「帰ってきたな」
そう言って俺は懐かしい景色を見渡す。
恐らく一年位は見てなかったであろう景色だ。
とは言え、到着する時間軸を弄れるから、この世界に住む人は気づかないだろうけど。
「久々に家に帰るかぁ」
と言ったところで、
「あれ? 悠哉か?」
「ん? よお、八、久しぶりだな」
「いや、昨日会ったでしょ俺たち」
「そうだっけか? すまんな、また色んな所を旅してきたからな」
「またか、今度はどこに行ってたんだ? 戦争地帯か?」
「いや、剣と魔法の世界さ」
「なんだそのCMに出てきそうな安っぽいキャッチコピーは」
こいつは 比企谷八幡 俺の幼なじみみたいな奴で小さい頃から一緒に過ごしてきた。
俺の秘密を一部だけ知っているまあまあ良いやつだ俺から見るとだけど。
「そんなことより、何でお前が外に出てるんだ? 昔ならいざ知らず、今はニートになったんじゃないのか?」
「いや、学生でニートって言葉的におかしいでしょ。 そしたらおれは勉強してないことになる」
「勉強してたのか…」
「しないと両親に怒られる気がする。多分…」
「お前の両親は妹ちゃんにご執心だもんなぁ」
「全くだよ。んで、お前は今はいつなのかしっかり認識してるか? 嫌だよ俺、前みたいに五年前の事を唐突に語られたら」
「大丈夫だ。今は高二の四月だろ?」
「そうだ。始業式から10日経ってる」
「俺は何日居なかった事に成ってる?」
「安心しろ、きっちり1日だよ」
「良かった、ミスは無いみたいだな」
俺たちは歩き慣れた道を歩く
春だからか吹き抜ける風が心地良い
俺たちは他愛もない話をしながら家路に着いていた
「じゃあな、また明日学校でな」
「ああ、そうだな ちょっと学校が憂鬱だがな」
「ははっ、言ってやるな。学校はお前を待ってるよ」
「それが嫌だって言ってんの」
翌日はアイツは妹を送っていくと言って自転車で去って行った
俺はまだ桜が残る道を歩く
こう言うのを[情緒的]と言うのだろうか
そんなことを考えながら歩いていた
結果、遅刻してしまい、我らが国語教師に鉄拳制裁を食らった
アイツ、終始うつ向いてたけど、絶対笑ってたな。後でトマトでもアイツの靴に入れといてやろう。
「今日の国語の宿題は無理が有ると思うのだが」
「そうか? あんまり考える事は無いだろ」
今日の宿題は[高校生活を振り返って]
何とも宿題に困ったからこれ出しましょう的な感じの宿題だった。
まあ、ほぼ書く事は決まってるから良いけどね
「そもそも、意図が分からない。教師たちは俺の灰色の高校生活を見て何を評価したいのか」
「別にしっかり見る訳じゃ無いだろ。出せば良いんですよ出せば」
「お前も存外適当だな」
「まあ、そんな時間を取られるような事じゃない。当たり障りの無いこと書いときゃ先公は
納得するよ」
「そうだな、適当に書くか」
でも、俺達は知るよしも無かったんだ
あの国語教師はそんな甘い人じゃ無かったんだって。
今更ながら、あれは「篩」だったんじゃないかと思う
正直に書くか、適当に書くかっていう、いわゆる「本気度」ってやつを見切るための