夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した   作:ルシエド

39 / 63
 ある事柄に対する個人的な呟きですが、突風(ブラスト)竜巻(トルネード)の名を見るに、ダイゴティガには受け継がれなかっただけで、オリジンのティガは風属性のウルトラマンだったんじゃないかなと思うことがあります。
 風光属性→闇属性→三タイプ光属性になった、みたいな。
 まあ想像です。

 では、長い最終章の始まりですー。


第四幕 愛憎の章
諏訪 -エンカウンター-


 白鳥(しらとり)歌野(うたの)は勇者である。

 

 2015年の夏、ティガが闇に魅入られ、他の勇者達が選ばれた時期に、歌野も同様に選ばれた。

 彼女を選んだのはタケミナカタ。

 天の神に敗北した地の神が一柱。

 タケミカヅチに敗北したタケミナカタは諏訪の地に逃げ込み、そこで天の神々に敗北を認め、諏訪の地の守護神となったという。

 

「うたのん、ちょっといい?」

 

 そんな彼女に、諏訪の巫女である藤森(ふじもり)水都(みと)が話しかけた。

 

「どうしたの、みーちゃん?」

 

 太陽のような笑みで、農作業中の歌野が答える。

 彼女は戦いの中でも凛々しく、雄々しく、美しい。

 だが歌野を知る者達は、歌野が戦う時の姿を見たことがある者でさえ、『彼女は戦っている時よりも農作業をしている時の方がずっとそれらしい』と言う。

 農作業がよく似合う、そんな少女だった。

 

「土地神様が、また結界の範囲を狭めて、結界の強度を引き上げないと危険かもだって」

 

「……そっか。うん、分かった。準備しておくわね」

 

「いいの? それだけ?

 今の土地でもギリギリなのに、これ以上結界を狭めたら、皆の生活が……」

 

「でも、しょうがないでしょう?」

 

 諏訪の土地もまた、四国同様、土地神の結界によって守られている。

 以前は諏訪湖周辺全体を包む規模の結界があった。

 だが、今はもう無い。

 

 諏訪の結界は、神が立てた御柱(おんばしら)に沿って結界が展開され、柱が壊れない限り結界も壊れないというもの。

 バーテックスはこれを壊そうとし、勇者歌野がこれを守る。

 四国が神樹を守るタワーディフェンスならば、諏訪はこの御柱達を守るタワーディフェンスであると言えるだろう。

 

 だが、勇者一人に守りきれるものではなく、バーテックスの襲撃規模が増してくれば、結界強度も足りなくなってくる。

 土地神は結界の範囲を縮小して強度を上げることを繰り返し、なんとかバーテックスの襲撃に耐え続けていた。

 

 結界内の人々が暮らせる範囲は日々減り、そのたびに居住区や農地などを放棄する繰り返し。

 諏訪湖周辺一帯に暮らせていたのももはや数年前の話であり、人々が暮らせるのは、もはや諏訪湖南東の一部のみとなっていた。

 

「でも、また手放さないといけない農地が……」

 

「それは確かに惜しい、惜しいけど……!

 また耕して、新しく作ればいいだけの話。

 農地は逃げないんだから、後で取り返せばいいのよ!」

 

「……うたのんらしいなあ」

 

 また結界を縮小しなければならない。

 そうすれば、多くの居住地や農地を放棄することになるだろう。

 諏訪の地において、四国と最大に違う点が一つある。

 

 それは、自活を求められていること。

 食料ですら、自分達で作っていかなければならないということだ。

 

 諏訪の神に、神樹ほどの力はない。

 そもそも、"日本の八百万の土地神の結集体"が神樹である。

 数こそが力。その総出力は他の神と比べても抜きん出ていた。

 天の神の干渉やバーテックスを弾く四国結界、時空に干渉する樹海化、四国のインフラ維持や食料・酸素を初めとする供給。全てを賄っている神樹が規格外級なだけなのである。

 

 そんな四国ですら、たびたびバーテックスとの戦いで力不足が露呈しているのだから、諏訪の方が地獄のような困窮に遭うのは、当然のことなのだ。

 

 農地が減れば食料の供給も減る。

 新しい農地を開拓していかなければいずれ餓死する。

 居住地が減ったなら、住む場所にもやがて問題が出てくるだろう。

 

 『衣食住』と言うが、今の諏訪には衣を作れる者も設備もなく、食を安定して供給するあてもなく、住を確保できるほどの土地もない。

 そしてこの結界縮小は、また何度でも起こる可能性があるのだ。

 いずれは、今テントを立てて居住区にしているような土地も、居住区ではなく農地として使わなければならなくなるだろう。

 住を捨て、食を取らなければ、人が死ぬからだ。

 

 こんな状況で、もう四年。

 諏訪は夏の昼には30度以上まで気温が上がり、冬の夜はマイナス5度まで気温が下がる。

 今の諏訪だと、次の冬は凍死者が出てもおかしくはなかった。

 ……それ以前の話で、次の農地の用意と食料の生産が間に合うか、冬まで保つのか……というレベルの状況ではあるのだが。

 

 四国も地獄だったと言える。

 だが諏訪は、それとは別ベクトルに地獄だった。

 

「ほら、そんな顔しないで、みーちゃん」

 

 そんな中、白鳥歌野は、いつも太陽のように笑っている。

 

「ポジティブ、ポジティブ! 俯いてたって、何も変わらないんだから!」

 

「うたのん……」

 

 歌野はポジティブ。水都はネガティブ。

 だがそんな一言だけでは言い表せないほどに、歌野は強く、前向きだった。

 

 四年前。

 バーテックスが襲撃し、諏訪湖周辺に結界が張られたあの日。

 歌野は神に選ばれた時、結界の中に居た。

 他の勇者達は大なり小なり、その身に危険が迫っていて、自分が生きるため、周りの人を守るため、そのために武器を取った側面があった。

 

 球子や若葉のような、自分を守ることを度外視して他人を助けるために動いた者もいたが、歌野だけは、勇者になったその瞬間、安全圏にいた。

 だから、歌野は選べたはずなのだ。

 結界の中でじっとしていることを。

 けれど、そうしなかった。

 結界の外で、襲われている人を見たから。

 迷いなく"安全"を投げ捨て、歌野は僅かな神の力を頼りに結界の外へと飛び出し、多くの人を結界の中にまで逃げ込ませてみせた。

 

 そうして歌野に助けられた、"助からないはずだった者"の一人が、藤森水都である。

 

「そうだね。私もうたのんを見習わないと」

 

「みーちゃんはみーちゃんのままでいいと思うけど、前向きなのはいいことね!」

 

「うん」

 

 四年前。

 諏訪には絶望しかなかった。

 

 天から舞い降りて、人を喰らい、その恐怖で人の心を壊す化物。

 四国の1/100もない結界内の面積。

 止まるラジオ。映らないテレビ。

 断絶した電気。流れるはずもない水道。食料のあてもなく、逃げ場もない。

 そして、戦える者は小学生の勇者のみ、神の言葉を聞ける巫女も小学生の少女が一人。

 これで絶望しないわけがない。

 

 諏訪でも人間同士の諍いや争いは起きたが、それも四国と比べればずっと小規模だった。

 何故か? 理由は明白だ。

 内輪揉めができるほど、人に余裕が無かった。

 大規模な争いができるほど、多く人が生き残っていなかった。

 

 他人を蹴落としてまで生きようとする人がいないほどに、皆絶望し、諦めていた。

 

 トマスの自然権についての話を思い出せば分かる。

 人間が他人を蹴落とそうとするのは、未来にしたいことがあるからだ。

 他人を犠牲にしようとするのは、生きたいからだ。

 生きることを、諦めていないからだ。

 四国の人間は諦めず"生きたい"と叫ぶ醜悪であり、かつての諏訪の人間は諦めた虚無だった。

 

 醜悪と虚無。

 どちらが悪いのか、という判断は、人によって分かれるだろう。

 だが諦めと虚無の中、かつての歌野は、こう叫んだ。

 

―――諦めてはいけません!

 

 歌野は言った。

 生きるために、自活が必要だと。

 魚を獲って、畑を耕し、生きるために必要なものを作っていかなければならない、と。

 

―――私達はまだ、生き抜けるはずです! 立ち上がれるはずです!

 

 皆諦めていた。

 誰も歌野の言葉に応えなかった。

 白けた顔で無視をして。

 何もしないまま鼻を鳴らして。

 歌野を罵倒するものすらいた。

 

―――どんな災害に遭っても、人は生き抜いてきました、だから、今度だって!

 

 白鳥歌野は諦めない。

 何一つとして諦めない。

 朝に起き、農家の娘でも無いのに、勉強して畑を耕す。

 農業に息を切らしていたところに、バーテックスの襲来警報。

 バーテックスと命がけで戦って、ボロボロになって帰って来る。

 傷の手当てを終えたなら、昼からまた畑を耕す。

 諏訪湖の魚を取ろうとして、漁師の娘でもないので、悪戦苦闘して、釣果はゼロ。

 畑に種を撒いた頃には夕方で、ヘトヘトになって家に帰る。

 そして戦ったこともない彼女は、家に帰ってからも武器を握って、武器の扱いを練習しないと、バーテックスとは戦えない。

 夜になったら訓練をして、農地を作る勉強もする。

 

 ずっと、ずっと、一人でやっていた。

 たった一人で畑を耕し続け、たった一人で戦い続けた。

 一人で食べるものを確保し、皆に分け与え、皆の住む場所を守り続けた。

 誰も彼女の助けにはなれなかった。

 誰も彼女の救いにはなれなかった。

 そうして一年。

 一年間、ずっと孤独な戦いが続いた。

 

 なのに。

 

 白鳥歌野は、一度も弱音を吐かなかった。

 白鳥歌野は、一人の犠牲も出さなかった。

 白鳥歌野は、いつも笑顔だった。

 

―――前を向きましょう!

 

 強く、眩しく、周りを照らす心。

 彼女の在り方は、"本物の太陽"だった。

 その心には、誰よりも強い、他人の心を照らす輝きがあった。

 各神話に存在する太陽の神ですら、彼女の心の太陽には敵わない。

 

 一年を過ぎた頃、ある女性が申し出た。

 私も手伝うよ、と。

 

 その女性に、別の男の子が続いた。

 僕も何かできることあるかな、と。

 

 一人、また一人と、希望を捨てない歌野に皆が手を貸し始める。

 ある者は畑を耕した。

 ある者は魚を獲るようになった。

 ある者は生活に使える物を作り始めた。

 

 やがて、人々の顔に笑顔が戻り始めた。

 自分にできることをする。

 頑張っている白鳥歌野がくれた想いに応える。

 前を向いて歩き続ける。

 

 希望を捨てない歌野の姿が。

 希望を、信念を、在り方を、どんな時でも揺らがせない彼女の在り方が。

 "他人を変えよう"だなんてことは一度もしないままに、周りの人達を変えていた。

 

―――どんなに辛くても、人は必ず立ち上がれます!

 

 『どんなにつらい目にあっても、人は必ず立ち上がれる』。

 

 歌野が呼びかけたその言葉が、諏訪の人々にとっての合言葉になっていた。

 

 2019年現在。

 諏訪湖周辺全域を囲んでいた結界も、もう諏訪湖南東の一部だけしか囲んでいない。

 諏訪の人に残された土地の面積は、もう四国の1/500も無いだろう。

 定期的に迫り来る結界の壁が、自分達を押し潰しに来ているようにすら見えるだろう。

 土地もなく、食料もなく、結界の縮小のたびに手をかけた住居や農地が失われる。

 

 けれど、諏訪の民は誰も弱音を吐かなかった。

 皆、頑張って笑顔を浮かべていた。

 一生懸命、今日を生きるために頑張っていた。

 

 『俺達が諦める時はあの子が諦める時だ』と、諏訪の全員が、歌野を見て思っていた。

 

「ボブさん、大地さん。元気にやってるかなあ」

 

「きっと元気にやってるはずよ。みーちゃんは心配性ね」

 

「心配するよ。一番危険な場所を選んでそこに行ってる人達なんだから。

 前の時、お礼言いそびれちゃったから、今度会えたらちゃんとお礼できたらいいな……」

 

「うん、そうね。私もまた、大地さん達と再会できる日まで頑張らないと」

 

 歌野は目を閉じ、この土地を守るのに手を貸してくれたウルトラマン達に、思いを馳せた。

 

 

 

 

 

 竜胆参戦時、四国にはウルトラマンが結集していた。

 それは四国に、最大の神性存在と、最大規模の人類の安全圏と、最大数の生存者が固まっていたからだ。

 だが、最初からそうだったわけではない。

 最初は、ウルトラマン達は日本の各所を守っていた。

 

 アナスタシアは北海道、時々東北。

 パワードが中国・九州。

 ガイアとアグルが四国。

 グレートが関西・中部・関東周辺だ。

 これらの個々の守護範囲はかなり流動的に変動していたが、大まかにはこうである。

 

 だが、そうして見ると分かる。

 広い。広すぎるのだ。

 結界も無いのにこの範囲は、一人が守り切るには広すぎる。

 ウルトラマンであれば"守る"ことだけはできるのかもしれないが、それは必然的に、ウルトラマン達に無理をさせることを意味する。

 

 日本各地は次第に陥落していき、ウルトラマン達は四国に結集、バーテックス達も戦力の多くを四国に集中するようになり、四国が主戦場となっていった。

 

 今の諏訪はこうだが、昔は違った。

 始まりの出会いは、諏訪がバーテックスとの戦いを始めてから一年が経った頃、歌野と諏訪の皆が手を取り合って少し時間が経ってからのこと。

 初めて、怪獣型バーテックスが諏訪を襲った時のことだった。

 

 襲撃する50m規模の敵。

 敵わぬ歌野。

 迫る星屑。

 ヒビの入る結界。

 もはやこれまでかと思われた、その時。

 

はじめましてと言っておくか(Nice to meet you)

 

 空の彼方より、銀色の巨人がやって来た。

 

 名を、ウルトラマングレート/ボブ・ザ・グレートと名乗った男は、陽気に笑って諏訪を窮地から救ってくれた。

 銀と白の巨人は諏訪の人々に歓迎され、諏訪に一時期腰を据えていた。

 

 ボブの話によれば、壊滅した中部の生存者を探しているのだという。

 そこで、生存が先に確認できた諏訪に先に来たのだそうだ。

 四国から来たボブは、諏訪を活動拠点とし、中部の生存者を探し、滅多にいない諏訪を狙う怪獣型も倒していってくれた。

 中部に生存者は見つからなかったが、英雄的な彼の活躍を、諏訪を守ってくれた恩を、諏訪の者達は忘れない。

 

 力強い戦い方。

 空手の技。

 その巨体から放たれる光線。

 グレートを通して、諏訪の者達は『ウルトラマン』を知ったのだ。

 

 ボブ自身も頼りがいのある男であったことで、諏訪の者達は全面的にグレートとボブを信じていたと言えるだろう。

 短い間だったが、確かな窮地を、ボブのおかげで彼らは乗り越えたのだ。

 

また会おう(See you again)

 

「はい、また会いましょう!

 次に会った時には、別の季節の自慢の野菜を、ボブさんに差し上げます!」

 

「HAHAHA」

 

 グレートは四国に帰って行った。

 そこからはまた、歌野一人での防衛戦。

 四国のように怪獣型や十二星座が来ることもなかったが、星屑相手にも綱渡りの連続であり、バーテックス達はここをその内落とせる弱小の一つとしか見ていなかったらしい。

 バーテックスが、諏訪に本腰を入れることはなかった。

 

 白鳥歌野の勇者の力は、最初期型勇者システムにすら圧倒的に劣る。

 自動で変身する機能もない。

 武器は神の力が宿った武器一つ、服はやや動きづらい神の力が宿った衣服のみ。

 戦いを察知して、勇者の服に一々着替えて、武器を持って戦いに挑む。

 精霊は無い。

 仲間も無い。

 樹海化もなく、戦闘時の神樹のバックアップもない。

 勇者に選ばれたのが歌野でなければ、初陣で星屑に食われて死亡すらありえただろう。

 

 選ばれたのが歌野だったからこそ、諏訪の人々を誰も死なせず、戦い抜くことができたのだ。

 

 だが、それも薄氷の平和である。

 強い力を叩きつけられれば壊れてしまう平和である。

 とうとうある日、諏訪に怪獣型と大戦力がまた襲来してしまう。

 歌野一人では耐えきれない。

 諏訪の人々の半分は迫り来る死を覚悟し、残り半分はグレートが来る奇跡を信じ。

 そして、諏訪に住まう人間の全てが、歌野を信じ、彼女と命運を共にする覚悟を決めていた。

 

「まだ……まだ! 諦めない!」

 

 そんな人々だからこそ、歌野は懸命に守ろうとしていた。

 全力で戦い、死力を尽くし、命を懸ける。

 それでも届かない。

 力の差は絶対だ。

 気合いで覆せない力の差、想いで埋められない出力差というものはある。

 

 歌野の勇者の力では、絶対に大型は倒せない。

 単機で怪獣型を倒せる今の四国勇者が強すぎるだけで、これが勇者のデフォルトだ。

 巨大な怪獣が、諏訪の世界を踏み潰さんと迫る。

 

「ぐっ……!」

 

 力はない。

 民衆に、戦える力はない。

 白鳥歌野に、この敵から皆を守れる力はない。

 だが、無いのは力だけ。

 誰一人として、諦めてはいなかった。

 

 人間が持つ諦めない心の引力が、いつの時代も、ウルトラマンを呼ぶ。

 

『おう、ウルトラマンがほしいか。なら来たぞ、今来たぞ、待望のもんが』

 

 だからこそ、北海道から四国へ向かう途中だったウルトラマンガイアは、ここに来た。

 

『よく踏ん張った! よく頑張った!

 ワシが間に合ったのは、お前らの頑張りのおかげじゃ!』

 

 二人目の来訪、二人目による救い、二人目との出会い。

 諏訪は普段からウルトラマンに守られていたわけでもないのに、これですっかりウルトラマン達を信用していた。

 それでも、ウルトラマンと歌野であれば、歌野の方を信用すると言い切れるというのが、なんとも微笑ましい。

 

 ティガダークの悪行は、バーテックス侵攻最初期段階で一気に全国的に話題になった。

 それからほどなくして日本全土が緊張状態に突入したものの、『ウルトラマン』への悪評は広まりきっていたと言っていいだろう。

 それは諏訪も同様である。

 ウルトラマンへの悪評は、ここにもあった。

 あった、だ。

 過去形である。

 

 諏訪において、ウルトラマンへの悪評はもう無いと言っていい。

 グレートとガイアが、それを払拭してくれていた。

 

 ガイアのその力強い戦いに、人々は武神タケミナカタの姿を重ねた。

 諏訪において、タケミナカタは守護神である。

 タケミナカタは土着神だった洩矢神と戦い、洩矢神の武器である鉄の輪を藤の蔓で打ち、鉄の輪を腐り落として勝利し、洩矢神を従えたという。

 

 歌野の持っている武器もこれだ。

 彼女の装備は藤の蔓、要するに鞭であり、叩いたものを腐食させる力を持っている。

 タケミナカタの加護を受ける彼女は、タケミナカタからこの武器を受け継いでいた。

 諏訪の勇者もまた、タケミナカタの偉業を体現する者。

 なればこそ、ウルトラマンガイアを"タケミナカタの如し"と評価することに意味がある。

 

 タケミナカタとの一種の同一視は、諏訪の人々にとって最大の敬意の現れでもあった。

 

『大丈夫じゃ。誰も見捨てやせんよ、この土地を、この人々を』

 

 そう言って、ガイアはこの地を去っていった。

 アナスタシアが神樹と一体化し、広範囲に助けを求めたからである。

 諏訪にそれなりに長居して傷を癒やしていた大地は、諏訪の人々からもその旅立ちを惜しまれたが、大地の一番大切な人は四国にいるのである。

 日々諏訪を守り、四国に襲来しようとしているバーテックス群を奇襲して減らすにしても、滞在の長期化には限度があった。

 帰還を優先するのは、当然である。

 

 ―――ただし。懸念が一つ。

 

 今の諏訪の人々にとって生命線である水源、諏訪湖。

 その端に、一つの氷塊が浮かんでいた。

 氷塊の大きさは高さ50m規模をゆうに超え、もはや氷山というレベルである。

 夏の太陽が当たっても、何故か一向に溶ける気配がない。

 そしてその中には、黒いトカゲのような巨大なバーテックスが閉じ込められていた。

 

「みーちゃん、あれどう思う? どう見える?」

 

「えっ……氷漬けの怪獣に見えるかな。うたのんは別の物に見えるの?」

 

「私にも氷漬けのゴジラに見えるわね」

 

「う、うたのん!」

 

「氷漬けのゴジラに見えるわ!」

 

「ゴジラじゃないよバーテックスだよ!」

 

「なーんでまたゴジラなのか……」

 

「ゴジラじゃ……もういいよ。

 でも、そうだね。おもちゃのゴジラみたいな形をしてる」

 

「あれが動いて襲ってくるとか、どんだけサプラーイズだって話よね……」

 

 五月に、ガイアは諏訪を離れて四国に駆けつけた。

 が、アナスタシアがガイアを呼んだタイミングで、ガイアが何もしていなかったわけもない。

 その時ちょうど、戦いが始まったばかりだったのだ。

 

 ガイア/大地はガイアブリザードで大型バーテックスを仕留め、星屑を一層し、急いで四国に駆けつけた。

 その時ガイアが凍結した大型バーテックスは、氷塊に包まれ今も諏訪湖の端に浮かんでいる。

 二ヶ月ずっと、溶ける気配すらないままに。

 氷の巨大さもあって、通常手段ではまるで溶かせる気がしなかった。

 

「うたのんは何が心配なの?

 氷漬けになってるんだから、普通に死んでるはずだよ。

 あそこから蘇るなんて漫画じゃないんだからありえないでしょ」

 

「いや、蘇る気がするのよね、あれ」

 

「……勘?」

 

「そう、勘」

 

「……うたのんの勘って外れたことほとんどないよね」

 

「外れることもあるわよ?

 ただ、私が勘の内容を他人に話す時は、当たるだろうなって思ったことだけ言うだけで」

 

「じゃあ当たるんじゃない!

 あ、あれ、また蘇るの? ……あ、今が七月で暑いから……?」

 

「んー、あの氷はそういう普通のことじゃ溶けない気がするな」

 

 歌野が見上げる先で、巨大な氷塊が夏の日差しで煌めいている。

 ガイアの生み出した氷の表面は乾燥し、近くにいてもあまりひんやりとはしていない。

 あんな氷を、どうやれば溶かせるというのか。

 そうでなくとも、あんな氷に包まれれば普通どんな生物だって死ぬ。

 

 歌野は人並み外れた勘の良さを持つが、勘だけで全知になれるわけもない。

 未来を予測するには知識が足りない。

 彼女の勘をもっと活かせる仲間がいないことは、彼女の不運であった。

 

「四国と通信が繋がってたなら、乃木さんあたりに色々聞けたかもしれないのになあ」

 

 歌野は少し悩ましそうにする。

 今はブルトンの影響で繋がっていないが、歌野と若葉は、距離の離れた勇者の同志――きっともう半ば友達――である。

 

 そんな歌野を見ていると、水都は自分があまり歌野の役に立てない劣等感やら、歌野に頼りにされている若葉への嫉妬やらで混ぜこぜな気持ちになる。

 そして、そんな気持ちを口にする度胸もなく。

 湧き上がった感情をぐっと飲み込んで、曖昧に笑うしかなくなるのだ。

 

「とにかくみーちゃん、皆に知らせておいて。あの氷に近付かないように」

 

「うん、分かった。行ってくるね」

 

 歌野の警告を、手空きの水都が皆に伝えにいく。

 農作業を再開しながら、歌野は諏訪湖の氷漬けの怪獣を見た。

 

(……あの氷を私が割れるか、といえば絶対に割れない)

 

 氷塊は大きく、分厚い。

 ウルトラマンか怪獣でもなければ、割れそうにない。

 諏訪はどこも海に面しておらず、周囲に山の多い内陸地である。

 だが小さな山と比べても見劣りしないほどに、その氷塊は大きかった。

 

(でも、もし、あれを割れる存在がいるのなら―――)

 

 歌野は自らの感覚に問う。

 あれを壊せるものは来るとしたらどこからだろう、と。

 歌野の視線は自然と氷山から逸れ、山を見ず、そのずっと向こうの海へと意識が向く。

 何故かその時、歌野は特に理由もなくこう思った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 何故かふと、そう思った。

 

 北海道も、沖縄も、四国も、海に面している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歌野が四国に救援を要請したその時には、竜胆達は四国を出立していた。

 それは、奇跡のような幸運だったと言っていい。

 アナスタシアが生きていたら、「若葉おねーちゃんと竜胆おにーちゃん、未来を変えられる二人だよ? そりゃもう、必然だよそれ」と言っていたかもしれない。

 

 諏訪は今、危機的状況にあった。

 出立後にスマホで大社から諏訪の危機を受け取った竜胆達は、一気に加速して諏訪を目指す。

 だが、そんな彼らが間に合うか怪しいレベルで、諏訪は危機的状況にあった。

 

「何あれ……何あれ……!?」

 

 水都が口に手を当て、悲鳴を抑え、結界内から空を見上げる。

 そこに、飛翔する怪物がいた。

 

 赤紫と白の皮膚、皮膚に付いた気持ちの悪い黒いブツブツ、サイケデリックな色合いの翼。

 爬虫類のようで、鳥類のようで、鋭い歯が生え揃ったクチバシがそのどちらでもないことを人間に知らしめる。

 怪物は巨大な体を飛翔させ、結界への体当たりを繰り返す。

 

 怪物の名は『ゾイガー』。

 超古代尖兵怪獣 ゾイガー。

 遠き海より飛んで来たりて、今の諏訪を襲う者だった。

 

「うたのん、無理はしないでっ……!」

 

 水都が、結界の外で一人戦う歌野を思い、祈った。

 

 ゾイガーは突然に諏訪に襲来し、諏訪湖の怪獣の氷塊を砕いた。

 割れた氷から抜け出したバーテックスは、歌野の勘通り再度活動を開始する。

 勘は歌野が正しかった。

 だが感性は水都の方が正しかったと言える。

 "おもちゃのゴジラみたい"と言った水都の感想は正しかった。

 

 それは、人間の子供が落としたおもちゃがバーテックスとなったもの。

 『内部が空洞のものであればなんでも怪獣に出来る』という特殊物質をバーテックスが再現し、子供が落としたゴジラのおもちゃを怪獣型バーテックスに変えたものだった。

 

 四年前、ある子供が、親と一緒にバーテックスに襲われ、ゴジラのおもちゃに祈った。

 助けて、と。

 祈りはどこにも届かない。

 そして親と一緒に食われ、おもちゃだけが地面に転がった。

 四年前には、世界各地でありふれていた悲劇。

 

 そうして、名も無き子供が「助けて」と祈ったおもちゃがバーテックスに改造され、今、諏訪の人間を殺し尽くす怪獣として利用されている。

 怪獣の名は『コダイゴン』。

 魔神怪獣 コダイゴン。

 大怪獣ゴジラのおもちゃを利用した、ゴジラの形をしたバーテックスであった。

 

「っ、まさか、映画やロードショーで見たこともないゴジラさんと戦う日が来ようとは!」

 

 コダイゴンが火を吹き、歌野がそれを回避し、結界が火に炙られる。

 

 歌野はとても器用に立ち回っていた。

 踏み潰されず、ゴジラの尻尾振りが当たらず、飛べば火炎を回避できる位置取り。

 常に位置取りを間違えず、コダイゴンが攻撃しようとしたその瞬間には、もう先読みで動き始めている。

 スペックは低いが、とにかく判断が的確で、判断ミスの無い最適解を極めた動きであった。

 

 しかし、歌野は"個人として強い"だけだった。

 彼女だけが生き残るなら、いくらでも道はあっただろう。

 だが、彼女は諏訪を守らなければならないのだ。

 

 根本的に使用する戦闘システムの性能が足りていなければ、どうにもならない。

 今の歌野は、プレイヤーが最強のゲーマーなのに、ゲームキャラのステータス設定数値が低すぎるようなものだ。

 生き残るだけならまだしも、拠点防衛は絶対的に不可能である。

 

 諏訪の結界が、ゾイガーの攻撃に耐えきれず、砕ける。

 コダイゴンの吐き出した火炎が、結界の基点である御柱と神の社を、焼き尽くした。

 

「! あっ、ああっ……!」

 

 諏訪という、人類安全圏が、消失した。

 

 もうここには人が住めない。

 神樹のように結界基点がイコールで神の命そのものではないため、神は死んでおらず、歌野の勇者の力は失われていないが、それだけだ。

 虐殺が始まる。

 結界が消えた途端、どこからともなく星屑も湧いて来ていた。

 

 "結界を壊す前に歌野に星屑の数を減らさせない"という、バーテックスの的確な戦術に、歌野は歯噛みしかできない。

 星屑が、諏訪の皆の下へと迫る。

 

「皆、逃げて下さい!」

 

 歌野は逃げろと言った。

 だが、諏訪の者達は逃げない。

 自分達が逃げれば、歌野がそれを守ろうとすることを知っていたから。

 バラバラに逃げた自分達を守ろうとすれば、歌野が確実に死ぬことを分かっていたから。

 もう、助からないだろうと、覚悟を決めていたから。

 だから。

 少しでも"白鳥歌野が生き残る確率を上げる選択"を、彼らはした。

 

 それが、今日までずっと白鳥歌野に守られてきた、諏訪の人間としての意地だった。

 

「俺達のことはいい! 存分に戦え!」

「私達を庇わなくていいの!」

「いっそお前だけでも逃げろ白鳥! お前一人なら四国まで逃げられるはずだ!」

 

 皆が一箇所に集まっていれば、歌野の視線や集中が四方八方に散ることもない。

 皆が一箇所に集まっていれば、死ぬ時もきっと一瞬だ。

 足手まとい(じぶんたち)がさっさといなくなれば、歌野は皆の思いを無駄にしないため、一人で生存のために戦うことを選ぶはずだ。

 諏訪の人々は、自分達のヒーローのことを、よく分かっていた。

 

 誰一人として自殺志願者などいない。

 生きることを諦めるような弱者など一人もいない。

 ただ、彼らは醜く生き足掻く強さではなく、生を捨て死を受け入れる強さを見せただけだ。

 

 全てが失われる運命なら。

 けれど、"一人"残せる可能性があるのなら。

 皆が皆、その選択を選ぶ。

 使命がどうとか、責任がどうとか、そんな小難しい理由は無い。

 

 ただ皆、今日まで自分達を守ってくれていた白鳥歌野のことが、好きだったから。

 その選択に、後悔は無かった。

 

「皆っ……!」

 

 そんな皆のことが、白鳥歌野は好きだったから。

 傷だらけの体で鞭を構え、皆を庇うようにして立つ。

 だが歌野の勇者としてのスペックでは、星屑だけを相手にしても守り切ることは不可能。

 そこに怪獣型二体が加われば、もはや抵抗すら敵わない。

 

 守れない。

 救えない。

 終わる。

 ここで終わる。

 全部終わる。

 白鳥歌野が全てを一人でやって皆を守り、次第に皆が力を貸して、今は一丸となって助け合う集団となった諏訪の全てが、ここで終わる。

 

 人が虫を潰すように、あっさりと、全てが潰える。

 

(神様、どうか)

 

 先行する星屑を、鞭で打つ。

 打たれた星屑が腐食し、原型を留めなくなって消えていく。

 コダイゴンやゾイガーには、おそらく傷一つ付けられないが、星屑ならば倒すことができる。

 だが、それだけだ。

 

 器用に立ち回って戦うならともかく、足を止めて皆を守るため鞭を振るうのであれば、星屑の殲滅など望めようはずもない。

 歌野は星屑に対し、圧倒的格上ではない。

 立ち回りと工夫で補って初めて、星屑達を圧倒できる、技巧の戦士である。

 

 力や出力で明確に圧倒的に敵の上を行けたことなどない。

 足を止めれば死ぬ。

 足を止めれば勝てない。

 けれど、動き回れば後ろの人達を守れない。

 

 皆が皆、仲間を思うがために足を引っ張り、自滅の道を一直線に進んでいく。

 四国の民衆とティガダークのそれと異なるようでどこか似る、自滅の道。

 

(人間は、人間の手で守るべき。

 それは分かっています。

 今日まで私達はずっとそうしてきました)

 

 それでも歌野は何も諦めず、神様に祈りながら、今の自分にできることに全力を尽くし、鞭を振るい続ける。

 

(でも、どうか、一度だけでいいんです。

 その一度の奇跡をここに持って来て下さい。

 どうか、あの人達を救える奇跡を。私はどうなってもいいです。だから―――)

 

 諏訪の守護のため弱りきった神様は応えない。応えられない。応えるすべを何も持たない。

 

 だからこそ、その祈りを聞き届けるは神にあらず。

 

 

 

 

 

 諏訪に、流星が降った。

 

 

 

 

 

 千景を置いて、大天狗を宿した若葉が超高速で上空を飛翔する。

 その腕の中には竜胆がいる。

 諏訪の窮地を察知した二人は、二人だけで先行していた。

 

 互いの顔すら見たこともないが、歌野と繰り返し言葉を交わした同志である若葉。

 何かに惹かれるように、諏訪に導かれる竜胆。

 二人は上空で切り返し、一気に急降下。

 天狗の翼で加速しながら落ちてくる二人を、ゾイガーが迎撃する。

 

「!」

 

 竜胆と若葉は、互いを信頼し、互いに任せるべき部分を任せ合った。

 

「若ちゃん頼んだ!」

 

「ああ!」

 

 若葉が竜胆の体を離し、大太刀を握る。

 大天狗の少女がゾイガーへと切りかかり、竜胆は諏訪の大地に向け真っ直ぐに落ちていった。

 

「どいてろ邪魔だ!」

 

 竜胆は落ちながら、空に浮いている星屑、自分に噛みつこうとする星屑を蹴る。

 蹴って、跳び、落ちていく。

 星屑を蹴って軌道を変えつつ加速して、星屑に落下ルートを遮られないよう調整し、星屑の噛みつきをかわしながらジグザグに空を落ちていく。

 

 星屑を蹴りながら、落ち来る人々の希望の流星。

 

 その視線が、ゴジラのコダイゴンを見据えた。

 ゴジラのコダイゴンや、地上付近の星屑もまた、竜胆の存在に気付き、見上げる。

 歌野が、水都が、諏訪の人々もまた、バーテックスにつられて空を見上げる。

 竜胆と歌野の目が合った。

 綺麗な目をした人だ、と、歌野は直感的に思う。

 

 人々が見上げたその先には、希望があった。

 

 その希望を、コダイゴンは潰そうとする。

 口を開き、そこから火炎放射器の如く炎を吐き出す。

 空から落ちて来た竜胆の体が、炎に飲み込まれていく。

 最適な迎撃。

 だがその迎撃は、ほんの一秒ほど遅かった。

 

 

 

「『ティガ』ァァァァァッ!!」

 

 

 

 叫びが闇を放出させ、少年の体を一瞬にして巨人に変える。

 変身のエフェクトが巨人の周囲に竜巻(トルネード)を、突風(ブラスト)を巻き起こす。

 それがコダイゴンの炎を吹き散らし、消し飛ばしていた。

 落下の勢いのままに、黒い巨人は拳をハンマーのようにして、ゴジラのコダイゴンの脳天へと叩き込む。

 

「―――風?」

 

 一拍おいて、しん、と人々の間に沈黙が流れる。

 されど一瞬の後には、人々の間に驚愕と歓喜の感情が流れ始めた。

 グレート、ガイア、二人に続く『三人目』。

 

「ウルトラマン……黒いウルトラマンだ!」

 

 バーテックス達は、もはや諏訪の人々など眼中にない。

 最大の脅威を前にして、一丸となってティガダークへと襲いかかった。

 ティガも身に着けた格闘技で、全方位からの攻撃に動揺もなく反撃を開始する。

 

「……あれ、ティガダークって」

 

 だが、ティガダークはティガダークだ。

 ニュースや本でその悪行を見た覚えがある者も多いだろう。

 他のウルトラマンはともかく、ティガダークは別格である。

 皆が不信感を持つには十分なほどの悪行を、竜胆は過去に行っている。

 

 殺人の罪は一生消えない。

 殺人をしたが最後、死ぬまで一生殺人犯としてしか見られなかった日本人も、歴史の中には何人もいる。

 周りの人間の偏見の目は、一生続くのが当たり前だ。

 

「いや……違う」

 

 なのに、諏訪の人々は。

 

 ティガの戦う姿を見て、諏訪を離れた二人のウルトラマンのことを、自分達を守ってくれた二人のウルトラマンのことを、思い出していた。

 

 別れが悲しかった、とても頼りになった二人のウルトラマンへの恩を、思い出していた。

 

「―――ウルトラマンが、帰ってきた」

 

 戦うティガの背中に、ボブ/グレートの背中を、大地/ガイアの背中を、皆が重ねていた。

 いつも、そうだった。

 ウルトラマンは人々を守り戦うがために、いつだって力無き人々に、その背中を見せ続けるものなのだ。

 ティガダークの背中は、諏訪の人々の目にはちゃんと、ウルトラマンの背中に見えていた。

 

「ウルトラマンが、帰って来た!」

 

 皆がティガを信じた理由、グレートやガイアとティガを重ねた理由はもう一つある。

 単純明快。

 『諏訪の人達が信じたウルトラマンの動き』を、ティガが身に着けていたからだ。

 竜胆が戦いの中で何か一つ技を見せるたび、そこにボブや大地の動きが垣間見える。

 人々はそれを心で感じ取り、ティガを信じる。

 かつてボブと大地がここで勝ち取った信頼が、竜胆を助けてくれている。

 

 ボブが竜胆に残してくれたものが、ティガダークへの悪評に打ち勝ったと言っても、過言ではないだろう。

 

「ウルトラマン……」

 

「うたのん大丈夫!?」

 

「大丈夫よみーちゃん。それより、他の皆も大丈夫?」

 

「うん、多分、大丈夫なはずだよ」

 

 疾風怒濤のティガの連撃がコダイゴンを打ち据えるのを、歌野の目がしっかりと見ていた。

 

 ティガトルネードの強烈なローキック。

 極真空手の流れを汲む、足を奪う強烈な一撃だ。

 

 足へのダメージで上体が揺れたところで、右手の掌底がコダイゴンの顎をかち上げる。

 間髪入れず、"押して飛ばすような"左手の掌底がコダイゴンを浮かし、後方に飛ばした。

 

 すかさずタイプチェンジ。

 飛び上がるティガブラストが、コダイゴンの頭上を飛び越えるようにして、すれ違いざまにその頭部に手刀を叩き込む。

 ナターシャのネクサスのような紫色が空に映え、その動きはたとえようもなく美しい。

 

 怯んだコダイゴンを後回しにして、ティガブラストの牽制光弾(ハンドスラッシュ)が、諏訪の人々を襲いかねない位置に居た星屑を、精密に撃ち砕く。

 "精密な狙撃"と言っても何ら過言でない射撃であった。

 

 そして狙撃を終えたティガは、背後から迫るゴジラの動きを肌で感じ、振り向きもしないままバックステップし、背中でコダイゴンにぶつかっていく。

 そして怯んだコダイゴンの首を腕でがっつり掴み、そのまま首を使っての一本背負いで、コダイゴンを地面に投げつけた。

 

 万トン単位のバーテックスが地面に投げつけられたことで、地面が揺れる。

 

(なんて多様で綺麗な連携。ボブ的に言えば、めっさグレート……)

 

 まるで、一つの体を複数人で使っているかのような、先の読めない多様な攻撃。

 それでいて、複数人の連携攻撃ではありえない、継ぎ目の無い流れるような連続攻撃。

 ティガの動きは、天才肌の歌野をして驚嘆せざるを得ないもの。

 

(強い……!)

 

 歌野は過去にグレート、ガイアの戦いを見たことがある。

 彼女はその上で言い切れる。

 そのどちらよりも、この黒い巨人は強い、と。

 竜胆にそう言えば、歌野が知らないガイアの最強の状態を知っているがために、きっぱりと違うと言うのだろうが。

 

 コダイゴンが、火を吹いた。

 その射線の先には、歌野や諏訪の人々がいた。

 ティガは迷わず、屈むようにして自分の体を盾にし、人々を守る。

 

「……いやはや」

 

 そしてすぐさまタイプチェンジ。

 ティガトルネードとなり、火炎耐性を上昇させる。

 コダイゴンが息切れして火を吹くのをやめ、ティガトルネードが平然と立ち上がる。

 ティガが庇った人々もまた、無傷であった。

 

 歌野は今の一行動に、ティガ/竜胆の本質を見た。

 一瞬も迷わず庇いに来たティガの姿は、彼女の信頼を勝ち取るのには十分すぎる。

 

「百の言葉より一の行動。グッドと言わざるをえないわね」

 

「うたのん、この巨人、味方なのかな……?」

 

「ええ、味方よ。間違いなく! 全力でビリーブしてオーケー!」

 

 諏訪の勇者がそう言えば、諏訪の者達も自然とティガを信じられる。

 ティガを見る皆の視線から、小さな疑いも消え失せていった。

 

 激しい空中戦を繰り広げた若葉とゾイガーは、ほぼ同時に着地した。

 ゾイガーはコダイゴンの横に。

 若葉は歌野の横に。

 それぞれが守るべき仲間の横に、着地した。

 

「あなたが……もしや、白鳥さんか?」

 

「え? どうして私の名前を? あなたも勇者?」

 

「乃木だ。こうして顔を合わせるのは初めてだな」

 

「え……えええええ!?」

 

 四国と諏訪。

 平和な世界であればいつでも会えた遠い距離。

 今の時代では永遠に会うことすらできなかったであろう遠い距離。

 那由多に等しい"絶望"という名の距離を越え、二人は出会った。

 

 以前はずっと、互いに勇者として頑張ろうと励まし合い、互いに支えになっていた関係。

 歌野は四国の勇者の存在を心の支えとし、若葉は地獄の日々を送っていた歌野から勇者の心構えをいくつも聞き、そうして互いに強さを与え合っていた関係。

 その関係が、今変わる。

 今日からは、戦場を同じくする戦友だ。

 

「四国の代表として、諏訪の人々を助けに来た。……間に合ってよかった、白鳥さん」

 

「乃木さん……」

 

 感極まった歌野だが、その気分をゾイガーの叫びが台無しにする。

 気分が悪くなりそうなほどに、気持ちの悪い鳴き声であった。

 

 叫ぶゾイガーが、空からティガトルネードへ飛びかかる。

 だが竜胆はその動きを的確に見切り飛びつきながら、ゾイガーの腕関節を極める。

 ()()()()

 最後の戦いでガイアが見せたそれを、竜胆は早くも自己流にアレンジして取り込んでいた。

 

 関節技の痛みにゾイガーが落ち、ティガは器用に二人分の体重をかけ、落下の衝撃と二人分の体重でゴキリとゾイガーの腕を折った。

 痛みに悶え苦しむゾイガー。

 すかさずティガトルネードはゾイガーの足を極める。

 関節技というものは、相手の関節をよく理解し、術理をちゃんと把握していれば、立ったままでもかけられる。足だけでもかけられる。

 

 ティガは立ったまま、転がされたゾイガーの足関節を極め、その動きを封じたのだ。

 そしてティガダークにタイプチェンジ。

 腕に光を溜め、足でゾイガーを極め押さえたまま、コダイゴンを光線のターゲットとして狙いを定めた。

 一連の器用な流れに、歌野が唸る。

 

「うわっ、なんて器用な」

 

 走るコダイゴン。

 構えるティガ。

 接近する怪獣を、巨人が光線で迎え撃つ。

 

『スペシウム光線ッ!!』

 

 あらゆるウルトラマンの光線の基礎にある必殺光線が、黒き光となって解き放たれた。

 コダイゴンがゴジラの小さめな腕で、光線を受け止めながら進む。

 腕は消し飛んだがコダイゴンは死なず、止まらず、前進を続けた。

 距離が縮まる。

 

『もう一発っ!』

 

 一発で止まらないなら、もう一発。

 二発目のスペシウム光線がコダイゴンの胸を穿つが、止まらない。

 ゴジラのコダイゴンは止まらない。

 胸を深く抉られながらも、前進を続ける。スペシウム二発では止まらない。

 距離が縮まる。

 ティガにその牙が届くまで、もう少し。

 

『―――もう一発だッ!!』

 

 だがそこに、掟破りのスペシウム光線三連射。

 流石に三発目は耐えられなかったのか、コダイゴンの前進が止まり、その体をスペシウムが貫通していく。

 コダイゴンの体が大爆発し、爆発の衝撃で少し体が揺らいだティガの隙を突き、関節極めからゾイガーが脱出した。

 

「ご、ゴリ押しの三連射……!」

 

「やだ、クールねあのウルトラマン……」

 

 水都は恐ろしいほどの直球勝負ゴリ押しに呆気に取られ、歌野はそこに感じられる男らしさに惚れ惚れとしていた。

 気付けば、若葉もいつの間にか歌野の横から、ティガの横にまで移動している。

 片腕を潰されたゾイガーの周りを、ティガブラストと大天狗若葉が動き回っていた。

 

 片腕が折られているということは、体の片側は常に死角になっているということだ。

 竜胆と若葉は対角線を意識して、常に二方向からゾイガーを攻める。

 片腕しか動かせないゾイガーは片方にしか対応できない。

 片方の攻撃は常に直撃を食らってしまう。

 二人の完璧なコンビネーションに、ゾイガーはたまらず空に飛び上がろうとした。

 

 その翼を、()()()()()()が固める。

 

「や、やっと……追いついたわ……」

 

 スピード上昇タイプの精霊を持たない千景が、遅れ馳せながらもこのタイミングで参戦。

 遅刻しながらも、最高のタイミングで間に合ってくれた。

 少しだけ飛び上がったタイミングで翼を固められたゾイガーは、姿勢を崩して慌てふためきながら落下。

 

 ゾイガーが地に落ちるその前に、ティガブラストのスラップショットと、若葉の全力炎斬撃が、ゾイガーの両翼を切り落としていた。

 

 絶叫し、不安定な姿勢で地面に落ちるゾイガー。

 自分の体重がそのまま落下ダメージとなり、ふらふらと立ち上がる。

 立ち上がるゾイガーが見たのは、腰だめに手を構えるティガブラストの姿。

 

「―――ランバルト光弾ッ!!」

 

 若葉の抜刀術の如き動きが、杏の武具のそれを思わせる光の矢を放つ。

 

 それがゾイガーの額に命中し、貫き、その全身を爆散させる。

 

 星屑、コダイゴン、ゾイガーの殲滅を完了した巨人と勇者に、人々は歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 諏訪は結界が消え、もう安全圏でもなんでもない。

 かといってすぐに何かできる状態でもない。

 生存者確認などの作業を諏訪の人々がしている間、竜胆達は歌野の家に招かれていた。

 頬に絆創膏を貼った歌野がとっておきのお茶菓子を探して並べ、水都が在庫も心もとないお茶を淹れて竜胆達の前に出す。

 

「白鳥歌野です。私達を助けていただいて、本当にありがとうございました」

 

「藤森水都です。今日ばかりは、本当に駄目だと思って……皆さんのおかげです」

 

「乃木若葉だ。こうして会うのは今日が初めてになるな」

 

「郡千景」

 

「こら、ちーちゃんそんな無愛想な……

 あ、御守竜胆です。手錠は気にしないでください。皆さんの助けになったなら幸いです」

 

 互いに頭を下げて、情報のすり合わせが始まった。

 

「諏訪は今どういう状況なんですか?」

 

「諏訪は今―――」

 

 諏訪の状況、四国の状況、お互いどういう状態かを教え合い、これからどうするかを話し合っていく。

 ここからどうするかを考えるには、絶対に必要なことだ。

 話している内に打ち解け合い、自然に敬語などもなくなっていく。

 竜胆、若葉、歌野の三人は特に会話のリズムが合うようで、会話も弾んでいった。

 千景はスマホを弄り始めた。

 ネガティブで嫉妬癖がある水都は、歌野に仲の良い人が増えるのがちょっと複雑そうだ。

 水都を見ていた千景が共感を表情に浮かべていた。

 竜胆は的確な情報交換を優先しているため、普段ならするような千景への話題振りを今日はあまりしてくれない。

 千景は少し拗ねた。

 

「あ、そういえば。ボブと大地さんはそっちで元気にやってるかしら?」

 

「―――」

 

 だが、情報交換をするということは、悲しみを伴うことを伝えなければならないということでもある。

 竜胆は歌野達に、グレートとガイアの死を伝えた。

 歌野は一瞬顔に途方もない悲しみを浮かべ、その感情をぐっと噛み殺す。

 水都はもっと露骨に傷つき、悲しみ、絶望した表情を浮かべた。

 二人の繊細さと打たれ強さは対照的で、ゆえに水都はその知らせに耐えきれない。

 

「……嘘」

 

 耐えきれなかった水都の瞳から、涙が溢れそうになっていた。

 

「ご、ごめんなさい……すみません、ちょっと、失礼します」

 

 水都が"自分のせいで話を中断させてはいけない"と思い、"ここで泣いてはいけない"と考えて、部屋を退出する。

 繊細な水都の『当たり前の反応』は、仲間を何人も失った後の四国勢に、様々な感情を湧き起こさせた。

 

 泣くべきはあの子よりも仲間だった私であるべきだったのに、と千景は仲間のために涙を多く流さなかった自分を恥じる。

 若葉は、仲間が死ぬ度にそれを乗り越えることに慣れていく自分に、けれど仲間の死の痛みに慣れない自分を、心中で自嘲した。

 そして竜胆は、水都の反応に仲間の死の痛みを思い出しながら、水都を気遣った。

 

「歌野、行ってやれ」

 

「え」

 

「泣いてる友達がいるんだ、お前の友達だろ? 行ってやれ」

 

「……気遣いの人みたいね、竜胆さん。

 でもいいの。みーちゃんは今、一人で居たい気分だろうから」

 

「む……余計なお世話だったか」

 

「余計だなんてとんでもない。

 気遣いの人はいい人だと、私は思うわ。

 みーちゃんのことを気遣ってくれてありがとう」

 

 藤森水都に対する理解なら、きっと白鳥歌野が一番だろう。

 彼女が言うなら、きっとそれで間違いはない。

 それにだ。今彼らが話すべきことは、水都についてではない。

 

「そろそろ一番聞きたいこと聞いていいか?

 ……諏訪の神様が、ティガの仲間に渡したいものって一体何だ?」

 

 謎に包まれた"それ"のことを話さない、なんて選択肢はありえない。

 

「諏訪大社には実は、秘伝の口伝の伝承があったそうなの。

 なんでもそれは、『三千万年前』から続く伝承。

 諏訪の土地神様が、()()()()()()()()()()()()()()()話らしいわ」

 

「!? さ、三千万年続いた口伝!?」

 

「信じられないでしょう? でも本当らしいの。凄い話よね」

 

 口伝には、人から人へと伝わる際に、伝言ゲームの如く内容が変化してしまう可能性がある、という致命的な欠点がある。

 だが、もしも正確に、内容が変化しないように気を付け、綿密に伝えられたなら?

 

 磁気ディスクが情報を残しておけるのはせいぜい10年。

 いい紙なら1000年。

 竹簡が2000年。

 粘土板が1万年

 石版なら3万年だ。

 だが、三千万年情報を記録しておくとなると、SF的な魔法の如き機械でも使わなければ、到底無理である。

 

 だが、それをアナログかつ、原始的な技術レベルでも保全しておく方法はある。

 それが口伝だ。

 三千万年間だろうと、人類が絶えない限り、子孫が作られ続ける限り、口伝は永遠の人の間に途切れることなく残り続ける。

 

 "人間と人間の繋がり"という、三千万年経とうがこの世界から無くなることはない情報媒体を使った、三千万年ものの記録情報だった。

 

「口伝が正しいことは、みーちゃんが神託で神様から教えてもらってるわ。

 みーちゃん曰く。

 ティガのことを話してる時の神様は、友達のことを話してるみたいだったんだって」

 

「友達……? ティガと神様が……?」

 

「みーちゃんの所感だけどね」

 

「……三千万年前か。スケールデカいな……」

 

「でも神様だったら、人間と違って、三千万年前の友情も鮮明に覚えてそうだと思わない?」

 

 竜胆は頷いた。

 神様ならそういうこともあり得ると、そう思える。

 人間は数百年あれば色んなことを忘れてしまうが、神様ともなれば三千万年前の約束だって忘れることはない、のかもしれない。

 

「口伝の内容は?」

 

「武器について。諏訪の神様は、ティガの当代の仲間にそれを託したいみたい」

 

「武器……」

 

「口伝によれば『天地揺らがす光と闇ぶつかりし時、この武の封印は解かれる』……だそうよ」

 

「天地揺らがす光と闇……? あ」

 

 ガイアとゼットだ。

 おそらくその武器とやらの封印は、『最終決戦でのみ使える』という想定であり、最強の光と最強の闇がぶつかったことを封印解除のトリガーに設定していたのだろう。

 だが、少し想定違いなことをトリガーに封印が解けてしまった。

 竜胆達からすれば、嬉しい想定外というやつである。

 

「場所は?」

 

「口伝を参考にみーちゃんが候補を絞り込んでくれたわ。

 多分、この近辺にいくつかある祠のどれか。

 諏訪の皆が落ち着いたら、早速確保しに行きましょう」

 

「オッケー、分かった。……しかし、ティガの仲間に託された神話の武器、か」

 

 日本神話の武器なのかな、と竜胆は思うが、知識があるわけでもない竜胆ではどんな武器かも想像がつかない。

 それが今の人類の窮状をどうにかしてくれる武器であると、ありがたいのだが。

 

「……あ。ああ、そうそう!

 みーちゃんが貰った神託はこれだけじゃなかったわ。

 私、土地神様にグレートから聞いていた話をあなたにするように言われてたんだった」

 

「グレート……ん? もしかして、ボブじゃなくてグレート?」

 

「そう、ボブじゃなくてグレートから聞いた話ね。

 多分あれだと思うの、"初代ウルトラマンがゼットンにリベンジした"話」

 

「!」

 

「光線吸収とバリアがあるゼットンが、ウルトラマンの新しい光線に一発でやられて……」

 

「―――!? そ、その話、詳しく頼む!」

 

「はいはい、お任せあれ。そのゼットンを倒した光線の名前は―――」

 

 昔、昔のことだ。

 ほとんど観測もされない、ある平行世界でのこと。

 初代ウルトラマンがゼットンに倒され、死に至った一ヶ月後のことである。

 これ以上強くなれないことに苦しみ、スランプに陥った初代ウルトラマン。

 だがそこに、日本全土を襲うような、怪獣の大軍勢が侵攻する。

 

 ウルトラマンは平然とエネルギーの大量消耗や身体能力低下といった欠点も無しに、日本を守りきれる数に分身するというとんでもないことをし、分身を使って日本各地で戦いを始めた。

 そうやって、日本各地を一人で守り切るウルトラマン。

 だが、再来するゼットン。

 ウルトラマンはまたしてもゼットンには敵わない。

 そこで人間の仲間がウルトラマンに撃ち込んだ回復のカプセルが、ウルトラマンを回復させ、ウルトラマンは金色の光に包まれる。

 

 そして初代ウルトラマンは、仲間の力もその身に受けて、『虹色』の"これまでにない光線"を撃ち放ち、ゼットンを粉砕したという。

 その虹色の光線の、名は。

 

「―――『マリンスペシウム光線』、って言うらしいわ」

 

 初代ウルトラマンが習得したという、()()()()()()

 "人間の仲間がいなければ撃てない虹色の光線"。

 一つの想いで撃つものでないからこその、七色。

 

 奇跡のような話であった。

 グレートの死後でないと、ティガトルネードは身に付かず、パワードの死後でないと、ティガブラストは身に付かない。

 そして、トルネードとブラストを身に付けた後でないと、スペシウム光線は使えない。

 マリンスペシウム光線のことを知っているのは光の国出身のグレートとパワードだけであり、二人が生きている間、ティガがスペシウム光線を使えるようになることはない。

 なのに、二人の死後に今は亡きアグルがティガへとスペシウム光線を伝え、グレートからマリンスペシウム光線の話を聞いていた歌野が、竜胆にそれを教える。

 天才の竜胆なら、その話だけで再現できる可能性は十分にあるだろう。

 

 何か一つボタンがかけ違えば、竜胆には絶対に伝わることのなかった必殺技。

 奇跡のような繋がりの連続が、竜胆に新たな技の可能性を伝授する。

 それは、希望と言って差し支えないものだ。

 

 竜胆達が救援に来た諏訪には、打開策を生み出す希望が、いくつもあった。

 

 

 




 戦闘の才能(戦闘力ではない)だと、超古代戦士の遺伝子持ちで地球人類の理論上限界値にいる竜胆と、神世紀トップの園子、西暦トップの歌野、で三トップくらいのイメージで書いてます
 将棋初めてやらせたのに「相手の攻めてくるところと相手の弱いところがうっすら見える」とか言って強烈な一手を打ってくるうたのん怖すぎる



 ゴジラのソフビ人形から作られたコダイゴン!

【原典とか混じえた解説】

●超古代尖兵怪獣 ゾイガー
 クトゥルフ神話における旧支配者、『邪悪なる神』ロイガー。
 三千万年前の地球において、『地を焼き払う悪しき翼』と呼ばれた者。
 『海の底の邪神の眷属』。
 一体一体がウルトラマン級の力を持ち、55mというティガより大きな体を持ちながら、シビトゾイガー同様に圧倒的な数による人間社会への侵略を行う。
 原作ウルトラマンティガにおいて、世界各国の都市を焼き払い、ウルトラマンより速い飛行速度を実現した最新鋭機を多数配備した防衛隊を壊滅させ、地球規模の絶望的大被害を生み出した。
 原作のティガもまた、飛行特化の形態でないと空中戦で勝てず、格闘特化の形態でないと地上戦で勝てないというゾイガーのスペックに苦戦させられている。
 シビトゾイガーの同族。
 海の底より来たる脅威。

●魔神怪獣 コダイゴン・ゴッドジラース
 原作における、『月に咆えた魔神』。
 グロテス星人が生成する特殊物質・グロテスセルは、内部が空洞のものであれば何でも怪獣にしてしまう。
 そうして作られた怪獣が、『コダイゴン』である。
 素体が玩具や人形でも、ウルトラマンを苦戦させるレベルの怪獣に仕立て上げることが可能。
 よって、正攻法で倒そうとするとかなり苦労する。
 帰ってきたウルトラマン本編では、諏訪で祀られていた御神体をグロテス星人がコダイゴンに変え、諏訪湖を舞台に大暴れさせていた。

 帰マン本編の『コダイゴン』が一体分のグロテスセル。
 メビウス本編で登場した『コダイゴンジアザー』が約三体分のグロテスセル。
 前作・時拳時花の『コダイゴン・アナザーワン』が二体分のグロテスセル。
 『コダイゴン・ゴッドジラース』のグロテスセルは一体分のはずなのだが、妙な化学反応でも起こしたのか、グロテスセル一体分以上のパワーを発している。

※余談
 ウルトラマンを知らない人は、『ジラース』というウルトラ怪獣の名前を検索してみるとよく分かる。
 アレに似てますね、ゴジラースさん。
 ……実は似た事例は他にもある、あの時代から許された荒業であった。
 ゴジラのスーツを持ってきて、襟巻きを付けて、少し色を塗って、「これがエリ巻恐竜・ジラースです!」と言い張る勇気! 現在では絶対にイエスが出ない荒業である。
 ちなみにジラースの鳴き声はゴジラの鳴き声を早回しにしたもの。
 スーツアクターも当時のゴジラの中の人を連れて来て、演技レベルでゴジラにしていたという。

 まず最初に作られたゴジラのスーツがあり、それがウルトラシリーズで古代怪獣ゴメスに改造され、ゴメスのスーツはまたゴジラに改造され、そのゴジラのスーツがジラースのスーツに改造され、またゴジラに改造し直されてゴジラの映画に出演した、と言われている。目まぐるしい。
 改造でなくなったり、経年劣化でなくなったりしたことで、現在使用に耐え得るジラースの現存スーツは一種類のみ、2014年のウルトラマンギンガ・仮面ライダー鎧武・トッキュウジャーの『三大特撮ヒーローフェスティバル』に合わせて新造したと推測された、一種類のみだと思われる。
 ちなみに、その翌年のウルトラマンフェスティバル。
 ジラースはゴジラのテーマを流しながら、初代ウルトラマンと一騎打ちをしていました。
 味を占めたな円谷!

 あ、その時のステージではグリッドマンなどが平然とサイバーウルトラマン・ウルトラマンXと共闘しておりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。