夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した   作:ルシエド

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 俺は、当たり前のことを言おう。

 何度だって言おう。

 胸を張って言える。

 

 優しくされたから好きになる。

 それの何が悪いんだ?

 優しい人を守りたいと思った。

 そりゃ当然のことじゃないのか?

 

 詐欺師が他人に優しくする理由がよく分かる。

 優しくする理由がないのに優しくしてくれる人=詐欺師とか、そういう風に言う人も居るけど、それはちょっと違うと思う。

 詐欺師は、有効だから優しくするんだろう。

 "優しくする"って行為が、一番簡単に他人に好かれ、他人を癒やし、他人の心の傷を癒やして、その心の疲れを消して、絆を作る。

 そういうことを知ってるから、優しさってやつを悪用するんだ。

 誰でも使えて、大抵の人の心を救えるから、優しさってやつは便利なんだろう。

 

 俺は、優しくしてもらった。優しい人に優しくしてもらって、救われた。

 

 だから思った。

 何度も思った。

 "全てを成し遂げた後の『日々の未来』でこの人と共に笑っていたい"と。

 色んな人に、そう思った。

 

 ボブにも、タマちゃんにも、ナターシャにも、ケンにも、海人先輩にも、大地先輩にも。

 そう思い、そう願った。

 

 俺の幸せを願ってくれた人達だから。

 俺が平和な世界で幸せになった姿を見せて、安心させてあげたかった。

 その人達が平和な世界で幸せになっていく姿を見たかった。

 

 なあ。

 そんな大それた願いだったか?

 ささやかだろ。

 ささやなかなことしか願ってないだろ。

 なのになんで、許されないんだ?

 

 "全てを成し遂げた後の『日々の未来』でこの人と共に笑っていたい"って願いは、敵がそんなに目くじら立てて潰しにくるほど、許されない願いだっていうのか?

 

 なんで、こんなに。

 俺が願った、日々の未来は。

 否定されて、砕かれて、奪われて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友奈の拳が、地を叩いた。

 

「大地さん……!」

 

 大地は友奈に柔術を教えるという約束を果たせなかった、そのことを気にしていたが、友奈の方はそんなことなどどうでもよかった。

 ただ、仲間の死が、悲しかった。

 

「……っ」

 

 仲間の死が、杏の集中を切らして、膝を折らせる。

 気力だけで保っていたのに、もう立っていられない。

 精霊の使用で体にかけられた負荷は、もう体を治せるガイアがいない以上、すぐに治すことなんてできるはずもない。

 

「……私が……私が、玉藻前を得たのは、仲間を……」

 

 千景は、いつも無愛想で。

 友奈くらいにしか、素直に普通の好意を見せられなくて。

 だから、誰も気付かないけれど。

 仲間をとても大切に思っていて、仲間を死なせる度に、心の底で苦しんでいる。

 

「はぁ……はぁ……はぁっ……ぐぅぅぅっ……!」

 

 海に投げ落とされた若葉も、ふらふらとした足取りで海から上がる。

 ガイアの死が、若葉の心に苦痛を与えていた。

 何人死んでも、仲間の死に慣れることはない。

 しかも今回は親戚だ。

 若葉が物心ついた時には、面倒を見てくれていた、親戚のお兄さんだ。

 

 若葉の脳裏に、大地の笑顔の記憶が蘇る。

 もう、それを見られることもない。

 

「大地……! 馬鹿者がっ……! 死んでは、死んでは、何も……!」

 

 勇者達も軒並み戦闘力を喪失したその頃に、歩いて結界の外に出ていくことすらできないレベルに力尽きていたゼットを、カミーラが迎えに来た。

 

「カミーラか」

 

「闇の者の勝利。とりあえずは、よくやったと言っておきましょう」

 

「……ふん」

 

「さて、どうしようかしら。あなたを回収して、後は何もやる気は無かったんだけど……」

 

 カミーラは気怠げだ。

 やる気がまるで無さそうに見える。

 ティガダークの完全闇化に失敗したカミーラは、完全に熱意を失っていた。

 

 愛憎戦士、という二つ名らしいと言えばらしい。

 愛こそが彼女の最も強い行動原理。

 だからこそ、だからこそ、だ。

 カミーラを強く動かすものは、愛でないなら、憎悪である。

 

 その目が、郡千景の姿を捉えた。

 

「一人くらいは、殺しておこうかしら」

 

「!」

 

 若葉が千景を守るため飛ぼうとして、天狗の羽が、折れて落ちる。

 杏がクロスボウを構えようとしたが、その手から力なく武器が落ちる。

 友奈が千景を庇うように立ったが、その手は疲労とダメージで震えていた。

 

 勇者だけでなく。しまいには、ゼットまでもがカミーラの前に立ちはだかる。

 歩いただけで余力を使い果たしたゼットは、棒立ちになっているしかない。

 

「貴様は結末を穢すのが趣味なのか? 下衆の極みだな」

 

「そんな体で止められると思っているの? 男は馬鹿ね」

 

「そうか。好きに言うがいい。だが私は、お前を見て"女は醜い"だなどとは思わん」

 

「……」

 

「醜いのは貴様の愛だ」

 

 カミーラの鞭がゼットを掴み、結界外へと投げ捨てた。

 その一瞬に、おぞましい女の情念が感じられる。

 

 止められる者はもういない。

 カミーラは千景を殺すだろう。

 特に意味はない。

 竜胆が絶望するかもとは思っているが、主目的ではない。

 

 ただ、カミーラは。

 自分が執着している男と仲の良い女が嫌いなだけだ。

 男に影響を与える女に死んでほしいだけだ。

 自分好みの男に変えようとしているのに、正反対の男に変える女を殺したいだけだ。

 ティガを光に導く女に、最大限の苦痛と絶対の死を与えたいだけだ。

 

 愛した男の隣にいる女は自分一人でいいと、カミーラは考えている。

 千景を殺して竜胆に恨まれようが、どうでもいい。

 殺したいだけだから。

 愛した男に愛されるより、その男に言い寄る女を殺す方が優先事項。

 男の愛がほんの一部であっても、他の女の方に行くことに耐えられない。

 だから殺す。

 竜胆に恨まれようが、カミーラはそれすら闇落ちの材料として利用するだろう。

 

 カミーラはここで千景を殺すことで、自分が損をしようと構わない。

 "この女が生きていることが許せない"という情念が、カミーラを支配している。

 だから、殺すのだ。

 

 その愛憎は止まらない。

 

 

 

 

 

 だが、愛憎とはなんだろうか。

 愛の薄い、他人をどうでもいいと思っている人間は、仲間を殺されてもそれを理由に敵を強烈に憎むことなどないだろう。

 仲間を愛しているがために、仲間や大切な人を殺された時、殺した者を憎むのだ。

 憎悪は愛より生まれる。

 カミーラが、惚れた男への愛からより強い憎悪に目覚めたように。

 

 ならば、仲間を愛した者は?

 仲間を愛し、敵に奪われた者は?

 仲間が敵に殺されるたび、敵に憎悪をぶつける者は?

 

 仲(・)間(・)を(・)愛(・)し(・)て(・)い(・)た(・)竜(・)胆(・)は(・)?

 

 ならば、そう。見方を変えれば、竜胆の『それ』も"愛憎"と言えるのかもしれない。

 

 竜胆の中に、愛憎の闇を含む力がまた、育っていた。

 

 

 

 

 

 大地がゼットに殺された。

 頭の内側で、もう一つの脳が叫ぶ。

 許すなと、殺せと、闇に飲み込めと。

 暴れるな、落ち着けと、理性と光がそれを抑え込む。

 

 だが、千景をカミーラが狙い始めたその時、心の闇と光は同じ方向を向いた。

 闇は、カミーラを殺せと言い。

 光は、千景を守れと叫んだ。

 

「あああああああッ!!」

 

 抜き放たれるブラックスパークレンス。

 竜胆を抱きしめるようにして支えていたひなたが、咄嗟にそれを取り上げる。

 前しか見ていない竜胆は、もはや自分のそばにいるひなたすら意識の外だった。

 

「何を……何をしようとしているんですか! 死んでしまいますよ!?」

 

 再変身は命にかかわる。

 竜胆はもう今日の三分を使い切っているのだ、

 もう一度変身すれば、命にすら影響が出てもおかしくない。

 だが、ひなたは手に走った痛みに、ブラックスパークレンスを取り落としてしまう。

 

「痛っ」

 

 ひなたの手からブラックスパークレンスが落ち、草地の上に落ちた。

 ブラックスパークレンスの周りに、闇が纏わりついている。

 見ていて怖気が走るほどに濃い闇だ。

 

 それが、触れた草地を枯らしていく。

 半径100m規模で草地が枯れ、木々から緑が消えていき、地面の中の虫や微生物が死んでいく。

 人間ならば"痛い"で済んだ。

 だが小さな生命力の生物は、あっという間に闇に命を食われていってしまう。

 

 それは竜胆から僅かに注ぎ込まれた闇が、ブラックスパークレンスから漏れたもの。

 ひなたは見ているだけでゾッとしてしまう、おぞましい殺意の塊だった。

 

「なんですか、これ……」

 

 竜胆の二面性は、ひなたも分かっているはずだった。

 光と闇の二面性。

 人間の二極性を体現したような、破壊と守護の二つの性質。

 分かっていた、はずだった。

 なのに、その光景に息を呑む。

 

 草木が枯れ、腐り落ちていく。

 命が闇に触れただけで消えていく。

 細菌や微生物が活動した結果ではなく、闇に蝕まれた結果としての腐敗。

 

 ひなたは拾った枝で拾い上げてみようとするが、触れた枝先が黒く染まってボロっと崩れた。

 

(だめ、これじゃ私が触れない、御守さんに拾われてしまう!)

 

 ブラックスパークレンスは、もはや尋常な者では処理にすら困るものになっていた。

 いや、変わったのはブラックスパークレンスではない。

 それを扱う竜胆の状態だろう。

 

 12人の丸亀城の仲間達も、もう6人死んだ。

 戦闘員という点で見れば11人中6人が死に半分を切っている。

 強がる竜胆の心の奥に、闇は育まれる。

 死んでいった者達から光を受け取る意識と、そこに絶望を感じて闇を育む意識の両方が、竜胆の内にはある。

 

 "スパークレンス"は、人間を巨人に変えるアイテムだ。

 人間を『光』に変えるには、このアイテムの機構が必要になる。

 それが闇に染まったものが、ブラックスパークレンスである。

 巨人としての竜胆の光も闇も、ここから生まれる。

 

 だから、そ(・)の(・)時(・)に(・)起(・)き(・)た(・)巨(・)人(・)化(・)は、"人体を一切光に変換しなかった"。

 

「―――!?」

 

 竜胆の体が、ブラックスパークレンスを通さず巨人化する。

 

 ティガダークになった……と、思いきや。

 体の輪郭が不安定で、肉体が完全に具現化していない。

 ティガダークそのままなのは、体にみなぎる闇のパワーだけだ。

 肉体だけではなく精神も不安定な状態のようで、暴走状態の如くに叫ぶ。

 

「■■■ッ!!」

 

 そして、咆哮と共に、黒く染まった闇を放った。

 

 闇がカミーラに迫り、カミーラが氷の鞭を氷の剣に変え、受け止める。

 

 剣は砕かれ、闇がカミーラを襲い、その腕の肉を貪った。

 

「っ!?」

 

 咄嗟に跳んでかわすカミーラ。

 貪る闇はカミーラの腕を穴だらけにするが、その命にまでは届かない。

 "スパークレンス"無しに、より強く大きな闇を目覚めさせることで巨人となった竜胆に、カミーラは思わず声を漏らしていた。

 口角が、醜悪に上がる。

 

「ふっ、ふふふっ……」

 

 朦朧輪郭のティガダークに、赤い光が巻き付く。

 球子の想いが残した、ティガトルネードの赤い光だ。

 それが"止まれ"とばかりに、ティガダークの体に巻き付き始める。

 青紫の光もまた、ティガダークの体に巻き付き始める。

 

 それらの光がティガの闇を抑え―――られない。

 

 光は闇に飲み込まれつつあった。

 今日まで真紅の光、青紫の光は、竜胆の闇を抑えて暴走を抑えてくれていた。

 だが天の神、バーテックス、カミーラ、ゼット、四国の民衆、仲間の死が竜胆に絶え間なく与えるものが、彼の闇を膨れ上がらせる。

 そうして、成長した闇は。

 仲間がくれた光を飲み込み、闇で塗り潰せるほどのレベルにまで到達していたのだ。

 

 あと少し。

 あと少しで。

 竜胆の心の主導権は、闇の側が握るだろう。

 

「……すてき」

 

 カミーラの萎えていた気持ちが戻って来た。

 熱意が戻る。

 愛が滾る。

 カミーラへ直球の憎悪を向けてくるティガダークの、闇に落ちていく感覚が心地良い。

 

(ああ、ティガ、ティガ)

 

 闇に飲み込まれつつある、真紅と青紫の光。

 それを見ているカミーラが、うっとりと頬に手を当てる。

 闇一色としてのティガが自分を選んでくれるより、ティガが光と闇の間で揺れながらも闇と自分を選んでくれる方が、きっとカミーラは歓喜するだろう。

 

 ティガの闇が、今、ティガの光に勝とうとしている。

 闇は光に負けじと、光は闇に負けじと高め合う。

 あとひと押し。

 だがひと押しするなら、より深くにまで堕とすひと押しをしたいところだろう。

 完全に闇の底にまで堕ちたはずなのに、光の側に戻っていったティガの姿は、カミーラの目に複数焼き付いている。

 

 今度こそ、絶対に、二度と光の側に戻らない闇のティガを作る。

 

 そのためには、今勇者や人々を殺すのは得策ではなかった。

 必要なのは演出だ。

 今までカミーラがそうしていたように、ティガの心を闇に落とすためには、演出がいる。

 シビトゾイガーで演出したあの村のように。

 インターネットの醜悪のように。

 街で起きたリンチのように。

 もっと死なせて、もっと失望させて……希(・)望(・)を(・)欠(・)片(・)も(・)持(・)て(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)す(・)る(・)。

 

 演出はそう難しくはない。

 何故なら、カミーラが作った絶望は、一つも失敗はしていないからだ。

 その絶望が狙った結果に辿り着けなかっただけである。

 カミーラの与えた心の闇は積み重なったまま消えず、シビトゾイガーは存在すら認識されないまま、状況は推移している。

 

「また会いましょう……?」

 

 カミーラは"次の仕込み"を始めるべく、その場から消えていった。

 

 そして"カミーラが予想していた通り"、まだブラックスパークレンス抜きでは巨人体を維持できない竜胆は、巨人体を崩壊させて地面に落ちた。

 

「退却した……? 御守さん!」

 

 ひなたが竜胆に駆け寄る。

 

 竜胆の闇は最初、傷を塞ぐ肉体変化を発生させた。

 次に生存のために新しい内臓、新しい脳を生み出した。

 戦いの中で腕を増やすことすらもした。

 闇は状況に適応する。

 人間の肉体を変化させる。

 

 "次はブラックスパークレンスを叩き落とされても杏を攻撃する民衆を殺せるように"と、心の闇の願いに沿った形へと、竜胆の肉体は変質し始めていた。

 

 もう、次は。

 

 怒り憎めば、止まらない。止まれない。敵も味方も全員殺して、おしまいだ。

 

 

 

 

 

 2019年、7月。

 

 夏空の下、『ウルトラマン』のいない四国ができた。

 

 残る巨人はティガダークのみ。『ウルトラマン』は、もういないのだ。

 

 

 

 

 

 広がる絶望。

 満ちる悲しみ。

 四国で明るい空気がある場所など、もうどこにもないように思える。

 

 本当は、最初からずっとそうだった。

 世界には絶望しかなく。

 四国の外に逃げ場はない。

 滅ぼされるまでの秒読みを、一つ一つ数えていく毎日。

 ただ、全ては大社によって隠されていただけだ。

 

 だからこそ、間近に迫った絶望の危機は、"普通の弱い人々"を大混乱に陥れる。

 

 もはや、勇者達が守りたかった幸福と平和の日常は、四国のどこにもない。

 恐怖に駆られた人間が、平穏なこれまでの毎日を継続できるわけがない。

 日常は失われた。

 これから人々は、俯いて生きていくことだろう。

 恐怖に飲まれ、幸福を忘れることだろう。

 隣人にも攻撃的になるだろう。

 

 大社はこれを恐れていた。

 全体を生かすために全員が協力する、ということを揺らがず継続して行い続けられるのは、虫や機械の歯車などにしか無理だ。

 人間にはできない。

 何故か?

 人間には、『個』があるからだ。

 

 人間だって、細胞の一つ一つは協力している。

 内臓は相互に助け合い、時には体の一部を犠牲にしたり、入れ替えにしたりする。

 だが人間が集まると、総体として協力するのが一気に難しくなる。

 何故か?

 自分という『個』を否定する他の『個』の存在を、許容できないからだ。

 

 自然権、というものがある。

 日本人なら"基本的人権に近いもの"と言えば分かりやすいだろう。

 要するに、人間が自然に持っている権利、というものだ。

 

 生きる権利。

 自由である権利。

 平等である権利。

 人間が当たり前のように持っている、それらの権利。

 竜胆は今日までの日々の中で、それら全てを肯定していた。

 

 政治哲学の祖の一人、『トマス・ホッブズ』は、政府が強権をもってこれらの自然権を制限しない限り、人間は各々が持つ自然権を最大限に行使し、最悪の状態をもたらすと考えた。

 

 自然権とは、生きる権利でもある。

 トマスはこれを行使することに善悪はなく、暴力であろうと肯定されるのだと言った。

 "生きるための行動"は、それだけで肯定されるべきことなのだ、と。

 

 例えば四国の食料が残り少なくなったとしよう。

 近くの人間を殺して食料を奪うことは、善悪以前に肯定される、ということである。

 空腹に背中を押され、食料が無くなる未来を恐れて正気を削られ、"生きる権利"を行使して他人を殺しに行く。

 襲われた方も"生きる権利"を行使して反撃する。

 

 これを、『万人の万人に対する闘争』と言う。全員が、全員の敵になるのだ。

 

 トマスは、人間は余計に未来のことまで考えてしまう生き物であるために、他の動物がしないような愚行もしてしまうのだと考えた。

 ティガダークを見れば分かる。

 人間がその瞬間のことだけを考えているなら、戦いのたびにティガダークに縋り、自分達を守ってくれる彼に媚びるだろう。

 

 ―――だが、そうはならなかった。

 

 人々は虐殺者ティガダークのいる未来に、何が起こるかを想像し、シビトゾイガーに煽られ、未来を恐れ、愚行に走る。

 生きる権利を行使するため、自分を殺すかもしれない怪物を排除しようとする。

 勇者の交代要望のような、正気とは思えない行動も選択する。

 シビトゾイガーが「人間を殺せば天の神が味方と見て許してくれるかもしれない」という噂を流したなら、殺人もしてしまいそうな人さえ、いくらかはいるだろう。

 溺れる者は藁をも掴む。

 藁(わら)にさえ、人はすがるのだ。

 愚かしくも。

 生きるために。

 

 それは善と言い切ることも、悪と言い切ることもできない。

 ただ醜悪で、愚かなだけなのだ。

 トマスの考え方では、と頭に付くが。

 

 ―――ただし、一つだけこの話に、付け加えておくべき話がある。

 

 東京帝国大学助教授、倫理学者の友枝高彦は、トマス・ホッブズのこの主張を真っ向から否定していった。

 論理的に否定したわけではない。

 ただ、"利己的見地からくる考え"と反論した。

 人は自然な状態で他者と協同も親和もするものである、と。

 友枝が人間に『ある』と言ったものは二つ。

 

 『正義』と、『人類愛』である。

 

 いつの時代も変わらない。

 人の愚かさを語る者へと、反論する者が信じるものは、正義と愛なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界(しこく)が混沌と混乱に飲み込まれつつある中。

 

 三ノ輪大地の葬儀が行われた。

 

(……いいのかな、俺がこんなところにいて)

 

 竜胆が、心の底から感謝し、心の芯から困惑していたことがあった。

 鷲尾の家も。

 三ノ輪の家も。

 身内のみの葬式を行い、そこに竜胆を呼んでくれたということだ。

 

 鷲尾の家は、地位のある大社職員もいる家だった。

 だから竜胆の味方をしてくれるのは、まだ分かる。

 けれども三ノ輪家がそんなに好意的な理由が分からない。

 だが、両方の家の人に聞いてみたところ、悲しみと寂しさと感謝の気持ちを顔に浮かべて、同じようなことを言ってきた。

 

「海人が、君の話をしてくれた」

 

「うちの息子が君の話をしてくれていたからね」

 

「―――」

 

 それだけだ。

 大それた理由など無い。

 海人も大地も、頼れる仲間のことを家族に隠してはいなかった。

 明け透けに全て語っていて……だからこそ、両家の家族は竜胆を嫌っていない。

 

 そして、海人と大地のことを、家族であればよく知っている。

 だからこそ、竜胆が海人という面倒臭い少年にとって数少ない友人であることも、大地が竜胆に最後に何かを託していったことも、察している。

 海人も大地も、ずっと竜胆のことを好意的に話していて。

 ティガダークは、二人亡き今、最後に残された巨人なのだから。

 

「あの、俺――」

 

 守れなくてすみませんでした、と、竜胆は言おうとして。

 

「――二人の冥福を、祈らせてください」

 

 言えなかった。言わなかった。

 

 遺族に、これ以上の負担をかけたくなかった。

 遺族に、自分に気を遣わせたくなかった。

 二人を、最高のヒーローのままにしておきたかった。

 

 守れなかった、なんて言ってしまったら。

 "御守竜胆が頑張れば守れた"と聞こえてしまう。

 "二人は竜胆に守られる存在だった"と聞こえてしまう。

 それがなんだか、嫌だった。

 

 球子が死んだ時の竜胆だったなら、"守れなくてすみませんでした"と言っていたかもしれない。

 けれど、今は違う。

 

(違う)

 

 ゼットと一対一で戦っていた、あの時。

 空から降るようにやって来て、大量の土砂を巻き上げながら現れたガイアとアグル。

 あの時の英雄的な二人の姿を、竜胆が忘れるわけがない。

 

 守れなかった、なんて言葉を口にすることに躊躇いが出る。

 けれど、"そう"言うことに躊躇いはなかった。

 

「俺は海人先輩と大地先輩に守られていました。

 体とか、命とか、そういう物理的なものだけじゃなく。

 ……一緒にいると、楽しかったんです。心が明るくなったんです」

 

 心も守ってくれていたんです、と、竜胆は言う。

 ゼットに共に立ち向かってくれる巨人がいるだけで、大侵攻に共に立ち向かってくれる巨人がいるだけで、竜胆は本当に心強い気持ちを感じていた。

 最後のガイア・スプリームヴァージョンなど、感動さえ覚えた。

 

 彼らが生きたこと、死の瞬間まで志したこと、命を懸けてまで守ろうとしたもの、竜胆は全てを抱えたまま前に進む。

 

「今日からは俺が、海人先輩と大地先輩の大切なものを守ります。絶対に」

 

 人の死に泣く者がいた。

 人の死に憤る者がいた。

 人の死に絶望する者がいた。

 どれもこれもが、人を"安心"させることはない。

 

 だからこそ、竜胆の在り方は、遺族や葬式の参列者に"安心"を与える。

 死の悲しみや絶望に晒された人の心は脆くなり、弱くなり、揺れやすくなる。

 ガイアとアグルの死は、悲しみだけでなく、"これからどうなってしまうんだ"という不安も生み出していた。

 

 そこに"安心"を与えるには、悲しみの中でも強く在れる人間が必要なのだ。

 若葉のような。

 竜胆のような。

 不安、恐怖、絶望に膝を折られて当たり前の状況で、毅然と在る人間が必要なのだ。

 今のところは遺族相手にだけだが、竜胆は安心を贈っている。

 

 安心させよう、とわざと強い者として振る舞う竜胆の姿に、二つの家の遺族は、海人と大地の姿を重ねたようだ。

 その在り方に、『ウルトラマン』を見たようだ。

 よく知った家族が一番かっこいい時の姿と、今の竜胆の姿が幾度となく重なる。

 

 だから、鷲尾家と三ノ輪家の者達は、誰一人として疑っていない。

 

 御守竜胆が、ティガダークが、『ウルトラマン』であることを。

 

「御守さん、少しお時間をいただいてもいいでしょうか」

 

「? はい、いいですけど」

 

「あなたに会ってもらいたい人……話してほしい人がいます」

 

 大地の葬式の終わり際、竜胆は大地の父親に連れられ、葬儀場の一室に連れていかれた。

 そこにいたのは、喪服の美女。

 お腹が膨らんだ美女が、そこにいた。

 

―――ワシの子供が生まれて来る前に、この世界を平和にしたかった。

―――ささやかな願いだったんじゃ。……それが成せなかったのが、本当に心残りじゃな

 

 大地の最期の言葉が、竜胆にもしやと予測を立たせる。

 

「あなたは……」

 

「大地のお嫁さんやってました」

 

「!」

 

「そんなに申し訳ない顔をしないでください。

 大地の言っていた通りの人ですね。

 余計な罪悪感を背負いがちで、悪い子になれない人だと」

 

 大地の妻、と聞き、思わずポーカーフェイスでも隠しきれないほどの罪悪感と申し訳無さを顔に浮かべてしまった竜胆。

 そんな竜胆を見て、大地の妻は穏やかな笑みをこぼした。

 

「大地の人を見る目を疑ったことはありませんけど、本当に彼の言う通りでした」

 

 微笑む女性の笑顔は美しい。

 胸も大きかった。

 胸も大きかった。

 "どうだワシの選んだ女はいい女だろ、がっはっは"という大地の声が聞こえてきた気がして、竜胆の肩の力がすっと抜ける。

 

(なんでだろうな。すごく、大地先輩の奥さん、って感じがする)

 

 大地の妻の笑い方は美しいが朗らかで、どこか大地の笑顔を思い出させるものだった。

 竜胆の表情も、自然と柔らかいものになる。

 

 大地の妻は、大きなお腹を抱えて、竜胆に頭を下げた。

 

「ごめんなさい、御守さん」

 

「え……なんで、謝るんですか」

 

「大地は、最後まで黙っているつもりでいたんです。

 私の存在を隠すつもりでいたんです。

 "そんなことを言えば仲間がワシを優先して守って死ぬじゃろ"と言っていました」

 

「!」

 

「大地は、仲間が自分を過剰に守って死ぬことを、恐れていたんです」

 

 大地が結婚の事実、子供の事実を口にすれば、仲間達はこぞって大地を守っていただろう。

 だが、海人の時のことを思い出せば、大地がそうなることをどれだけ嫌がるかは想像するに難くない。

 大地は自分が他人のために死ぬのは許容する。

 だがその逆は、絶対に許容しない。

 彼は根本からしてヒーローだからだ。

 

 だから、結婚しても皆には黙っていた。

 子供のことは誰にも話さなかった。

 その上で、仲間達を守り、世界を守るため、命を懸けて戦い続けていた。

 

 守るべき対象の中には、もちろん竜胆も入っている。

 大地は妻と子供を残して死ぬわけにはいかないと自覚した上で、何がなんでも生きようと覚悟していたその上で、竜胆のために命を懸けることを躊躇っていなかった。

 ……正樹があれだけ生存に気遣っていたのも、納得というものである。

 

「知ってます?

 大地が四国の外にずっといて、帰ってきた時。

 あの人ったら、『正樹先輩はどのくらい気を使ってた?』なんて言ったんですよ。

 心配もしてたんでしょうけど、正樹さんが私を厳重に守ると確信もしてたんです」

 

「……あはは」

 

「正樹さんも正樹さんで、立派な土地とお家をぽんとくれちゃって。

 "泥棒なんて入る余地もない"だなんて言ってくれたんですよ。

 大社の偉い人が貰える、身の安全を保証される家なんだそうです。

 それをぽんとくれたんですよ、正樹さんが。

 『私は職場に寝泊まりしているからああいうものは必要無い』だなんて言って」

 

 聞けば聞くほど、明るい話題が心に光を差すと同時に、助けられなかった後悔が湧き、竜胆の心がそれを"今度こそ守る"という覚悟に変えていく。

 

 大地と正樹の間には、一言では言えない友情があり。

 正樹の中には、誰も知らなかった、大地を守る理由があり。

 不器用な男二人を見守る、大地の妻の姿もあったのだ。

 ……ただ、竜胆が知らなかっただけで、そこにずっとあったのだ。

 

 この四国に住まう四百万弱の人間達の全てに、そういった細かな物語がある。

 

 ティガを好ましく思う人間にも、ティガを嫌う人間にも、それはあるのだ。

 

「お子さんの名前はもう決まってるんですか?」

 

「……ふふっ」

 

「?」

 

「ええ、もう決まっていますよ。大地が提案して、二人で選んで決めました」

 

 子供の名前を聞いた竜胆に、大地の妻は微笑みを見せる。

 

 

 

「『美森』。三ノ輪美森です」

 

「―――え」

 

「大地は言ってました。

 "ワシの仲間の中で一番に、他人を幸せにする才能があるやつの名前から音を貰った"と」

 

「―――」

 

 

 

 それは、竜胆の心に、不意打ちのように突き刺さった。

 

「私、昔から他人を名前で呼ぶ人間なんです。

 大地とも、出会った頃からずっと名前で呼んでいました。

 でもこの子が生まれるまでは、あなたのことを"御守さん"って呼ばせてもらいます」

 

 竜胆は、思ったこともなかったのだ。

 自分が、子供の名付けに使われるような、そんな人間であるだなんてことは、想像したことすらもなかった。

 けれど、三ノ輪大地はそう思っていなかった。

 彼は竜胆のことを、竜胆自身以上に評価してくれていたから。

 

 若葉に救われた人間が、この四国で赤ん坊に"若葉"と名付けているという話もある。

 名付けは、願いだ。

 親が子にかけた願い。

 ゼットという名付けが、終焉を望まれたものであるように。

 若葉という名付けが、乃木若葉のように強く凛々しい子に育ってほしいという、願いであるように。

 

 『美森』という名が、三ノ輪大地が我が子に付けた、祈りの一つであるように。

 

「大地は言ってました。御守は信じられる、と。

 こんな短い付き合いで、こんなに信頼できたのはカイト以来だ、と。

 でも仲間としての信頼以上に、他人を幸せにする才能の方を見ていたみたいですね」

 

「……そんな……そんなの……」

 

 竜胆の心の中はぐちゃぐちゃだ。

 本当は、大地が妻と子供を残して死んだという事実だけで、いっぱいいっぱいだった。

 その子供に自分の名前が付けられているというだけで、悲しみは一気に加速した。

 妻から聞いた大地の竜胆評が、悲しみを更に加速させた。

 

 泣くことが許されるのなら、竜胆は泣き出したくてたまらなかった。

 そんな竜胆に泣くなと戒めているのが、竜胆自身の心だった。

 

―――竜胆。優しさを失わないでくれ

 

 何故大地は、竜胆に"それ"を求めたのだろうか。

 

―――その優しさが裏切られたなら、優しさを捨てて好きに生きたっていい。

―――だが、叶うなら、優しさを捨てなくていい未来に行ってくれ。

―――優しさを捨てなくていい人生を生きてくれ。

―――皆が死んだらワシは悲しいが……お前が優しさを捨てることになったとしても、ワシは悲しい

 

 大地が言う"優しさ"とは、きっと、他人を幸せにする心遣いのことで。

 

―――優しいお前になら、ワシは自分の大切なものの全てを、安心して託せる

 

 大地が託(・)し(・)た(・)も(・)の(・)の正体を、竜胆は腹の膨らんだ彼女を見て、ようやく理解する。

 

「……っ」

 

 "守ってほしい"と、大地はそう願ったのだ。

 

 その優しさで、他人を幸せにできる、御守竜胆に。

 

「バカじゃ……バカじゃないんですか……

 俺の、どこを見て、そんなこと、思ったんですか……

 いつも、いつも、他人を不幸にしてばかりの俺に……

 そんな才能……あるわけないじゃないですか……!」

 

 竜胆は大地の残した言葉を、素直に受け止められない。

 

「ありますよ」

 

「……え」

 

「大地があると言ったら、あるんです」

 

「無いですよ! そんな才能は! 俺には!」

 

「さっきも言ったでしょう? 私は大地の人を見る目を疑ったことは、一度も無いんです」

 

「―――」

 

「あなたは大地の知る人の中で、一番に、他人を幸せにする才能がある人なんですよ」

 

 揺るぎなく、大地の妻は言い切る。

 

「触ってみますか?」

 

 そして微笑み、竜胆を手招きした。

 

 竜胆は恐る恐る、膨らんだ腹に触れる。

 触れた腹の向こう側に、命がある。

 手の平に感じる暖かさは、はたして一人分のものだろうか。

 腹の中で何かが動いた、僅かな感触。

 中で赤子が母親の腹を蹴ったのだろう。

 僅かに感じられる感触が、竜胆にその命の存在を実感させる。

 

(命)

 

 感じられたものは、命の鼓動。

 今そこにある、まだ生まれていない命の存在。

 この地獄のような世界に、"生まれてやるぞ"と言わんばかりに、蠢いている一つの命。

 

 命(・)は(・)死(・)ん(・)で(・)い(・)く(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)な(・)い(・)という当たり前のルールを、何も知らないはずの赤子が、色んなことを知っている竜胆に教えてくれていた。

 

(……光)

 

 竜胆はそこに、光を見た。

 

 他人に優しくする者の心の光ではない。

 絶望に挑む勇者の勇気の輝きとも違う。

 絶えない希望から生まれる煌めきとも異なる。

 竜胆は赤子に光を見た理由を、上手く自分の中で言語化出来ない。

 

 だがその瞬間確かに、その赤子は、竜胆にとっての光だった。

 この女性にとっても、死んだ三ノ輪大地にとっても、きっと光だっただろう。

 

「生きてる……」

 

「そうですよ。私のこのお腹の中に、大地と私の子供がいるんです」

 

「……これから生まれて、来るんだ」

 

「はい」

 

 今、四国には神樹への信仰からか、樹木にあやかった名前が増えつつあるという。

 『美森』という名前も、もしかしたら付けられる機会が増えるかもしれない。

 英雄ガイアが子供に付けた名前だ、真似する親も出て来ないとは言い切れない。

 そうやって、世界は『次』に繋がっていくのだ。

 

「他人のために強くなる。他人のせいで弱くなる。

 他人のために不幸になる。他人との触れ合いで幸福を得る。

 他人こそが自らの幸福の基準であり、叶うなら皆が幸せであることを望む。

 ……私の知っているウルトラマンさん達は、皆そうでした。

 だから今、私はあなたに、生きる理由と、強くなる理由と、死ねない理由をあげます」

 

 大地の妻は、彼女にしかできないことをする。

 彼女がするべきこと……かもしれない、ことをする。

 その実、彼女はしたいことをして、言いたいことを言っているだけだった。

 

「もしも、あなたが大地に、恩義を感じているのなら」

 

「はい」

 

「この子が大きくなるまで、生きてください。

 この子があなたとちゃんと話ができる頃になれば、あなたもきっと大人になっています。

 大人になるまで、生きてください。

 そしてこの子に話を聞かせてあげてください。

 『君の父親はこんなに立派だったんだぞ』、って。あなただからこそ、頼みたいんです」

 

「―――」

 

 目元が熱くなるのを、竜胆は感じた。

 

「……分かり、ました」

 

 他の誰でもなく竜胆自身が、その腹の中の子に教えてあげたかったのだ。

 

 あの瞬間、人々を守る心優しい宇宙最強だった、ウルトラマンガイアの勇姿を。

 

「約束します……いつか……いつか、必ず……!」

 

 視界がぼやける。

 

 自分の目から何かが零れ落ちているのを、竜胆は感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミーラは上機嫌に次なる策謀を始めた。

 ゼットの体はボロボロで、ガイアSVの全力攻撃によるダメージは、見かけ以上にゼットの体を摩耗させている。

 ゼットの再生には時間がかかり、カミーラはしばらく攻撃の手を休め、四国とティガの動向を見張ることにした。

 

 そんなカミーラが見張る四国の中では、人目につかないよう動いていた牛鬼が、ブルトンの肉を探し出し、食っていた。

 

「もっきゅ」

 

 牛鬼は脳天気である。

 カミーラのような面倒臭いことは考えていない。

 ゼットのような物騒なことも考えていない。

 竜胆のような小難しいことも考えていない。

 

 美味しいおやつでも食えればいいや、と考えているのが関の山といったところだ。

 

「もきゅ」

 

 そんな彼だが、食いたくないものもある。

 辛気臭い飯だ。

 味はともかく、辛気臭い空気で出された飯は食いたくないものである。

 今の丸亀城で出されるご飯が、まさにそれだった。

 こんなもの、食ってられるか! ここ最近ずっと、牛鬼はそう言わんばかりの様子であった。

 

 なので大地の戦死後直後は、戦場に行ってまだ消滅していないバーテックス等も食べていた。

 その後は消えないコダラーとシラリーの肉も食べ、彼らの無念の想いを受け継ぎ、四国結界の外に出て遠出し、誕生前の星屑の卵をまとめて潰す。

 だが帰ってきた頃には、大社の手でコダラーとシラリーの死体は丁重に埋葬されており、もうその肉を食べられなくなってしょんぼりしてしまった。

 

 なので仕方なく、ゼットが握り潰したブルトンを捜索。

 もう他に死体が残っているバーテックスなどいない。

 星屑で大型を作ると、大抵の場合倒した後に死体は消えていってしまう。

 牛鬼は他宇宙から呼び出された、星屑で出来ていないブルトンの死体をとことん探す。

 

 そうして見つけて、美味しそうにブルトンをもぐもぐと食べているようだ。

 

「きゅっ」

 

 牛鬼は友奈が大好きだ。

 くれるご飯は美味しいし、その笑顔は可愛らしい。

 けれど人前ではいつも笑顔の友奈が、一人で居る時や、牛鬼の前では、泣きそうな顔や辛そうな顔を見せてくるのが辛く感じる。

 

 牛鬼は実は竜胆がそんな好きではない。

 友奈は竜胆と話している時、牛鬼を撫でている最中でも、牛鬼の方をほとんど見なくなってしまうからだ。

 それだけを理由に、牛鬼は竜胆のことがあまり好きではない。

 

 ただ、牛鬼は竜胆が嫌いというわけではない。

 撫でる手は優しく、くれるおやつはいつも美味しい。

 牛鬼をペット扱いではなく、一人の仲間扱いもしてくれる。

 それに何より、竜胆と話している時の友奈が牛鬼を撫でる手付きは、いつもよりずっと優しくて心地が良いと、牛鬼はそこを評価している。

 竜胆と友奈が話している時のまったりとしていて楽しげな空気も、牛鬼は好きだ。

 

 だから、友奈は大好きで、竜胆のことはあまり好きではない。

 そんなバランスで、牛鬼は生きている。

 

「もきゅぃ」

 

 ふらっと四国結界の外に出て、辺りを見回す。

 星屑がいた。

 ほんの僅かな生き残りがいたらしい。

 牛鬼は溜め息を吐く。

 

 最近、丸亀城は辛気臭い。

 竜胆も友奈も、仲間を失って辛い想いをしている。

 今敵が来れば、辛い想いを抱えながらも戦わなければならない。

 だから牛鬼は思うのだ。

 

 いや今は来るなよ、と。

 

 空気読めないやつめ、とでも言いたげに、牛鬼は星屑に跳んで体当たり。

 星屑をミンチにしてさしあげた。

 そのまま星屑もモリモリ食べて、これを今日のお昼ご飯とする。

 食いではあったが、味はイマイチだった。

 

 大地の死から少しの日時が経っていたが、その間ずっと、牛鬼は結界の周辺をうろちょろしていた。

 理由の半分は、辛気臭い丸亀城に丸一日居たくなかったから。

 もう半分は、『子供達に悲しむ時間すら与えようとしない星屑』を問答無用で倒すため。

 だから今日も四国は、敵が襲来して来ていない、仮初の平和を続けて行けている。

 

 ただ、ここ数日は、丸亀城の空気も少しは良くなってきた。

 友奈や竜胆が、努めて城の空気を明るくしようとしてくれている。

 空気は少しずつ改善され、皆の心は前を向き始めている。

 

 本当は年単位の時間をかけて癒やすべき傷を、皆頑張ってすぐにでも乗り越えようとしている。

 それは"普通"ではないことだったが、必要なことでもあった。

 牛鬼は星屑を食い切って、丸亀城へと戻る。

 

「あれ? 牛鬼、どこに行ってたの?」

 

 唯一無二の主と決めた友奈に連れられ、抱きかかえられ、運ばれていく。

 

「ほら、一緒にリュウくんのお見送り行こうね」

 

 友奈に運ばれた先で、牛鬼は旅支度をした竜胆・若葉・千景の姿を見る。

 

 牛鬼は友奈を"頑張り屋"と思い、大好きという気持ちを向けつつ、頑張りすぎないか心配している……のだが。

 実は竜胆に対しては"自殺屋"と思っており、友奈に対する心配以上に、竜胆のことを心配していた。

 

 

 

 

 

 大地と海人は、多くのものを竜胆達に残してくれた。

 想い。

 技。

 そして、未来に繋がる可能性。

 あの時彼らが来てくれなければ、その後も共闘してくれていなければ、絶対に大侵攻は乗り越えられなかっただろう。

 ナターシャの予知は、最悪の未来に繋がってしまっていたはずだ。

 

 何よりも大きなものは、情報だ。

 四国外で活動していた彼らの情報は、とても大きい。

 

―――北海道にワシは落ち、沖縄にカイトが落ちた。

―――結論から言えば、北海道・沖縄・諏訪にはまだ人間と、『勇者』が生きていた

 

 二ヶ月前、2019年5月時点で人類と勇者の生存が確認されたのは、とても大きい。

 初めてブルトンの話をした時、若葉は竜胆にこう言っていた。

 

―――私の知る限り、今の世界で人間が生きていると確認されているのは四国と諏訪のみ。

―――可能性レベルで話しても、北海道と南西の諸島くらいしかないそうだ。

 

 球子も、こう言っていた。

 

―――四国以外で残ってる勢力なんて諏訪しか確認できてない。

―――北海道と沖縄には生存者居るかも? って話はタマーに聞くな。

 

 ブルトン出現以降、四国外部の時空は微細に捻じれた。

 そのため、それまで諏訪と連絡が取れていたのに、それ以後ずっと連絡が取れていなかった。

 それまで四国と通信できていた諏訪はまだ"連絡が取れない"レベルだったが、そもそも沖縄と北海道とは連絡が取れたことすらない。

 

 だが、今現在、そこにこそ希望が持てる状況が出来ていた。

 

 ここ二ヶ月、バーテックスのほぼ全戦力が大侵攻に集められていたはずだ。

 ならばこの三箇所がすぐに落ちている、という可能性はそう高くはないだろう。

 むしろ、三箇所全部が残っている可能性の方が高い。

 まだそこには人と、勇者が残っていると思われる。

 

 連携してもいい。

 リスクもあるが、四国に住民を避難誘導することもできる。

 まだブルトンが起こした空間異常が残っているため、通常の観測手段や通信手段では遠方の状況が把握できないが、それなら人員を直接派遣すればいい。

 

 『まず目指すは諏訪』。

 

 大社は、勇者と竜胆にそう言ってきた。

 諏訪は信州、長野県にある神の地である。

 北海道に落とされた大地が、四国に戻る前に守っていた地でもあり、『タケミナカタの神地』でもある。

 ガイアがタケミナカタと同一視されたことから考えても、三ノ輪大地と因縁浅からぬ地だ。

 

「若ちゃん、知り合いがいるのか? 諏訪に」

 

「ああ。諏訪の勇者、『白鳥(しらとり)歌野(うたの)』は……

 私とよく、無線を通して話していた。

 意味の無いことを多く語り、励まし合い……いや、それは違うな。

 今思えば、私は彼女から、勇者としての心構えを多く教わっていたのだと思う」

 

「……そうなのか」

 

「味方に付けられたなら、あれほど頼りになる勇者はいない。

 諏訪の神に選ばれ、勇者システムも無しにもう四年も諏訪を守り続けている――」

 

 若葉は、"白鳥歌野"という勇者を手放しで褒め、評価している。

 

「――『タケミナカタの勇者』だ」

 

 竜胆は、若葉の言からも、その人物の有能さをひしひしと感じていた。

 

 今回、諏訪に派遣されるのは、竜胆・若葉・千景の三人だ。

 大侵攻でバーテックスが全滅状態とはいえ、流石に全員を外に出すとリスクが生まれる。

 カミーラが居る以上、迂闊な隙は見せられない。

 

 実は下からの報告を聞いた正樹圭吾が、心底怪しんで四国全体を見張っているせいで、シビトゾイガーは迂闊な動きができない状態にあった。

 カミーラもやり辛い思いをしていることだろう。

 ここで侵攻を防ぐ念の為の勇者も残しておけたなら、四国はかなり万全である。

 そこで、派遣三人、居残り二人、というバランスになった。

 

「RPGのパーティー分けみたいね。どちらか片方が弱すぎると詰む、みたいな」

 

「ちーちゃんらしい言い方だな……」

 

「私の主人公パーティーに前衛の乃木さん、切り札の竜胆君……あとは、高嶋さんも……」

 

「杏一人残し提案はやめろ、ゲーマーならバランスの重要性分かるだろ?」

 

「……むぅ」

 

「友奈と杏で居残り。居残りはもっと増やしてもいいくらいだ」

 

 現在の勇者は前衛二人、後衛二人。

 そこから『器用で強い者』が一人ずつ選抜され、ティガの随伴に据えられた。

 それが若葉と千景である。

 

「竜胆君、どういうルートで行くの?」

 

「ちょっと待て、杏に色々教わったんだ……

 ええと、俺達は、徳島の大鳴門橋から出立する。

 そこから神戸、大阪、京都、名古屋を通って、中央自動車道を通って諏訪に行く。

 ざっくり言うと"北東の諏訪に向かって大きな道を選んで走ろう"ってことだな」

 

「なるほど」

 

「四国から諏訪までは直線距離で400km。

 単純距離で500kmってとこか。

 ティガブラストで全力一直線に飛んだら……40秒くらいだな」

 

「勇者が竜胆君を抱えていくなら……

 体力の消耗を抑えて、道なりに進むとして……一時間から二時間といったところかしら」

 

「移動は基本、勇者任せになると思う。頼むよ」

 

 諏訪がどうなっているかは分からない。

 最悪のパターンなら、いくらでも考えられる。

 万が一竜胆達が外に出ている時に四国に何かあっても、四国から通信の送信と信号弾の打ち上げで危機を知らせることができれば、ティガブラストですぐに戻って来れるだろう。

 最長40秒で帰還できるというのは、本当に速い。

 

 今、人類は未曾有のチャンスにある。

 現在の地球上の星屑密度は非常に低い。

 大規模な人員の移動を数百km単位で、かつ徒歩で実行しても、成功する可能性は十分ある。

 フットワークの速いティガと勇者で、早めに状況を確認しておくべきなのだ。

 

「よし、行こう」

 

 フォーメーションは、身体能力に優れた若葉が竜胆を背負って走り、千景がその随伴として走っていく形になる。

 若葉ならば瞬時に精霊を宿して機動力を確保、竜胆を守ることもできる。

 分身の七人御先と呪術の玉藻前を選べる千景も、随伴のサポートとしては最適だ。

 竜胆を背負って、竜胆が若葉にしっかり抱きつくと、若葉は変な顔をした。

 

「……おい、変なところに触るな」

 

「若ちゃんに変なところとかないだろ」

 

「そういうことを言ってるんじゃない!」

 

 竜胆は神妙な顔をする。

 そう、今こそ。

 勇者に背負われて諏訪まで走っていくぞ、というこの時こそ。

 普段鍛えたデリカシーの発揮し時だ。

 

「最大限に気を使ってるんだが……

 いや、不快にさせたならごめん。そこは謝る。

 でも触っちゃいけないところとか、言ってくれたら次から気を付けられるからさ」

 

「……お前の息が、私の耳に」

 

「ああ、俺の息が耳に触ってて……って言われなきゃ分かんねえよ!」

 

「分かったならもういいだろう! 文句があるなら降ろすぞ!」

 

 デリカシー発動、微妙に失敗。

 どうやら若葉は、耳が敏感で弱いらしい。

 友達(ライバル)に知られたくなかった弱点だったらしいが、背負われた竜胆の視点から見える若葉の耳が赤くなっていることは、気のせいではないだろう。

 

 竜胆の方からは若葉の表情は見えないが、若葉の表情が見えている千景は、じとっとした目で若葉をじっと見つめている。

 こういうデリカシーが要される案件はちょっと避けたいな、と思った竜胆は、次善を求めた。

 

「ちーちゃんに背負ってもらおうかな」

 

「……え」

 

 別に千景に運んでもらっても、多少のリスク変動がある程度のことでしかない。

 竜胆からすればどっちでもいいのだ。

 が、千景は突然そういう話を振られて、盛大にうろたえ――要するにキョドり――何故か自分の体を腕で隠し、おどおどと上目使いで竜胆の様子を伺い始めた。

 

 "異性に体に触れられたくない"という羞恥心が目に見える。

 男を体に抱きつかせるくらいならさして気にしない、男よりも男らしい若葉が変なのであって、千景の反応は至極まっとうだった。

 

「……の、乃木さんでいいんじゃないの? 私は、その……」

 

「思春期だな、ちーちゃん……」

 

「!?」

 

「一足先に大人になった俺は娘の成長を見るようで、嬉しいやら寂しいやら」

 

「は?」

 

 竜胆のその台詞だけは、聞き流せなかった。

 千景はそれだけは聞き流せない。

 竜胆が大人ぶって千景を子供扱いするその言動に、千景は至極イラっときた。

 すっ、と千景の細い手が竜胆の頬に触れる。

 竜胆がちょっとドキッとしたのが、千景には手に取るように分かった。

 

「あなたは……大人になったんじゃなくて……今でも子供……なんじゃないの?」

 

「や、やめようなそういうの」

 

「……ふん」

 

 千景が"勝った"と言わんばかりに、得意げな顔をする。

 精霊とは心にも大なり小なり影響するもの。

 男を手玉に取る稀代の悪女・玉藻前の影響は、ほんの僅かにであっても千景の中に残っているのかもしれない。

 使い手の千景がその手のジャンルでポンコツな子でなければ、日常生活の中でも効果的に活かせたのかもしれない。

 ポンコツでなければ。

 

「若ちゃん、頼んだ」

 

「いや、今の流れなら千景に頼んでもいけたのでは……」

 

「若ちゃんほど安心して体を預けられるやつがいるか。

 頼む、乃木タイプ若葉号。お前が今一番信頼できるレースマシンなんだ」

 

「誰がレースマシンだ。千景に抱きつくのが恥ずかしくなったんだろう、思春期め」

 

「……はっはっは」

 

「笑って誤魔化すな」

 

「女の子女の子してる柔らかい体より、若ちゃんのちょっと筋肉ある体の方が落ち着くんだ」

 

「お前な!」

 

 千景の誘惑(笑)で変に意識する状態になってしまった竜胆には、若葉の筋肉による癒やしの方が心地良い。

 今は女性らしさより、筋肉の方が竜胆の癒やしになってくれていた。

 

 その時、何かが竜胆の鼻孔をくすぐる。

 それが花の香りであると、嗅覚が判別する。

 嗅いだ覚えのある香りだった。

 竜胆が誕生日に贈ったシャンプーの香りだと気付いた時、竜胆はぐっとくる。

 "誕生日に貰ったものは使ってるぞ"と、こういうところで言葉無く伝えてくる若葉に、竜胆は途方もないイケメン力を感じた。

 

 贈ったものがちゃんと使われているということは、単純に嬉しいものだ。

 竜胆の中の対若葉好感度が、また上がった。

 そして気恥ずかしくなった竜胆が、"女の子の匂いを嗅がないように"と無言で自分の鼻を若葉から離す。

 当然ながら、若葉はそういうことを敏感に察する。

 

「……お前なぁ」

 

 苦笑してから、若葉はどこか好意的な表情を浮かべていた。

 

 出発直前、そこにひなた、杏、牛鬼を抱えた友奈がやってくる。

 

「忘れ物はありませんか?」

 

 ひなたがチェックしてくれた荷物は万全だ。

 野宿も難しくはない装備が備えられている。

 ……本当は、こういう野宿も見越した結界外活動は、サバイバル趣味の球子こそが向いているのだが、いない人のことを言っても仕方ない。

 

「頑張ってください! ……無茶はしない程度に、ですよ?」

 

 杏は応援して、それから竜胆と地理の知識のチェックを始めた。

 杏も心配で心配で仕方ないに違いない。

 竜胆に知識を叩き込み、今もチェックしていることからも窺える。

 どこをどう見ても、杏は"成果"ではなく、"無事"を求めていた。

 

 そして、最後に友奈が。

 

「いってらっしゃい! 若葉ちゃん、ぐんちゃん、リュウくん!」

 

 シンプルな声を、三人にかけた。

 

「ああ。留守を頼んだぞ」

 

「……いってきます」

 

 若葉が堂々と、千景が照れ気味な物言いをして。

 

「友奈」

 

 竜胆が、片手を上げて。

 友奈がその意図を無言で察する。

 

 笑顔の友奈と、笑顔の竜胆で、いってきますのハイタッチ。

 

 そうして彼らは、諏訪に向けて旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブルトンによって歪められた時空の残滓、微細な空間歪曲は、時間経過で消えていく。

 竜胆達が四国を出立した後、若葉が使っていた通信機が音を立てる。

 使われていない無線機のはずだった。

 諏訪との通信が途絶えて以来、電源だけは入っていたものの、四国の外からの通信など一切入ってこない無用の長物であるはずだった。

 

『あれ? 繋がった? もしかして繋がってる?』

 

 そこから、少女の声が響く。

 

『誰か、そこにいますか?

 いるのなら、誰か分かる人に話を繋いでください!

 私は白鳥、諏訪の白鳥歌野です! 諏訪の勇者が話があると、誰かに伝えてください!』

 

 遠くの地より、竜胆達と入れ違いになるように、四国へと届く声。

 

『今の諏訪は大ピンチです!

 諏訪の神様が、四国に救援を要請しろと!

 今の四国には、諏訪を助ける理由があると、神様はおっしゃられています!』

 

 それは助けを求める声であり、同時に、救援を引き出す交渉のようでもあった。

 

『諏訪の神様が、ウルトラマンティガの仲間に、渡したいものがあると言っています!』

 

 諏訪の地に、何かがある。

 諏訪の地で、何かが起こっている。

 

 神と星の力を束ねたウルトラマンガイアSVすら倒したゼットがいる以上、人類の終焉はもはや覆し難い決定事項。最悪の絶望である。

 それを覆すものなど、そうそうあるわけがない。

 だが、"何か"が諏訪にあることは間違いない。

 

『どうか、諏訪の皆を助けてください! ……希望を、次に繋げてください!』

 

 次なる出会いと、次なる希望、未だ来ていない絶望が、竜胆を待っている。

 

 良くも悪くも、生きてさえいれば『次』はある。

 

 彼らの未来は、まだ決まりきってはいなかった。

 

 

 




 次話から最終章です。
 正直ここから先の話は最終回まで一箇所を除いてひと繋がりの上、基本的にグッチャグッチャのドロッドロなので、最終章に入る区切り線はどこに置くか迷いました。
 話の流れ自体は変わらなくて、章区切りをどこにおいても良かったからです。
 でもここに置くことに決めました。最終章が一番長く感じる話仕立てが一番いいと思うので。

 ゆゆゆいによると香川の讃州中学勇者部から愛媛(のどこか)まで10分だそうなので、たぶん原作の神世紀勇者の走行速度は大雑把に分速10kmってとこだと思われます。
 戦闘速度ではないですが、移動速度は時速600kmくらいってことですね、大雑把な上仮定だらけですが。
 ちなみに一切旋回や消耗を考えないティガブラストの直線全力飛行がマッハ30弱。秒速10km。
 時拳時花の冒頭の飛行戦速度がマッハ10、秒速3.4kmです。
 ハイパーゼットより飛行速度が遅い原作ハイパーゼットンはマッハ33ですね。
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