ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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VS 魔王ククルククル⑤

 

 

 

 地上から離れた大空での戦い。Kukuの世界ではそれが常である。

 第二世代メインプレイヤー達とその宿敵による1000年以上も続く争いも。そして今も。

 

「………………」

 

 Kukuの世界を統べる最強の魔王ククルククル。

 空に鎮座する超巨体。今や無数の触手を表出させて臨戦態勢である。

 

「おおおおんな! おんなー!!」

 

 対峙するは魔王ランス。

 Kuku世界に唯一存在する女(のように見えるもの)目指して、その触手上を駆け上がる。

 

「ウキャキャキャ! ウキャキャキャッキャキャキャーー!」

 

 尚現在は性欲を無限に滾らせて爆発させてしまったあまり知能指数が大幅に低下中。

 その姿に知的生命体の風格はあらず、下半身にしか思考が無くなってしまっているが、こんなんでも一応れっきとした第八代目の魔王である。

 

「セックス! セーックス!!」

「………………」

 

 こんなんでも本物の魔王なので、たとえ知能指数が底を割っていてもその身体能力は極めて高い。

 そして何より性交に向ける執念たるや。その甲斐あって両者の対決は意外にも白熱していた。

 

「………………」

 

 地上から攻撃してきて、こちらの触手上を這い上ってくる、今まで戦ったことの無い未知なる相手。

 知らぬ事だが自分と同格である存在。その対処に魔王ククルククルは苦慮させられていた。

 

「………………」

「キョキャーッキャッキャキャー!!」

 

 四方八方から繰り出す触手攻撃は巧みに避けられて、躱される。

 相手の魔王は元々から近接戦闘に長ける男、身のこなしは絶品である。

 

「………………」

「ホキョアーー!! ホキャッキャキャー!!」

 

 まぁ躱す。いっそ見事だと感心してしまう程に運動能力と瞬発力が高い。そしてうるさい。

 更には困った事にこの相手、これ程回避力が高いくせに耐久力もまた高い。たまに攻撃が当たっても魔王の耐久性故に致命傷には程遠く、痛みなど感じていないかのように男は怯まない。

 思考力が低下している影響で後退するという選択肢が無い、美女(に見えるもの)目指して触手上を突き進むその邁進を止める事が出来ない。

 

「………………」

 

 攻撃を続けるものの有効打が打てない現状、ククルククルは悩んでいた。

 この謎の生物は強い。すでに触手上の半分を越えられた現状、このまま手をこまねいていては謎の生物がこちらの本体部分に到達してしまう。

 するとどうなるか。ククルククルは伸縮自在な無数の触手を武器としており、それを鞭のように振るって攻撃する中長距離での戦いが得意。その距離であれば四方八方あらゆる方向全てに対処出来る自信がある。あるのだが。

 しかしその一方であまりに本体に近寄られてしまうと触手を用いての攻撃が難しくなる。鞭というのは接近距離で使用する武器ではなく、成長し過ぎて山脈の如き大きさになった本体部分には一切の攻撃手段が無い。

 

「………………」

 

 ククルククルにとっての戦いとは。触手を適当に振り回すだけで片付くようなもの。だからこそ今まで本体部分に攻撃手段が一切無かろうと困った経験が無かった。

 加えて防御面では柔軟性のある触手部分よりも本体部分の方が遥かに堅い。なので決してそこが弱点という訳ではないのだが、このまま近寄られてしまうと今以上に戦いにくくなってしまうのは事実。

 

「………………」

 

 そしてもう一つ。先程の大爆発も大きな懸念材料。

 完全に極めたと確信した触手の拘束を一瞬で焼き払ってみせた、あの破壊力は脅威。

 

「………………」

 

 もしあの規模の爆発を連発出来るとするならば警戒度を上げる必要がある。

 あんな大爆発をこちらの本体部分の上でドカドカやるのはさすがに遠慮して欲しい。

 

「………………」

 

 相手は触手の拘束をも耐える未知なる生物。ドラゴンとは比較にならない程に厄介な敵。 

 相変わらずその目的がよく分からない事も懸念材料ではあるのだが、いずれにせよ攻撃手段が無い本体部分に到達させる事は避けたいのだが──

 

「………………?」

 

 そこでふと、ククルククルは考える。

 自分の本体部分には攻撃手段が一切無い。それは本当にそうだったか。

 

「………………」

 

 いいや違う。そんなはずは無い。

 だって触手は後付けのものだ。今でこそ無数にある触手が便利なので攻撃やその他色々な事に活用してはいるが、魔王になる以前の自分には触手など生えていなかったのだから。

 自分はまる、球体に目が付いただけの「まる」でしかなかった。そんなただの「まる」の身一つで数多の貝達と戦って、勝って、その身をパクパク食べてきた。それが大昔の自分の姿だったはず。

 

「………………」

 

 であれば、触手が無くたって戦う事は出来るはず。

 というか、むしろそっちが自分の本来の姿というか、本来の戦闘スタイルのはずである。

 

「……………!」

 

 やれるのか。いいや、やる。ククルククルは決心した。

 この1000年で便利な触手を活用する事に慣れてしまった、楽に戦う事にかまけてしまっていた。

 しかし今こそ、本来の自分を取り戻すべき時である。

 

「ホキャキャキャ! ウキャキャキャ!」

「………………」

 

 奇声を上げながら謎の生物が這い進んでくる。

 その足元にある触手をわざと持ち上げてこちらと高さを合わせる。──狙い良し。

 

「…………………」

「……ウキャ?」

 

 一旦引いて。助走をつけて。

 そして──

 

「お、おぉ……?」

 

 すると男は、一瞬我に返ったかのように動きを止めて目を見張った。

 目の前にある光景が、動く。全長4.7kmが、巨大な山脈が、こちらに迫ってくる。

 

「おお、お、お──!」

 

 今まで感じた事もない、比較にならない程の強烈な圧。それはすぐに視界一杯を埋め尽くして。

 それでも止まらずに。そのまま男を飲み込んだ。

 

「ぶべーっ──」

「………………!」

 

 これこそおよそ1000年ぶりに使用した攻撃方法──体当たり。

 まるは『まる』である。中には進化の過程で特殊な力を持つに至ったまる種族もいるものの、ククルククルは『丸いもの』の中でも原種である『まる』出身である為、そういった特殊能力は一切持たない。

 『まる』には手も無いし足も無い。あるのは球体状の身体ただ一つだけ。そんな丸いだけの生き物が第一世代メインプレイヤーとして選ばれていた。

 

 そして、メインプレイヤーはその敵役である『貝』と戦う。

 硬い貝殻を持つ貝。それを砕く際に使用するものといったら己の身体ただ一つだけ。

 つまり──体当たり。体当たりこそがククルククル本来の攻撃手段なのである。

 

「………………!」

 

 大昔の頃より、貝を食べるのが大好きだったククルククルは貝退治に励んでいた。

 故にこれは当時のククルククルにとって必殺の一撃、必殺の体当たり。渾身のブチかまし一つで数多の貝殻を砕いてきたのである。

 

「べべべーっ──」

 

 全長4.7kmの超巨大な身体が。ズズズと動いて有象無象を飲み込んでいく。

 その迫力といいその規模といい、それはもはや体当たりという概念を越えていて。

 それに飲み込まれた謎の生物は──

 

「あべべーっ──」

「………………?」

 

 謎の生物は──意外と平気そうだった。

 それは体当たりという概念を越えていて、もはやそれは体当たりでは無かった。

 その男からしたらあまりにも巨大な存在、巨大な壁に押されるような感覚はあるものの、しかし一方で体当たりのようにぶつかられる感覚はあんまり無い。

 その力は圧倒的でとても抗う事など出来やしない。出来やしないが、それでダメージがあるのかと言えばそれはまた別の話である。

 

「………………」

 

 ククルククルはあの頃の感覚を思い出して、あの頃のように渾身の体当たりを放ったつもりだった。

 しかしさすがに1000年経って成長し過ぎたというか、さすがにサイズ感に差があり過ぎたか。体当たりというのはあまりに小さすぎる相手には効果が薄いのかもしれない。

 

「………………」

「べべー──……べ?」

 

 効果が薄いと分かったので動きを止めた。

 巨大な壁に押し当てられて、なんという事もなくそのまま終わって。謎の生物は何が起こったのかよく分からない様子でポカンとしている。

 

「………………」

 

 せっかく一大決心して体当たりを仕掛けたのに大した効果が無かった。

 過去の思い出は美化された思い出に過ぎないのか。正直ちょっとガッカリな気分のククルククル。

 

「………………」

 

 というか、なんか。なんか。

 なんというか、昔はこんなもんじゃなかったような気がする。

 

「………………」

 

 あの頃の自分はこんなもんじゃなかった。

 昔の自分はもっと俊敏で、もっと勢いがあった。風切るような速さで目にも止まらない高速の体当たりを放っていたような気がする。いや絶対にそうだった。

 丸いもの唯一の特技である体当たりを駆使して戦っていたあの頃の自分はもっと身軽だった。もっと速かった。音を置き去りにするような一瞬の体当たりこそが武器だったのだ。

 

「………………」

 

 しかし今は。小さくて身軽な「まる」だったあの頃とは違う。

 さすがに大きくなり過ぎた。おかげで耐久力は大幅に上昇したものの俊敏さが失われた。今の自分にあの頃のような体当たりを再現する事は難しいようである。

 

「………………」

 

 現実を直視してしまいちょっとショックな気分のククルククル。

 これは貝か、貝を食べ過ぎたのが原因か。ダイエットする事も視野に入れるべきだろうか。

 しかし貝を食べる事は唯一にして絶対の楽しみ、我慢出来る気がしない。食べる事を禁止せずに簡単に小さくなれる方法はないだろうか。

 

「うがー!! うがががーー!!」

「………………」

 

 とかそんな事を考えている場合ではなくて、今思うとこれは失敗だった。

 何故なら謎の生物の現在地が。わざわざこちらから体当たりという名の急接近をしてしまったせいで、謎の生物がこちらの本体部分に到達してしまったではないか。

 

「ぎゃおーー!! あびゃびゃびゃーー!!」

「………………」

 

 正直避けたかった本体到達、こうなるといよいよ触手を用いては戦いにくい。

 下手に攻撃すれば自分の触手で自分の身体を叩く羽目になる。それはまぁ別に大した事じゃないが、この近距離だとどうしても触手を振っての勢いが付けにくい。

 遠心力を付けないと触手攻撃の威力が落ちる。ただでさえ耐久力が高い相手なのに、こちらの攻撃力まで落ちては猶更戦闘が長引いてしまう事必至である。

 

「うば! うばばー! うばばばー!!」

「………………」

 

 加えて、この謎の生物の狙いも気になる。

 先程までの動きを見れば、一連の行動の目的がこちらの本体に到達する事であるのは明らか。

 となれば。一体ここから何を仕掛けてくるのか──

 

「……あびゃ? あびゃびゃびゃ?」

「………………?」

 

 と思いきや。

 予想に反して、なにやら謎の生物の様子がおかしい。

 

「……お!? お、おおおんな!? おんなどこいった!?」

「………………?」

「おんな! おんなが消えた!! さっきまでいたのにーーー!!!」

 

 待てども攻撃を仕掛けてくる気配は無く、あちらこちらをウロウロ見渡しては狼狽している。

 こうなるといよいよもって訳が分からない。この謎の生物は触手を伝ってこちらの本体に辿り着く事を目的としていた訳ではなかったのか。

 だったら一体何をしたいのか。何故攻撃をしてくるのか。この生物は何が目的なのか。

 

「おおおおんなー!! 俺様のおんな!! どこいったんじゃーーー!!」

「………………」

 

 そう思ってちょっと観察してみる。

 すると──どうやら、何かを探しているらしい。という事は分かった。

 

「がーー!! おんなーーー!!」

「………………」

 

 この生物は何かを探していて、それを手に入れる為にこちらの本体に辿り着く必要があった。

 がしかしそこにあると見込んでいたものが無かった。だから狼狽している──という事か。

 

「………………」

 

 そうだとして、果たしてこの生物は一体何を探しているのだろうか。

 自分は宵越しの貝は持たない主義だ。あるものは全て食べてしまうので隠し持っている貝とかは無いし、住処も持たない主義なので保存食とかも無い。全て現地調達なのでそもそも持ち物という概念が無い。

 だからこの生物が何かを探しているのだとしても多分自分は持っていないと思う。何か貴重なものを保持しているという事ならばドラゴン達の方が余程可能性があると思う。

 

「うがーーー!! うががー!!」

「………………」

 

 とか思っていたら刃のような衝撃波を出鱈目に飛ばして攻撃してきた。

 イライラして八つ当たりしてきたのだろうか。なんとも野蛮な性格の生物である。

 

「おんなをだせー!! おんなはどこじゃーーー!!」

「………………」

 

 先程から何度も聞こえる『おんな』というもの、それを探しているのだろうか。

 しかし自分には聞き覚えの無いものだし、思い当たるような節も無い。

 

「………………」

 

 というか、あったとしても応えてあげる義理は無い。

 相手は野蛮で失礼な生物。態々こちらが付き合ってあげる理由は無い。

 

「………………」

 

 理解不能な相手と戦うのもいい加減面倒臭い。

 もう勝負を付ける。体当たりで駄目なら、これならどうだ。

 

「………………」

「おんな、おんなー!!! …………お?」

 

 すると、おんなおんなと喚き散らしていた男の足元が。

 足元からふわりと力が抜けていく。というよりも地面の方が落ちていく。

 

「お、おおお、おー……?」

 

 落下の感覚と同時、徐々にだが強制的に身体が傾いていく。

 それまで立っていた足元のものが、角度を変えて下に落ちていく。

 そして──

 

「………………!」

「ぐぎゃーー」

 

 そのまま叩き付けた。

 ククルククルの超巨体が。反転して大地を目掛けて体当たりをかましたのである。

 

「………………!」

「ぐ、ぐぐぐぐー!」

 

 全長4.7kmが落下する衝撃。それは四体の聖獣に支えられているこの大地が大きく揺れる程。

 衝撃を受け止めきれず地表は抉れて土砂がひっくり返る。一帯は完全に陥没した。

 

「おべべべべーー!」

 

 その規模は。その男からしたら天地がひっくり返ったかのような一撃。

 土砂の洪水に巻き込まれて、もはや自分がどうなっているのかも分からない。

 

「あばばばばーー!」

 

 とはいえ……それでもその男は死なない。魔王はそれぐらいじゃ死なない。

 魔王の肉体強度は大地よりも遥かに上なので、こうしてククルククルの超巨体と大地の狭間に押し潰されようともそれで潰れるような事は無い。その中で一番脆い大地の方が陥没するだけ。

 土砂の濁流に飲み込まれようとも目を回すだけで窒息するような事も無い。そもそもがこうした大雑把な攻撃では極小の生物にクリーンヒットさせるのは難しい。ククルククルからしたらちゃんと当てたつもりの体当たりでも、直撃には程遠かったようである。

 

「……う、うーむ……」

 

 という事で、男は無事に生存。

 さすがに土砂に飲み込まれる中で前後不覚に陥り、立っている場所もククルククルの身体の上ではなく陥没した地表の上に落とされたようだが、無事は無事である。

 

「………………」

 

 そしてこちらは、地面に体当たりをかまして再浮上中のククルククル。

 

「うーぬぬぬ…………はっ! おんな、おんなはどこじゃーーー!!」

「………………」

 

 聞こえた。あの生物の声が聞こえた。

 なんか生きてた。普通に生きてた。

 

「………………」

 

 えー、これでも死なないのー? とげんなり気分なククルククル。

 いくらなんでもドラゴンと違い過ぎる。さすがにちょっとこれは頑丈過ぎるのでは。この生物もうインチキなのでは。と自らの巨大さ頑丈さを棚に上げて文句を思う始末である。

 

「………………」

 

 しかしどうしよう。これでも死なないとなるとちょっともう仕留める方法が思い付かない。

 自分にはこれ以上の攻撃手段は無い。これまで自分が戦う相手はドラゴンで、ドラゴン程度なら触手で叩くだけで対処が出来てきた。

 絶対に逃げられない触手の拘束はおろか、体当たりでも死なない相手と戦った経験は無い。なのでククルククルにはこれ以上に攻撃力を持つ攻撃方法が無い。

 

「………………」

 

 となると。その上でこの生物を仕留める方法とは。

 それはもう繰り返すだけ。大技一撃で仕留めるのは諦めて、何度も触手で叩いて地道にダメージを与えていくだけ。ある種戦いの基本である──が。

 

「………………」

 

 ──が、しかし。それをしたいかというと。

 突然に絡まれた訳の分からない生物相手に、地道な耐久戦をしたいかというと。

 

「………………」

「うがーー!! うがががーーー!! おんなおんなーーー!!」

 

 下方であの生物が吠えている声が聞こえる。

 そう思うと先程の体当たり攻撃にも意味はあった。あの一撃に巻き込まれてさすがに態勢を維持してはいられなかったようで、謎の生物はこちらの本体から落下している。そして触手にも捕まれず地表に落っこちたらしい。

 

「………………」

 

 ──もう放っておこう。

 そうと決めたククルククルはふわーっと動き出す。

 

「………………」

 

 幸い謎の生物には飛行能力が無い。空を飛ぶ事が出来ない生物。

 だったらこちらから触手を伸ばしたりしなければ、向こうから近付いてくる事は出来ないはず。

 

「まてーー!!」

 

 とはいえこちらも。遠ざかっていく超巨体を目にして引き下がるような男では無い。

 この世界には女が一人しかいない。それを逃すわけにはいかない。

 

「まちやがれーー!!! おんなーーー!!」

「………………」

 

 うわぁ追い掛けてくるよいやだなぁという気分を隠せないククルククル。

 どうするか。相手は陸上歩行だしさすがに山脈を跨げば追い掛けてくる事は難しいだろう。今日は北にある冷やした貝を食べたい気分だったが、諦めて東にある山脈を越えようか。

 

「………………」

 

 そう考えて進路を変えようとした──そんな時だった。

 

「……おーい!」

「………………?」

 

 小さな声、ではあるが。

 それでも見知った声が聞こえた。

 

「おーい! おーーーい!!」

「………………」

 

 触手のセンサーを動かして、地表面をよーく見てみれば、そこには。

 そこには小さいのがいた。もの凄く小さい上に普段から巣穴に引き籠りっぱなしなので、運が良くても数年に一度ぐらいしか見つける事が出来ないあの小さいのがいるではないか。

 

「………………」

 

 名前は──ケイブリス。

 こちらに向かって走ってきている。どうやらずっと呼びかけていたらしい。

 こうして巣穴を出ているのも珍しいが、向こうの方から会いに来るのは猶更珍しい。

 もっと言えばさっきまで戦っていたような危ない場所に出向いてくるなんて輪を掛けて珍しい。

 

「まてー! おんなーーー!! セックスさせろーー!!」

「おーい!!」

「………………」

 

 後方には追い掛けてくる謎の生物。

 前方にはこちらに用事があるらしい小さいの。

 

「………………」

 

 元々、謎の生物はどうでもいい相手。

 一方この小さいのはなんとなく興味が湧いたので魔人にしてみたリス。

 ククルククルの中で興味の度合いはこちらが上である。

 

「………………」

 

 という事で。後ろに迫る謎の生物は無視して、ククルククルはそちらに触手を伸ばした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ──という事で。

 

「おーい! おーーーい!!」

 

 どちらに向けて声を投げかけていたのか。それもよく分かっていないのだが。

 とにかく頑張って後を追っていた、そんなケイブリスの目の前に。

 

「お……」

 

 うにょーん、と、上空から一本の触手が伸びてきた。

 

 

 

 

 

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