「帰って来るなり騒々しいですね」
飛ぶ本はそれだけでは飽き足らず、喋り始めた。
「えぇぇええええええええ!?本が、本が喋ってる!?」
「なぁ、ソフィー」
「なっ、なに!?というかルディ、何でそんなに落ち着いてるの!?」
「頬、抓ってくれ」
「全然落ち着いてなかったぁぁあああ!!?」
だって、本が浮いて喋ってるんだぜ?
夢だと思うじゃん?
「落ち着いてください」
「だって、本が喋ってるし……」
ソフィーの言葉にうんうんと頷く。
「考えてみてください。人間が話しているのです。本が喋っていてもおかしくないでしょう?」
「う、うーん……そういうもの、なのかなぁ?」
「いやいや、騙されるなよ」
間違いなく本が浮いて喋るのは常識の範囲外だ。
とは言っても、このまま驚いてるだけじゃ何も話が進まない。
「まぁ、このままだと埒があかないから聞くけど、おたくは?」
「はい、プラフタと申します」
あ、名前あるんだな。
「あ、名前あるんだ……。あたしはソフィーって言います」
「俺はルドルフだ」
「ソフィーにルドルフですね。記憶しました」
「えっと、プラフタ、さん?」
腰低いなぁ……
「プラフタで結構です」
こっちは意外とフレンドリーだな。
「あ、うん。えと、プラフタは一体何なの?」
「本です」
それは分かるわ。
「いや、それは分かるけど……。あなた、さっきの図鑑だよね?」
「私は……。私は……?」
何だ?様子がおかしい?
「妙ですね。思い出せません。私は一体何なのでしょうか?」
いや、こっちに聞かれても……
「いや、あたしに聞かれても……」
これは……一体どういうことなんだ?
「ねぇ……ひょっとしてプラフタ、記憶がないの?」
え?そういうことなの?
「どうやらそのようです。錬金術に関わりがあることだけは覚えているのですが」
そういうことなんだ。
「錬金術!?それならあたし、力になれるかも!あたし、実は錬金術士なんだ!」
「いや、ならんだろ」
つい口に出してしまうと、茶々を入れるな、という目を向けられる。
……ふざけてるつもりはないんだけどなぁ。
「ああ、存じています。山師の薬の製法も知らない駆け出しの錬金術士ですね」
こっちもこっちで辛辣だなぁ……
「うっ、見てたんだ……。で、でも、今はちゃんと作れるし……」
「あんなもの、少し勉強すれば子供だって作れます」
ってことは、俺でも作れるのか?
「はい、貴方でも作れますよ」
「え、考えを読む力もあんの?」
それはよろしくない。
それが本当ならすぐに帰らねば。
「そんな力はありません。だから帰り支度をする必要もありませんよ」
「本当に読めてないんだよな!?」
びっくりの洞察力なんだけど!?
「ルディは分かりやすいからね〜」
「はい、初対面の私でも理解出来るほどには」
……ちょっと凹む。
「まぁ、山師の薬はそれくらいに初歩なんですよ」
「……どうせあたし、錬金術下手だもん。すぐ失敗しちゃうし、いろんな物作れないし……」
あぁ、大分凹んでんなぁ。
「ま、まぁほら!今度はちゃんと成功したんだし、ホルストさんも成長してるって褒めてたんだしよ、大丈夫だって!」
さすがに、とフォローを入れる。
ソフィーはあんまりネガティヴを引きづらないタイプだけど、それでも凹む時は結構深く凹むしなぁ。
………………それに、あんま悲しい顔させておきたくないしな。
「いいもんいいもん、ルディも失敗に巻き込むこと多いし、おばあちゃんみたいに街のみんなを助けてあげられないもん……」
「上手くなりたいですか?」
さらにフォローを入れようとする前にプラフタが口(?)を開いた。
「…え?」
「錬金術が上手くなりたいですか、と聞いたのです」
「それは、もちろん。なれるならなりたいけど……」
「『知識の大釜』という道具があります」
知識の大釜?
何でも、誰でも偉大な錬金術を行使しうる、錬金術の知の結晶とのことだが……
「そんなので、いいのか?」
「え?」
「あ、いや……」
やば、つい言っちゃった。
「あー、ルディは自分の努力だけで色々やりたい人だからねぇ」
「ふむ……そういう人もいるのですね」
意外そうに言われる。
……まぁ、多少変わってるのは認めるけど。
「それで!その知識の大釜ってどこにあるの!?」
「知識の大釜は…………妙ですね」
あ、このパターンは。
「ねぇ、プラフタ?まさかとは思うけど……釜について、忘れちゃった?」
「そのようです」
クールで辛辣な印象が崩れ去った瞬間である。
「えーーーっ、本当に!?期待持たせておいて、あんまりだよー!」
「意外とポンコツなのな」
「……申し訳ありません。しかしまったく思い出せないのです」
ほっ、スルーされた。
「あと、私はポンコツではありません」
しっかり反応された!?
「お詫びと言ってはなんですが、私がソフィーに錬金術を教えましょう」
お?
「記憶を失っているとはいえ、あなたよりも錬金術の知識を持っている自信があります」
やっぱりコメントは辛辣なのな。
「うーん、確かにプラフタってあたしより錬金術詳しいよね…」
お前もそれでいいのか!?
まぁ、プラフタが賢そうなのは俺も同意だけどな。
「教えてくれるって言うならお願いしたいかも」
「はい、それではこれからよろしくお願いします、ソフィー」
「うん!よろしくね、プラフタ」
「そちらのルドルフも、一応よろしくお願いしますね」
うっ、若干根に持たれてる……
「おう、これからよろしくな」
でもまぁ、今はこの面白そうな出会いに、感謝しますか。
ルドルフの評価(幼馴染編)
ソフィー「結構、失言多いよね?」
オスカー「そうだな、1日に一回は失言してるイメージだなぁ」
モニカ「でも、意外と頼りになるわよね」
オスカー「付き合いはいいんだよなぁ……失言は多いけど」
ソフィー「そうだね、錬金術の練習の時も大体いてくれるしね」
オスカー「それはルディがソフィ……うぐっ!?」
モニカ「(それは言っちゃダメよ)」
オスカー「(分かった!分かったから離しておくれよ!)」
ソフィー「?」