ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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破壊神バスワルドたん④ そして──

 

 

 

 

 

 そして、その後。

 ベッド上に見えるは満足げに余韻を味わう表情。

 

「ふいー……スッキリスッキリ」

「……はぁ、はぁ」

 

 沢山運動して、沢山気持ち良くなってご満悦の魔王ランス。

 その隣には浅い呼吸を繰り返す破壊神ラ・バスワルドの姿。

 

 ランスはバスワルドを抱いた。寝室に招き入れて男女の営みを交わした。

 運命の相手だと判明したその日、見えない赤い糸のみならず物理的にも繋がったのだ。

 

「うむ、良きセックスだったぞ。これで俺様は神をも抱いた男になったのだ」

「……はぁ、ふぅ」

「最初はあまりの反応の無さにどうなることかと思ったが、伝説の媚薬のおかげでちゃんと変化が見られるようになってグッドだった」

「……ふぅ、ふぅ」

「それに神だけあって身体の丈夫さも問題無かったし……うむうむ、実に良きセックスだった」

「…………はぁっ」

 

 したり顔でこの一戦を評価するランスの一方、バスワルドの返事は未だ整わない呼吸だけ。

 まな板の上の鯉の如く、基本的にバスワルドは動かないので終始ランスがリードする形にはなったがそこはセックス百戦錬磨の男、そういう一面も含めて破壊神とのセックスを楽しんだ。

 さすがは第二級神だけあって肉体的強度は十分、魔王が全力を出しても壊れるような気配は微塵も無く、そういった意味でもランスの好き勝手に楽しめるセックスとなったようだ。

 

「どうだバスワルド、初セックスの味は」

「…………ふぅ」

「がははは、疲れたか。その鉄面皮が剥がれて必死に喘いでいる姿は中々見ものだったぞ」

「……………………」

 

 沈黙。浅い呼吸を繰り返していた口を閉じてバスワルドは黙り込む。

 それでも心中では今の言葉に照れている、という事をランスもようやく分かってきた。

 ちなみにその心の声を伝えてくれる翻訳機、バスリンガルの液晶画面はセックスの途中辺りから『✞┏┛墓┗┓✞』と表示されたまま停止している。どうやら心の声を上げる余裕も無かったらしい。

 

「これで普段からもっと喋ってくれたらこっちも楽なのだが」

「………………」

「いやでも普段がすげー無口だからこそ、セックスの時にだけ聞こえる喘ぎ声が特別感あってエロく感じるってのもあるか……ううむ、深いな」

『……う』

「お?」

『_:(´ཀ`」 ∠):_うぅ……』

 

 するとその心の中、ようやくまともに思考出来るだけの平穏さを取り戻したのか。

 バスリンガルが再起動して、バスワルドそっくりな電子音声が本人の代わりに声を上げた。

 

『……は、はふぅ……恥ずかしかったぁ……恥ずかしかったよぅ……』

「がははは、そうかそうか」

『うぅぅうう゛~……』

 

 さすがに初体験の後とあっては、それまであった茶目っ気さも羞恥に上書きされていて。

 

『それに……もうなんか、なんか……なんか色々スゴかったぁ……。色々スゴくて、もうなんて言っていいのかわかんにゃい……』

「そこは気持ち良かったと言うのだ。セックスの後にはそれさえ言っときゃいい」

『うぅ……こんなことしちゃって……もうバスワルドお嫁にいけないよぉ……』

「嫁にいくつもりだったのか、お前」

『うぅぅ~……』

 

 うーうーと呻くバスリンガル、あるいはバスワルドの心の声。

 どうやら行為前にあった謎の威勢の良さは未経験と無知が故の勇み足だったようで、とっぷりと事を終えたバスワルドは恥じらいやら反省やらで一杯一杯になっていた。

 伝説の媚薬が強烈過ぎたという面もあるが、いずれにせよ破壊神にとってランスとの初体験は大きな衝撃となったようだ。

 

『……けど』

「ん?」

『……けど、中々新鮮な体験だった』

 

 すると、ベッドに横たわって石像と化していたバスワルドが動いた。

 真上を向いていた首が横に向いて、赤の目と青の目がそこにあった顔を見つめる。

 

『……ねぇ、ランス』

「なんだ」

『ちょっとさ、私の身体を触ってみて』

「んあ? いいけど、ほれ」

 

 言われた通りにランスはバスワルドの身体にむにっと触れてみた。

 

『……なぜおっぱい』

「そりゃ身体を触ってって言われたらここだろ」

『むぅ、破壊神のおっぱいは決して安くは無いのだが……まぁいい。それよりこうして触られていると……なんだか不思議な感じになる』

「おっぱいが?」

「違う、私の心の中が。私、自分の身体を誰かに触られるのって初めてなんだ」

「へー……ってそりゃあ、あんな物騒なバリアを常時張っていたらそうなるだろうな」

 

 バスワルドは神。破壊神たる彼女の役割はただ破壊することのみであり、それ故授けられた常時展開式の破壊の障壁は他者との接触を拒む。

 そもそもがよその神と出会うような機会も無く、地上に顕現したのも数日前が初。そんなバスワルドにとってはセックスどころか、他人が自分の身体に触れる事自体が初体験。 

 というかそれ以前に、翻訳機越しで他人と会話をする事すら初体験だった訳で。

 

『ランス、私の身体は柔らかかっただろう』

「あぁ、柔らかかったな。つかエロかった」

『けれどもお前の身体は固いな。私と違ってカチコチしてる』

「がははは、そりゃ俺様は鍛えているからな。イイ男の身だしなみってもんだ」

『ん……』

 

 その身体に触れて、自分との違いを感じる。

 そこにある熱を感じて、そこにある感触を自分のものにする。

 バスワルドはそういう事に、破壊とは違う心の揺らぎを感じていた。

 

「………………」

 

 すると──バスワルドが。

 

「………………」

「お、おぉ! 動いた! 動いたぞ!」

 

 初めて自発的にその手を動かして。

 

「………………」

「……む」

 

 そしてその手で。その指先で。

 ランスの頬を軽く撫でた。

 

「………………」

「……なんだ?」

「………………」

 

 愛おしむように、その手付きは優しく。

 その目は穏やかで──

 

「…………ランス」

「しゃ! しゃしゃ、喋ったっ! バスワルドが喋ったー!!」

 

 遂に──バスリンガルではなく、その口で。

 その口で直接にその名を呼んだ。

 

「……ランス」

 

 その顔にはほのかな微笑が。

 そして、同時にその翻訳も。

 

 

『………………♡』

 

 と、その時だった。

 

 

「ん? ……ぬおっ!」

 

 ぽんっ!! 

 と空気が弾けたような音がして。

 

「わっ!」

「きゃっ!」

「なんだ、って……お前ら……」

 

 破壊神の姿は消え去って。

 入れ替わるかのように魔人ハウゼルと魔人サイゼルが姿を現した。

 

「あ……ランスさん……」

「そうか、元の姿に戻ったのか」

「ん……そうみたい。ていうか元の姿はあっちなんだけどね」

 

 バスワルド本人の意思か、あるいは別の要因からなのか。

 ともあれ再びバスワルドの魂は分離し、ハウゼルとサイゼルに戻ったようだ。

 

「しっかしまぁ破壊神になったり二人の魔人になったり……お前らって不思議な生き物だな」

「そ、そうですね……自分でもそう思います」

「それよりもランス、あんた……バスワルドともセックスしたのね」

「おう、ガッツリ抱いてやったわ。がははは!」

「がははじゃないわよ、全く……」

 

 破壊神をその手に抱いた男、魔王ランスの高笑いが寝室に響き渡る。

 

 

 こうして──事態は一応の収束を迎えた。

 魔王ランスは予てからの目的だったバスワルドとのセックスを成し遂げて。

 ハウゼルとサイゼルも元に戻って、破壊神ラ・バスワルドによる騒動は一件落着となった。

 

 

(………………)

 

 ──しかし。

 

 

(……こ、これはっ)

 

 その裏で、ハウゼルは。

 

(これは……なに!?)

 

 そして、サイゼルも。

 密かに姉妹達二人は、己が身に起きた変化というものを実感していた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 そして、それから数日後。

 

「…………ふぅ」

「……ねぇ、ハウゼル」

 

 廊下の隅っこ。身を寄せ合う二人の魔人。

 

「ねぇ、ねぇ……ハウゼル……」

「……えぇ、サイゼル。言いたい事は分かっているわ……」

 

 呟き、眉根を寄せて、切なげに唇を噛み締めて。

 見るからに辛そうな表情のサイゼル。その表情は合わせ鏡のように妹のハウゼルも同様で。

 

 あの後、保ったのは数日が限界だった。

 サイゼルとハウゼルはここ暫くの間、その衝動にずっと苛まされ続けていた。

 特に二人の感覚はリンクする事があって、そうなると同質の衝動を同じようにその身に受ける。

 お互いの衝動も、その苦しみも、渇望も。全てリンクするとあっては我慢にも限界があった。

 

「これ……どうしよう……」

「……どうにもならないわ。だって……」

「っ、……そうよね。これは……」

 

 悩みに眉を顰めたそばから……また。

 また──声が、聞こえる。

 

 

『………………』

 

 現実には聞こえていない、その声が。

 

 

『…………ちゅ……』

 

「うっ……」

「うぅ……」

 

 その衝動に、その叫びに。

 堪らずサイゼルもハウゼルも揃って胸元を苦しそうに押さえた。

 

 ──そんな時だった。

 

 

「あ、おーい、二人共ー」

「っ!!」

「っ!!」

 

 運良く、あるいは運悪く登場した魔王ランス。

 聞こえた声に肩をビクッと跳ね上げて、姉妹二人は揃って息を呑んだ。

 

「ら、ランスさん……」

「ハウゼルちゃん、それにサイゼルも。こんな所でなにやってんだ?」

「ら、ランス……」

「おう。…………あん?」

 

 ランスは気付く──二人の様子が変だった。

 その表情が、その目の奥にある色が、これまでとは決定的に何かが違っていた。

 

「どうした二人共、なんだかぼおっとした顔をしとるけど……熱でもあんのか?」

「い、いえ、そんな事は……」

「けど顔が赤くなってるぞ。つか熱っぽいっていうよりもなんか……色っぽい?」

「そ、それは……」

 

 二人の顔が赤くなったのは。微熱混じりの色っぽい感じになっているのは。

 それは──こうして会えたからこそ。

 

「……う」

「う?」

「うぅぅ~……もうだめぇ~」

 

 折れた。真っ先に折れたのは姉のサイゼル。

 なよなよっとした声で鳴きながら、よたよたとランスのそばに近付いていって。

 

「あ、あぁああ……ランスぅ~……」

「お、おぉ? なんだぁ?」

 

 その首に両手を回してぎゅっ、とハグ。

 サイゼルはランスの身体に抱き付いた。ねだるように、甘えるように。

 

「あぁ~~うぅ~~……」

「どうしたサイゼル、お前にしては随分と積極的ではないか。もしかして抱いて欲しいのか?」

「ち~が~うぅ~……それは違うんだけど……うぅぅ~……」

 

 否定の言葉こそあれど、なにやら様子のおかしいサイゼルの甘えっぷりは変わらず。

 前々から魔人サイゼルはランスの事を敵視し毛嫌いしていた。魔王になってからは反抗こそしなくなったものの積極的に近付いてきたりはしなかった。

 そんなサイゼルが今やこれ。この変化には魔王ランスも意図が読めずに困惑顔である。

 

「……ねえさん、ずるい……私も……」

「お、おぉ、ハウゼルちゃんまで」

「あぁ、ランスさん……」

 

 そしてそれは妹ハウゼルの方も同様。

 姉妹で左右から挟むように、ハウゼルもランスの身体に抱き付いた。

 そして恍惚の表情。二人の魔人が魔王に寄り添い凭れ掛かって、うっとりしていた。

 

「なんだなんだ二人共、今日は随分とエロいな。もしかして発情してんのか?」

「ち、違うのぉ~……!」

「これは……これは……」

 

 二人は発情しているわけではない。無論おかしくなったわけでもない。

 いやある意味ではおかしくなってしまったのだが、それにはちゃんと理由があって。

 

 

『………………』

 

 その──呼び声が。

 

 

『…………ちゅ……』

 

 魂の呼び声が、聞こえる。

 

 

『…………ちゅき』

 

(あぁ……やっぱり……これは……!)

 

 ハウゼルの魂に。

 

 

『ランス……ちゅき♡』

 

(こ、これは……バスワルドがぁ……!)

 

 サイゼルの魂に、その声が響き渡る。

 

 それが原因──破壊神ラ・バスワルドの呼び声。

 今もハウゼルとサイゼルには魂の奥底からの呼び声が響いていた。バスワルドの存在を知覚した影響からなのか、先日の一件以降頭の中で魂の呼び声が鳴り止まない。

『ランス……ランス……ちゅき……ちゅき……♡』といった感じで、バスワルドによる精神汚染攻撃が絶え間なく続いているのである。

 

『ランスぅ……ちゅき♡ いっぱいちゅき♡』

 

(あぁ……だめぇ、こんな……!)

(こんなのずっと聞かされてたら……頭がおかしくなるぅ~……!)

 

 その成り立ちからして、ハウゼルとサイゼルの魂はバスワルドの魂と同質。

 そして魂の大元がバスワルドである以上当然なのだが、魂の主権はバスワルド側にある。

 それでも姉妹が普通でいられたのはバスワルドの魂が無色透明であったから。破壊神として生み出されて、破壊することしか役目が無く、その役目すら今まで一度も行使する機会が無くて。

 バスワルドが生み出されたままの状態を保っていたからこそ、その魂を分割しても無色透明色のままで不都合は起きなかった。

 

『えへへぇ……ランス……ちゅきちゅき♡』

 

 しかし。破壊神バスワルドは地上に顕現して、ランスに出会ってときめいてしまった。

 今やバスワルドの魂はそういう状態。すでに無色透明色ではなくピンク色になっている。

 となればそれを分割したら分割後の魂もピンク色になるのが必定。なにせ魂の大元がランスを求めているのである、分身体であるハウゼルとサイゼルにその渇望から逃れられるはずも無く。

 

「あぁ……ランスさん……すき」

「う゛ぅぅ~……ランスぅ~……すきぃ……」

「がはははは! さては二人共、ようやく俺様の魅力に気付いたようだな!」

 

 その身体が……否、その魂が求めてしまう。

 要するに破壊神ラ・バスワルドが放つちゅきちゅきオーラに当てられた結果、姉妹二人も同じくちゅきちゅき状態になってしまったのだ。

 

「うむうむ、やっぱ姉妹同士でレズってるよりも俺様に惚れた方が健全だよな。これからは男の魅力ってもんをたっぷりと教えてやろう」

「ち、違うのぉ~……これは違うの、これはバスワルドのせいでぇ~……!」

「バスワルド? あいつがなんかしてんのか?」

「いえ、その……なにかをしている、という訳では無いのですが……こ、声が……」

 

 二人には聞こえる。今もバスワルドはちゅきちゅきオーラをガンガンに放っている。

 サイゼルとハウゼルが分割された魂の片割れを本質的に求めているように、大元のバスワルドは運命で結び付いたランスの魂を求めているのである。

 

「ねぇ、ねぇランスぅ……好きだから、好きだからバスワルドをなんとかしてぇ……」

「なんとかって言われてもな……バスワルドにチェンジする事は出来ねーんだろ?」

「えぇ……私達の意思ではどうにも……」

 

 姉妹側からの自発的な切り替えは不可能。

 その声の主は魂の奥底に潜んだまま。手段の無いハウゼルは悩ましげに首を振る。

 

「あそうだ。んじゃこれを使ってみるか」

「これって?」

「バスリンガル。これには翻訳の他にもバスワルド召喚機能が付いていたはずだ」

 

 バスリンガル。その正式名称は破壊神専用音声認識不要型自動翻訳機(召喚機能付き)。

 括弧内が示す通り、バスリンガルには破壊神ラ・バスワルドを呼び出す機能が付属している。

 

「ポチッとな」

 

 ランスは召喚ボタンを押してみた。

 

 すると──ぽんっ!!

 と空気が弾けたような音がして。

 

「………………」

 

 サイゼルとハウゼルの姿が消えて。

 

「………………」

「おぉ、出た」

 

 そこには神々しき神たる姿。

 破壊神ラ・バスワルドが降臨していた。

 

「………………」

「ようバスワルド、元気だったか」

 

 数日振りの地上顕現。呼び出されたバスワルドは相変わらずの無言沈黙。

 だが──

 

「………………」

「ん?」

「………………(くるっ)」

「お?」

 

 不動の破壊神が、動いた。

 その姿がゆっくりと反転して後ろを向いた。

 

「………………」

「おい、何処へ行くんじゃ」

 

 そして──逃げる。不動の破壊神が去っていく。

 ふわふわ宙に浮かびながらすすすーっと、一定速度でランスの下から離れていく。

 

「………………」

「おーい」

「………………」

「バスワルド、待てっての」

 

 逃げる破壊神を追うランス。

 追い付いてその肩を掴んで、ぐいっと引き寄せて正面を向かせた。

 

「………………」

 

 すると──

 

「…………(すっ)」

「お、顔を背けやがったぞこいつ」

 

 バスワルドは顔の向きを横に逃した。

 その表情は鉄壁の無表情ながらも、何かしらの意思というものがひしひしと伝わってくる。

 

「お前さては……照れてるな?」

「………………」

「がははは、そうだろそうなんだろ? 俺様にはお見通しだぞ」

 

 バスワルドは神々しい見た目から想像し辛いものの中身があれな為、その行動原理はとても単純。

 後ろを向く。逃げる。顔を背ける。自分との接触を避けている、要は照れているという事。

 

「よし、バスリンガルで確認してみよう」

 

 ランスはバスリンガルを起動してみた。

 すると早速その心の叫びが大声で。

 

『はっ……恥ずいっ!』

「ほーらやっぱり」

『や~ん! 恥ずかしくてランスと目を合わせられないよー!(><)』

 

 バスワルドはしっかり照れていた。

 ときめき、初めてのセックスを体験して今、破壊神の心は見事に乙女となっていた。

 

『に、逃げる! 逃げたい! 逃げさせて!』

「逃げるなっつの」

『やぁ~めて~! 今はだめなの、今はバスワルドに近付かないでぇ~!ヽ(。>Д<)』

 

 バスリンガルから切なる乙女の悲鳴が響く。

 その魂がハウゼルとサイゼルの姿に分割されている時はちゅきちゅきオーラ全開なのに、実際に目の当たりにすると恥ずかしくなって逃げたくなってしまう。

 それが未だ発達途上の乙女心、乙女になったばかりの破壊神ラ・バスワルドの姿。

 

「バスワルドよ、せっかく再召喚したことだしもう一度セックスといくか」

『だ、だめよそんなの! バスワルドはね、バスワルドはもっと清い交際から始めたくて……!』

「すでにセックスを経験しといて何を言っとるか。さぁ来い来い、可愛がってやろう」

『だ、だめぇ……待ってぇ~……!』

 

 ランスに手を取られて、寝室に連行されていく破壊神バスワルド。

 本気で逃げたいのであれば破壊の障壁を展開してしまえば一発なのだが、乙女なバスワルドはそういう事は出来ないようで。

 

「今回は媚薬は無しだ。俺様の超絶エロテクだけでその鉄面皮を崩してやろうじゃないか」

『だ、だめなのランス……待ってっ! せめて、せめてゴムを付けさせて……!』

「ゴム付ければっつー話なのか?」

 

 そして、あっという間に服を脱がされてベッドの上に投げられて。

 

『ぴゃーーーー!!』

「がーははははは!」

 

 やがて数日前と同じように、翻訳機からはあまり色気の無い悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

 

 と、そんなこんなで。

 破壊神ラ・バスワルドもまた、実質的に魔王ハーレムの一員に加わった。

 サイゼルとハウゼルの変化も含め、ランスにとってはいい事ずくめな一件となったのだが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし──

 破壊神ラ・バスワルドは。

 

 この世界において、破壊神ラ・バスワルドとは。

 それは破壊の象徴、汚染された魂を滅ぼす破壊の神であって。

 

 

 そして……その神格は、第二級神。

 

 

 そう、彼女は第二級神。

 つまり今回初めて地上に顕現して、地上最強の存在たるランスが返り討ちにして。

 見事にセックスまで成し遂げた破壊神ラ・バスワルドは、神の序列で言えば二番目の存在。

 

 

 となるとこの世界には。

 破壊神ラ・バスワルドの神格を上回る、第一級神という存在がいて。

 

 

 そして、そんな第一級神はまだ頂点ではない。

 一を超えた上にはさらなる高次の神、一般には存在すら知られていない八体の神々がいて。

 

 

 そして、更にその上に。

 この世界の構成、仕組みそのものを作り上げたと言える三体の神々がいて。

 

 

 そして──その上に。

 それら全てを超越する、究極的な存在がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間程が経った、ある日。

 

 

「……ん?」

 

 良く晴れた日の事だった。

 魔王ランスは遂にそれと──その存在と相対する事になった。

 

 それは魔王を超越して。

 破壊神を超越して。

 さらなる高次の神をも超越する唯一の存在。

 

 この世界において全てを超越する究極的な存在、それがランスの前に現れたのだった。

 

 

 

 

 

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