ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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VS 魔人サイゼル

 遥か上空では今もなお続く激戦、魔人ハウゼルと魔人サイゼルによる姉妹喧嘩。

 その戦闘の余波を受けて山林は燃え、徐々に山肌を焼いていく。

 

 そんなバラオ山にあって、仕方無いのでその諍いを何とかする事に決めたランスは、腰から引き抜いた魔剣に対して口を開いた。

 

 

「つー訳でカオスよ、覚悟は出来てるな」

「あぁ、やっぱあれをやるのねー。まぁ、ぶっちゃけ何となく分かってはおったともさ」

 

 自分の心構えを問う持ち主の台詞に、その魔剣は全てを諦めきったような声色で答える。

 

 これから行うのは喧嘩の仲裁、あのはた迷惑な争いを止める事。一刻も早く止めなければ山林は全焼して、山は丸裸になってしまうかもしれない。

 しかし相手は魔人。それも単なる魔人では無く、空を飛ぶ事が出来る有翼魔人。翼持たぬランスにとって対抗する手段と言えば一つしか無く、今までの経験上カオスもとっくに理解していた。

 

「……はぁ、分かった、儂も腹をくくったよ。けどもさ、後でちゃんと回収してよね?」

「覚えてたらな」

「そんなぁ……」

 

 心の友絶対に忘れるじゃん、とカオスは悲痛な声を上げるが、爺の泣き言になど欠片も興味の無いランスは、それきり会話を打ち切って空を見上げる。

 

「……ふぅ」

 

 深呼吸一つ、息を吐き出すと共に集中力を高めて正確に狙いを定める。

 目標は遥か上、中空を軽やかに飛び交いながら争い続ける魔人姉妹、勿論ながらその姉の方。

 

「……よし、そろそろか」

 

 ちょこまかと動き回るその相手が、出来る限り高度を落とすタイミングを慎重に見極めて。

 そして魔剣の柄を握る左腕を、背中に届こうかというくらいに思いっきり振りかぶり、

 

 

「サイゼルーー!!!」

 

 あえて大声でその名を叫びながら、ランスは魔剣カオスを全力で投げ放った。

 

 

 

「何よ、うるさいわ──」

 

 無粋な大声に喧嘩の横槍を入れられ、魔人サイゼルは苛立ちを隠さない表情で声の方を向き、

 

「──あ」

 

 そして、それを目撃する。

 

 魔剣カオスの大投擲。それは近接攻撃が主となるランスにとっての数少ない遠距離攻撃。ただし自ら武器を手放してしまう事になる為、基本的には一発限りとなる大技である。

 びゅんと風を切り裂くような勢いで、自分目掛けて真っ直線に飛んでくる黒き魔剣、その白刃の切っ先を視界に捉えたその魔人は、

 

「ひっ、ぎゃあああああ!!!!」

 

 瞬く間にその表情を凍てつかせ、口からけたたましい叫声を上げてパニックに陥る。その光景は、サイゼルにとって大きなトラウマとなっていた。

 

 以前ランスと遭遇した際、その投擲攻撃によって彼女は魔剣に腹部を深々と貫かれた。

 生まれた時から無敵結界をその身に有し、あらゆる攻撃から守られてきたサイゼルにとって、それは天地がひっくり返ったような信じがたい激痛。

 生命力に溢れる魔人で無ければ間違い無く死んでいた一撃であり、それが原因で彼女はその時ランスの言いなりになるしかなく、結果互いの性器を舐め合うあの辱めを受けてしまった。

 

 あの時と同じ攻撃に、その時の記憶を痛みと共にフラッシュバックしたのか、錯乱したサイゼルはそれでもどうにか身体を真横に捻る。

 

「ひぃっ!!」

「あー外したー、そいじゃーさよならー」

 

 死に物狂いで行った回避行動の甲斐あって、間一髪のところで魔剣の直撃を免れる。

 無敵結界をいとも簡単に切り裂いて、その右肩を軽く掠り上げたが、それきりカオスは標的を通り過ぎて空の彼方へと消えていく。

 

 サイゼルは何とかランスの投擲攻撃を回避した。けれど無理やりな回避軌道を取った為に、宙に浮かぶバランスと姿勢の制御を失ってしまい、飛翔していた高度を一気に落としてしまう。

 

「そこだーーー!!!」

 

 そしてそれがランスの狙いだった。投擲を終えた彼はすぐ近くに立っていた背高い木の頂上まで、まるでムシと見紛うような速さでだだだだーっと駆け上がると、

 

 

「とーーー!!!」

 

 頂上に登った勢いそのままに、サイゼル目掛けてぴょーんと大ジャンプ。

 

「捕まえたーーー!!!」

「ぎゃーーー!?」

 

 その作戦は見事に功を奏し、空を飛ぶ魔人の片足にぎりぎりでランスの手が届いた。

 

「ちょ、重、お、落ちるーーー!!」

 

 バランスを崩していた状態で足首を捕らえられてしまったサイゼルは、邪魔な重りの所為で体勢を整え直して上手く飛ぶ事が出来ずに、

 

「サイゼル!? ランスさん!?」

 

 その光景に驚き、少しだけ冷静さを取り戻したハウゼルを空に残して、

 

「ぐっ!」

「ぐえっ」

 

 二人はそのまま、バラオ山の砂利混じりの土壌にべちゃっと墜落した。

 

 

「痛ったぁ……」 

「痛でで……着地を考えてなかった……」

 

 人間であるランスは勿論の事、無敵結界を破られてしまったサイゼルも落下のダメージを負う。

 両者共すぐには動けず、しばらくそのまま地面の上で苦しそうに身をよじっていたが、やがて魔人の方が怒りの表情で顔を上げた。

 

「……あんたねぇ!! ハウゼルと戦っている時に邪魔しないでよ!!」

「あのな、俺様は邪魔をしたんじゃなくて、物騒な姉妹喧嘩を止めてやったんだぞ。むしろ感謝して欲しいくらいだ」

「ていうか、またあんなもん私に投げつけて、もし当たったらどうするつもりなのよ!! あれすっごい痛いんだからね!!」

「だから当たらんように投げてやっただろう。さすがに土手っ腹にカオスの刺さる女とするのは萎えるからな。……つー訳で」

 

 落下の際に捕らえた片足を未だに掴んだままだったランスは、その足を引っ張って彼女の身体を引き寄せ、その上から覆い被さる。

 

「いよっと」

「っ!?」

 

 自分の両足の間に身体をねじ込もうとしてくるその行為に、サイゼルはぞわりとした悪寒と共に相手の下衆な狙いを察知する。そして、

 

「このっ!!」

 

 魔人を組み敷こうとする愚か者を氷漬けにしてやろうと、彼女は武器持つ左手を振るう。

 その手に有していた魔銃クールゴーデス、その尖った銃口を相手の顔面に突き付け、すぐに引き金を引こうとしたのだが。

 

「ちょーっぷ!!」

「いたっ!!」

 

 しかしその寸前、相手の抵抗を読んでいたランスの攻撃が先に決まる。

 水平に払われた手刀が、サイゼルの武器を握る左手を強く打ち付ける。結果彼女はその手から大事な武器を落とし、クールゴーデスは彼らの位置から数メートル離れた場所に転がった。

 

「がーっはっはっは!! 抵抗しても無駄じゃ、こうなっちまえばこっちのもんよ!!」

 

 高笑いと共に、ランスは勝利を確信する。

 相手は空を飛ぶ有翼魔人。こちらの手が届かない上空から、クールゴーデスから放たれる氷結レーザーの遠距離攻撃で戦うのが十八番の戦法。

 ならばこうして地に落としてしまい、そしてその武器も奪ってしまえば。もはや敵に抵抗する術など何一つ無し、この戦いは自分の勝利である。

 

 ……とそのように、ランスは相手の実力を読み違えていた。

 

 

「さぁーてサイゼルちゃん、ゼスでの続きといこうじゃねーか!!」

「……舐めないでよね」

 

 低い声で呟いたその魔人は、今まさに自分の服に手を掛けて脱がそうとしてくる人間の眼前に、開いた右手を突き出した。

 

 魔人サイゼル。少しドジな部分がある彼女もれっきとした魔人であり、魔人とは基本的に人間が一人で戦って勝てるような相手では無い。

 優秀な妹と比較して何かと下に見られがちだが、しかし彼女がその身に秘める力は妹と比べても何一つ遜色は無く。

 そしてその冷気を操る力は、何もクールゴーデスを介さなければ使えないという訳では無い。彼女愛用のその魔銃は、あくまで効率の良い攻撃が出来るからと用いているだけである。

 

 よって。

 

 

「……フリーズ!!」

 

 ──あ。

 と、ランスが間抜けな声を出す暇も無く。

 

 熱々の温泉でさえ一瞬で凍らせる程の、魔人サイゼルが駆使する強力な氷結魔法。

 それによって周囲の気温が一気に低下し、空気中の水分までもが瞬時に凍結する。

 

「………………」

 

 もはや声など出せず。それどころか口を動かす事すらも出来ず。

 サイゼルの無慈悲な氷結魔法によって、ランスは分厚い氷の中に生き埋めとなった。

 

 

「ふんっ、いい気味だわ」

 

 完成したのは憐れな人間を閉じ込めた大氷塊。

 身体を起こしてそれを眺め、思い通り氷漬けにしてやった事に会心の心地を味わう姉の一方。

 

「ランスさん!? サイゼル、なんて事を!!」

 

 空中を漂い、そこからランスが氷漬けにされる衝撃シーンを目撃していたハウゼルは、その表情を歪ませて叫ぶ。

 そしてすぐに駆け下りてくると、姉に対して先程の喧嘩の時とは異なる怒りをぶつけた。

 

「サイゼルッ!! いくら何でも酷すぎます!!」

「ハウゼル、あんたはまた良い子ちゃんぶって……この程度、ちっとも酷くなんて無いっての」

 

 これは愚かな人間への天罰なのよと、サイゼルは妹の抗議を意にも介さない。

 そうしていなければ襲われていたという事実を加味すると、姉の方も然程間違った事を言っている訳でも無いのだが、だからと言って妹が納得するかと言うとそうでもなかった。

 

「待っていてくださいランスさん、今すぐに溶かしてあげますからね」

 

 ハウゼルはひんやりとする氷に両手で触れると、炎を操る魔人としての力を開放する。

 するとその手のひらから生じる高熱によって、ランスを閉じ込める氷の牢獄の封が解けていく。

 

「なっ、ちょっと!」

 

 瞬く間に小さくなっていく氷塊。その様に驚き、何よりもついさっき自分の事を襲いかけた男を助け出そうとする妹の姿に、何とも言い難い苛立ちを感じたサイゼルは唇を噛み締める。

 

「……ハウゼル、あんたってその男の事、そんなに大事なわけ?」

「当たり前でしょう、そんな事」

「えっ、あ、当たり前なの!? そうなの!?」

 

 ──これはもしや、自分が思うより二人はずっと深い関係にあるのでは。

 即座に返ってきたその断定口調に度肝を抜かれ、そんな事を考えてしまうサイゼルの一方、ハウゼルは決しておかしな事を言ったつもりなど無い。

 

 何故ならランスは同じ派閥で戦う大切な仲間。

 今回の件でも姉の行方を探して貰ったりと、今まで沢山手助けして貰っている。そんな相手が氷漬けになっていたら、助け出すのは彼女にとって当たり前の事だった。

 

 

 そしてかかったのは数十秒足らず。氷の力を操る姉が作り出したその氷塊は、炎の力を操る妹の手によって完全に溶かされて。

 

「……はっ!」

 

 急激な凍結によって、氷の中で以前体験したコールドスリープのような状態になっていたランスも、すぐに意識を取り戻した。

 

「……あれ、俺様はいったい……」

「ランスさん、良かった……」

 

 魔人の力を人間がその身に受けたら、命を落としたとしても何一つ不思議では無い。

 自分の姉の所為でそんな事になったらと、今の今まで気が気でなかったハウゼルは、変わりのないランスの様子にほっと胸を撫で下ろした。

 

「……おぉ、ハウゼルちゃん……あん? てか何か寒いぞ!! クソ寒いッ!!!」

 

 全身を襲う只ならぬ冷感を受けて、ランスは反射的に身を竦ませる。

 

「まだ身体に熱が戻ってないのですね。ランスさん、しばらくは安静にしていた方が良いです」

「……あぁ、そうか。そういやぁ、サイゼルの魔法を食らっちまったんだったな。……もしやこれ、君が助けてくれたのか?」

「はい。命に別状が無くて良かったです」

「……そうか、君はなんて良い子なんだ……ハウゼルちゃんっ!!」

 

 助け出された事に大層感激した様子のランスは、炎の力を操る魔人の事を力強く抱き締める。

 人肌恋しくなったとかこのタイミングで欲情したとかそういう訳では無く、只々暖まりたい、今はともかく熱が欲しかった。

 

「きゃっ、ランスさ──」

 

 突然の抱擁に驚くハウゼルだったが、

 

「──あ、冷たい……」

 

 自分を抱き締めるランスの体温を感じ取った途端、身体の力を抜いてそっと瞼を落とす。

 そして両腕を相手の背中まで回して、優しく抱擁を返した。

 

「はふぅ、ぬくいぬくい……」

「……ふふっ、私の身体、温かいですか?」

 

 くすりと微笑を零すその声は、ランスのすぐ耳元で聞こえる。

 

「うむ。とても温かいぞハウゼルちゃん。君は本当に全身がぽっかぽかだな」

「……なら、もう少しこうしていましょう。このまま私が温めてあげますね」

 

 互いの体温を分け合う為にと、互いを抱き締める腕の力がより強まる。二人の距離は更に狭まり、二つの影は一つに重なる。

 そうして愛おしげに抱きしめ合う姿は、その魔人が危惧した関係そのもののように見えて。

 

 

「ぎゃーーー!!! あ、あんた達、こんな所で何抱き合ってんのよーー!!」

 

 妹のラブシーンを目撃してしまった気分の姉は、泣き出しそうな表情で叫んだ。

 

「サイゼル、お前居たのか」

「居たに決まってんでしょう!? ていうか、とっととハウゼルから離れなさいよ!!」

 

 最愛の妹を奪われてしまったような思いに、嫉妬心に駆られたサイゼルはがなり立てる。

 しかし今更ながらにその存在に気付いたランスは、さっぱり聞く耳持たなかった。

 

「やだ、俺様まだ寒い」

「このっ……ならもう一度、今度はもっと寒くしてあげる!!」

「げっ!! ハウゼルちゃん、姉を止めろ!!」

「あ、こらっ、ハウゼルを盾にするな!!」

「姉さん、もういい加減にして!!」

 

 クールゴーデスの先を向けられ、ランスは慌ててハウゼルの後ろに隠れる。そんな男の姿にサイゼルは更に怒り、そんな姉の姿にハウゼルも怒鳴る。

 妹を中心として、その周囲をぐるぐると駆け回る男と姉の姿は、まるで一人の女性を巡って争う三角関係の諍いのように見えて。

 

 三人はしばらくごちゃごちゃと揉めていたが、その後ようやく身体の温まったランスがハウゼルから離れた事で、その場は一旦の落ち着きを見せた。

 

 

「……ったく、たかがハグぐらいであーだこーだ言いやがって。なぁハウゼルちゃん?」

「え、えぇと……」

「ハウゼル、あんたもあんたよ。男と簡単に抱き合って、そんな無防備な事だと姉として心配だわ」

「けれど、そもそもの原因は姉さんが……」

 

 先程まで上空で魔人としての力を存分に振るい、派手な争いを繰り広げていた魔人姉妹。

 だがその時両者の中にあった激情は、今では大分落ち着いていた。どうやら一連のいざこざで気が抜けてしまったのか、結果的には二人の喧嘩を止める事に成功したようだった。

 

 

「……ふむ」

 

 そんな時、何事かを考えたランスは一人頷く。

 

「時にハウゼルちゃんや、ちょっとその銃を俺様に貸してみておくれ」

「……え、このタワーオブファイヤーをですか?」

「おう」

「……はぁ、どうぞ」

 

 唐突なその要求の意図はよく分からなかったが、しかしそれでもハウゼルは貸せと言われるがまま、その手に持っていた巨銃をランスに手渡す。

 

「おぉう、結構重いなこれ。いよっと……」

 

 彼女の細腕で振り回していたとは思えない程の重量に、ランスは面食らいながらも肩の上にその巨銃を担ぎ上げる。

 

 そして。

 

 

「……あー!! あんな所に空飛ぶきゃんきゃんがーー!!」

 

 唐突に上がったその大声に、魔人姉妹は「え?」とランスが指差した方に顔を向ける。

 そうして出来上がった大きな隙。自分から目を離した迂闊な魔人に向けて。

 

「ていっ!!」

「ぐっ!?」

 

 ゴツッ!! と鈍い音を鳴らし、ランスの振り下ろした巨銃がサイゼルの後頭部にヒット。

 

「きゅう……」

 

 先程氷漬けにされた怒りをたっぷりと込めたその一撃に、彼女は堪らずノックダウンとなった。

 

「ね、姉さん!?」

「ふぅ、よーやく倒したぜ。全く、サイゼルの癖に手間掛けさせやがって……はいこれ返す」

 

 地べたでノビる姉の惨状に目を剥くハウゼルをよそに、ランスは二の腕で額を拭う仕草を見せる。

 

 バラオ山に住み着いていた悪い魔人は、こうして見事に退治された。

 決め手となったのは彼女が晒してしまった隙、あるいは油断。やはりちょっと間の抜けた所があるのがサイゼルという魔人だった。

 

「さーて、て事でお次はっと……よっこいせ」

 

 そして魔人を倒したならば、次に待つのは勿論ご褒美タイム。

 都合良く気を失っている獲物を抱え上げたランスは、このままの流れで食べてしまう事にした。

 

「ここじゃあ寒いし場所は……そうだな、さっきの山小屋にするか」

「あ、あの、ランスさん、姉さんをどうするつもりですか? 姉さんの頭、たんこぶが……」

「……ふむ」

 

 一粒でも美味しいが、二粒ならより美味しい。

 ハウゼルに声を掛けられた途端、その男の脳裏にはそんなフレーズが浮かんだ。

 

「……そうだな。いっそ姉妹丼にしよう。よし、ハウゼルちゃんも付いてこい」

「え、あ……」

 

 ランスはハウゼルの手を掴む。そして戦利品である彼女の姉を自分の肩に置いたまま、山小屋がある方へと向かって歩き出す。

 姉妹丼とは何でしょう? と、性知識に乏しいその魔人は尋ねてみるものの、しかしその男が答えを返してくれる事は無く。

 

 やがて一人の人間と二人の魔人が小屋の中に入ると、入り口のドアがぱたんと閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ランスは当初の目的通り、以前未遂に終わっていた魔人サイゼルと初エッチ、それもハウゼルとの姉妹丼という贅沢な一品を堪能した。

 

 これから行う事の意味をやっと理解し、顔を真っ赤にするハウゼル。その一方、気絶したままのサイゼルを裸にひん剥いたランスは、前回味わえなかったその身体の柔らかさを味わう。

 そうしてあれこれ弄っている内に、その魔人は意識を取り戻す。目覚めたサイゼルは当然のようにうるさく騒ぎ立て、力一杯暴れたのだが、そんな彼女を止めたのは誰あろうハウゼルだった。

 

 ランスに犯されている姉を見ている内に、自分がその男に抱かれる時とは少し毛色の違う劣情を催してしまった妹は、思わず喧嘩中の姉に対して口付けをしてしまった。

 それはもうなりふり構わずといった様子の、とても熱いベーゼであった。

 

 それが仲直りのキスとなったのか、二人はお互いに今までの全てを許し合い、念願だった妹との関係修復をようやく成し遂げたサイゼルは、なんかもう色々どうでもよくなってしまった。

 そして魔人姉妹には、お互いの距離が近くなり過ぎると感覚を共有してしまう妙な特徴がある。

 どうやら先程のキスがそのきっかけとなったのか、双方の快楽を共有する事となった二人はすぐに腰砕けとなってしまい、その後は押し寄せる二人分の快感に抗う事が出来なくなってしまった。

 

 魔人姉妹の姉妹丼。それは途中からどっちを抱いているんだかよく分からなくなるような、未知の感覚に溢れるセックスであり、ランスとしても初めての不思議体験だった。

 

 それにはとても満足したのだが、しかし唯一気になったのは彼女達の事。

 二人も自分とのセックスに満足していたように見えるが、それ以上にお互いはお互いを求め、姉妹同士での愛撫に身を委ねていたように思える。

 

 終わってから振り返ると、姉妹のレズセックスを盛り上げるダシに使われただけのような気分。

 十分に気持ち良かったので文句を付けるつもりは無いのだが、しかしやっぱり同性愛は良くない、非生産的だなと思うランスだった。

 

 

 

 

 


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