夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した   作:ルシエド

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 一人用RPGとパーティーゲームが棚に並んでいる。

 世界がほとんど滅びても、ゲームを買おうとする人と、ゲームを売る人は居なくならない。

 千景にはそれが、なんだか嬉しい。

 迷った末に、PTゲームを千景は選んだ。

 ゲームを買って店を出る。

 

「……あ」

 

 そこで千景は、フードを深く被り、空を絶対に視界に入れないようにしている人を見た。

 "空を絶対に見ないようにしている"人の動きは独特で、分かりやすい。

 だからこそひと目で分かる。

 

(天恐……)

 

 『天空恐怖症候群』。

 略して天恐。

 空より襲来したバーテックスへの恐怖で人々が発症した、世界で最も新しい精神病だ。

 そして人によっては、世界で最も恐ろしい精神病であるとも言う。

 症状は大雑把に分けて四段階。

 

 ステージ1。

 最も症状が軽く、空を見上げることを病的に恐れ、外出が困難になる。

 ステージ2。

 バーテックス襲来時の記憶のフラッシュバック症状が起こり、日常生活に支障をきたす。

 ステージ3。

 幻覚やフラッシュバックが頻発し、常時投薬は必須となり、生活も労働も不可能となる。

 ステージ4。

 自我は崩壊し、記憶は混濁し、発狂に至る。

 

 その症状の重さと発症率が尋常ではないため、これは恐怖が引き起こす精神病ではなく、バーテックスから発される未知の毒素か電波が元凶だ、と主張する者もいるほどだ。

 バーテックスがばら撒いた、人の心を殺す病。

 

―――バーテックスは、人間が空を不敬に見上げることさえ許してないのかもな

 

 竜胆が以前そう言っていたことを、千景は思い出す。

 上を向けなくなった人間は、下を向いて生きていくしかない。

 俯いて生きていくことを強制する病。

 千景の母も……この病気に罹患している。

 

「……」

 

 千景の母は、千景と夫を捨てて若い男と逃げ、遠くに行って、そこでバーテックスの襲来を受けてしまったらしい。

 一緒に逃げた男は死に、千景の母の心は壊れた。

 笑える話と言うべきか?

 皮肉な話と言うべきか?

 千景の母がまともに生き残る可能性は、千景を見捨た時点で消え失せたのだ。

 ティガダークに守ってもらうか、勇者千景に守ってもらう以外に、それは無かったのだから。

 

 千景の母は既にステージ3。

 ここまで来ると自宅療養すら困難で、千景の母は今や会話も難しい入院患者だ。

 そしてステージ3になった者は、ほどなくステージ4になるという。

 そう、つまり。

 千景の母が発狂するのは、もはや時間の問題だということだ。

 

「……」

 

 千景はかつて母を愛した。その後は憎んだ。今は憐れんでいる。

 今の千景の母は、誰にも愛されていない。

 若い男と逃げた時から、親戚一同全てに見限られている。

 夫にも愛されていない。

 娘にも愛されていない。

 誰にも愛されず、病院で時折奇声を上げて苦しみ、やがて来る発狂死を待つだけの母を見て……憐れみを感じたのを、千景は覚えている。

 

 空を見上げられない、その名もなき通行人を見ても、千景は同様の憐れみを覚えた。

 名も知らないその辺の通行人に対する憐れみと、母に対する憐れみが何も変わらないということを実感し、千景は実母ですら自分の中ではどうでも良くなり始めているということを、自分の中で再確認する。

 

 彼らが恐れる、空を見上げてみる。

 千景は何も思わなかった。

 強いて言うなら、"人のために神樹はこんな綺麗な空を頑張ってわざわざ作ったのかもしれない"と思ったくらいか。

 

 空を見上げることの、何が怖いのか?

 千景にとっての怖いものは、空よりも地に多かった。

 ふと、再会してすぐの頃の竜胆の言動を思い出す。

 

―――僕に触ろうとするな。僕に近付くな。僕に関わるな。叩き潰されても知らないぞ

 

―――僕が巨人に変身した後……僕の周りに極力近付くな。近寄れば、殺す

 

 竜胆は、自分の周り、『自分の足元』に人が寄るのを、病的に嫌がっていた。

 

(今なら分かる。

 彼は、善い人が自分の周りに寄るのが怖くて……

 自分の足元に人がいるのが怖かった。下を見るのが、怖かったんだ)

 

 小さな人間は上を見上げることを恐れ。

 大きな巨人は下を見下ろすことを恐れた。

 小さな人は殺されることを恐れ、大きな人は人を殺してしまうことを恐れた。

 

 あまりにも、対照的だった。

 

(……あれ)

 

 思考の最中、千景は気付く。

 

(私は……こんなことを考えるような人間だったかしら……?)

 

 竜胆を救い、助けになりたいという気持ち。

 母をもはや憎まず、憐れむ気持ち。

 名も知らぬ天恐の通行人を見ただけで、かわいそうだと思う気持ち。

 昔の自分にはなかった気持ちを次々自分が抱く……そこに、千景は違和感を覚えた。

 

 竜胆ほど強くない千景には、そんな余裕はなかったはずなのに。

 千景はあの母を憎んでいたから、母にそんな気持ちを抱くはずがなかったのに。

 あの通行人ですら、天恐であっても、千景ほど不幸な人生を送っているはずがないのに。

 その憐れみは、千景自身にすら不可解なもの。

 

 だが、すぐに理由に気付く。

 

(そっか)

 

 理由は、とても明白だ。

 

(私には今……幸福があるから……)

 

 昔の千景は、誰かに優しくする余裕が無いほどに不幸だった。

 誰も憐れまなかった。

 他人を助ける余裕なんてなかった。

 いつの時代も、どんな人間もそうだ。

 どん底に落ちた人間は、他人を憐れむ余裕を失っていく。

 かつての千景はそうだった。

 

 この憐憫が、証明する。

 かつて憎んだ母を"憐れだ"と思えるこの余裕が、この自然な思考が、この幸福格差の実感が……千景が今、幸福であるということの、証明なのだ。

 

 千景は自然に憐れみを覚えた自分自身に、それを教えられた。

 今の千景は恵まれている。

 だから、"恵まれていない"と千景が思う人間に対し、かつてと違う感情を覚える。

 ボブが死んでも、まだ。

 恐ろしい敵が現れても、まだ。

 彼女は幸福なのだ。

 

(頑張って……守らないと)

 

 地獄の底でも優しさを忘れない、過剰に強い心の竜胆。

 地獄の中では失われ幸福の中では蘇る、当たり前の優しさを持つ、ごく普通の女の子な千景。

 その幸福が失われた時、千景は赤の他人を憐れむような自分も喪失することだろう。

 

 千景はまだ、幸福だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鍛冶神・一目連の力を使ったアナスタシアの助力により、生まれ変わった旋刃盤が戻ってきた。

 『再鍛神話』。

 神話には時折、壊れた武器を直すというエピソードが登場する。

 その手の神話をなぞるように、球子の旋刃盤も再誕を遂げていた。

 

「勇者タマ、ふっかーつ!」

 

「わー」「わー」

 

 ぱちぱちぱち、と勇者教育のための教室で、竜胆と杏が拍手する。

 教室の後ろでケンが教室を掃除していた。

 

 一度壊れた旋刃盤だが、前より少し大きくなって、新品同然の輝きを宿して戻って来た。

 大きくなった分、旋刃盤の重量も増したが、球子がこの旋刃盤を最初に手にした時から随分時間も経っている。

 球子の筋力量の上昇を鑑みれば問題はないだろう。

 旋刃盤が大きく重くなった分、防御でカバーできる範囲も、武器の重さによる攻撃力もアップした。これは事実上の、球子のパワーアップでもある。

 

 剣のように軽快に振る武器でもないので、重量が増したデメリットもあまり目立たないのだ。

 

「どーだっ、先輩! 前より硬くなったって話だから、これでゼットともマシに戦えるぞ!」

 

「タマちゃんパワーアップか。心強いな」

 

 ゼットのパンチは一発一発がウルトラマンを即死させかねないもの。

 ただのパンチですら威力は光線級だ。

 一兆度は防げないとしても、パンチくらいは防げる防具があるとティガ的にはありがたい。

 前回の戦いでは、ゼットのパンチ一発で、旋刃盤と腕がセットで折損されてしまったから。

 

 あれは竜胆にとっても球子にとっても嫌な記憶だ。

 借りた武器を壊した竜胆にとっても、竜胆を守るために自慢の武器を渡した球子にとっても。

 ……この盾に精霊を憑けて、ゼットの攻撃が防げるか。やってみないと分からない。

 

「タマちゃんが戻って、これで勇者全員か」

 

「叶うなら、三ノ輪さんと鷲尾さん……

 ガイアとアグルも戻って来てくれたなら、万全な布陣が敷けると思うんですが」

 

「あんずは怖がりだな。

 タマ達の力だけで切り抜けてやる、ってくらいに思わなきゃ駄目だろ!

 だいじょーぶだいじょーぶ! あんずは、無敵になったタマが守ってやる!」

 

「タマっち先輩……」

 

「無敵とは大きく出たな、タマちゃん」

 

「手に取ってみると分かるんだ。今までより、ずっと武器の力の流れが良くなってる」

 

 どうやら、武器の強化は、球子に希望と自信をくれたらしい。

 

「今の無敵のタマが負けたら、何でも言うこと聞いてやるぞ!」

 

 杏の目がきらりと光った。

 

 

 

 

 

 翌日、ケンと一緒に丸亀城の掃除に勤しんでいた竜胆が見たのは、学生服で上機嫌な微笑みを浮かべる杏と、杏に連れられる球子の姿。

 杏に引っ張られ、真っ赤な顔で連行される球子の姿。

 やたら可愛らしく女の子っぽい服を着せられた、球子の姿だった。

 竜胆は目をしばたかせ、ケンは即座にスマホで撮影して画像を保存した。

 

「負けたのか、タマちゃん」

 

「……」

 

「勝ったのか、伊予島」

 

「はいっ」

 

 まあなんかこうなると思ってた、と竜胆は納得した風に頷く。

 昨日の球子と杏を見ていて、なんとなくこうなるかもと思っていたようだ。

 球子と杏に対する理解が地味に深まってきたということなのかもしれない。

 ただ、球子の可愛い服は完全に予想外だった。

 

「何の勝負で負けたんだ、タマちゃん」

 

「聞くなぁ……!」

 

「カッワイイー、イイヨイイヨー」

 

「うるせー!」

 

 ヘーイッとウキウキのケンが球子に絡んでいる間に、竜胆と杏が朝の挨拶を交わしていた。

 

「しかし、朝から予想外のものを見たな……あの服は伊予島のチョイス?」

 

「はい。ちょっと別件で、タマっち先輩と勝負しまして。

 私が勝ったので、そのついでに先に取っていた言質を使って、言うこと聞いてもらいました」

 

「別件で引っ張るとか伊予島お前凄腕警察かよ……流石の知将か……」

 

「でも可愛いでしょう?」

 

「まあ、そりゃな」

 

「……っ」

 

 竜胆と杏の会話にピクッと球子が反応したりしていた。

 

「はぁ、タマっち先輩可愛い……」

 

「伊予島は面白い奴だな……」

 

「ええっ!?」

 

「ん、んんっ? なんで今の俺の台詞で驚く!?」

 

「わ……私は他の人ほど変な人じゃないですよ……?」

 

「えー、ちょっと変なくらいが面白くて魅力的だと思うんだけどな人間は……」

 

 仲の良い友達を着せ替えして楽しむ、女子の感覚。

 これは男子には一生分からないだろう。

 竜胆にはそれが面白い個性に見えたし、杏はそこがちょっと変に見られたと思って思いっきりびっくりしていた。

 球子を抱えたケンが爆笑する。

 

「ハッハッハ、カンゼンニ、クセノナイニンゲントカ、マネキンシカイネーカラ」

 

「ケン……!」

 

「いやあ伊予島は比較的クセのない勇者だと思ってる……思ってたぞ」

 

「待って御守さん、何故そこを過去形に言い換えたんですか?」

 

 球子をネタにすると会話が進むというのは、竜胆と杏の関係らしいと言えばらしい。

 ある意味、この二人は球子も入れた三人で完成する関係なのかもしれない。

 

「伊予島は服選びに関しては可愛い趣味なんだな」

 

「変ですか?」

 

「いや、良いんじゃないか? 俺は悪くないと思う」

 

「流石に私自身の私服だともうちょっと抑えめのが多いですけどね。

 その……あんまりヒラヒラしすぎだったり、可愛すぎだったりするのはあんまり」

 

「すげーな女子。自分が着られない服を他人には着せるのか……異文化だぜ」

 

「あ、いや、そうじゃなくて。分かりやすく言うとタマっち先輩はリカちゃん人形なんです」

 

「リカちゃん人形」

 

「人形に着せる服は地味なのばかりだと嫌ですよね。

 ちょっと派手なくらいの方が楽しいです。

 でもお人形さんの服は自分で着るのはちょっと……って思うんです。

 なのでタマっち先輩に着せた服も、うんと可愛いのにしてみました」

 

「……その辺の女子の感覚は、俺にはピンとこないなぁ」

 

「ですよね。御守さんは私より、タマっち先輩との方が話が合いそうですから」

 

 ふふっ、と杏が微笑む。

 うおーっタマを人形扱いすんなーっ、と叫ぶ球子をケンが抱っこして、父が娘にそうするように振り回している。

 

「おっはよー!」

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

 友奈、若葉、ひなたも教室にやって来た。

 

 球子の服に、まず真っ先にひなたが反応する。

 

「おや……珍しい格好ですね」

 

 友奈が。

 

「タマちゃんが女装してる!」

 

 若葉が。

 

「球子は髪を下ろすと本物の女の子のようだな……」

 

 散々である。

 

「おーまーえーらーっ!」

 

 流石に球子も怒った。

 

「タマちゃんストップ! 走んな! その服で走るとパンツ見える!」

 

「!?!?!? わっ馬鹿見んな先輩っ!」

 

「俺はもう二度と女子のパンツを見ないと誓った、大丈夫だ」

 

「え、ちょっと待った何があったらそんな誓い立てることに?」

 

「ナンデダロネー」

 

 なんでだろうね。

 

 千景も来ると、いつものメンツが勢揃いだ。

 

「おはようちーちゃん。元気?」

 

「……おはよう、竜胆くん。元気よ」

 

「おっはよーぐんちゃん!」

 

「おはよう、高嶋さん。……これはいったい何の騒ぎ?」

 

「タマちゃんが女装して来たんだよ!」

 

「女装……女性なのに……?」

 

「シカリ、シカリ」

 

「友奈ぁ! お前なぁー!」

「わー! タマちゃん許して!」

 

 球子が友奈に掴みかかろうとして、杏と竜胆が話していて。

 

「そういえば、御守さんは、若葉さんや友奈さんみたいな反応しませんでしたね。意外です」

 

「いや、普段も可愛いスカート履いてただろ。勇者衣装も結構可愛いやつだし……」

 

 杏と竜胆の会話を耳にしてしまった球子が転び、友奈を掴もうとした手がスカった。

 

「普段から少年らしいとも思ってたが、かといって少女らしくないわけでもなく。

 だから若葉や友奈みたいな反応はできないな。いやだって普通に女の子だしさタマちゃん」

 

「普段のタマっち先輩は?」

 

「可愛い」

 

「今のタマっち先輩は?」

 

「凄く可愛い」

 

「おお……!」

 

「いや服変えしたのに褒め言葉の程度を変えないのは失礼だと思うぞ、普通に。

 普段着でも可愛い、可愛い服着たらもっと可愛い、って事実だけ言っておけばいいだろ」

 

 なあ、と球子の方を向いた竜胆の視線から体を隠すように、球子は旋刃盤を構えた。

 

「じっと見んな、す、スケベっ!」

 

「なんでだよ!」

 

「こっち来んなっ!」

 

 消しゴムをちぎって投げて竜胆の接近を防ぎ、距離を取らんとする球子。

 顔を旋刃盤の裏に隠して、今の服を着た自分を縮こまらせて、教卓の裏に隠れていった。

 球子によるちぎられた消しゴム投擲弾幕はまだ続く。

 ケンは「これ後で掃除するの自分だろうなあ」と思ったが、「見てて楽しいからまあいいや」と思い、「ヤレヤレタマコー」と煽った。

 ここまでされる筋合いねえぞ、と竜胆はちょっとだけムキになった。

 

「やめんか!

 お前はファッションショーで特定の人に得点出した審査員にも攻撃するのか!

 美人コンテストで誰か一人選んで票投げた人にも攻撃するのか!

 褒め言葉に罪は無いだろ!

 お前だっておもちゃ屋で可愛いぬいぐるみ見つけたら素直に可愛いとか言うだろ!」

 

「ぬいぐるみに対する可愛いと人間に対する可愛いは違うだろぉー!」

 

 友奈と若葉はすっかり楽しげな観戦ムード。

 

「リュウくんは頭が悪いなぁ……」

 

「この友奈の台詞が全く悪口に聞こえないのが凄まじいな……」

 

 ばちん、と竜胆の額に消しゴムのかけらが勢いよく当たった。

 

「む、あの技は!」

 

「シッテイルノカ、ヒナタ!」

 

「指の爪に消しゴムの欠片を乗せ、デコピンの要領で弾き出す高威力技!

 手で投げるよりも遥かに高威力、遥かに高速! ケンさんが教えてた技でしたよね」

 

「バレタカ」

 

 ハッハッハと笑うケン。

 

「竜胆君」

 

「助かる、ちーちゃん!」

 

 一方その頃、竜胆は千景より授けられし下敷きシールドで消しゴムを打ち返していた。

 

「違う、違うんだ。

 誤解があるようだけど別に驚き0だったわけじゃなくて。

 ただ、女の子は着替えたら凄く可愛くなるってのは知ってたから。

 つかそこのお前ら、可愛くなった可愛くなったって反応してたけどな。

 服だけでブサイクが突然可愛くなるわけでもないだろ。

 顔のパーツなんて一切変更利かないんだから、つまりそりゃ普段から可愛―――」

 

「タマ・スペシウム光線ッー!」

 

 大きめの消しゴムの欠片が竜胆の額を撃ち抜く。少年はまたちょっとムキになった。

 

「あ、分かった。

 お前ら女子だからだな。

 女子から見ればタマちゃんは少年っぽく見える。

 男子から見ればタマちゃんは可愛い女子に見える。

 だから可愛いと言う頻度に差が出る。

 ゆえに俺が可愛いとか言ってるのが目立つ。それだけの話だな、これにて一件……」

 

「私から見てもタマっち先輩は可愛いですよ?」

 

「……あれっ」

 

 杏のツッコミに首を傾げる竜胆。

 

「思うに、男性が女性を"可愛い"と言うのが目立つと思うんです、御守さん」

 

「むっ……じゃあ伊予島はどうすればいいと思うんだ?」

 

「タマっち先輩を可愛いと言う回数に上限を設ける、とか……

 そうすればタマっち先輩の大暴れの回数を抑えられる、とか?」

 

「上限数は何をもって定義するんだ?」

 

「ううん、難しいですね……御守さんはどう思いますか?」

 

「そもそも『可愛い』とはなんだ。

 ここが決まらなきゃ妥当な言う回数も決まらないぞ」

 

「それは……小さくて愛らしいとか……でも、確かに一言で定義はできませんね」

 

「そもそも可愛いって文字で定義しちゃ意味なくないか?

 『可愛い』って思った瞬間の心の動き、それが可愛い。

 言うなれば、本来文字じゃない心の感覚と、漏れた心の声こそが『可愛い』だろ」

 

「それは……確かに。

 『可愛い』を完全に正確に言葉や文字で定義するのは難しい。

 御守さんの言う通りです。

 心に湧き上がる衝動こそが『タマっち先輩可愛い』なら……回数制限はその時点で無粋?」

 

「そうですね、御守さんは可愛いですね。若葉ちゃんのように」

「にゅっと入ってきて男に可愛いとか言ってくんじゃないぞひーちゃん」

 

「私からすると、女の子は小さくないと可愛くない、っていうのがあるんですけど……

 だからタマっち先輩は文句なしに可愛いんじゃないかなって思うんです」

 

「身長で可愛さを決めるのか?

 タマちゃんは可愛いとして、それなら伊予島だって俺から見ればちっこくて可愛いぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「体が大きい女性だって可愛いことはあるはず。

 逆にゲスいやつは体が小さくても可愛いとは思えなかったりすることもあるだろう。

 つまり……可愛いとは、生き様でもあるのではないか。容姿だけじゃなくてさ」

 

「生き様……タマっち先輩の可愛さは、生き様……」

 

「タマちゃんは生き様と容姿が可愛いんだな。

 そして今回伊予島が可愛い服を着せた。

 やるじゃないか伊予島。お前、可愛いしかっこいいし偉いぜ」

 

「ありがとうございますっ!」

 

 知将伊予島と実はあんまり深いことを考えてない武将竜胆の心が通じ合った一幕だった。

 球子は二人の会話に絶え間なく羞恥心のボディーブローを食らっており、会話を止めようとしていたが、友奈と若葉が楽しげにそれを止めていた。

 

「うおおおっ! 離せ若葉、友奈!

 あんずと竜胆先輩を止めさせろ! これはなんの拷問だ!」

 

「まあまあ」

「落ち着け落ち着け」

 

「くっそーっバカだけど頭の回りが変に速い先輩とあんず絡めたらすぐこれだ!」

 

「おい俺はタマちゃんと比べりゃまだバカじゃねーぞ! 今ならそう言えるぞ!」

 

「んだとっー!」

 

 ワイワイガヤガヤと騒がしい少年少女の輪。

 その中に入らずゲームを始めようとする千景に、ケンが声をかける。

 

「チカゲモ、キカザッタライイノニ」

 

 そしてケンの声かけに友奈が乗った。

 

「そうだよそうだよ! リュウくんに見せたりしてさ!」

 

 ふぅ、と一息吐く千景。

 

「分かってないわね、高嶋さん」

 

(あ、これぐんちゃんの自己評価低い部分が出て来るやつだ)

 

「彼からすれば、私なんて分身するハムスターよ」

 

「分身するハムスター!?」

 

「分身するハムスターに服を着せても、それは服を着て分身するハムスターでしかないわ」

 

「そ、そんなことないよねリュウくん?」

 

「ああ、もちろん……」

 

 竜胆は否定しようとして、悩んで、言葉に詰まって、俯いた。

 

「……正直言うわ。ごめん、ちょっと否定できない。

 なんでちーちゃんそんな俺の内心的確に言い当てられんの……?」

 

「リュウくーん!?」

 

「ちーちゃんを女の子として見てないわけじゃないけど……

 分身するハムスターって部分がどうにも否定できない……」

 

「否定してよっ!」

 

「優しくしたくなる。

 大切にしたくなる。

 なんか可愛い。

 懸命に走ってるの見ると応援したくなる。

 幸せに天寿を全うしてほしいと願いながら可愛がりたくなる。

 俺にとってハムスターってのは、きっとそういうもんなんだよな……」

 

「……どうしよう、私もぐんちゃんを分身するハムスターみたいに思ってる気がしてきた」

 

「おいコラ友奈」

 

 女の子として見ていないわけではないが。

 友達として見ていないわけではないが。

 分身するハムスターとか言われると、そうも見えてしまう。

 ふっ、と千景は薄く微笑んだ。

 

「いいのよ、高嶋さん……そう思ってくれても」

 

「ぐんちゃん……よーしよしよし! 撫でてあげるよっ」

 

「んっ」

 

 ハムスターを撫でるように千景を撫でる友奈。

 気持ちよさそうに撫でられているハムスター。

 ケンはそれを見て、娘が好きだったアニメ・とっとこハム太郎(2000年7月7日開始、2013年3月30日終了)のことを思い出した。

 

「ハムスター……コウリクン、カナ」

 

「こうしくんだよケン! 本当に千景さんをハムスターにする気!?」

 

「ムスメメッチャスキデナー、ハムタロウ」

 

「へぇ……」

 

「ヒカリノクニニモ、イルラシイゾ。ウルトラハムタロウ」

 

「変な名前。ウルトラマンなのにタロウって名前に入ってるんだ」

 

 ウルトラマンパワードはケンの内側からうろ覚え全開のケンを見て、光の国の仲間達のことを話したことをほんのちょっとだけ後悔した。

 

「御守さん、御守さん」

 

「なんだいひーちゃん。ハムスターの思い出話でもしたくなったか」

 

「いえそれは別に。その話なんですが、例えば若葉ちゃんを動物に例えたらどうなりますか?」

 

「若ちゃんを? んー……大型犬?」

 

「私が大型犬? ふむ、そんなことを言われたのは初めてだな」

 

 大型犬、と彼が言った瞬間、若葉は首を傾げ、ひなたは満足げに頷いた。

 

「いや、なんというか……

 お前物凄く強いけど、王様タイプとか女王様じゃないというか。

 他人に首輪付けないタイプだけど、他人に首輪付けられてそうなタイプのイメージが」

 

「なんだそのイメージは……私なら理不尽に首輪を付けてくる敵がいれば喉食いちぎるぞ」

 

「うん、敵にそうされたらそうするだろうけど。

 飼い主には手綱しっかり握られてる印象があるというか。

 飼い主には忠実だが、喧嘩を売ってきた他の犬には超攻撃的な大型犬っぽい。

 大型犬は子供に愛されるイメージもあるしな、だから若ちゃんは大型犬」

 

「ううむ……納得できないところもあるが、納得できるところもあるか」

 

 なお、周りの皆は大体納得していた。ひなたが微笑んでいる。

 ひなたはさらっととんでもないことを口にした。

 

「でも、若葉ちゃんは御守さんに首輪を付けて、好きなようにしてるんですよねえ」

 

 がばっ、と若葉と竜胆は同時にひなたへと振り返った。

 

「おいひなた、何を言う! 変身の許可認証を出しているだけだろ!」

 

「そんなお前、俺が若ちゃんの飼い犬みたいな言い草……」

 

「ちょっと変態みたいに言うんじゃない! 聞いてるのかひなた!」

 

「あれ、もしかしてこれ遊ばれてるやつじゃ……」

 

「良いじゃないですか。若葉ちゃんと御守さん、首輪が似合う者同士の戦友、ということで」

 

「「 よくない! 」」

 

 名ドッグブリーダーひなちゃんが愛犬を二匹飼ってるみたいに見える……と、友奈は思った。

 

 球子はいつの間にか隙を見て脱出し、教室から消え、着替えて戻って来ていた。

 

 杏は落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伊予島杏と土居球子の趣味嗜好は正反対だ。

 好きなものも嫌いなものも大体正反対。

 だけど仲が良い。

 とびっきりに気が合う二人だ。

 二人は望むものが同じなのに、全く違う道筋でそれを目指すことがある。

 

「そういえば、伊予島。タマちゃんが恥ずか死にそうになってたアレだけど……」

 

「先輩、タマにもお手柔らかにだな……」

 

「ああ、ごめん。そっち蒸し返すわけじゃないんだ。

 それのきっかけになった、タマちゃんが負けた別件ってなんだ?」

 

 竜胆に言われて、ふと、杏は"ここでいいかな"と思う。

 周りの皆に目配せすると、杏をよく理解してくれている仲間達が頷いた。

 杏は"皆で一緒に作ったその紙"を、机の中から取り出した。

 

「伊予島?」

 

「こほん」

 

 二枚の紙は、皆の気持ちの塊。

 

「これは、お二人の卒業証書です」

 

「!」

 

「私達みんなで、お二人のために作りました」

 

 杏がまず、提案した。

 勇者皆が乗って、ケンがお金を出して、文房具屋であれこれと購入した。

 賞状用紙を買って、正しい卒業証書の文面を皆で考えて、一番達筆な若葉が書いて、球子がもっとガツンと何か加えようと言い出して。

 最終的に、杏の案と、球子の案のどっちを通すかの勝負になって、球子が負けて。

 杏が球子の案を一部だけ採用して。

 そうして出来た、三年生二人のための卒業証書。

 竜胆と千景のための、卒業証書だった。

 

「……そっか。もうそんな時期か」

 

 今の勇者や竜胆に、卒業式なんてやってもらえるわけがない。

 勇者は中学生相当の授業を受けさせてもらているが、それだけだ。

 だから、と、杏が提案し、皆が快くそれに乗った。

 竜胆の卒業証書の方には、球子がちょっと豪華にしようとした痕跡が見て取れる。

 

「世の中広しと言えども、小学校と中学校を同時に卒業した奴は居ない……!

 ってタマは思ったわけだ。

 もしかしたら人類史上初めてかもしれないぞ! って思ったら、手が止まらなかった!」

 

「タマちゃんらしいな」

 

 千景は中学校の卒業証書。

 竜胆の方は、球子の提案で小中学校ダブルの卒業証書。

 竜胆は"卒業を祝われる"という初めての経験を喜びながら、横の千景をこっそり小突いた。

 千景が首を傾げ、数秒後、竜胆の意図を理解する。

 

「あ……ありがとう……」

 

 千景に素直にお礼を言われると思っていなかったのか、球子などは目をパチクリさせていた。

 

「ありがとう、後輩諸君。泣きそうだ」

 

 竜胆は皆の気持ちを受け取り、泣きそうだと言いながら笑った。

 そして深々と頭を下げる。

 ありったけのありがとうが伝わってくる、そんな所作であった。

 若葉が、卒業証書二枚をケンへと渡す。

 

「ケン、頼む」

 

「ン。ヒトリダケ、オトナダモンナ」

 

 ケンはただ一人の大人として、おちゃらけた雰囲気を拭い去り、真面目な雰囲気を作る。

 普段の、空気を明るくしようとするケンとは違う。

 背筋を伸ばし、真面目な顔で教卓の前に立つケンは、それだけで厳格な教師のようだった。

 

「ソツギョウ、オメデトウ」

 

 真面目な顔を、少し微笑ませ、ケンは千景に卒業証書を渡す。

 

「ありがとう」

 

 竜胆にも、卒業証書を渡す。

 

「ありがとう」

 

 こんなものは、精神的な一区切りでしかない。

 物質的な価値があるかといえば、無い。

 だが意味はある。

 小学生の時に惨劇を起こし。

 中学生の時に出会いを迎え。

 竜胆は今、高校生という枠の中に足を踏み入れていた。

 

 時は止まらず、流れていくもの。三年前の惨劇も、もう四年前の惨劇になる。

 

「ほら、中学生ども。高校生様だぞ。

 困ったことがあればいつでも頼れ、何でも頼み聞いてやる」

 

 ドン、と竜胆は胸を叩いた。

 

「何故竜胆は突然兄貴風吹かし始めたんだ?」

 

「リュウくんはちょっとは、ボブの代わりを果たそうとしてるんじゃないかな。若葉ちゃん」

 

「可愛い人ですよね。若葉ちゃんもそう思うでしょう?」

 

「カワイイヤッチャナー」

 

「受験とかやらないと高校生とは言えないんじゃないですか? 御守さんは中卒では?」

 

「竜胆先輩ー、高校生扱いされたいならタマをもっと大事に扱ってくれタマえよー」

 

「こいつら……!」

 

 優しく、楽しく、幸福のある世界があった。

 

 それが表で、もう一つが裏。

 

 厳しく、残酷で、幸福が失われていく世界があった。

 

「……信じらんねー」

 

 "止まった世界の時間"を見て、タマは信じられないものを見るように悪態をつく。

 

「このタイミングで襲撃かよ! 空気読めよ!」

 

 樹海化が始まる。

 止まった時間の中で、机に置かれた卒業証書が見える。

 楽しい時間はもう終わり。

 世界を守る、戦いが始まる。

 

「しょうがないさ。こういうのが嫌なら、さっさと平和を勝ち取るしかない……俺達で!」

 

 城より敵を見下ろす、勇者と巨人の変身者達。

 敵は無数。ゼットの姿はまだ見えない。

 竜胆は深呼吸し、ボブの死で膨らんだ闇を律しつつ、ブラックスパークレンスを握った。

 

「さて行くか、中学卒業後一発目の戦いだ! ……俺、中学行ったことねえけどさ」

 

 仲間の間に、少し笑いが漏れた。

 ブラックスパークレンスを構える竜胆の横に、フラッシュプリズムを構えるケンが立つ。

 ケンは力強い声をかけた。

 

「キミハ、キョウ、スコシダケオトナニナッタ」

 

 掲げられるフラッシュプリズム。

 解き放たれる、青と緑の清純な光。

 時計回りに腕を回して、突き上げられるブラックスパークレンス。

 解き放たれる、邪悪な漆黒の闇。

 

「『ティガ』ァァァァ!!」

 

 青き瞳の光の巨人、黒き体の闇の巨人が、同時に出現した。

 

 闇と光が自らの内で食い合っているのが、竜胆自身にもよく分かる。

 仲間がくれた光で弱くなる。

 仲間が遺した闇で強くなる。

 強いのか、弱いのか、光なのか、闇なのか、それすら曖昧で。

 ただ、"まだ正気は保てる"とは思えた。

 

 球子が壁際の敵のラインナップに目を凝らす。

 

「亜系十二星座が何体か。

 怪獣型は……まだ結界の中に入って来てないのか?

 星屑は五百……いや、増える増える、大体千体ってとこかな」

 

 友奈が同様に目を凝らし、城に突っ込んでくる一体の大型を見て、変な声を漏らす。

 

「げっ、乙女座! 新しいヴァルゴに攻撃は効かないよ、どうしよう!」

 

 中間体となり、攻撃無効能力を得た亜型ヴァルゴ・バーテックス。

 ニッ、と球子が笑う。

 球子は巨人の体を駆け上がり、新・旋刃盤をガチャンと鳴らした。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()を、球子はよく知っている。

 

「見せてやんな先輩! タマとの特訓の成果って奴を!」

 

『おう!』

 

 球子と竜胆の声が、重なった。

 

「『 ティガ・ホールド光波! 』」

 

 なお、二人で技名を叫ぶ必要は一切ない。

 ティガの開かれた両手の間に光がスパークし、そこから放たれた光弾がヴァルゴに直撃。

 "その体に付随していた攻撃無効化能力を"、封印・消滅させていった。

 

「よしっ!」

 

『成功だ!』

 

 この光線は、両手の間に展開されるネット状の光線と、そこから発射される光弾の二種類によって構築される。

 "ホールド光波"の名の通り、その本質は捕縛。

 ヴァルゴがアプラサールの能力で自分を攻撃無効の状態にしても、そのエネルギーを奪い取りさえすれば、理論上はその能力を封じることができる。

 

 そしてこの技は元々、エネルギーを奪い()()()()()()()()()()()()()()光線である。

 ヴァルゴに効くのは、ついでのようなものだ。

 これぞまさしくゼット対策。

 強敵に相対し、特訓し、新たな技と技術を開発する。

 これこそが、天の神も否定した『人間の強さ』だ。

 

 突然攻撃無効化能力を剥ぎ取られたヴァルゴに、特大の八つ裂き光輪と旋刃盤が突き刺さり、その巨体が切断されながら粉砕されて消滅していく。

 

『俺達は成長する……昨日までの自分を超えていく!』

 

「いつまでも同じ必勝法が通用すると思うなよ! タマげろ!」

 

 そう、調子に乗りたかったところだったのに。

 壁の向こうから来た新手の大型を見て、竜胆と球子は仰天する。

 ゴモラもいない。ソドムもいない。

 新手の怪獣型と、新手の亜系十二星座であった。

 

 新手の量産式怪獣型バーテックス、その半数は名を『EXゴモラ』と言う。

 その姿はゴモラに近い。

 新手の量産式怪獣型バーテックス、その半数は名を『ザンボラー』と言う。

 その姿はソドムに近い。

 合計で、おおよそ40体。

 

 どの大型バーテックスも大きい。

 しかも、感じられるエネルギー量はソドムやゴモラ、既存の十二星座を遥かに超えている。

 ゴモラ・ソドム・十二星座と入れ替わりに投入された新顔であることは、明白だった。

 

「……タマげた」

 

『まいったな、新型だ。それに……』

 

 だが、それ以上に竜胆が問題視しているのは、それらの怪獣に不気味に立っている怪獣。

 まるでバーテックス軍団を従えるように、その怪獣はそこに立っている。

 竜胆にゼットンの知識はなかった。

 だがゼットとの戦い一回で、その恐怖は身に刻まれている。

 

 だからこそ、"それ"を甘く見ることなどありえない。

 

『―――ゼットじゃない、ゼットンがいる』

 

 ゼットンが一体だけだと、誰が言ったのか。

 

 新たなるゼットンが、人とバーテックスの戦場に追加されていた。

 

 

 




【原典とか混じえた解説】

●EXゴモラ
 ゴモラの強化形態。
 恐竜然としたゴモラの爪と牙は更に鋭くなり、全身も刺々しい形状に変化した上で硬殻化しており、恐竜らしさより怪獣らしさが強く出ている。
 爪と牙だけでなく、伸縮自在能力が付加された尾の先端も鋭く硬くなっており、もはや凶器。
 これまで四国に侵攻していたゴモラと、EXゴモラに繋がる系譜のゴモラは別種のため、これまでのゴモラが使っていなかった『超振動波』の強化技である『EX超振動波』も使用可能。
 優秀なものが制御すれば、と頭に付くが……原作ではゼットンと強化型キングジョーをたった一体で圧倒し抹殺、アーマードダークネスも破壊と、『当時の主役怪獣の強化フォーム』らしい大活躍を見せている。
 ゴモラは"次に進んだ"。

●灼熱怪獣 ザンボラー
 時に3000度に到達するという凄まじい体温を持つソドム等、『体温が非常に高い怪獣』というカテゴリを作った祖の一体。
 初代ウルトラマンにて登場し、以後のシリーズにおいても『体温が非常に高い怪獣』達のモデルにして祖となり続けた怪獣である。
 その体温は原典にして頂点。
 『十万度』だ。
 この温度は、ウルトラ警備隊の若きエース・メビウスの必殺光線と同温度である。
 そこにいるだけで近辺の川の水は沸騰し、あっという間に山は山火事で丸裸になる。
 こんなもの、素手で対抗できた初代ウルトラマンの強さがおかしい、と断言できる。
 武器は体に生えた突起から放たれる強力な熱光線。
 ソドムは"祖に還った"。

※余談
 その火力は色んな意味で凄まじい。
 撮影時の火が凄まじかったために、ザンボラーの四足歩行スーツの中に入った人が思わず逃げそうになり、立ち上がってしまったことが何度もあったとか。
 撮影スタジオからも「いいかげんにしろ」と苦情が入ったため、ザンボラー回の撮影方法は二度とできなくなったという。

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