もし黒のアサシンがジャックちゃんではなく、インド大戦不可避になったら(仮)   作:お空と北極

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満を持してApocryphaコラボ。
石の貯蔵が足りない…カルナさんをこれではお迎えできない…。



3.「構えろ。時が近い」

「──! ──!」

 

「我が王よ!」

 

 は、と気付くと見たことも無い場所に座らされていた。白を基調とした荘厳な大広間の段差の上の玉座にどうやら自分はいるらしい、と。

 

 そして、段の下はこれまた我が王などと呼ばれる覚えのない見知らぬ青年がこちらを心配そうに見上げていた。

 

 ふと自分の体を見下ろすとお姉さん──アサシンの着ていた服で、ああこれはアサシンの記憶かと納得する。自分の意思で動くようではないので、本当に記憶を覗いているだけの状態なのだろう。

 

「我が王よ、どうかされましたか?」

『いや、何でもない。』

「お疲れなのでしょう。最近働き詰めすぎなのですよ。我が王も休息を取られた方が良いかと。」

『何を言うか!』

 

 急に怒気を滲ませたからか、目の前の臣下だけでなく屈強な近衛兵が総じて肩を震わせていた。フラットも自由に動ける肉体があったら同じ様になっていたことだろう。

 

『俺が休んでいる間にも子供達が腹を減らし、大人達が食い扶持を減らすためにまた子供を捨てるのだぞ! 俺が休んでいられるか!』

「ですが」

『くどい!そもそも神なんぞに人間が頼りすぎなければこんな事には……確かに神は人間より強大で頼ってしまえば楽ではあるが、決して人間の味方ではないというのにっ……。』

「我が王…いえ、兄上、これは臣下としてだけではなく弟としても進言しているのです。どうか、ご自愛下さい。兄上のお体は不死身なのではないのですから。」

『……分かっている……。』

 

 少し落ち着いたものの、ブツブツと愚痴りアサシンは玉座の肘掛をパシリと叩いた。一人称といい、喋り方といい、フラットの知っているアサシンとは雰囲気が違う事に戸惑う。

 

『おい、神といえばアイツらはまだ見つからないのか!』

 

 近衛兵の方へ視点が行く。フラットはそろそろこの兵士達がとても気の毒に思えてきた。

 

「はっ、申し訳ありません!現在多くの兵が探しておりますが、未だ……。」

『その返答は聞き飽きたぞ!朗報や手掛かりのひとつも未だ持ち帰って来ないとは、お前達はそれでも戦士(クシャトリヤ)か!』

 

 空気をビリビリと震わせる怒声に誰も何も言えなくなった時、アサシンの横に誰か、どこか静謐な気配が佇んだのを感じた。

 

 フラットはアサシンの視点越しにその人物を見る。

 

 今まで結構なタイプの人を見てきたけど、この人は、違う。何が違うって人の格が違うって感じがする。

 

 鋭い目付きだが、それを有り余る美貌と白い肌に白い髪の毛、そして胸元に燦然と煌めく紅い石。見惚れるほど美しく輝く黄金の鎧。

 

「落ち着け。」

『む、』

 

 そしてその男は前のめりになった姿勢のアサシンの肩に軽く手を置いて座らせた。

 

『あ──……悪かった。言い過ぎたな。戦士(クシャトリヤ)という誇りを傷付けるような事を言ってしまったこと、心から謝罪しよう。』

「は! いえ! どうか頭をお上げ下さい!! 我が王が仰られるように私達が成果を挙げられるぬということもまた真実、貴方様は悪くありません!」

『いいから、俺が謝ると言ったんだ。受け取れ。これ以上は言わんぞ。分かったら下がれ。ほら、お前達もちょっとは気を使え。俺は今からこいつと2人で語らうのだからな。』

 

 近衛兵含め、臣下を全員下がらせてアサシンは友と呼びあう青年に向き合う。

 

『さて、わざわざここまで来たということは、何か言いたいことがあるんだろう?』

「お前は相変わらずだな。」

『お前は相変わらず私の言うことが分かってしまうのだな、だろう? お前だって相変わらず口下手にも程がある!』

 

 アサシンの"友"はあまり表情の動かないの動かない青年だが、それでも少しフラットには今この青年が一瞬笑ったように見えた。しかし、一瞬。すぐに厳しい視線を向けてくる。

 

「構えろ。時が近い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次にフラットが気付いた時、周りは全く別の景色へと切り替わっていた。

 

 見渡す限りボコボコに荒れた一面の大地。遠くで雄叫びと地面を揺らす轟音が鳴り響き、閃光がチラついていた。よく目を凝らすと血を流し惨たらしい死を迎えた人間だったものが沢山あった。

 

 どこかの戦場だろうか。余りにも現実離れした光景に、見慣れぬ死体に吐き気も湧かなかった。

 

 もう少し、アサシンの記憶は続くようだ。

 一歩一歩、ゆっくりと踏みしめながら進み、ある亡骸を確認してアサシンはいきなり駆け出した。

 

『は…………。』

 

 その辺に転がった死体とあまり変わらないが、特筆すべき点として、その死体にはあるはずのものがなかった。アサシンは()があったはずの場所に手を伸ばしかけ、やめた。強くその死体を抱き締め、唇を血が滲むほど噛んでいた。

 

『クソ、クソ、クソ……っ!』

 

 大切な人だったのだろうか。

 それなら何故涙を流すことを拒むのだろうか。

 

「■■■■■■■。」

 

 最後に記憶越しに背後にいた、声の主は誰だったのだろうか? 

 

 ──何かの花の香りがした気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がセイバーのマスターからここまでとこれからの聖杯大戦について一通り語り終えたくらいに、フラットは目を覚ました。

 

「おはよう、フラット。いい夢でも見れたかな?」

「……ん──? 不思議な夢ではありましたけど。」

 

 答え辛そうにするフラットに私は勝手に納得する。年頃の男の子だからね。言いたくない夢もあるんだろう。ここは大人な私が見逃してあげるのだ。

 

 ──あれ? なんだこの匂い。フラットから香るこの匂い、何処かで... 

 

 まだ寝ぼけ眼のフラットの首筋に鼻を近付けてみたが、あと少しの所で思い出したい何かは引っかかる。記憶力は悪くないつもりだったが、どうしても思い出せない。

 

「……お前さんなあ……。」

「ん、何か?すまないね。ちょっとぼーっとしてて聞いてなかった。」

「いや、何でもない。」

 

 セイバーのマスターも何か言いたげだったようだが本人が別に良いなら深く掘り下げる気は無い。私も思い出す事は一旦諦め、何故か慌てているフラットを解放した。と、そこへやけに似合った赤のパーカーのラフな姿のセイバーが現れる。

 

「それにしても随分マスターの知り合いってのは寝坊助野郎なんだなぁ。そんなにマスターと仲良いのか?」

「今回で会ったのは2回目だ。」

「マジか!何で助けでやったんだよ!お人好しか!」

「それは同感。」

「だよな!」

 

 まだ会って間も無いがこのセイバーの事がだんだん分かってきた。うちの弟とそっくりだ。結構波長が合うかもしれない。

 

「そ、それで、昨日話したように同盟を組むってことで、いいのか? お前達は。一様、黒なんだろ?」

 

 ゲラゲラと腹を抱えて笑うセイバーに頭痛を感じているのか頭を抑えるセイバーのマスター、獅子劫界離は私達に問うてきた。

 

「そもそも選択肢なんか無いですしね。獅子劫さんに助けを求めた時から俺はそのつもりでしたよ。」

「それに私のマスターはこう見えて魔術協会から来てるから。自然とそうなるだろうし、フラットが助けを求めた相手だったら私はある程度信用するよ。」

 

 あ、そういえば監督役のコトミネ神父? だったっけ。会いに行かなきゃなあ、と呟くとセイバーが心底嫌そうに顔を顰めた。

 

「あいつと会うのは、なんて言うか……やめた方がいいぜ(直感:B)?」

「ん──、」

 

 私は行った方がいい(■■特権:EX──直感)と思うのだが、同盟相手の助言だ。迷いどころではあるが、ここでの決定権はもちろん私のマスターにあるだろう。目配せして答えを任せる。

 

「セイバーさん、確かその神父さんのところにはサーヴァントがいるんですよね?」

「そうだな、俺が会った奴以外にもきっといるだろうな。赤のサーヴァント共が」

「じゃあ行きます!」

 

 へ? とセイバーとそのマスターは揃って面白い顔をした。親子か、と突っ込みたくなる。どうにもその話をしたら同盟が終わりを迎えそうな気もするのでやめておくけど。

 

「俺は英霊に会ってみたいんです! こんな機会一生に一度あるかないかくらいなんですよ! それになんかあったら俺にはお姉さんがいますから大丈夫です!」

 

 片や泣く子も黙るド迫力の強面、片や戦闘となると尋常ではない力を発揮するサーヴァント相手に、底抜けに無邪気な笑顔でフラットはそう言ってのけた。

 

 

 任せておいて、と私が口を開こうとした、その時。

 

 ──莫大な魔力の動きに同時に全員が空を見上げた。

 

 

 

 それは空を割いてそこから流れ星が零れるように大量の矢が地上へと降り注ぐ光景。ただの幻想的な天文学的現象ではなく、間違いなく宝具級のサーヴァントの攻撃。

 

 開幕の狼煙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今一度言います。赤の陣営に来ませんか? フランケンシュタイン。」

「ウゥウ!」

 

 昏い森の中で白髪の神父は黒のバーサーカー、真名フランケンシュタインと対峙する。もちろん、フランケンシュタインはその誘いに首を縦に振らない。寧ろ警戒と敵意を増す一方だった。

 

「それは無理でしょう。我がマスター。」

 

 神父の後ろにひらりと霊体化を解いて現れたサーヴァントにフランケンシュタインは唸り声を上げる。

 

「いや、今は戦いません。僕は君とは、戦わない。」

 

 夜闇に溶けそうな蒼のゆったりとしたコートを着た穏やかな顔つきの男は見たままのイメージ通り言葉をゆっくり、ゆっくり、噛み締めるように発する。

 

「そう、戦うのはこの私。シロウ・コトミネです。もしもこちらにつく気がありましたらいつでも申し出てください。」

 

 神父はそう言って指の間に挟むようにして三本の刃物を持つ。魔術の世界で呼ばれところの、黒鍵。聖堂教会にある特殊な組織の代名詞とも言える武器を構える。

 

 駆ける。唸る。避ける。振り下ろす。唱える。振り下ろす。ぶつかる。弾く。

 

 戦いの音がただ木霊する。

 

 

 

 

 ──夜は始まったばかりだ。

 




おシェイの出番も無くしてしまったよ…。

黒のアサシン情報2
王様やってた。直接戦うのは苦手とは本人の談。どちらかというと計画を練って人を使って舞台を整えあげて、最後の仕上げは自分の手でやるのが好み。
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