー穴からはバスワルドの声そっくりな機械音声が翻訳文をそのまま読み上げる。さすが電卓キューブ迷宮産とでも言うべき見事な翻訳機能である。
「………………」
「なるほど、こりゃ便利だ」
『そう、私は破壊神。ありとあらゆるものを破壊する為に生み出された第二級神也』
「お」
『だから宝箱とか見つけると中身を見ずに箱ごと破壊したくなる。それが破壊神の生き様』
「あん?」
『というかそろそろおなかすいたね』
「なんだ、腹減ったのか。つかお前って食事とか取る必要のあるタイプのアレなのか」
『そりゃ勿論。まぁ食わずとも死にはしないけどせっかくなら美味しいごはんを……む?』
とそこでバスワルド本体が反応した。
バスリンガルに表示された困惑を表すように、その無表情の顔がランスの方に向いた。
『……むむ?』
「ん?」
『むむむ? 私の意思が伝わっているのか?』
「あぁ、バッチリ伝わってるぞ。これのおかげで」
ランスは手の中にある翻訳機バスリンガルをバスワルドに見せ付ける。
「………………」
その液晶画面の表示を見てもバスワルド本人は何も答えない。なんら反応しない。
『ほんとだ。バッチリ表示されてる。というか音声付きで喋ってるし』
しかし運命武器バスリンガルはちゃんとその意思を代弁してくれる。
『ふむ……面妖な』
これには第二級神も驚き顔。表情はピクリとも変わらなくてもその驚きは筒抜け状態。
これぞ翻訳機バスリンガル。取説に書かれていたキャッチコピーに偽り無し、とっても無口な破壊神バスワルドとコミュニケーションを取る為には不可欠な代物と言えた。
『破壊神たるこの私の意思を代弁するとは……なんたる面妖な代物。これ破壊していい?』
「おい駄目だっての。せっかくの運命アイテムを破壊しようとするな」
『けど喋らなくていいというのは楽でいいな。無駄に喋るのは疲れるから嫌いなんだ』
「疲れるってお前……そもそもこの迷宮に来てからまだ一言も喋ってねーじゃねーか」
『うん。破壊神は喋らない神。とっても無口。バスワルドそういうとこあるから』
先程までとは一変して会話のキャッチボールもお手の物。
「………………」
バスワルド本人は相変わらずの沈黙状態、その代わりにバスリンガルが雄弁に語る。
どうやら無駄に喋るのを嫌う性格故にこんなにも無口を貫いているようだが、そういった事すらもバスリンガル無しでは窺い知れなかった事。
これが運命の繋がりによる恩恵。運命の赤い糸で結ばれる事によって、ランスは破壊神バスワルドの内面を覗けるようになったのだ。
『しかし心の声を覗くというのは如何なものか。翻訳のレベルを超えていると思うのだが』
「そもそもお前が喋らねーのが悪いんだろが。喋らねーと翻訳もクソもねーだろ」
『それはそうだけど……心の声が明け透けになるなんてバスワルド恥ずかしい(*ノωノ)ポッ』
「あん?」
それが翻訳のレベルを超えた運命武器の超機能なのだろうか。
バスリンガルの液晶画面には彼女の喜怒哀楽を表すような顔文字まで表示されていた。
『なんだこれ、ユニーク』
「ポッ、とか言われてもバスワルド本人の顔が微動だにしてないから違和感が凄い……」
『ふむ、私の表情筋は鉄壁だからな。でも本当はこの通り照れているんだ(/ー\*) イヤン♪』
「イヤンって……」
『\(^o^)/』
「お前遊んでるだろ。つか顔文字やめろ」
それがバスワルドの本心、なのかどうか。
それは定かではないが、バスリンガルに表示される翻訳文はやたらとコミカルである。
「にしてもバスワルド、お前ってこういう冗談とかやるような性格だったんだな」
『その翻訳機がおかしい。私はそんなキャラじゃない。変なキャラ付けするな(*`Д´)プンスカ』
「だからプンスカじゃねーっつの。……まぁいい」
ツッコむのが面倒くさくなったのか、ランスは軽く頭を振って。
「ところでバスワルド」
『なに?』
「お前と会話が出来るようになった今、聞きたい事が沢山あるぞ」
『ほう? ならば問うてみるがよい。我の気が向いたら答えてやろうではないか』
「なんか急に偉そうになりやがったな……じゃあ質問だが、そもそもお前はあの日、一体何が目的でアメージング城に突然現れたんだ」
あの日。破壊神ラ・バスワルドと初めて遭遇したあの日。
あの日はランスも訳が分からず、流されるままに破壊神バスワルドとの戦闘となった。
バスワルドがとにかく喋らない神なので理由も聞けずにただ戦いただ勝利したのだが、そもそもあの戦いは何故起こったのか。
『なんだ、突然現れてはいけないというのか?』
「現れるなとは言ってない、けどいきなり襲い掛かってきたのは何故だ。お前がやたらめったら暴れ回るからアメージング城のあちこちを再建しないといけなくなっちまったんだぞ」
『む……』
「俺様の城を壊した責任をとれ、責任を」
『むむ……』
アメージング城所有権者ランスからの責任追及に押されてたじろぐバスワルド。
今こうしてバスワルドと普通に接する事が出来ている以上、その心に敵愾心は無いのでは。
だとするならば、そもそもあの時に戦う必要など無かったのではないか。
『それは……』
そんな質問に、破壊神バスワルドは若干言い淀むような様子を見せて。
『(mー_ー)m.。o○ zZZZ』
「おい寝るな。つーか顔文字やめろ」
眠ったふりで逃れられるはずもなし。すぐにランスのツッコミが刺さる。
するとバスリンガルからは『……むぅ』と不満げな唸り声が聞こえて。
『……なに? なんか文句でもあるの?』
「そりゃあるだろ。こちとらせっかく建築途中の城をぶっ壊されとるんだぞ」
『我は破壊神也。そこらにあるものを手当り次第破壊するのが我が権能にして役目。そんな破壊神に破壊をするなというのが間違っている』
「開き直りやがったなコイツ……それじゃお前は俺様の城を破壊する為に現れたのか?」
『いや別にそういう訳じゃないけど。そんな理由じゃ地上に降りる事なんて出来ないし』
ていうかねー、とバスワルドはその神々しい見た目に反してなんとも軽く呟いて。
『本来なら私はあの日、あの場所で地上に顕現する予定なんて無かったんだ』
「じゃあお前にも想定外の出来事だってのか?」
『うん。これは内緒の話だけどね、私には特定の破壊対象の個体数が一定を越えた場合、それを破壊する為に地上に顕現する、という設定がされている』
「特定の破壊対象?」
『完全に汚染された魂だ。あれはどうしようもないので破壊する。じゃないとその内に地上が汚染魂で一杯一杯になってしまうから』
「ほーん……」
この世界において、完全に汚染された魂は輪廻の歯車から外れて神の下に還らなくなる。
神の下に還らないとは死なないという事。つまり完全に汚染された魂の持ち主は不死となる。
そうした不死の存在が次第に増えて地上を埋め尽くすのを防ぐ為、ある時を境に破壊神が地上に顕現してそれら全てを破壊する。バスワルドにはそういう役目があるらしい。
『んであの日、私は地上に顕現したわけ。だから私としては当然のように汚染された魂を破壊する為に呼び出されたものだと思ったんだ』
「ふむ」
『だが蓋を開けてみればあの城の近辺には汚染された魂が見当たらなかった。この世界全ての範囲で見渡せばある程度あるにはあったけど……それも私が地上に召喚されるトリガーとなる上限数には到底及ばない数だった』
「……で、つまり?」
『つまり、想定外の出来事だってこと』
するとバスリンガルには『(●´・△・`)はぁ~』と溜息を吐く絵文字が。
『あれは私に設定された本来の地上顕現じゃない。せっかく破壊神の破壊神っぷりを見せ付けてやろうと思ったのに、破壊対象が無いだなんて肩透かしもいい所だ』
初めて地上に顕現したラ・バスワルド。
破壊神はその名に定められた役目を行使しようとして……しかし破壊対象が見当たらない。
これまた初めての事態にバスワルドは戸惑った。戸惑って、困って、悩んで……そして。
『その結果、私はとてもストレスが溜まった』
「は?」
『で、仕方無いから暴れ回る事にしたってわけ』
「……おい。まさかお前が俺様に襲い掛かってきたのってそんな理由なのか」
『あぁそうだ。これがあの日いきなり破壊神が襲い掛かってきた真相だ。どうだ驚いたか?』
原因は──ストレス。
要するにあの日突然地上に降り立ったバスワルドは結構むしゃくしゃしていたようだ。
『だってさぁ、破壊神が地上に顕現する理由なんて破壊しかないわけで。だったらたとえ破壊対象が無くても、突然地上に呼び出されたら何かを破壊しろってことなんだろうなーって思うじゃん。それが人間ってものでしょ?』
「お前人間じゃねーだろ」
『そういう差別良くない。困ったらとりあえず破壊する、そういう感覚は人間も破壊神も一緒』
「普通の人間は困ったらとりあえず破壊なんぞしねーっての。……まぁいいや、お前が襲い掛かってきた理由については一応分かった」
あまり納得出来る理由ではなかったものの、当人がそう言うのだから受け入れる他ない。
破壊対象が見当たらなかったから代わりのものを破壊した、要はそれだけの事である。
『おぉそうか、分かってくれたか。バスワルドほっと一安心』
「つってもお前がアメージング城をぶっ壊した事を許した訳じゃねーがな」
『そんなー(´・ω・`)』
「その顔はなんなんだ。……にしてもバスワルド、お前が城を壊した理由は分かったが、それじゃあの日突然現れたのはなんでだ。さっきの話じゃお前にとっても想定外だったんだろ?」
本来であれば、破壊対象が一定数に達していない現状破壊神が地上に顕現する事はない。
それなのにあの時、というか今もこうしてバスワルドがランスの隣に居る理由とは。
『あぁ、その理由は多分これだ』
おおよその検討は付いていたのか、言いながらバスワルドは左手を持ち上げた。
『この小指の糸、これが原因だと思う』
「それって運命の赤い糸が?」
『あぁそうだ。この赤い糸のせいだ』
それは破壊神にだけ見れるもの。破壊神の左手の小指から伸びる糸。
それは今も。すぐ近くにいるランスへと向かって伸びている。
『この糸、どうやら最初は私の分身体に結び付いていたのだろう?』
「あぁ、サイゼルな」
「まずそれが原因の一つ目。そして二つ目がこの赤い糸の特性で、これは一見すると小指から伸びているように見えるけど、実際はその者の魂に結び付いているっぽくてね』
「ぽい?」
『うん。私は魂については専門外だからハッキリとは言えない、でも多分そんな感じだ。でその場合、私の分身体であるサイゼルの魂というのは実際にはこの私バスワルドの魂なわけで。もっと言えばもう一人の分身体であるハウゼルの魂とも同質なわけで』
破壊神ラ・バスワルドの魂を分割して生まれたのが魔人ラ・サイゼルであり魔人ラ・ハウゼル。
そこに魂と魂を糸を繋ぐらしい運命システムが交わると……少々ややこしい事態が発生する。
『きっと担当者も悩んだんだ。本来なら魂の大元であるバスワルドに結び付ける必要がある、しかしバスワルドの魂は分割されている。さてどうしようかと悩んで……とりあえずサイゼルの方に糸をくっ付けておく事にしたのだろう』
「とりあえずて。随分と適当だな」
『そう、これは運命システム担当者の適当な仕事っぷりが原因。私の分身体であるサイゼルの魂とハウゼルの魂は完全に同質でなければならない。それなのにサイゼルの方だけに余計な糸がくっ付いてしまった』
「ふむふむ」
『でその結果、なんやかんや不具合が起きて私が地上に顕現する事になった、って感じだと思う』
「なんやかんやってお前……」
『そうとしか言いようがない。魂や運命システムは私の専門ではないからな』
そして『私の専門は破壊だけだ( ・`ω・´)キリッ』と液晶画面に勇ましい顔文字が。
ともあれ、魂の片割れであるサイゼルにだけ結ばれた運命の糸。それは本来バスワルドの魂に結ばれるはずであり、もう一方の片割れであるハウゼルの魂がそれに呼応した。
その結果魂が一つに戻り、本来の条件とは異なる破壊神の地上顕現が行われてしまったらしい。
『勝手に運命を結び付けたのがそもそもの原因。だからバスワルド悪くないもん』
というのが本人の弁。もといそれを翻訳したバスリンガルの弁である。
「……ふーむ。まぁあれだな、よく分かんねー事が起きてたんだなってのは分かった」
『うむ、その理解で正しいぞ。実際のところは私だってよく分かってないからな』
「お前はそれでいいのか。自分の事だろうに」
『良いんだ。想定外の事態とはいえそれでも私にとっては初めての地上顕現だったからな。破壊神パワーで色々ぶっ壊して回るのは中々楽しくて良いストレス解消になったし』
「あのな。ストレス解消にぶっ壊されたのは俺様の城だって事を分かってんだろーな」
『(●´_ゝ`)』
「どういう感情の顔文字なんだそれは」
理解不能なバスリンガルの液晶表示にランスはやれやれと頭を振って。
「まぁいい、一応事情は分かった。お前は美人だから一回は大目に見てやる……が、今後は勝手に暴れ回って変なもん壊したりするんじゃねーぞ」
『分かった。善処する』
「よし。そんじゃあ電卓キューブ迷宮の謎も解けた事だし、そろそろ城に戻るとするか」
すでに運命武器バスリンガルは手に入れた。この電卓キューブ迷宮は攻略完了。
いつものようにランスは帰還のワープを頼んで元居た場所に戻ろうとした──そんな時。
「………………」
バスワルドの沈黙を読み取って。
『……ランス』
「あん?」
初めてその名を呼んで──破壊神ラ・バスワルドが話しかけてきた。
『ランスよ。私とお前が初めて出会ったあの時を覚えているか?』
「そりゃ覚えとるけど……つかお前と初めて出会ったのなんてまだ一週間ちょっと前じゃねーか」
『あぁそうだ。初めて出会ったあの日、私とお前は初対面ながらも戦う事になったな』
「そりゃお前が突然襲い掛かってくるからだろ。そのせいでケイブリス死んじまったんだぞ」
唐突な話題に面食らいながらもランスは軽く答える。
あの日、破壊神と魔王が、この世に二つとない極限のパワーを持つ者同士が衝突した。
『私が初めて地上に顕現したあの日、私とお前は刃を交えて……そして私は倒された』
「うむ。俺様の方が強かったのだ」
『第二級神たるこの私を倒すなど。なんたる不届き者め。許せん。バスワルドマジおこ』
「マジおこって……」
バスリンガルには『(# ゚Д゚)ゴラァ!』と破壊神怒りのメッセージがありありと。
なども束の間、すぐに『(`・ω・)ノ』みたいな顔に切り替わって。
『が、私は戦いの結果には然程拘泥しない。私の使命は破壊であって勝利ではないからな』
「負けても気にならないってのか?」
『うん。だから実のところ別に怒ってはいない。それよりも……』
「ん?」
するとバスリンガルではなく、バスワルドが。
破壊神の鉄面皮に変化があった。
「………………」
「な、なんだ」
その瞳がじっとランスの事を見つめる。
たったそれだけの仕草でも、その奥にある色合いは確実に変化を来していたようで。
『それよりも私は……お前に興味が湧いた』
「ほう?」
『私の破壊の力を恐れずに立ち向かってくる様、見事だった。あの戦いでは勝敗云々よりもお前の戦い振りが目を引いて……だからこそ私はこうして再び地上に降り立ったのだ』
「ほほう。んじゃ今回は俺様に会う為に来たのか」
『あぁそうだ、お前に興味が湧いたからな』
破壊神二度目の地上顕現。
それは破壊ではなく、己が好奇心を満たす為。
「さては一週間以上も無言ストーカーしてきたのもそれが理由か」
『うん。お前がどういう存在なのか気になったし、私の指にある赤い糸の事も気になっていた。……いや、気になったというよりも……より有り体に言うならば……』
破壊こそを己が使命とし、破壊にしか興味が無かったバスワルドが、言った。
『ときめいた』
「は?」
『ときめいたのだ。今も疼くこの感覚を表現するならばそれが一番適切だと感じる』
その表情は一切変わらない……が、その胸の奥には本人にしか分からない変化があるようで。
バスワルドはときめいていた。魔人だろうと神だろうとときめく時はときめくのである。
「……ほほーう?」
一方ランスもそれには顕著に反応した。
「ときめいたのか、バスワルド」
『うん。ときめいた』
「ときめいたってのは要するに……このランス様に惚れたな?」
『かもしれない。こういう気持ちになるのは初めてだからあんまりよく分からないけど』
バスワルドは正直に心中を告白する。
「なーるほど。にしてもあの一戦だけでか」
『うん。あの一戦だけでだな』
「そうか……さてはお前、結構チョロいな?」
『ふむ。否定はしない』
「しねーのかよ」
『うん。たとえチョロかろうとも私がときめいてしまったのは事実だからな(u_u*)ホ゜ッ』
どうやら相応に照れてはいるようだが、その気持ちを認めてはいるようで。
初めての地上顕現、初めての戦いの中でバスワルドの心には微熱が灯っていた。
『というかね……私は破壊神だから』
それは破壊神として生まれようとも。
あるいは、破壊神として生まれたからこそ。
『破壊神ラ・バスワルドは破壊するだけの存在、私が生み出された理由はそれだけであり、私に搭載されている機能もそれだけだ』
「ふむ……」
『破壊する事だけが役割、破壊するだけの存在が誰かと意思を交わす必要など無い。だからこそ破壊の行使の際に神たるこの名を告げる以外、わざわざこの口から言葉を発する理由も無い』
「ぬぅ……」
神とは役目を行う存在。そこにはランスも口を挟む事が難しい複雑な事情がある。
上位存在より生み出されて、しかしどうも使い勝手が悪かったせいで使用機会が一向に訪れず。
その結果魂を分割されて魔人姉妹となった。それが破壊神ラ・バスワルド。
『だからたとえ翻訳機越しとはいえ、こうやって誰かと会話をしたのは初めてだ』
「バスワルド……」
そんなバスワルドとの──運命が結ばれた。
ランスはともかくとして、バスワルドにとっては十分運命的と呼べるものだった。
『意思を伝え合うというのは新鮮な体験だ。なので私は今普段よりもテンションが上がっている』
「あんましそうは見えんけど……楽しいのか?」
『うん。わりと楽しい。バスワルド満足』
「そ、そうか……そりゃ良かった」
ただの破壊の象徴、無言の沈黙と鉄面皮の表情の裏にある破壊神の心。
それは期せずしてあった運命の出会いによってときめき、沸き立ち、満たされていた。
『そんな訳で。今回の一連の騒動の謝罪とお礼を兼ねてお前には褒美を与えてやっても良い』
「褒美?」
『あぁそうだ。お前はこの破壊神を倒した男でもあるしな。故に──』
故に破壊神は、言った。
『……ランスよ。私とセックスがしたいか?』
「したーいっ!!」
魔王からは即座に答えが返ってきた。
(続く)