真名当てゲーム(仮) 作:DJ
夜の倉庫街。
そこに、両雄は激突した。
「は…ぁああああああああッ!!」
巨大な、盾のような歪な槍。それを鈍器のように振り回すのは、長身の女戦士。
一撃一撃が地面を軋ませ、空気を震わせ、魔力を慄す。
その槍は、その一撃は並の英霊ならば即座に霊核を砕かれ消滅の憂き目を見る必殺のそれ。
だが。相対する敵もまた、並ではない。
鉄の馬が嘶く。
「――都市を超える神槍。」
その戦車は、あまりに異様。
鉄で出来たロボット、と言うのが適切だろうか。
だが、その動きは機械のそれにしては余りに滑らか。
「ああ、それは当然強いとも。尊いとも、貴いとも!」
その装甲は、敵の一撃を容易く受け止める。
「ッ!」
驚愕に目を見開く女戦士。
「だが。」
戦車の持ち主は、追撃すらせず悠々と嗤う。
「その上で宣言しよう。」
左手を掲げれば、再度馬が嘶き。
「無駄である、無為である、無謀である!」
「グ……あぁあぁあ!?」
ゼロ距離からの突進は、女戦士を大きく吹き飛ばす。
「我が王威の前に、貴様の尽くは看破され、対処され、消え逝く定めと識れ!」
コンテナに叩きつけられる女戦士。
轟音とともに横にへしゃげるコンテナが、先の突進の威力を物語る。
しかし、尚も女戦士、余裕を持って立ち上がり。
「……抑止装甲越しに、何故我が槍を見抜けたかは置いておこう。」
ブオンッ、と槍を一振り。
「だが、知った上で我が槍を無謀と謗るか。――驕ったな、ライダー!」
再度の突撃。
だがそれは、女戦士へ放たれた、一本の矢によって中断される。
「ッ…アーチャーか!姿を見せろ!」
巨大な槍の一振りで、強引に矢を打ち払う女戦士。
だが。その双眸に、射手の姿は捉えられず。
「ほう。我が王道に水を差すかよ、アーチャー。」
ライダーと呼ばれた戦車の男。
彼もまた、射手がいるであろう方を睨む。
だが、二騎の怒気を他所に、射手の攻勢は続く。
「
二騎にも届いたその声は、届くが故に魔力が込められ。
「そこかッ!」
魔力により位置を摑んだ女戦士が駆け出すより早く。
百にも及ぶ
――――――
「以上が、私の使い魔が観てきた映像さ。」
魔術、という
僕の視覚に直接叩き込まれた映像は、目眩がするほど死に満ちていた。
聖杯戦争のなんたるか、の概略を話した後、キャスターは急に立ち上がり、話すより見た方がいい、と言うなり小鳥のようなものを生み出し何処かに飛ばした。その上で見たのが以上の映像だ。
「……今のは?」
頭を抑えながら、必死に平静を装う。
「さっき話したろう?聖杯戦争。その初戦さ。まさか初戦からここまで激しいとは思わなかったけれどね。」
身体の紋様を弄りながら話すキャスター。
まだ知り合って間もないが、紳士的な彼のことだ。僕を巻き込みたくない、と思ってこれを見せたのだろう。
これを見たら、普通はもう聖杯戦争に参加しようなんて思わない。思わない、はずだ。
だけど僕は、そう思わなかった。
むしろ胸にあるのは、怒り。
「……キャスター。」
「なんだい?」
「勝とう。」
拳を握り締める。
「……うん?」
「こんなの、間違ってる。」
そしてそれは、殺し合いだから、じゃない。
「……どうして?」
「今回は、誰も死ななかったよ。」
けれど、もし昼なら?もし歓楽街なら?
「だけど、誰が死んでもおかしくなかった。」
関係ない人が死ぬ。それだけは許容できない。
関係ない人が泣く。それだけは許せない。
つまるところ、正義感に浮かれていたのだろう。
「何も知らない人が、知らないせいで利用され、死ぬかもしれない。それが間違ってる。」
「……ああ、確かに。」
兎にも角にも、こういうわけで僕は。
聖杯戦争に参加した。