もし黒のアサシンがジャックちゃんではなく、インド大戦不可避になったら(仮) 作:お空と北極
古戦場の準備とラスベガスと課題のせいです
追記(6.16)
次の更新は月曜日になりますって言いましたが今週中に変更します。すみません
「事情は把握しています。彼を倒すまでは休戦を。」
旗持ちの少女、ルーラーが提案したのは一時的な休戦だった。
「いいでしょう。」
「了解した。あれはオレ達英雄全てにとっての敵だ。」
無言で頷く獣のサーヴァントに肯定の笑みを浮かべる神速のサーヴァント。俺も当然頷いた。
「勿論、もとより其のつもりだった!」
「お前のそういうところは変わらないな。」
カルナからそっと目線を逸らす。ルーラーは一瞬きょとん、としたが今考えるべき事ではないと思い直したのか手を前に突き出し令呪切った。
「ルーラー、ジャンヌ・ダルクの名においてこの場に集う全サーヴァントに令呪をもって命ずる。吸血鬼を、打倒せよ!!」
その言葉と共に身体中を構成する霊子が活性化したのを感じた。腕を軽く振って見ると心做しか軽い。それにそもそもの魔力の出力が段違いになっている。成程、令呪が確かに切り札と言われている訳だ。
「私と黒のアサシンと黒のアーチャーで援護する。ライダーとランサー。お前達は好きにするといい」
「はいよ姐さん」
「承知」
姐さんと呼ばれた獣のサーヴァントが先程より更に禍々しい魔力で弓を引き絞る。黒のアーチャーは獣のサーヴァントより一撃一撃が重くはないが、彼の精緻で的確に撃ち抜く確かな技術に舌を巻かされた。
「雑兵は俺が露払いしてこよう」
「任せましたよ」
ここは任せておいても良いと判断し弓をしまう。代わりに、押し上げられた魔力を使ってアレを出した。やはり
「はっはァ!いいねェ!上がってきた。相手がバケモノというのが残念だがカルナと肩を並べられただけでも価値のある闘いになり、そう、だ!!!!!」
腰を低くし振り被った棍棒でバケモノの眷属に成り果てた黒の兵士の頭を薙ぎ払う。頭を失った体がゆらゆらと床に倒れふす前に、次の眷属の頭をまた潰した。
その間にバケモノ本体と闘うカルナと赤のライダーもバケモノを追い詰めていく。そもそも速さにおいて有利を取れる赤のライダーと、太陽の子であるカルナが確かな魔力供給の元に負けるはずも無いのだ。
「詰みだ。未練を残すなバケモノ。消え去るが良い」
「大聖杯を手に入れるまで私は!絶対に!死なん!そう、聖杯さえあれば私はウガアァァギギギイイイイイ゛!!!」
「言っただろう。詰みだ。」
炎がバケモノを燃やし尽くす。バケモノに逃げられないよう、祝福された炎が絡みつき堕ちたその身を焦がしていく。棍棒についた血を軽く振り落としながらこれで終わりだろうか、と思い、いや、違う。
「っ…!」
「なんっ…だ?!」
「くっ…マスターか!?」
急に呻き膝を着いた赤のサーヴァント達の隙を見てボロボロになったバケモノが飛んでいく。当然、バケモノは鋭いルーラーの静止に聞き耳を持つ程お利口ではない。黒のアーチャーとルーラーとバケモノの後を追うべく走り出した。
「黒のアーチャー、黒のアサシン。先程、赤のサーヴァントが動きを止めた理由に心当たりは有りますか?」
「赤のマスターが共闘を拒んたのかとも思いましたがタイミングがおかしい。」
「あの赤のランサーが動きを止めたんだ。余程の事があったと考えて良いだろ──うよッと!」
角を曲がった瞬間に四方八方から魔力弾が飛び出してきた。後退し角の前まで戻ると静かになる。襲撃というよりもこれは
「自動防衛機構ですね。」
「怪物ではなく我々を狙っているのでしょうか。」
「ほう?」
怪物の味方をする庭園の防衛機構、突然赤のサーヴァントに膝を付かせバケモノを逃がした誰か。無関係では無いだろう。そう思った瞬間に飛び出していた。
「黒のアーチャー、援護を頼む。突っ切るぞ!」
「分かりました。」
唐突だったにも関わらず冷静に対処する黒のアーチャーの援護を信じ突き進む。カルナの闘いに茶々を入れやがった不粋極まりない下手人を殴り飛ばすまでこの怒りは収まらない。
ああ、俺は怒っているのか、と今更ながら気付く。
怒っていないはずがない。
別に手段自体に不満は無い。俺も卑怯な手はさんざん使ってきた。寧ろ策謀策略は
カルナは許すだろう。それもまた結果だと受け入れる。
しかし、駄目だ。カルナにはカルナの望んでいた純粋な闘いをさせてあげたい。家族で友達で仲間で王だったくせに
彼の生涯を掛けたあの闘いですら──
──花の香りがした。
──甘くそれでいて心を引っ掻く花の香り
驚きに目を見開くルーラーからでは無い。
「そんな…16人目のサーヴァントなんて…」
既に浄化され灰となったバケモノだったものを踏みながら此方へ近付く神父からでも無い。
「そんなに驚かれると少し面映ゆいですね。それに私は16人目ではありません。私は1人目のサーヴァント。そしてあなたと同じルーラーだ。」
神父の後ろに佇む蒼色を
腹が立つ程憎んだ
最後の闘いで全てを掻き乱し滅茶苦茶にしたアイツを知っている。
此奴のせいで因果は捻じ曲げられ死に方を違えた者の何と多い事か!
ヤーダヴァ族の王、ヴァースデーヴァ。
「おやおや、どうしましたか。黒のアサシン。まるで仇を見るかのような目をしていますよ。恐ろしい目だ。悪魔の目だ。瓶詰め王子は相変わらずですね。」
「クゥゥウウリシュナァァアアアアアアア!!!!」
「猛るな、黒のアサシン。」
踏み出した脚に鎖が巻き付き地面に縫い止められる。吸血鬼が倒れた今令呪の後押しは消えたが、
「邪魔を、するなァァァァアアア!!!!」
「我の庭園で暴れて貰っては困る。…キャスター。早くあの蛮族を大人しくさせぬか。」
次々と現れる鎖が肌を削り巻きついてくるのを引きちぎりながら進む。痛みは感じない。そんな事よりも早くアレを殺さなければ。殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
「仕方ないですね…私がいる限りこうでしょうし少し離れていますよ。また会いましょうね、黒のアサシン。」
霊体化して消えていくクリシュナの気配に無性に焦りで胸が焦がれた。
「待て、待て待て待て!クリシュナ!逃げるな!!!」
またか。
またみすみす逃してアレの天運に皆巻き込まれて死んでいくのか。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。死ね。嫌だ。殺す。ばらばらに。私が、かいたいする。にくい。ゆるさない。わたしは、どうして、
《/font》
「ふん、ようやく静かになったな。」
「…アッシリアの女帝、最初の毒殺者。赤のアサシンはあなたでしたか、セミラミス。」
「如何にも。」
「天草四郎時貞とクリシュナ、その2人と共犯関係と考えてもいいのでしょうか?それともあなたの企みですか?」
「彼奴は否定するかもしれんが、クリシュナとは確かにそう言えるかもしれぬな。だが、我がこのマスターを誑かし悪の道へと引き込んだとでも?ふふ、外れだルーラー。我はサーヴァント。マスターに従うのが道理であろう。」
──まさかクリシュナが出てくるとは予想外にも程がある。
──クリシュナもそうだが、赤側はきな臭い。
──天草四郎時貞はマスターを赤側のマスターを掌握したのか。
鎖に絡み取られ気を失った振りを続けながら
『聞こえますか!』
(フラットか!)
『あ、やっと繋がった!良かったー!無事ですか?流石に英霊の防衛機構をすり抜けるのは大変だったんですよー。それに急にごっそり魔力持ってかれるから何かあったのかと焦っちゃって。』
(良くやった。帰ったら沢山褒めてやろう。因みに無事ではないぞ。完全に拘束されて正直参っている。まあ直ぐには殺されないだろうが。)
赤が内部分裂を起こしているらしくもう少し時間がある。強引な手段に反発を覚えたライダーとバーサーカーがアサシンと天草四郎時貞に襲いかかっているが、…この場で1番冷静な戦士がそれを制した。カルナはもう少し俺を心配してもいいと思うのだが。どうせ彼には意識がある事がバレているのだろうけど。ああ、それにクリシュナの事も黙っていたのは問い正したい。
…聞かれてないからとか言わないだろうな。
『どうしようも無くなったら令呪を切りますが、もう少しでセイバーさんが到着するんで耐えて貰えますか?』
(了解した。獅子劫に宜しく頼む。)
『はーい。』
「ほれ、起きよ」
丁度念話が終わった時、髪を掴まれ顔を上げさせられた。セミラミスの鋭い視線が突き刺さる。
「随分と乱暴な扱いをしてくれるじゃないか、女帝よ。お陰で夢から醒めてしまった。」
「お主と雑談に興じる気は毛頭ない。この場で選べ。このまま二度目の死を迎えるか、我がマスターと契約を結び直すか。」
「…そうだな。俺はこんな所で死ぬ気は無い。」
「だが、俺が知る限り、
「ならば死ね」
セミラミスの頭上に浮かび上がった魔術陣から鎖が急所に届く前に、口の中を切って貯めていた血を全て吐き出した。
「
セミラミスの庭園は宝具で対魔力は普通の建物とは段違いだが、直接体の一部を媒介にすれば燃えないことも無い。鎖を焼ききり目くらましの炎の壁を作ることくらいなら可能だろうと踏んでの事だった。
博打は昔から強い方だが、今回も乗り切ったらしい。
揺らめく炎の向こうで憤怒の形相をセミラミスが浮かべていた。
「おのれ、我が庭園に傷を付けたな!」
「残念です。黒のアーチャー共々ルーラーも貴方も滅んで頂きます。」
此方へ伸びてきた鎖を腰から引き抜いた剣で弾き飛ばす。天草四郎時貞の投げた礼装は黒のアーチャーが撃ち落としてくれたお陰で合流が出来た。
礼を言う間も与えられず天井からの爆撃を避ける。避けた先にまた鎖が現れるがそれはもう、
「見飽きたなァ!」
手で鎖を掴み取り剣を投擲した。セミラミスの目の前に鱗の様な防壁が光り剣は防がれるが、それももう見ている。
本命はこっちだ。
「なっ、後ろか!」
剣に気を取られている間に意識逸らしの
「…本当に、お前が敵に回ると厄介だ。」
「それはこちらの台詞だ。」
──カルナの槍を掻い潜りながら女帝に一撃入れるのは難しいだろう。剣と槍を打ち合いながら絶好のチャンスを逃したことを悟る。
だが十分だ。
「狙っていたな?ドゥルヨーダナ。」
「知っての通り、俺はいつも仲間に生かされる王だからな。」
時間稼ぎは慣れている、と笑うとカルナは槍を引いた。同時に剣を仕舞うと地面を蹴り距離を取る。
一筋の赤雷がすぐ横の壁を切り裂き、風圧で乱れた髪を掻き上げた。
天草四郎時貞は現れた金髪の溌剌とした少女剣士を
「成程、セイバーはあなたでしたか。叛逆の騎士モードレッド。」
「気安くオレの名前を呼んでるんじゃねぇぞ!!」
咆哮とともに隣で膨れ上がる魔力に肌がざわめいた。最優のクラスは伊達じゃない。やはり己もセイバーで召喚されたかったと思ってしまうくらいには妬ましくも思う。
「丁度良い所に来たな、セイバー。」
「礼はいらねぇよ。その代わり貸一つ、だ!」
「裏切るかセイバー!」
「ばーか、オレのマスターに手出そうとした時点で敵なんだよカメムシ女ァ!」
「おい、セイバー行くぞ。」
踏み出そうとするセイバーの首元を引っ張って止める。ちっ、と派手な舌打ちをするが思ったより素直に言うことを聞いたあたり獅子劫からも指示があったのかもしれない。
要塞庭園に開けられた大きな穴から飛び降りる直前にふと後ろを振り返る。ここで仕留めるつもりでいたのかセミラミスが大層憎々しげに睨んでいた。
「あっはっはははは!」
「急に笑い出して気持ち悪ぃな…。」
「カルナも本気じゃない。クリシュナも引っ込めた。それから大切な
「貴方、怒ってます?」
すぐ真横を現在進行形で飛び降りる聖女が面白い顔をしていた。
「怒ってはないぞ。ただ次会ったらクリシュナ共々叩き潰す。」
数日後焦土になるトゥリファス