もし黒のアサシンがジャックちゃんではなく、インド大戦不可避になったら(仮)   作:お空と北極

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被告は「後悔も反省もしてない!ノッブゥ!」と証言しており…


4.「主役は遅れて登場する」

「お姉さん…はっ……どうしてっ……聖杯がほし、いのっ?」

「この状況でそんなに、よっと、頑張ってでも聞く?」

 

 フラット曰く、『開幕宝具ブッパ』という大規模な戦闘の兆しを確認して私達2組の主従は現場へ急行していた。セイバー組は主にセイバーが戦場に遅参するのは騎士の名折れ、と意気込み、こっちはフラットが戦闘を見たい!と目をキラキラさせて興奮していた。

 

 まあ、私も獅子劫もどうせ戦わなくちゃ行けないし異論はないということで、シギショアラの街に放置されていた車を強奪、そこから全速力で運転していた。

 

 セイバーが。

 

 それはもう、セイバーの苛烈な性格を表す運転で、現在進行形で道路ではない場所を爆走している。今扉を開ければ間違いなくフラットは放り出されて数十メートル先で地面に叩きつけられること間違い無しだ。大丈夫。しっかりドアロックは確認した。

 

 ヒヤヒヤする場面も多々あったが1回も大きくぶつけていない所を見ると騎乗スキルは確かに持っているようだ。

 

 この悪走行ぶりは弟を思い出すけど。アイツを御者にして戦車に何回乗らされたことか……誇らしげに自慢するから断るに断れないのがタチが悪い。

 

 そんな中、フラットは盛大に揺らされながら聖杯を求める目的について問うてきた。

 

「俺のっねが、いは、聖杯戦争にっ……参加、することっ…だったから、もう……半分くらっいかなってるんだけど、……おね、えさんはっ、どうかなって!」

「あ、オレもお前の願いっての聞きてえ!」

 

 運転席からも元気な声が上がる。獅子劫はグロッキー状態でもう声を出すのも億劫なようだが。あ、また急なターンに吐きそうになってる。

 

「そんなに大層なもんじゃないよ?」

「おうよ!それでもさ!」

「聞き、た、いです!」

 

 吐き気で眉に皺を寄せながらも真っ直ぐに見つめるフラットから思わず目を逸らしかけ、やめた。ここで逃げるのはフェアじゃない。

 

 ──私の願いは

 

「受肉してね、幸せに過ごしたい、ってお願いしようかなって。全員は無理があるかもしれないけど、家族を呼び寄せて普通の人間としていきたくてって、かなりありきたりだよなぁ。多分ほかの英霊と違って小さい願いだけど……でも、私にとっては大切な願いなんだ。」

 

 相変わらず激しく揺れる車内に沈黙が降りる。

 そして返ってきた反応は意外なものだった。

 

「いいんじゃねえの?」

 

 正直、セイバーがそう言うとは思わなかった。腰抜け、とかヘタレてる、とかその辺りだと覚悟していたのだが。セイバーがサイドミラー越しに真剣な表情を一瞬だけして、またいつものように笑ったのが見えた。

 

「だって、どうせオレがお前も倒して聖杯手に入れるんだからよ!願う分にはタダだろ!」

「まったく……いや、負けないよ私も。聖杯を手に入れるのは私達、ね?フラット。」

 

 横に座ったフラットを伺うと初めて見る表情の抜けた顔に背筋がゾッとした。

 

 

「…………。」

 

 何も言葉を発さない彼に何と声をかけようか逡巡し、恐る恐る手を伸ばす。

 

「フラ……」

「着いたぞ!」

 

 言葉を紡ぐ前にセイバーが到着の報告と同時にドアを蹴るように開けて飛び出した。確かにもうここは懐かしい戦場の空気が漂っている。すぐそこに見える城がユグドミレニアの本拠地であること、そして空に浮かぶ巨大な、なんだろう、庭園?アレごと赤の陣営は攻めていったのか!いや、面白すぎる戦略だろう!誰だあんな計画立てたやつ!話してみたい!

 

 と、その前に。

 

「獅子劫、フラットを頼む。」

「あいよ。」

「フラット!何かあったらバックアップ頼むよ!」

「りょーかいです!お姉さん!」

 

 ああ、良かった。返事はいつものフラットだった。先程の様子が嘘のようで逆に嫌な予感がする。幸いなことに即効性のものでは無いが遅効性の毒のようなぬるりとした嫌な気配が……

 

 いや、マスターの分析は後から構わないか、と気を取り直す。今は目の前の戦場をどう生きるかだ。

 

「なんだ?残って俺の勇姿を見届けねえのか?」

 

 セイバーはなんでちょっと不服そうなんだ。

 

「戦場の真っ只中だからな。あとは任せたぞ。」

 

 言うが否や獅子劫はフラットを乗せて安全運転だが、それなりのスピードで戦場を離れていった。私がいた時代もああいう逃げ足の早い手合いは厄介な奴が多かった。獅子劫達とは最後まで殺り合いたくは無いものだ。

 

「行ったね。私達も大遅刻だけど参戦しよっか。」

「まったく、オレ抜きで開戦するとはふざけているにも程がある。まぁいい。主役は遅れて登場する、王は戦場に悠々と参陣するのが世の通りだ。」

「なんだそりゃ。私の時は王様は後方にいても遅刻はしなかったけどなぁ。まあ、せかせかすることは無いってのは同意。」

 

 徹夜をして翌日寝坊し、遅刻しかけて慌てて準備して参陣した時は酷かった。兵にも動揺が伝わって散々な結果になったし、流石に皆に怒らて参った。

(直感:B)?」

 

 セイバーが走る足を止めたので私も隣に並ぶように止まる。と、目の前にピンクの人影が急に落ちてきた。いてててて、と声がしているので生きているのは分かる。というか、あの速さでの落下で生きている時点でサーヴァントだよな?これ。

 

 リボンとまとめたピンクの髪に白い大きなマント、軽めの武具に身を包んだ英霊……魔術師達が言っていた黒のライダーの外見特徴と一致する。

 

「やば……セイバー……ちょっとこの黒のライダーは君に任せちゃってもいい?」

「おう、最初からそのつもりだ。聞きてえこともあるしな。」

「お、ありがとう!それじゃあ後は頼んだ!」

 

 そそくさと黒のライダーから距離をとる。

 魔術を使用してアサシンらしく気配を消して地を駆けた。

 

 あれは、話さなくてもわかる。あれは、私の天敵だ。見た目ボロボロだったが、直接戦った場合五分五分の確率で勝利をもぎ取られる。確かに力では圧倒出来るだろう。倒すことは出来るかもしれない。だが勝ちにくい。三騎士のどれかのクラスで召喚されていたらまだマシだったかもしれないが、それでも善戦される。

 

 あれは最後の最後で運を掴み取るタイプの英雄だ。私が、俺が、どうしても得られなかったソレで己の道を切り開くタイプの英雄だ。

 

 だから分かる。無理なものは無理。致命的に巡り合わせが悪い。

 

「生きてる時はそんなこと無かったんだろうけど……サーヴァントになるってのも難儀だよなぁ。」

 

 サーヴァントは得てして、人々の伝承、イメージに引っ張られる特性があるらしく、私もどうやらその影響を強く受けているらしい。

 

 生前、神に背いて悪と断定された私は、神の名の元の正義と戦って死んだ。私からすれば完璧な正義などそんなものはないと思っているのだが、それでも悪として処された。

 

 正義に敗れて負けた、という伝承が私を縛る。

 

 最期にアイツに一矢くれてやったおかげで神の生まれの者には悪くない戦いを出来るのだろうが、善性の人間相手は妙に弱体化する。そんな者は庇護対象であって攻撃対象ではないと心のどこかで感じているのも作用しているのだろうが、分かっていても敵は敵。だったら自分ではなく仲間に任せてしまうしかない。

 

 だとしたら、私は何をするか、だ。

 

 ぶっちゃけあの空を飛んでるお庭が気にならないでもないが、一様、同盟相手と協力体制を敷いている赤の陣営のものだろうし、フラットも今いないことだから行っても意味が無い。

 

 戦場は皆対戦相手を見つけてるのか複数存在する。あれ、実は今黒の陣営の領地手薄だったりしないだろうか。

 

 令呪でいざとなったら呼び戻される可能性は高いがこっちはアサシンクラスだ。こと、逃走の速さに関しては他のクラスに負けは取らないだろう。マスターさっくりやって一騎位は落とそうか。

 

 

 せわしなく城内を駆け回る幾人もの黒の陣営の兵士達とすれ違う(・・・・)。私は気配遮断スキルは有していないが、こうやって魔術で誤魔化すことにより隠密行動を可能にしている。

 

 気配遮断は読んで字のごとく気配を絶って相手に存在を気づかせない方法だが、私は存在の意味を考えさせないようにしている。足元に地面があること、すぐそこに大気があることを人は常に認識していはしない。全部情報として考えていたらたちまちのうちに狂ってしまう。

 

 無意識下への潜伏は、こんなことも出来る。

 

「そこの君。君は今から何をしようとしてるの?」

「仲間達を自由にする。」

 

 ふと呼び止められた兵はたんたんと対応してまた走り去った。……自由?なにかに縛られでもしているのだろうか?……まあいいや。

 

 あの兵は無意識下でこの応答をした故に、この会話は記憶にも止めない。情報収集もできてしまう分気配遮断よりも便利、ではあるのだが、実はこれには欠点もある。

 

 

 

 対魔力の高い者には効きづらい。

 あとそもそも意識の無いモノには通じない。

 

「うわ、またゴーレムだ……。」

 

 時々現れるゴーレムからは自力で身を隠さなければならない。それになぜだか先程より明らかに兵の数が減り、ゴーレムとの遭遇率が上がっている。今は場内の敵のほとんどがゴーレムだ。

 

 人を束ねていた"俺"の部分の経験的にこの状況が飲み込めてきた。

 

「反乱でも起きたかな?そこまで行かなくて、離反、か。」

 

 

 戦いの最中に内側から瓦解することはよくあることだ。そうさせた事もある。

 

 

 内側から、瓦解……

 

 

 いいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生!大変です!先生!」

「ああ、状況は僕も分かっているとも。」

 

 黒の陣営のマスターの1人、ロシェ・フレイン・ユグドミレニアは扉を勢いよく開いて先生と慕うサーヴァント、アヴィケブロンに駆け寄った。

 

 アヴィケブロンは哲学者、詩人としても有名なカバラの術を扱う高名なカバリストで、彼の作ったゴーレムは城中の様子を彼自身に伝えていた。

 

 

「なぜ、城が燃えている(・・・・・)のだ……!」

「先生!荷物をまとめて外へ!もう限界です!」

「駄目だ!研究資料は全て持って出る!君も手伝ってくれ!誰だかわからないがやってくれたな……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハッハッハッハ──!!!!燃えろ!燃えろ燃えろ燃えろ!あ─!!!最ッ高に気持ちいいいい!!そんな水じゃ太刀打ち出来ないしさせないぞ!!!!どうにかしたいならヴィドラでも呼んでこい!!」

 

 城内に無数にいるゴーレムのほとんど全てに背後から魔術でゴーレムに仕掛けを施した甲斐があった。走り回っている時に城も至る所に燃やすくなるようにしていたので、連鎖的に燃え広がっているのだ。文字通り、城の内側から、爆発、瓦解させている。

 

 中のサーヴァントやマスターは流石に死んではいないと思うが、魔術師にとって魔術師の拠点、魔術工房を失うのは痛いだろう。

 

 加えて火事の時の逃げ道は限られている。

 そして、大体火に慌てて逃げてきた者は周りが見えない。

 

 ここから見える人間は、髪の長い陰湿そうな男と肥太った男、車椅子の女性にその女性の車椅子を押してきたと思われる眼鏡の青年。

 

「おじ様……城が……。」

「相手のサーヴァントの仕業だろう。姿を見せないキャスター辺りか。」

「いや、相手のキャスターはバーサーカーに幻覚を見せてきましたが、直接的に攻撃するタイプではなかったです。」

「何でもいいがこっちのあの小僧とキャスターは何処に行ったんだ!」

 

 ダメだな、今出てきた奴らは周りが見えるほどには冷静だ。令呪でサーヴァントを呼び戻せるくらいには落ち着いている。

 

「ハァハァ……1、2、3、……あ、あれ、18枚目が無い……無い……!ご、ごごめんなさい先生!」

「何やってるんだ!仕方ない……僕だけでも戻って取りに行く!」

 

 

 ──ーあぁ、ビンゴだ。

 あれだけ混乱していれば充分。

 

 矢を手に顕現させる。

 

(アグニ)よ。」

 

 この距離なら私でも外さない。

 先に火の灯った矢を黒弓につがえる。

 

 

「え」

 

 黒のキャスターのマスターと思わしき人間の腕に火矢が突き刺さる。周りの人間達が魔力を巡らせて助けようとするが、そこで私も間に合わさせるほど馬鹿じゃない。

 

燃え広がれ炎威の花(クシャナ・プシュパム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 後世の人間は、芸術は爆発だと称したという。

 爆発、最高。

 

 

『なかなかやりますね、お姉さん。』

「だろ?」




ハイテンション、爆☆破
なるほど、ここは本能寺だったのか…

黒のアサシン情報3
王様らしく興味のないものは考えない。ホムンクルスも単なる雑兵としてしか認識しない。全てを気にかけていたらいざと言う時に捨てるものが無くなって破裂してしまうから。


解禁宝具
燃え広がれ炎威の花(クシャナ・プシュパム)
ランク:D
種別:対軍宝具 
レンジ:50
最大補足:500人
黒のアサシンが触った場所、または触ったものに触れているものに、任意のタイミングで爆発させる。また、魔術的な防御機構はこの炎に触れた瞬間、炎の糧へとなるので、一層火は強くなる。

まさに放火のためにある宝具
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