ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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全てを超越する究極的な存在(※私だよー)

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 その日──

 

 

「……んんー?」

「どうしました、魔王様?」

 

 よく晴れた日の昼下がり。

 何気無しにランスが空を見上げると。

 

 

「……お?」

「あれは……」

 

 遠い遠い彼方の星が、ピカピカッと。

 まるで悪しき予兆のように、まだ昼間の空が何度も瞬いたような気がして。

 

 

 そして──光が。

 

 

「おいホーネット、なんかあれ……」

「……えぇ。こちらに近付いているような……」

 

 光が──迫り来る。 

 見上げる魔王と魔人筆頭、その視界の中で急速に存在感を増していく。

 ぴゅ~~、という甲高い効果音と共に、輝く極星が一直線に落下してきて。

 

 そして……どかーんっっ!! と着陸。

 

「っ、なんだぁ!?」

「まさか……敵襲!?」

 

 ド派手な爆発と地響きをエフェクトにして。

 アメージング城空中庭園のど真ん中、空から落下してきたものとは一体。

 

 それは隕石か。

 はたまた敵襲か。

 

 あるいは──

 

 

「はーーーにほーーーーー!!!」

 

 

 現れた。

 誰もがよく知るそいつがやってきた。

 

「はーーーーにほーーーーー!!!!!!」

 

 身長180cm、体重180kgという均整のとれたパーフェクトボディ。

 つやっとした艶めかしい陶器が輝く、そのカラーリングは抜けるような純白色。

 天知る地知る人が知る、金色の王冠を戴くその者の名は……ハニィィーーキィーングッッ!!

 

「やぁやぁ! 地の文での紹介ありがとう!!

 そう! 私こそがハニーの中のハニー、ハニーの王、ハニーキングだぁーー!!」

 

 えっへんと反り返る陶器ボディ。とても陶器とは思えない程の柔軟性がキングの秘訣。

 という事で、アメージング城に来襲してきたのはハニーキングだった。

 全てのハニーの頂点に立つ存在、偉大なるハニーの王である。

 

「いきなり何かと思えば、こいつ……」

「……魔王様。お知り合いですか?」

「知り合いっつーかなんつーか……一応知ってるっちゃ知ってる相手だが……」

 

 ハニーキング。それはランスにとって因縁深い相手……でもないような相手。

 過去の冒険の中、割とどうでもいい場面でどうでもいい感じに遭遇した事があるような。

 ついでに戦って倒した記憶まであるようなないような、とにかく不思議な相手である。

 

「遂に私が!! 登場したよ!!」

 

 そんなハニーキングが、やって来た。

 

「遂にこの私が!! このハニーキングが!!」

 

 アメージング城に。ランス達の前に。

 

「いつ登場するのかと、まだかなまだかなと皆に切望されていたこの私が遂に!!」

「別に切望などしとらんが」

「『話がむちゃくちゃになるしこいつだけは絶対出す事は無いだろうな』って初期プロット段階で早々にボツの烙印を押されてしまっていたこの私が遂に登場だぁーー!!」

「なんだそりゃ……」

 

 プロットだとか。ボツだとか。何を言っているのかランスにはさっぱりだが……ともあれ。

 初期プロットなるものから足掛け三年半以上、遂に遂にと連呼する程、本人にとってはようやくの念願叶ったりなご登場のようだ。

 

「ねぇねぇ、クジラだと思った!?」

「は?」

「クジラだと思ったでしょ!? クジラだと思ったんじゃない!?」

「クジラ? なんだクジラって」

「前回の話のフリで『おぉこりゃあ遂にクジラの登場かー!』って思ったんじゃない!? ねぇ思ったでしょ!? 思っちゃったでしょ!!」

「おい無視すんな」

「違うんだなぁー! 私なんだなぁー! 全てを超越する究極的な存在と言えばこの私、ハニーキングなんだなぁー!! クジラなんて私からしたらただの哺乳類に過ぎないんだなぁーー!!」

 

 そういう事、らしい。

 誰をからかって何が面白いのか、ハニーキングはけたけたと笑っている。

 

「はーっはっはっはっはー!!」

「……ホーネット、ハニワ叩き持ってこい」

「……すぐに探してきます」

 

 登場してここまでで早くも話をむちゃくちゃにしつつあるハニーの王。

 その勝手さ、傍若無人さ、話の通じなさには魔王ランスも早々にご立腹のようである。

 

「おい白ハニワ」

「白ハニワちがーう。私の名前はハニーキングだよー」

「やかましい。貴様は一体何しにここに来た、くだらねー用ならぶっ飛ばすぞ。いやそうじゃなくてもぶっ飛ばす」

「おやおや、いきなり好戦的だねぇ」

「当たり前だ。ハニワにかける情けなど無いわ」

 

 この際ハニワ叩きなど無くとも。魔王ランスの握り拳に魔王パワーが集約していく。

 ハニー種を統べる王、ハニーキング。先程も述べた通り、ランスはこれまでの冒険の中で何度かこの相手と戦った事がある為その対処法は知っている。

 キングだろうと根本的な部分はハニーと同じ。ハニー種の特性として魔法が効かないので攻撃方法は物理攻撃一択、ランスご自慢の魔王パンチが唸りを上げる時である。

 

「ふむ、やる気かい? ま、君がそのつもりならそれもありっちゃありかもだけど……ただね、生憎と今回は以前までとは違うよ」

「違う? 何が違うってんだ」

「おや、見て分からないかい? 今の私を以前までと同じだと思って貰っては困るってことさ」

 

 言ってハニーキングは不敵に笑う。

 ハニーキングとは。全てのハニーの頂点に立つ最強のハニーであり、噂では魔人を軽く倒せる程の力を有している。……らしいがその全貌は見えず。

 この世界の住民には違いないのだが、さりとてこの世界において活躍しすぎると上の存在からお叱りを受けたりもする。そんなとても不思議な立ち位置にいる存在……なのだが。

 

「……ふふふ」

 

 しかし、それは以前までの話。

 以前までとは違って、今はただのハニーキングでは無いのである。

 

「今の私は全てを超越する究極的な存在! ハッキリ言って魔王なんか相手になんないよ!」

「あんだと?」

「ふふふ~! 私がちょこーっと本気を出したらねー! ここにいる全ての女キャラを閂市送りにする事だって出来ちゃうんだからねー!」

「閂市? なんだそれ」

 

 閂市。それは遠い遠い異世界の何処かにある都市の名前。

 倒しても尽きない凶悪な侵略者達との大戦が日々繰り広げられており、勝っても負けてもエロい目に合うというとても恐ろしい都市の名である。

 

「ま、ここにはメガネっ娘が一人もいないからそんな事はしないけどねー!」

 

 超秘技・閂市送りの対象はメガネっ娘のみ。残念ながらそういう事らしい。

 ハニーキングは再びけたけたと笑う。

 

「こいつ、訳の分からん事をごちゃごちゃと……よほど死にたいようだな」

「魔王様。お待たせしました、ハニワ叩きです」

「よっしゃ」

 

 ホーネットが持ってきた特製ハニワ叩きを受け取って。

 魔王が勢いよく左腕を振り上げた、その時。

 

「おーっと待ったー! どうどう、どうどう、落ち着いて」

「やかましい。ハニワはとっとと割るのが一番だ」

「まぁまぁ待ちたまえ、さっきのはちょっとした冗談だよ。別に私は君と戦いに来た訳じゃない、うん、そのつもりは無いんだよ」

 

 気色ばむランスの一方、ハニーキングは軽く答えて早々に両手を上げる。

 とっても強いハニーの王だが、どうやら戦闘の意思は無いようで。

 

「だってだってー、私と君たちじゃ戦っても面白くならなそうっていうかさー」

「はぁ?」

「いやさー、私って最強っちゃ最強だけどハニーフラッシュ撃つぐらいしか出来ないしー。ほら、そんなの戦っても絵的にね? 絵的にあれじゃん? イイ感じにならないじゃん?」

「一体何を気にしとるんだお前は……」

「ふふふのふ。私ぐらいのレベルになると絵的な見栄えまで意識してしまうものなのさ」

 

 ランスには至極どうでもいい理由、されど誰かにとってはとても有り難い理由で戦闘は却下。

 そんな気遣いや心配りが出来るのがハニーの王。そこまで遠い次元を見通せるのが全てを超越する究極的な存在という事なのか。

 

「まぁそんな訳で。今回は別に戦うわけじゃない、だからそのハニワ叩きはしまってくれ」

「……だが、それなら尚更何しに来たんだ」

「そう、そこが重要なんだねぇ。今回こうして私がド派手に空からやって来た理由……」

 

 今回は特に戦うつもりではないらしいハニーキングが。

 全てを超越する究極的な存在(自称)が魔王の前に登場した理由とは──

 

「それはね……」

 

 すると……怪しく笑うハニーの王。

 その真っ黒な眼窩の奥がギランッ! と光って。

 

「──ランス」

「あん?」

 

 その名を呼んで、告げた。

 

「今回はね、君にイベントを持ってきたんだ!」

「イベント?」

「あぁそうだ。その名も──『超・挑戦モード!!』」

 

 題して──『超・挑戦モード』

 ハニーキングがそう宣言した瞬間、パンッ! とクラッカーが弾けて紙吹雪が降ってきて。

 そして、どんどんパフパフー! と軽快なBGMが何処からともなく鳴り響いた。

 

「ま、こんなイベントを持ってこられるのは世界広しと言えどもこの私だけだからね。だからこそ数多あるボツネタの中から私がアフターに登板する事を許されたってわけなんだねぇうんうん」

「……なに言ってんだかよく分からねーが……その『超・挑戦モード』ってのは?」

「そう! よくぞ聞いてくれたね!」

 

 裏事情を語るのは程々にして、今重要なのは超・挑戦モードについて。

 わざわざハニーキングが持ってくる程のイベント、その内容とは。

 

「ズバリ!! この超・挑戦モードというのはその名の通り、私が用意した強敵に君が挑戦していくモードだ。要するにお馴染みのアレだね」

「お馴染みのアレ?」

「更に今回は『超』!! 『超』なんだよ!! つまり超が付く程に超すごくて超ヤバい挑戦モードだって事さ!!」

 

 よくあるお馴染みのアレ。が超スゴくなった、それが超・挑戦モード。

 随分と大雑把かつ雑な説明だが、それでも一応分かる人には分かるらしい。

 

「てなわけで早速挑戦するよね!!」

「え。……いや、別にいい……」

「はぁ!? なんで!?」

「え~だってなんか胡散臭いし……」

「いやいや胡散臭くなんかないでしょ。挑戦モードはゲームクリア後のお楽しみとしてやりこみ要素的なシリーズお馴染みの──」

「じゃなくてお前の存在そのものが胡散くせーんだよ。つーかそれって要はどっかのモンスターだかと戦えっつー話だろ? めんどいからやだ」

 

 ハイテンションなハニーキングをよそに、あまり乗り気じゃない様子な魔王ランス。

 そもそもが面倒臭がりな性格だし、目の前にいるのはとっても胡散臭いハニワの王。バカ正直に言うことを聞く気にならないのも当然と言えた。

 

「どうせあれだろ? めっちゃデカくてクソ強いくせに倒したところで下手くそな落書きしか手に入らないアイツとかが出てくんだろ?」

「おいおい、そんな匂わせをされたら出せなくなってしまうじゃないか。とはいえまぁ確かに強敵との戦闘は当然あるだろうね。それが面倒くさいって言われたら返す言葉も無いんだけど……」

「だろ?」

「けれど……ご褒美あるよ?」

「……ご褒美?」

 

 ──ご褒美あるよ。

 ハニーキングがそう告げた瞬間、ランスの眉がぴくんと動いた。

 

「そう、ご褒美。すっごいご褒美あるよ」

「すっごいご褒美って? 何をくれるんだ」

「それを先に言っちゃあつまらないでしょー。それはクリア後のお楽しみってやつだよー」

 

 ……けどね? とハニーキングは思わせぶりに呟いて。

 

「私がここにいる、それが大きなヒントだ。なんせ数あるボツネタの沼の中からわざわざこの私が引っ張り出されたんだからね」

「意味がよく分からん」

「つまりだ。この状況の意味を逆に考えれば、この私じゃないと与えられないようなとびきりスペシャルなご褒美が待っているってことさ」

「……へー」

 

 ボツネタだとのなんだのと、メインになれない脇役達には色々裏事情があるらしい……が。

 ともあれ、スペシャルなご褒美という文言には主人公ランスも興味を抱いた。

 

「てな訳で……勿論挑戦するよね? ね!?」

「ふーむ……」

 

 ハニーキングが持ってきた謎のイベント、超・挑戦モード。

 意味不明で要領を得ない点が多いものの、どうやらとっておきの何かは用意されているらしい。

 

「……どうされますか? 魔王様」

「……よし」

 

 そして。

 ランスの返答は──

 

 

 

 

 






ハニーキング「勿論挑戦するよね!?」
(※どちらを選んでもストーリーに大した変化はありません)

超・挑戦モードに──

  • 挑戦する。
  • 挑戦しない。
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