ランス(9.5 IF)   作:ぐろり

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閑話 その頃の魔王城

 

 

 

 

 最初に違和感を受けたのは、その脱衣所に足を踏み入れた直後の事。

 

「……?」

 

 居るはずの相手、それが居ない。

 いつも先回りして自分を待ち構えているはずの、あの姿が何処にも見当たらない。

 

「………………」

 

 ここに居ないという事は先に入っているのか。

 自然とそう考えて、そのまま彼女は通常通りの行動、身に付けていた衣服や装飾類を外す。

 一糸纏わぬ姿となり、タオルを手に取ってそのドアを開く。

 

「………………」

 

 だが先程の予想に反して、ここにもその姿は見当たらない。

 いつもと同じの、しかしいつもとは異なる浴室の様子。それに少し釈然としないものを感じながら、その魔人は洗い場の椅子に腰を下ろす。

 

「………………」

 

 そこで悩む。ここ最近はその相手に背中を洗って貰うのが習慣となっていたのだが、しかし今日はその姿が見えない。

 そして今までその役目を与えていた使徒達にも、最近はもう風呂場への同行は必要無いと断っている為、体を洗う者がここには居ない。

 

「………………」

 

 これまでそうであった習慣を突然変えるのは、こちらの対応が利かないから止めて欲しい。

 ふとそんな不満を抱いてしまったが、しかし居ないものはどうしようもない。今から自分の部屋に戻って使徒達を呼んでくる訳にもいかず、仕方無く彼女は自らの手を動かす。

 

「………………」

 

 誰の視線を感じる事も無い、変に気を張らなくてもいい状況。

 それに少しだけ開放感を感じながら、自らの手で自らの身体の隅々まで洗って。

 

 そうして身体を流し終えたら次は頭。

 シャワーのノブの捻り、腰に掛かる程の長髪に満遍なく水分を纏わせ、シャンプーを泡立てる。

 

「………………」

 

 あるいはこのタイミングか、とも考えていた。

 髪を洗う時には目を瞑る為、どうしても周囲への警戒が疎かになる。故にこの隙を突いてくるかとも考えたのだが、どうやらそれも違う様子。

 密かに両耳で周囲の気配を探っていたが、浴室のドアが開かれる音は一向に聞こえてこない。

 

「………………」

 

 洗い終わった髪を纏めて、彼女は洗い場の椅子から立ち上がる。

 向かうはこの浴室の半分以上を締める湯船。一人で入るのには大きすぎる、二人でだって過分な程に広々とした魔王専用の湯船。

 

「………………」

 

 つま先からゆっくりと水面に落とし、肩の位置まで熱い湯に浸かる。

 湧き上がる心地よい痺れが全身を満たし、自然と身体中から力を抜く。

 一日の疲労が湯に溶けていくのを感じながら、その魔人はそっと口を開いて。

 

 

「……来ませんね」

 

 その魔人、ホーネットがこの浴室に入ってから最初の一言はそれだった。

 それはランスが退屈しのぎにと迷宮探索に出発して、魔王城を離れたその日の事である。

 

 

 

 

 その日は結局、魔人筆頭が利用している風呂場に闖入者がやってくる事は無かった。

 

 ランスとホーネットの混浴。それはここ最近自然と繰り返されてきた事ではあるが、特別そのような約束をしていると言う訳では無い。

 つい先日もランスはサテラ達と酒を飲み、その日は泥酔して風呂に入るのをすっぽかしている。

 

 故にこういう日だってあるだろう。

 そもそも彼は自分とは違って不真面目、思い付きや気分次第で行動を変える一面がある。

 今日はここでは無く共用の風呂場か、あるいは別の者と一緒に入る事にしたのだろう。

 そのように考えて、その日はホーネットも大して気にしていなかったのだが。

 

 

 

 

 しかし次の日。

 

「……今日も来ませんね」

 

 

 

 そしてまた次の日。

 

「……来ない」

 

 

 

 またまた次の日と続くにつれ。

 

「……これは」

 

 

 

 ──さすがに少し妙ではないか。

 4日連続その姿が見えなかった事で、遂にホーネットもその考えに思い至った。

 

 

「………………」

 

 そして思い至った以上、その考えを無視する事は出来ない。

 以前の彼女なら出来たかもしれないが、今の彼女はもう目を逸らす事など出来ないのである。

 

 

 

 故にその風呂上がり。ランスの様子が気になったホーネットは自ら足を運ぶ事にした。

 

(……今はあまり彼と顔を合わせたくはないのですが……)

 

 自分の気持ちを自覚して以降、彼と会う度に動転しては無様な姿を晒してしまうので、ここ最近は半ば意識的に浴室以外での接触を避けてきた。

 それが仇となって今のランスの状況を知る機会がなかったのだが、部屋の前までやって来た所でようやくその事に気付いた。

 

 

「居ない……?」

 

 ランスが使用する為にと与えられている客室。

 その部屋の灯りは落とされていて、ドアの向こう側からは物音一つ聞こえてこない。

 

「………………」

 

 コンコンとドアを軽くノックしてみる。だがそれでも反応は無い。

 そのまま十秒程悩んで、そして気付く。そのドアには施錠がされていなかった。

 

「………………」

 

 そのまま一分程悩んだのだが、やがて意を決してそのドアを少しだけ開いてみる。そうして出来た僅かな隙間から中の様子を伺ってみても、半ば予想していた事だがその姿は見当たらなかった。

 

「……何処かに出ているのですね」

 

 この部屋の様子を見る限り、どうやら今ランスは不在中。おそらく風呂場に来なくなった4日前から何処かに出掛けたのだろう。

 この城の管理を代行する者として、外出するならば一言くらい声を掛けて欲しかったのだが、しかしあのランスにそのような気配りを期待するだけ無駄というものか。

 

(……ともあれ、浴室に来なくなった理由は分かりました。部屋に戻りましょう)

 

 踵を返したホーネットは、そのままランスの部屋を後にする。

 正直な所、少しだけその顔を見たい気持ちもあったのだが、居ないのならば仕方が無い。

 そんな事を思いながら廊下を歩いていると、ふいにもう一つ別の事に気付いた。

 

(……静か、ですね。……これはもしや、ランスだけでは無く……)

 

 この階層、ここら一帯の部屋は全て、人間世界からの客人用に割り当てられている。

 今はその全ての部屋から物音が全く聞こえず、見ればその全ての部屋の照明が灯っていない。

 という事はランスのみならず、彼がこの城に連れてきた者達も皆同じく不在中なのか。考えられる理由としては、彼と一緒に全員が出掛けたという事なのだろうか。

 

「………………」

 

 ランスとその仲間達。

 この魔王城内に来ていた人間達が、皆一斉にして何処かに出掛けた。

 その事実を知った時、瞬間的に魔人筆頭の脳裏を掠めた寒気にも似た疑念、それは。

 

 

(……まさか)

 

 ──人間世界に帰ってしまったのか。

 

 

「っ、」

 

 そう考えた時、あの時に抱いてしまった恐怖、その感情がまた胸の内から表出してしまい、ホーネットは思わず生唾を飲み込んだ。

 

(……いえ、そんなはずは……)

 

 呆然と廊下に立ち尽くしたまま、それでも頭の冷静な部分で慎重に思考する。

 人間であるランスは人間世界に帰る。いつかは必ず訪れるその事に対して、今の自分が寂しいという感情を抱き、そして会えなくなる事に恐怖しているのは目を逸らしようのない事実。

 

 その所為もあって咄嗟にその可能性を連想してしまったのだが、しかし落ち着いて考えてみるとさすがにそれは飛躍した発想のように思える。

 自分との性交。絶対に諦めないぞと、あれだけ執拗に宣言していたそれをまだ達成してもいないのに、彼がこの城から去る事など考えられない。

 

(無い、……はず、です。……けれども)

 

 だが相手はあのランスであって。

 その突飛な行動にはこれまで何度も振り回されており、とても考えの読める相手では無い。

 そして我慢強い性格でも無いので、もういいやと投げ出してしまったのかもしれない。

 

(……そもそもが、私にどの程度の価値が……)

 

 ランスがあれだけ執拗に求める程の理由、それ程の価値がこの自分にあるのだろうか。

 自分程度の女性など、人間世界にはごまんと居るのではないだろうか。

 

 とそんな自嘲的とも言える思考が、ホーネットの頭の中には次々と浮かぶ。

 初めて自分の内に生じた情愛に戸惑い、臆病な気持ちを抱えている今の彼女では、一度その疑念が生まれてしまうと否定するのは難しく。

 

 

(……まさか……)

 

 もう会えないのか。こんなにも早い別れとなってしまったのか。

 4日前の浴室での遭遇、女性器を用いた性交が嫌なら他の部位でさせろと言ってきた、あのあまり思い返したくない出来事が彼との最後の思い出となってしまうのか。

 

 そんな考えに思考を囚われたまま、ホーネットは覚束ない歩みで自分の部屋へと戻り。

 

(……そんな、でも……)

 

 その日、彼女は中々寝付く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 そして、その次の日。

 

 

 コンコンと軽いノック音が聞こえた後。

 

「ホーネット様、入ります」

 

 礼儀正しく一声掛けてから、魔人シルキィはその部屋のドアを開く。

 その室内には見慣れた姿、壁際に整列する使徒達と、奥にある執務机に掛ける魔人筆頭。

 シルキィは一直線にその机の前まで進むと、すぐにその頭をぺこりと下げた。

 

「申し訳ありません。少し遅れてしまいました」

「構いませんよ、シルキィ。予定もないのに突然呼び付けたのは私の方ですから」

 

 先程までシルキィは城の中庭で軽く身体を動かしていたのだが、魔物兵から「ホーネット様がシルキィ様にお話があるとの事です」と伝えられ、急ぎこの部屋までやって来た。

 そんな魔人四天王の出だしからの謝罪に、魔人筆頭は気にした様子も無く言葉を返す。

 

「それでホーネット様、お話というのは? カスケード・バウ攻略に関しての事でしょうか」

「……いえ。今日は、あちらで」

 

 ホーネットはちらりとその視線を部屋の隅、ソファの方へと送る。

 

「……あぁ、はい。分かりました」

 

 返事と共にシルキィは口元を綻ばせ、少しだけその表情を緩める。

 派閥の主からの急な呼び出しに、もしや次なる戦いの進展があったのかと、シルキィは少々緊張しながらこの部屋を訪れたのだが、今のホーネットの仕草を見てそうでは無いのだと理解した。

 

 相手の視線は執務机から離れて、肩肘を張る必要の無いソファへと向いている。

 つまりホーネットの用事とは単なる雑談、言うなれば世間話のようなもの。

 

(……ホーネット様とそういう話をするのって久しぶりかも。私に聞きたい事があるのかな?)

 

 作戦会議をするのは大事だが、しかし他愛もない語らいの時間だって大事だとシルキィは思う。

 相手との仲を深める意味もあるし、そういう時間は殺伐とした戦争の中での心の潤いとなる。

 まったりとした空気の中、ホーネットと談笑しながらのティータイム。そんな楽しくて貴重な午後となりそうだ。

 

 ……と、この時はそのように思っていたのだが。

 

 

 

「シルキィ様、どうぞ」

「ありがとう、ケイコ」

 

 二人の魔人がソファに場所を移すと、すぐにホーネットの使徒達が動き出し、憩いの一時の必需品である紅茶と菓子を用意してくる。

 それにシルキィが笑顔で謝意を述べて、さてとと手を伸ばそうとしたその時、目の前に座わる相手がその口を開いた。

 

 

「……では、今から少し、シルキィと二人で大事な話をします。貴方達は外れていなさい」

 

(え、また!?)

 

 ティーカップを取ろうと手を出したままの格好で、シルキィはぎょっとしたように驚く。

 今聞こえたのは何処かで聞き覚えのあるセリフ、何だか嫌な予感がしてしまうセリフだった。

 

(大事な話って、確かこの前……)

 

 思い出されるのは先日の事。その時もホーネットは今と同じく、大事な話をするからと自分の使徒達を部屋の外に退出させた。

 そうして打ち明けられた話、それは魔人筆頭が抱えていた重要な悩み。聞くのも答えるのも恥ずかしい、しかし確かに大事な話であった。

 

(今度はどんな話を……ていうかちょっと待って、そういえばあの後って、ホーネット様……)

 

 あの日打ち明けられた事、ホーネットから相談された内容。

 それは何を隠そう性交の際の留意点について、そんな赤裸々な話であって。

 

 そしてあの日の後。自分への相談を終えた後、もしホーネットの決意が固まったとしたら、そういう事になっていてもおかしくはない。

 あの日の終わりに誰あろうシルキィ自らが、近々そうなるのではとの予想をしていたのだ。

 

(え、え、え。てことは、て事はまさか、今日の話はその事に関してだったり……?)

 

 もしかしてホーネットは、遂にあの男との一線を越えたのか。

 その初体験を経て何か思う事があったのか、悩んでしまう事があったと言うのか。

 もしそういう事に関する相談だとしたら、自分は何と答えれば良いのだろう。自分だって別にそういう経験が多い訳では無いのに。どうしよう。

 

 と、シルキィが内心あたふたしている間にも、ホーネットの使徒達は室内から退出していく。

 そして、ぱたんと入り口のドアが閉まり切るのを確認した後。

 

 

「……さて」

 

 魔人筆頭がその金の瞳を、魔人四天王の赤い瞳と合わせる。

 

「………………」

 

 口を固く引き結んで身構えるシルキィ。

 

「………………」

 

 その一方でホーネットもしばし沈黙。以前の時と同じように逡巡の最中にあった。

 すぐにでも目の前の相手に尋ねたい事があるのだが、しかしそれはどうにも尋ね辛い。

 本来なら特別そう感じる必要の無い質問のはずなのだが、しかし自分の内にある慕情を自覚してしまうと、そんな事でも何故か尋ね辛く感じてしまうものであって。

 

「……そういえば」

 

 故にホーネットは呟いたのはそんな台詞。

 そんな如何にもふと思い出したかのような滑り出しから、至って自然な体を装って。

 

 

「シルキィ」

「は、はい。何でしょう」

「……その、最近ランス達を見かけないのですが、貴女は何か知っていますか?」

 

 この時のホーネットの内なる葛藤、そして憂心、更には羞恥心などなど。

 それら全てがごちゃ混ぜになった複雑な感情。そんな想いを知る由も無く、

 

 

「ランスさん達なら、ついこの前迷宮探索に出掛けましたよ」

 

 シルキィはとてもあっさり答えを告げた。

 

 

「……迷宮探索?」

「はい。退屈しのぎにちょうど良いからって、シィルさん達やサテラを連れて」

「……そうですか、迷宮探索……成る程……」

 

 魔王城を留守にしていたのは元の世界に帰ったのでは無く、冒険に出掛けていたから。他の面々が居なかったのも冒険する上でのパーティだから。

 それを知ったホーネットの表情が、胸中にある不安により曇っていたその表情が、僅かに安堵の表情へと切り替わる。

 

「ランスさん、城の近場にある迷宮全てを制覇するんだって燃えていましたよ」

 

 シルキィはその微々たる変化、今日のホーネットが寝不足気味な所までしっかり気付いていたのだが、あえて指摘するような事でも無いかと思い、そのまま会話を続ける。

 

「この近くの迷宮となると、ランス達はモスの迷宮に向かったのですか?」

「そうですね、それとアワッサツリーの方にも行くそうです。モスの迷宮と悪の塔といつわりの迷宮、それら全てを攻略するまで城には帰ってこない予定だって言っていました」

「……3つも迷宮を制覇するとなると、帰ってくるのには結構時間が掛かりそうですね」

「ですね。まぁサテラが一緒に居るから万が一の事は無いと思いますが」

 

 魔物界の迷宮には難所が多く、生息している魔物も強い個体が多い傾向にある。幾らあのランスと言えども容易に攻略する事は出来ないだろう。

 とはいえその目的が人間世界への帰還では無く、単なる暇つぶし目的での迷宮探索であるのなら、いずれはこの魔王城に帰ってくるはずである。

 

「というかホーネット様。この事を知らなかったのですよね? なら私がもっと早く報告しておくべきでしたね、申し訳ありません」

「いえ、構いませんよ。……それにシルキィからというよりも、どちらかと言えば出発の際にサテラからの連絡があると良かったのですが」

「あ~、それは~……。ランスさんは本当に思い立ったら突然と言うか、冒険に行くぞとなってすぐ準備をしてすぐ出発したので、それであの子もちょっと連絡し忘れちゃったんだと思います」

「そうですか。まぁ先程も言いましたが別に構いません。それほど重要な事ではありませんから」

 

 昨日抱いた不安、夜中ずっと苛まれたそれはただの杞憂であった。

 胸の中にあった重たいものが解消したホーネットは、自然とティーカップに手を伸ばす。

 

「……ふぅ」

 

 使徒達が丁寧に入れてくれたその味をそっと一口味わう。

 そしてほっと一息ついた所で、シルキィが様子を伺うような表情で口を開いた。

 

「……あの、ホーネット様」

「どうしました?」

「先程ホーネット様が言っていた、大事な話というのは何でしょうか?」

 

 さすがに今のは本題では無く、会話を弾ませる為の単なる前振りのようなものだろう。

 シルキィがそう考えたのも無理はなく、故に彼女はそのように本命の質問を促したのだが、

 

「……そう、ですね」

 

 ホーネットはそこで言葉を止めて、何かを躊躇うように視線を横へと逸らす。

 彼女が聞きたかった大事な話、実の所それはもうすでに聞き終えている。だが相手からそのように言われてしまうと、今のがそれなのですとは中々口に出来ないもので。

 

「大事な話というのは……」

 

 そして何より今のホーネットには、シルキィに聞いてみたい事がもう一つ存在していた。

 今しがた尋ねたランスの居所と同じくらいに、あるいはそれ以上に大事な話。

 

 自分の内に芽生えていたもの。自覚してしまった想い。彼に対して向けている情愛。

 それを自分はどのように扱えば良いのか。今後彼とどのように接すれば良いのか。

 そして彼が求めている行為に対して、自分はどのように向き合うべきなのか。

 

 などなどそんな悩み。まるで思春期にある人間の少女が抱くような悩みであるが、しかし今のホーネットが確かに抱えている悩みであって。

 それを自分よりも遥かに人生経験が豊富なシルキィに相談し、何か助言を貰いたいという気持ちがあるにはあったのだが。

 

 

「………………」

 

 しかし魔人筆頭の表情は一向に動かない。

 沈黙が続くだけで、その口からは次なる言葉がどうしても出てこない。

 

 自分のこの想いを誰かに打ち明ける事。そしてそれらの悩みを打ち明ける事。

 その難解さ、その尋ね辛さたるや、先程の質問の比では無く。

 

 

「……ホーネット様?」

 

 シルキィが心配そうに小首を傾げる中、

 

「……その」

 

 結構な時間を躊躇っていたのだが、結局ホーネットはそれを尋ねる事は出来ず。

 

 

「……先日、の、事なのですが」

「先日?」

「えぇ。……シルキィ、貴女が泥酔していた時の事です」

 

 代わりに選んだのはそんな話。

 とはいえ一応、これも気になると言えばとても気になっていた事ではあって。

 

「え!」

 

 その予想外の話題に、魔人四天王の口から飛び上がるような一言が漏れた。

 

 

(続く)

 

 




2019/7/15 
本日ランスシリーズ30周年、誠におめでとうございます。


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