9・イレブン~突然野球部がなくなったんでサッカー部に入って頑張りたいと思います~ 作:七竹真
俺は、仲間を集めようと部室を後にしようとした。すると、
「で、どうやって集めるんですか?」
「そりゃあ、1人1人声をかけていくに決まってるだろ」
「そんな時間はありませんよ。それに今日はもう遅いですし、明日全員そろって考えましょう」
「そうだな、それがいいよ」
と伊庭が言う。
「そっか、そうだな。明日考えよう」
「じゃ、みんな案を考えてきてね!じゃ、解散!!」
九花のその一言で解散となった。
帰り道、俺は伊庭と並んで帰っていた。いつもはここに2~3人ほかの野球部のメンバーもいた。なんだかとても悲しい気持ちになった。
「なぁ、結局解散する前に入部希望書を提出したけどあれでよかったのか?」
「どういうこと?」
伊庭の質問の意図はわかっている。本当にサッカー部に行ってよかったのかということである。
「本当に、サッカーを選んでよかったのか?野球、好きなんだろ?」
ああ、そうさ。確かに、
「確かに、野球も好きだし、後悔するかもしれないさ。野球のほうがいいな。サッカーよりいいなってね」
「じゃあ、」
伊庭の考えが当たるかもしれない。でも俺には、伊庭が試しているように思えた。
「でもさ、あいつ、サッカーについて教えてくれる時に熱いまなざしで語ってた。九花
もそうだよ。あいつのボール触ってる時の目がキラキラ輝いていたんだ。2人をそんなに熱くするサッカーに、俺は、」
息を吸って続ける。
「俺は、懸けてみたいんだ!」
「そうか。お前もそう思っていたならよかった。これからも頑張ろうな、水卜」
「ああ、よろしくな」
俺には、沈んでいく夕日が俺たちの熱く燃え上がる夕日に対しての思いを表しているように思えた。
そのころ、サッカー部のRINEにて・・・
菊野 「へー、新入部員ですか~」
蓮池 「3人もですか」
九花 「そ!」
菊野 「どんな人たちなんですか~?」
メタル 「元野球部に人たちです」
九花 「明日からさ、新しい部員をさらに探そうって張り切ってくれているの!」
桃栗 「いい人たちっすね!名前はなんて言うんすか?」
九花 「えっと……」
メタル 「2年は水卜保守と伊庭綾一の2人で、1年は氏家一二三です」
桃栗 「!!氏家っすか!あいつは同じクラスっす!」
蓮池 「私は、水卜君と伊庭君と同じクラスよ」
メタル 「なんと!それは驚きです」
九花 「ほんとね。でさ、みんなにも新入部員にできそうな人とか集める方法とか考えてみて!」
菊野 「はい~。わかりました~」
蓮池 「OK!」
桃栗 「考えていくっす」
「おはよー」
ガラガラ、と部室の戸を開ける。転がっているサッカーボール。それを九花咲弥は拭いていた。俺に気付くと九花は顔を上げて、
「おはよ!朝早いね」
と明るく返してきた。いや、九花のほうが早いんだが…。
今日は、俺のサッカーライフ2日目。昨日の朝までの野球生活はどこ遠くへと去っているということが、改めて実感できた。今日から、サッカー部の部員集め開始。俺は、野球部の仲間数人を目につけていた。
「で、どんなアイディアが出た?」
「ああ。チラシとか貼ればいいんじゃないかなって思うんだけれど。あとは、元野球部で入ってくれそうなやつに当たるとかさ」
「チラシは、昔やったの。でも全然効果がなくって。」
「そうか。じゃあ、他には…」
「あるわ」
後ろから女子の声がした。おそらく、昨日メタルが言っていたマネージャーの1人だろう。振り返って、顔を見てみると、同じクラスの蓮池藤葉だった。これは、驚きだ。
「ほんと!?」
「ええ。放送をかけるのはどうかしら?校長たちの許可をもらえば、放送室も使えるはずよ。タイミングは、給食の時が一番いいと思うわ」
「なるほど。それはいいアイディアね!」
確かに一見いいアイディアだろう。しかし、給食時の放送を真面目に聞く人がそこまでいないことはわかる。なぜなら、友達としゃべったり、給食を食べるのに夢中になったり、すぐに部活の練習に行きたくなるからだ。そのことを伝えると、
「そっか…。いいアイディアだと思ったんだけどな」
「サッカー経験者のほうがいいんだろ?」
「まぁ、うん」
「だったらさ、ここら辺の小学校のクラブの責任者とかに、入っていた奴を聞いたほうがいいんじゃないか?」
九花は、指をパチンと鳴らして、
「それ、ナイスアイディア!」
「だろ!」
「だったら、桐ヶ丘くんから紹介してもらおうよ!」
「桐ヶ丘って確か卓球部の…」
「だって彼、昔『玉坂FC』に所属していたらしいもの」
うん、
「そいつ誘えばよくね?」
「・・・・・・!それだ!!」
というわけで、俺たちは新たな部員候補その1として桐ヶ丘誠を選んだ。サッカー経験者である桐ヶ丘は、俺たちにとって大きな戦力となるだろう。
「おーい、桐ヶ丘!」
HRが終わり、3組の教室に俺は足を運んだ。桐ヶ丘誠を仲間にするためにな。
「!水卜じゃんか。野球部には、入んねぇぞ」
「いや、入ってほしいのはサッカー部。部員足りねぇの」
「は?」
「実は、かくかくしかじかで・・・」
野球部がなくなったこと、サッカー部に入ったこと、部員が足りないこと、サッカー経験者である桐ヶ丘を誘いたいことなどを順に話していくと、
「いいよ。卓球部は、友達に誘われて入っただけだし。サッカー部も部員いないんじゃ入る意味ねぇな、ってあきらめたんだけど、増えるんだったらやりたいし」
「マジで!」
「ああ!」
こうして、桐ヶ丘が仲間に加わった。まぁ、元からサッカーやってて、部員がいないって理由だけであきらめたのなら簡単に入ってくれるか。
「九花!」
「水卜、桐ヶ丘君の件どうだった?」
俺は、にっと笑って
「おっす!」
後ろから出てくる桐ヶ丘。
「うわっ!びっくりしたー」
「これで、7人。あと4人だな!」
「へ?」
「・・・まじ?」
「「まじ」」
俺たちの話を聞いた桐ヶ丘は驚いて、聞き返してきた。
「あと4人って誰がいんだよ」
「俺は、庄内と寅忍と真堂と、」
「要するに野球部の面子だろ。サッカーど素人の」
「ああ。それが?」
「そいつら以外にも部員集めねぇとだめだろうが!サッカー経験者4人で7人分も働けねぇし」
九花がうんうんとうなずいて、
「せめて後二人、サッカー経験者が欲しいよね」
「じゃー、鳥本先輩なんてどーですか~?」
「鳥本?ああ、6組のか…。ってお前誰だよ!」
いきなり現れた女子と大柄な男子に桐ケ丘が驚く。もしかしてこいつらが、
「もしかして、こいつらがマネージャーともう一人の部員?」
「そう」
「桃栗柿右衛門っす!よろしくお願いしますっす、先輩方」
「菊野緑です~。よろしくです~」
「そうか、よろしくな」
「よろしく!」
俺たちは手を伸べて、堅い握手をした。
「で、鳥本がいいってのは?」
「はい~。この間ですね~、鳥本先輩が河川敷のグラウンドで、弟さんだと思われる子とサッカーしてたんですよ~。うちのクラスで、弟が玉坂FCに入ってる子に聞いたところ、それは100パー鳥本先輩だって」
「そうか。弟の練習に付き合うとはいえ少しは身に着くか…」
「決まりか?」
「決まりね!」
「決まりだな!」
次の相手は、鳥本春文。弟の練習に付き合って学んだサッカーの技術は、いかほどなのだろうか?
to be continued