所変わって──そこはアメージング城、空中庭園。
なにもない空間が突如丸く切り取られて、ほわほわーっとした淡い光に包まれて。
「がはははー! 戻ったぞー!」
「やぁやぁ! おっかえりー!!」
その姿が現れる。
ランス、そして魔剣カオス。二人の挑戦者が異世界から元の世界へと帰還した。
「という事で……超・挑戦モードステージ2、クリアおめでとー!!」
どんどんぱふぱふー!! と軽快なクラクションBGMと共にハニーキングの喝采が。
前回のステージに引き続き今回もランス達は困難に打ち勝った。超・挑戦モードステージ2、JAPANの地にて覚醒したボス、魔王リトルプリンセスを倒したのだ。
「で、どうだった?」
「あぁ……エロかった」
それがステージ2の率直な感想。
「白ハニワよ。お前を褒めてやるのは癪なのだが、それでもこのステージ2はグッドだった」
「おや、そうかい?」
「あぁそうだ。実にグッドだった。次からもこういうエロいステージを持ってこい」
魔王リトルプリンセスを倒して──その先には念願のご褒美タイムが。
運命の巡り合わせが悪く、結局手が出せずに次元3E2へと帰還した来水美樹。そんな美樹本人とは異なるものの、美樹が魔王となった姿であるリトルプリンセスがそこにいた。
覚醒したばっかでそこまで強くもないリトルプリンセスをわりとあっさり倒して、勝者の特権として心ゆくまで犯し尽くしたのだった。
「でもなー、挑戦モードって本当だったらエロ抜きなんだけどなー」
「知るか。そこに女がいたなら抱くのは当然だ」
「ていうかさー、今回のリトルプリンセスはまだ魔王になったばっかだしさー。ハッキリ言ってフェアじゃないよねーこの戦いはさー」
「フェアじゃないも何も、このステージとボスは当のお前が用意したんだろうが」
「そりゃそうなんだけどー。リトルプリンセスは一番直近の魔王だから……」
原作の展開を引っ張ってくるとどうしても覚醒直後になっちゃうんだよねー、との事らしい。
さて原作とはなんなのか。ランスにはよく分からなかったが軽くスルーする事にした。
「リトルプリンセスって覚醒したら即ガメオベアな展開しかないじゃん? おかげで覚醒して以降のシーンが全然無いんだもん困っちゃうよね」
「なに言ってんだか分からん」
「本当はさぁ、次元3E2を支配してこっちに戻ってきたあのシーンでも良かったんだ。そこを選ばなかったのは私なりの慈悲だと思って欲しいねぇ」
「だからなに言ってんだか分からんっつの」
「ま、いいや。リトルプリンセスじゃ相性的にダメそうだなってのは何となく分かってたから」
「身体の相性はグッドだったけどな」
どうやらリトルプリンセスの採用に当たっては色々と問題があったらしいが……ともあれ。
「とにかく。これでステージ1に続いてステージ2もクリア、順調だね」
「当然だ。俺様にかかればこんなの楽勝だと言ったろう」
「さてさて、という事で……残るステージは4つだ」
「おう」
魔王ガイ、魔王リトルプリンセスを倒して……待ち受けるボスはあと4体。
「それじゃあお次はステージ3。この超・挑戦モードも次で折り返しだね」
「そうだな。次はどいつがボスだってんだ」
「それじゃあ早速! ステージ3のボスをくじ引きで選びましょー!!」
と言いながら、高々と片手を掲げて次のステージに進もうとしたハニーキング。
──だったのだが。
「……と、いきたいところなんだけどー」
「あん?」
一転して声のトーンを落として、その手をゆっくり下ろした。
「実は! ここで悲報があります!!」
「悲報?」
「そうなのです! なんとですねー、ここで超・挑戦モードは一旦中断となりまーす!!」
ばばーんっ! とどこからともなく発生した爆発のようなエフェクトを背景に。
ハニーキングによる中断宣言。どうやら超・挑戦モードはここで一旦ストップとなるようだ。
「中断って……またいきなりだな。つーかそういうのは挑戦者の俺様が決める事じゃないのか」
「いやいや私が決めるのです。これはあらゆる次元を見通せる私じゃないと分からない事だからね」
「はぁ?」
「だってほら、このまま6ステージの終わりまでぶっ続けでやろうもんなら……ねぇ? なんか色々さ、色々あれな感じになっちゃうじゃん?」
「知らんが。なんなんだ色々って」
「色々は色々さ。キングには分かるんだよ」
繰り返しの展開とか。連続する戦闘描写とか。そういうのを含めて色々とね? ……との事らしい。
要するにマンネリ防止、全次元を平行観測可能なハニーキングならではの心配りのようだ。
「それにそろそろ晩ご飯の時間だしね。私はお腹が空いたのでお家に帰らせてもらいます」
「確かにもう夕方だな。そういえばステージ挑戦中の時間経過とかはどうなってんだ? さっきリトルプリンセスとは日が落ちるまでセックスを楽しんだのだが──」
「あ、そこら辺は気にしないで。そういう事は私もあんまし深く考えてないから」
「なんだそりゃ」
「どうでもいい事はどうでもいいのだよ。ではでは……」
話は終わりとばかりに背を向けたハニーキングはグッと腰を曲げて姿勢を落とす。
そのままピョーンと跳躍する……かと思いきや、最後にランスの方にチラッと振り向いて。
「あ、でも中断って言ってもそれほど長い中断にはならないからそこは安心してね」
「別にどうでもいいが」
「多分だけど6~7話後ぐらいにはまた再開する予定だからさ、そこら辺よろしくねー」
「おい、あんまり勝手な事を言うな」
「じゃーねー! ばっははーい!」
そして、ピョーンと大跳躍。
最後まで言いたい事を好きに言ってから、ハニワの王はあっという間に去っていった。
「しっかし……どこまでも自分勝手なヤツ……」
遠い空の彼方、ランスは呆れ交じりの目を向けていた。
◇◇◇
「……てな事があったのだ」
「はぁ……超・挑戦モード、ですか」
「おう」
そして──その後、時刻は夕食時。
贅沢なご馳走をむしゃむしゃと平らげながら、ランスは隣に座るシィルに昼間の出来事を語る。
「ステージ1のボス、ガイは……色々とムカつくヒゲ親父だった」
「そ、そうなんですか……」
「あぁ。だが……奴は恐ろしい相手だった」
「ランス様がそこまで言うなんて……そんなに強かったのですか?」
「まぁ……いや、強いっつか……とにかく、とにかくあいつは恐ろしいヤツだった……」
最強の禁呪使い、第六代魔王ガイ。
恐ろしき呪法の中にはランスにとって一番大事な部分を使用不可にする忌まわしき呪いが。
本気で魔王ガイと対峙するのであれば己が性器との別れをも覚悟しなければならない。その恐ろしさを身を以て感じだようだ。
「んでステージ2のボス、リトルプリンセスはエロかった。ので思う存分抱いてやった」
「リトルプリンセスって……え、それってたしか美樹ちゃんの事じゃ?」
「そうだな」
「え、え、じゃあまさかランス様、美樹ちゃんと……しちゃったんですか?」
「いいや? 俺様が抱いたのは魔王リトルプリンセスだ。決して美樹ちゃんではないぞ」
その証拠に和姦じゃなくて思いっきりお仕置きレイプだったからな、とランスはご機嫌に笑う。
来水美樹が覚醒した姿、リトルプリンセスが相手であれば容赦は無し。悪い魔王を倒して懲らしめるのは英雄の役目なのだとばかりに、心ゆくまでスッキリたっぷりとセックスをしてきた。
「けど……さすがに超・挑戦モードと言うだけあって、対戦相手が凄い方ばかりですね」
「まーな。どっちとも魔王だし」
「魔王になった美樹ちゃんもそうだけど、魔王ガイなんて歴史の教科書に乗っているような魔王ですよね。それに、たしかホーネットさんのお父さんじゃ……」
「あぁ」
「とっても立派で偉大な魔王様だったって聞いた事がありますけど……」
「いいやそんな事はない。魔王としては俺様の方が二枚も三枚も上だ」
立派で偉大な魔王、そんな賞賛にランスは不満げに鼻を鳴らす。
この世界において、魔王というのは魔王ガイの事を指すのが一般的。その先代となる魔王ジルの人類総奴隷化施策によって人間文化が一度ほぼリセットされた為、現存する歴史の書物などは殆どがGI期以降のものとなる。
「ホーネット派に属していたから魔王ガイの事は色々と聞きました。派閥戦争が起こったのも魔王ガイの遺言が切っ掛けだったとか」
「言ってたなそんな事。そういや今思ったのだが、自分の次の魔王として美樹ちゃんみたいなかわいいだけの幼気な女の子を後継者に選ぶか普通? あいつ頭おかしーんじゃねーのか。つか絶対おかしい」
「あ、あはは……」
在任期間が長かった分、魔王ガイが齎した変化というものは大きい。
特にこの世界の形そのものを、今の形を世界の形として決定した張本人。魔物界と人間界、ランス達にとって常識となっているその形を作り出した男。
そんな魔王と戦い、勝利した。
別次元での出来事とはいえ、ランスの認識の中にその名は確実に刻まれた。
(続く)
※次の話との構成がどうやってもいい感じにならなかったので、やむなくこのような短い幕間を挟む事となりました。