深い森の中を進む4つの人影。
先頭は人間の男、その後ろに大きな甲冑姿、その後ろを小さな少女とふわふわの生き物が続く。
「……あっちもこっちも似たような光景、どこも似たような木ぃばっか。つーかこれ、ちゃんと道あってるんだろーな?」
「大丈夫よ。確かに森の中は迷いやすいけど大きな目印があるからね」
「ほらランス、木の陰から僅かにだけどキトゥイツリーの世界樹が見えるでしょう? あれを目指して進んでいれば迷う事は無いわ」
それはランスと魔人シルキィ、そして魔人ワーグと夢イルカのラッシー。
一行がこうして森の中を進んでいる理由、それは囚われの身であるロナ・ケスチナを救出する為、そして魔人レッドアイを討伐する為である。
ホーネット派では無いがランスにとっての友達である魔人ワーグ。彼女の協力を得た事で作戦実行に必要なピースは全て揃った。
後はワーグと共にロナが居る場所へと向かうだけ。そして相手が眠っている間にロナを救出し、そのついでに魔人レッドアイをたたっ斬るだけ。
それがランスの考えた魔人レッドアイ討伐作戦。
立案者がカンペキと謳う作戦、内容を書き出してみればとてもシンプルな作戦なのだが、しかしそこに潜んでいた大きめな欠陥が原因となり、一行は出発当初から苦労されられていた。
「……しっかしまぁワーグよ。お前ってほんっとーに不便なヤツだな」
「……ランス、まだそれを言うの?」
「だってなぁ。うし車が使えてりゃもうとっくに到着している頃合いだっつうのに……」
「そんなの仕方が無いでしょう? 私だって好きでこの体質でいる訳じゃないのよ」
ランスの批難めいた言い分に対し、ワーグはむすっとした顔で反論する。
それが一行の抱える厄介な問題、移動方法が徒歩に限られてしまうという事。
その原因は勿論ワーグの体質。彼女の眠りの力は本人にも制御が出来ない代物であり、その周囲に居る全ての生物を無差別に眠らせてしまう。
すると移動には欠かせない乗り物、うし車が使えない。車を牽くうし達も眠ってしまう為、ワーグが一緒だと徒歩でしか移動が出来ない。
その能力の効果で森に潜む魔物や危険な魔界植物なども無力化出来る為、作戦を開始したランス達は進路を気にせず森の中を南に一直線、最短ルートでえっちらおっちら歩いていたのだが。
「……はぁ、かったりぃ。さすがに歩くとなると遠いな……」
「まぁそうね。魔王城からケイブリス派陣内までとなると確かにちょっと遠いわよね」
疲労感を滲ませるランスの言葉に、後ろを歩くシルキィも素直に同意する。
魔王城が存在するのは魔物界の北部、そしてケイブリス派勢力圏は魔物界の南部一帯。故に彼達が目的地に辿り着くにはこの大陸の半分程を縦断するに近しい距離を歩く必要がある。
すでに出発から3日程経過しているが、未だ魔物界中部に差し掛かった辺り。道程はまだまだ遠いと言わざるを得ない現状である。
このように移動手段が徒歩限定となる問題、それは解決しようが無い問題。
ワーグと一緒に行動する上では享受せねばならない事なのだが、しかし問題は他にもあって。
「……あ~……ねみ~……」
それがこの睡魔。ワーグと一緒に居る間は耐えなければならない甘い誘惑。
なにせワーグの能力は本人にも制御が効かない。となるとその脅威は敵にだけでは無く、すぐそばを歩くランスにも平等に襲い掛かってくる。
「……う゛~、しんど~……」
地を這うような重い呻きを吐き出す、その男の顔は見るからに眠たそうな表情で。
出発してから今日で3日目、その間ランスはずっとこんな感じである。ワーグの眠気に守られる事によって戦闘が起こらないという利点はあれど、しかし戦闘などよりも遥かにキツい睡魔と旅の間中ずっと戦い続けなければならない。
故にランスはとぼとぼと歩きながら、
「……ぐににに、ぐににににー……!」
ふいに自分の頬をつねって、思いっきり左右へと引っ張ってみたり、
「……がーー!!! うがーーーー!!!」
突然大声を張り上げてみたりはするものの、
「……ぐぅ、やっぱ眠い……」
しかしその眠気は単なる眠気ではなく、他ならぬ魔人の能力。
頬をつねろうが大声で叫ぼうが、ランスの脳内に漂う眠気は中々晴れてくれない。
「ちょっとランス、びっくりするじゃない。急に叫び出すのは止めてって言ったでしょ?」
「……ワーグよ。止めろっつーなら俺様はこの眠気を出すのを止めてほしいのだが」
「だからそれは出来ないって何度も言っているじゃないの。いい加減にしつこいわよ」
「……ぐぬぬぬ。ある程度覚悟はしていたが、ワーグと旅するのがこんなにキツいとは……」
もう何度目かになる問答を繰り返しながら、ランスは目元を乱暴にゴシゴシと擦る。
魔人ワーグの強烈な眠気。それは今のランスでは完全に克服する事など出来ないもの。特に目的地まではただひたすらと歩き続けるだけで、戦闘を挟んだりする事も無く。
「……眠い、眠い~、ね~む~い~……」
その退屈感と疲労感も合わさってくると、おのずと限界は近くなってくるもので。
「…………あー駄目だ、シルキィちゃん、そろそろキツい」
そこで重要となるのが彼の後ろを歩く重装甲、魔人四天王シルキィ・リトルレーズンの存在。
彼女は自前の装甲と持ち前の根性により、ワーグの眠気をかなりのレベルで克服している。
特にワーグが一緒となるとシィルすら同行する事が出来ない為、長旅に必要な食料やその他生活必需品などの荷物を運ぶ役目として、この作戦に欠かす事の出来ない存在である。
「あ、もう限界?」
「うむ、もう無理、俺様死ぬ」
「そっか、分かった」
そしてなにより、緊急時にはランスのベッドにもなってくれる。
小さく頷いたシルキィはその両手に抱えていた大きな荷物袋を一旦地面に下ろすと、そのまますっとしゃがみ込んで背中を向けた。
「はいランスさん、乗っかって良いわよ」
「おう、あーねむねむー」
そしてランスが装甲の背中によじよじと登ると、彼女の手が背後に回ってその身体を支える。
「大丈夫? 痛くない? ちゃんと眠れそう?」
「ん、問題無いぞ。んじゃシルキィちゃん、あとよろしくな。……ぐがー、ぐがー」
そうして背負われるや否や瞼を閉じて、ランスはあっという間にいびきをかき始める。
彼が苦肉の策として考えたワーグの眠気への対抗手段、それはシルキィにおんぶをして貰う事。
いい歳した大人の男が少々、いやかなり情けない格好ではあるのだが、しかしそのような葛藤は初日の段階でとっくに消え失せていた。
「……わぁ、もう寝てる。ランスさんってば相変わらず眠るのが早いなぁ。いしょっと……」
三人分の旅の荷物に加えて、今しがた背中にも新たな荷物を増やしたシルキィだが、その程度の重量なら魔人四天王である彼女にとっては軽いもの。
再び荷物袋を手に取って立ち上がると、先程までと変わらない調子ですたすたと歩き始める。
「……じぃー」
するとそんな二人のすぐ後ろ。
今の様子をじっと観察していたワーグは、
「……なんか、甲斐甲斐しいわね」
そんな言葉をぽそりと呟いた。
「ん? ワーグ、なにか言った?」
「ねぇシルキィ。私ね、この旅を始めてからずっと思っていた事があるんだけど」
「思っていた事?」
「えぇ。なんかシルキィって妙にランスに対して親切と言うか、妙に優しく接してないかしら」
「……え、そう?」
ワーグからの思いもよらない指摘に少し面食らったのか、シルキィはその歩みを止める。
そんな彼女は今睡魔に敗北を喫したランスの事を背中に背負い、代わりに歩いてあげている。その姿はこの旅の中で何度も繰り返されたもので、ワーグが先の感想を抱くのにも納得の姿ではある。
「……けど、別にこれくらい普通じゃない?」
「どうかしら。私にはそうは思えないけど」
「……そうかな? ……まぁ私ってほら、ちょっと世話焼きの気があるからさ、それで今のランスさんにはどうしても優しくしちゃうのかもね、うん」
──ランスさんとっても眠そうだし。
とそんな言葉をシルキィはさも言い訳するかのように付け加える。
彼女にとってこれはあくまで世話焼きの範疇。なにせランスは魔人の自分達とは違って人間、であればワーグの眠気を我慢するのにもさすがに限度というものがある。
一方の自分は魔人四天王であるし、装甲にも守られているので大して眠くならない。となればここは自分が何とかしてあげるべき状況だろうと、シルキィの考えとしてはその程度のものである。
「……へぇ~」
だがワーグはまだ納得していないのか、そんな世話焼き魔人に対して勘ぐりの視線を向ける。
「……ちょっとワーグ、その目はなに?」
「……別に。けどなーんか怪しいなって思って。ねぇラッシー?」
「同感どうかーん。なーんか怪しいよなー、ねぇワーグー?」
ねー? と飼い主とペットは声を揃える。
ワーグによる見事な一人芝居を受け、シルキィは装甲内で少しひるんだように顔を顰める。
「もう、ペットちゃんまで……大体、怪しいって何の事を指して言っているのよ」
「何って、それは……あれよ、あれ」
「あれ? あれってなに?」
「……だから、その……あれ。強いて言うなら……あなたの態度?」
誰に対しての、とまではあくまで口にせず。
ただ今のシルキィの態度、その振る舞いや受け答えが怪しく見えるのだとワーグは告げる。
「態度? 態度って言われてもねぇ……私は普段からこんな感じだって」
「……ふーん。なら、普段からそんな感じでランスに優しくしているって事なのね」
「べ、別にそういう訳じゃないけど……」
ワーグのいちゃもんのような口撃にダメージを受けたのか、シルキィはややの動揺を見せる。
しかし押されていたのはそこまで。彼女は誰あろう魔人四天王、ただの魔人であるワーグとの格の違いを見せつける……という訳では無いのだろうが、その観察力の鋭さ故に少し思う事があった。
「……というか、怪しい態度って言うなら……」
自分の態度が怪しいのだと疑ってくるワーグ。
しかしそう疑われたシルキィにとっては、まさにそのワーグの態度こそが怪しく見えていて。
(……なんだか、今のワーグって……)
先程からワーグは妙に突っ掛かってくるが、果たして彼女はこういう性格だっただろうか。
その不自然に見える態度の事や、この前ワーグの家で会った時ずっと怒っていた事、そして極め付けは先程から自分の方に向けているその目付き。
シルキィにはそれが引っ掛かっていた。それはどこかで見覚えがあるような気がするのだ。
(……あ。これってそういえば、サテラの……)
ワーグのあの拗ねているような目付き。
それでいて何を羨んでいるようなあの目付き。
そういえばあれはサテラのそれに似ている。
自分がランスと一緒に居る時、特に距離が近くなっている時などに、むっとした表情のサテラが向けてくる目付きに似ていて。
(……まさか)
そこでシルキィはピーンときてしまった。
「……ねぇワーグ」
「なに?」
「もしかして貴女って……ランスさんの事が好きなの?」
「なぁ!?」
魔人四天王からの強烈なカウンターにワーグはびっくり仰天、肩を揺らして飛び上がった。
「な、ななな、なんで、なんでそんな話に!?」
「だってさっきから貴女の態度って、まるで私にヤキモチを焼いているみたいだから……」
「はうっ!?」
「あああっ! バレちゃってるよワーグ!!」
「ら、ラッシー! だま、黙りなさいっ!!」
本音を代弁してしまうペットを慌てて叱り付けながら、ワーグは自らの過ちを悔いる。
先程ランスとシルキィの距離感がちょっと気になったというか、端的に言うといちゃいちゃしているように見えてなんかもやもやした。
そこでからかい半分にシルキィの事を突いてみたら、まさか自分の方に跳ね返ってくるとは。藪蛇とはまさにこの事である。
「……その様子だとやっぱりそういう事なのね?」
「べ、べ、べ別に違うけど!? 私は、私はあの、あくまでランスの友達として!?」
「……ワーグ、あなたね……そんなに動揺しちゃったら真意がダダ漏れじゃないの……」
何やら必死に否定するワーグであったが、しかしその言葉の「友達」の部分を「主」に変えてみれば、それはまさしくサテラが言いそうな事で。
「……そっか。ワーグ、そういう事だったのね」
「ち、違うって言っているでしょう!?」
「別に隠さなくてもいいじゃないの。本人は今眠っているんだし、私だって喋ったりはしないから。……にしてもそっかぁ、ワーグがねぇ……」
そういう事もあるのかぁと、シルキィは多少の驚きと共にしみじみと考える。
ワーグは魔人。その能力の凶悪さから多くの者に恐れられてきた魔人であるが、とはいえその心には感情というものがある以上、誰かの事を好きになったりする事は当然にあるだろう。
だからそこは問題無いのだが、ちょっと気になってしまうのはその日数。彼女の知る限りではランスとワーグが出会ってまだ3月程度しか経っていないはずで。
「3ヶ月かぁ……そういう気持ちになるのはちょっと早いような気がするんだけど。……でもそうでも無いのかな? 私の考えが古いだけ?」
「だ、だから別に私は……!」
「あぁけどそっか。ワーグにはワーグの事情があるもんね。ならおかしな事でも無いのか」
ワーグにある特別な事情、彼女の体質に纏わる根深い問題、今まで100年以上にも渡る長い期間ずっと孤独だった過去。
それを踏まえて考えてみると、睡魔の壁にも負けず自分を恐れず近付いてきてくれた初めての相手、ランスに惹かれてしまうのはある種当然の事と言えるのかもしれない。
「……けどねぇ~」
「な、なんなの!? 何が言いたいの!?」
「何が言いたいっていうか……ランスさんかぁ~、って思って。だって……これじゃない?」
言いながらシルキィは反転して背中を向ける。
そこには相変わらずおんぶされたまま、鼻提灯を膨らませてぐっすりと眠るランスの姿。
それを見て相手の言わんとする事を理解したのか、ワーグもちょっと複雑な表情で口を開く。
「……確かに情けない格好で寝ているわね」
「でもワーグ、貴女はそんなランスさんが好きなのよね?」
「だ、だから私は別にただその、あくまで友達としてのあれで……」
「あ、なんなら貴女がランスさんをおんぶする?」
「……ううん、別にいい」
私じゃ多分無理だと思うし、と呟きながらワーグはすっと顔を背ける。
それに「そっか」と返事をしながらも、シルキィはやっぱり気になってしまう。
(ワーグがランスさんを好きになった理由は何となく分かる。それは分かるんだけど……)
睡魔の壁を乗り越えて友達となった、ランスのそういう積極的な一面、誰に対しても物怖じしない性格というのは評価するべき点なのだろう。
しかしその他の点はどうなのか。その他の面で問題があると感じたりはしないのだろうか。
これはサテラにも言える事なのだが、プラスが大きければマイナスは目に入らないという事なのだろうか。というかランスからは魔人にモテるオーラか何かでも出ているのだろうか。
などと、そんな事をつらつらと考えていたシルキィだったが、
「……ていうか、私よりもシルキィはどうなのよ」
その時ようやくと言うべきか、顔を赤く染めたワーグからの反撃の言葉が飛んできた。
「え、私?」
「そう。さっき言いたかったのはその事よ。シルキィはランスの事をどう思っているのよ」
「どうって言われても、別に私はそんな……普通にしか思っていないけど?」
それは目の前に居る魔人や真っ赤な髪をポニーテールに結んだあの魔人など、今はもしかしたら緑色の長髪のあの魔人も含むだろうか。
そんなどこぞの魔人達のように狼狽えたりなどはせず、シルキィは至って平然とそう答える。
「……怪しい。やっぱり怪しいわ」
「うんうん、怪しい怪しい。なぁワーグー」
しかしワーグとそのペットはそれでも納得してくれない。
どれだけ当人から否定された所で火の無い所に煙は立たずと言うべきか、彼女がそう疑って掛かるのはヤキモチ以外にもちゃんとした理由がある。
それはこの旅、この作戦が始まってからワーグが度々目にする事となったもの。
ランスに対してのシルキィの面倒見の良さ、その世話焼き加減が大元の原因。
今のように眠くなったら背負ってあげる。そんなお昼寝の世話は勿論の事、この魔人四天王はその他にもあれこれと世話を焼いているのだ。
例えば朝。ランスが起きたら「あ、寝癖がついてるわよ」と微笑みながら手を伸ばして、ちょちょいとその身なりを整えてあげたりと。
例えば昼。食事の時には「はい、どーぞ」とごはんやおかわりをよそってあげて、食べ終わりの際には「ふふっ、ご飯粒付いてる」などと呟いてひょいと取ってあげる様はまるで恋人同士の何とやら。
そして決定的なのは夜。皆が寝静まる頃合い、そんな時に耳を澄ませば微かに聞こえてくる、魔人四天王のしっとりと濡れた甲高い嬌声。
夜中にこの二人がこそこそと何をしているのか、シルキィは隠しているつもりのようだがワーグはとっくに気付いていた。
このようにとにかくシルキィはあれこれと、ずぼらなランスに対して世話を焼いていて、そして密かにエッチな事までしている訳で。
そこまでするのは単なる親切心だけじゃなくて好意があるから故なのではと、ワーグがそう睨んだのも至極当然な事であった。
「絶対に怪しいわ。シルキィ、あなたの方こそ隠さなくてもいいのよ」
「私は何も隠してません。さっきから何度も言っているけど、なにも怪しい事なんてないから」
「……ならシルキィ、あなたはランスの事を何とも思っていないの?」
自分の本心がバレてしまった以上、相手の本心もバラしてやりたい。
そんな思いでワーグが尋ねた今の質問に対して、
「えぇ、勿論。何とも思ってないわよ」
この時、シルキィは確かにそう答えた。
「……本当に?」
「本当だって。……あ、別に何とも思ってないって言っても大切な仲間だとは思っているのよ? ランスさんって色々な意味でスゴい人だなぁとも思っているわ。けど──」
──男の人としてはちょっとねぇ。
ワーグの手前あえて口には出さなかったが、シルキィはそんな台詞を頭の中で思い浮かべる。
先の通りランスにも良い所は勿論ある。しかしダメな部分だって一杯ある。
とってもスケベだし、デリカシーも無いし、特に何人もの女性に手を出す程に節操が無い。そういう部分は大きな減点要素である。
シルキィが思う自分にとっての理想の男性像、それはとても真面目で厳格な性格の人。
それでいて時に不真面目で豪快な性格の人。自分でもなんだそれはと思わないでも無いが、とにかくそういう相手に惹かれた過去がある。
ランスは後者の要素こそ当てはまるものの、前者の要素がさっぱり欠けている。故に男性としてはちょっとNGかなぁと、そう答えた彼女の言葉は本心であっただろうはずなのだが。
「……ふーん」
そんな魔人四天王の事を、ワーグはとても訝しげな目付きで見つめていて。
そしてその数時間後、事件は起こった。
(続く)