もし黒のアサシンがジャックちゃんではなく、インド大戦不可避になったら(仮) 作:お空と北極
夏休みが味方だ!
なんで更新が途切れたか…それは人理修復だけじゃなくて騎空士も始めちゃったのと、勉強だね…。
戦場から離れた場所で遠視の魔術とお互いのサーヴァントとの念話でマスター達は様子を伺っていた。
「獅子劫さん、今お姉さんが黒のキャスターのマスターを暗殺、キャスターの消滅を確認しました。もうちょっとしたらそっちに行くー、って言ってます。」
「おう、そしたら、こっちじゃなくてあの空に浮かんでる島に現地集合と伝えておいてくれ。にしても、すげえな。ここからでもしっかり城が燃えるのが確認できるぜ………って、はぁああ?」
「どうしました?」
何かに気付いたらしい獅子劫が驚きの声をあげ舌打ちをした。
「何があったかわからんが黒のセイバーは消滅したっていうのは話したよな?」
「はい、それにさっき獅子劫さんがセイバーさんから聞いていた通り、黒のライダーも確かに死んだと言っていましたね。…え、まさか?」
「今セイバーは黒のセイバーと戦っている。」
「サーヴァントって復活するんですか?」
「これは聖杯大戦だ。なんだってありさ。流石にサーヴァントが蘇るとは思わなかったが…いや、これは蘇ったというより憑依に近いな。さっきまでいたホムンクルスの姿がないからホムンクルスに憑依している…のか?だが、やることは変わらねえな。」
「あれが、宝具…。」
獅子劫が念話でセイバーと話しながら令呪を1つ切ってしばらくすると遠くで赤と青の光の柱が立つのが見えた。膨大な魔力の奔流と神秘に指が震える。神秘の濃かった頃はこんな英雄が沢山いたのかと思うとフラットは溢れる想像が止まらなかった。
「もうちょっとしたらそっち行くって伝えておいて。」
『了解!…あ、セイバーさんの方に来なくていいそうです。空中庭園に直接合流だそうです。』
念話ほんと便利。生きてた頃にこれが全員使えてたらどんなに軍の間の連絡が劇的に変わったことか。
現在、私はなるべく他のサーヴァントと出くわさないように森の木々の上を移動している。昔師匠にこんな訓練を受けさせられたなぁとなんだか感慨深くなる。あのハゲ頭め、何回こっちが死にかけたと思ってんだこちとら腐っても王族だぞ。なんで木の下に人喰い魔獣配備しやがるんだ。
…雑念が入った。
集中して周囲の状況を再確認する。
今存在する戦場は2つ。
まず1つ目。宝具を今まさに打たんとしているのは赤のセイバーとそれに相対した(蘇った?)黒のセイバーで確かだ。
2つ目はここからそう遠くはない平原で行われている戦闘。かなりの1つ目の戦場よりも激しい魔力のぶつかり合いを感じる。赤側は連戦、黒側は憑依体だということを差し引いても最優のセイバー同士の戦いより激しい戦いだというのは感嘆するべきだろう。
おや、戦闘が中断された?
あ、放火したからかな?一騎はそっちに向かったかようだ。全速力で城へと向かうサーヴァントが木の上から確認できる。流石に燃えてる本拠地ほっぽり出して戦闘を続けるサーヴァントは少ないか。
残りの一騎の姿は…
それは唐突だった。
その姿を確認した瞬間、大地にポツリと立つ一騎の澄んだ蒼い目がこちらを捉えた。
「────……は。」
震えた。
全身が雷に打ち据えられたように歓喜に震えた。
ああ、なんてことだ!
なんてことだ!なんてことだ!
今だったら神に感謝してやってもいいくらいだ!
相変わらずだ!
私がどれだけ己を隠していようが容赦無く暴いてきたお前に、こんな児戯のような気配沈めの
「ごめんね、フラット!」
『うん、いいですよ。大切なことなんでしょう。』
「とても。」
たったそれだけで分かってくれる優秀な主人に感謝せねばならないな。
私は右手に巨大な棍棒を顕現させる。アサシンで現界した身としては使う予定のなかったものだが、あの子がいて全力を出さないというのはあり得ない。
懐かしい感触と確かな重みがじわりとクる。
久しぶり、私の棍棒。早速出番だ。
「お前が黒のアサシンだったとはな。」
「君が赤のランサーだったとはね。さァ…再開の挨拶と行こうか、私のヴァイカルナ。」
「
「
かつて神が人間に直接干渉していた時代に編み出された奥義がぶつかり打ち消し合う。一方はその黒い棍棒から、一方はその左目から光の奔流を生み出していた。
周囲の地は余波で砂埃を上げ、木は葉を多く撒き散らした。
このまま続ければ周囲が荒野になってしまうというところで、唐突に示し合わせたようにどちらも攻撃をやめる。
ふぅ…。
「カルナあぁあああ!!!!」
「…よし、こい。」
カルナの方へジャンプして飛び込むとカルナはされるがままに返事をしてくれた。鎧の棘が刺さらないような小さな気遣いも変わっていない。
「カルナカルナカルナ!!会えて嬉しいよカルナ!あれ、なんか見ないうちにまた秀麗さが上がった?はあぁぁぁぁぁ…夢を見てるみたいだ。あ、待って。嬉しすぎて会った時に言おうと思ってたこと全部吹っ飛んだ。」
夢じゃないよね?ここまで上げておいて落とすことはないよね?夢だったら多分悲しすぎて自害しそう。
首元の匂いを嗅いでみよう。いや、確かにカルナの匂いだ。間違いない。今私の目の前にカルナがいる。
「お前につられて奥義を打ってしまったオレの言えたことではないが、落ち着け
「これが、落ち着いていられる?馬鹿な!私は今なら聖杯ですら簡単に手に入れてみせられそうだ!マスター!私越しにこっち見てるでしょ?」
『見てます。お姉さんのお友達…ですか?』
「
『……会えて良かったですね。』
「うん。」
今の間は何だったのだろう。まあいっか、と思いつつカルナの鎧を足場にしてよじ登る。肩に足をかけて頭に手を置き、髪をクシャリとした。ああ、五感の全てが目の前の人物がカルナだと証明してくれる。
「よし、細かいことは移動中に話す!とにかく出発!目的地はあの空中庭園ね!」
「…お前は昔から突拍子もないことをやり始めては周りを振り回すような奴だったな。では行くか。」
「あれ、聞かないの?私は黒のアサシンだよ。なんで敵対しないんだ、とかさ。」
「お前は敵なら、オレを見つけたら挨拶なぞせずに全力で逃げるか本気で考えた搦手で来るだろうよ。それに、話してくれるのだろう?」
ああ、もう分かってくれているなコイツ。
盛大に緩んでしまった顔が見えない位置で良かったと、私は今までの経緯を話し始めるのだった。
「ねえ、さっきの見間違いじゃなきゃ奇跡的に焼け残ってた城の東側から聖杯があの島に吸い込まれてったんだけど、ひょっとして一歩間違えたら私聖杯焼いてた?」
「飛ぶぞ。しっかり掴まっておけ。」
「焼いてたんだね?!」
はっきり言わないカルナの頭をポコポコと殴りながら笑う。こんなやり取りがまた君と出来て本当に嬉しい。
今日はいい日だ。
心の底からそう思った。
思っていた。
「最悪…最っ悪だ。今日はカルナと会えたこと差し引いても最低最悪の日だ。」
1時間後、私はこう言っていた。
ここに私の勘違い解釈はなかった…いいね?
ギルガメッシュにブラフマれるのが悪いんや…