夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した   作:ルシエド

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 調べる場所によっても違うんですが、全国バストランキングは香川1位、高知2位、愛媛5位、徳島14位という結果が出たこともあって四国すげーってなります
 なお長野(諏訪)は33位だった模様


終局 -オール・エンド・スタート-

「ティガって、悪い奴なのかな」

 

 香川の街を歩いていた一人の男の子が、突然そんなことを言い出した。

 一緒に歩いていた二人の男の子二人が、首をかしげる。

 

「皆そう言ってるし、そうだろ」

「何言ってんの?」

 

「んー、でもさー、悪者っぽくないじゃん」

 

「どうだか」

 

 子供の想像力では、"どっちでもいい"という気持ちすら、ややあった。

 ティガに守られている今が当たり前で、ティガが悪い奴だったらもう守ってもらえない、という不安さえ子供達は持っていない。

 良い言い方をすれば、誰もティガを疑ってはいなかった。

 

 ティガに対する個人的嫌悪もなく、恐怖もなく。

 "周りがそうしている当たり前"だから、ティガを悪者と定義する子供達。

 

 今の四国の人々の状態は、動乱の極みにあった。

 ティガを支持する者、嫌う者、少数だがバーテックスとティガが組んでいる説を提唱する者や、その説を支持する者までいた。

 それほどまでに多様に、皆が皆思い思いに、ゼットの言葉を解釈していた。

 

 

■■■■■■■■■■

 

「聞け!」

 

「もはや四国に残された巨人はティガダークのみ。

 御守竜胆とその仲間だけが、私を倒すことができるだろう。

 次の戦い、御守竜胆達が負ければ、私はそのまま世界を滅ぼす。せいぜい勝利を祈るがいい」

 

「もはやお前達は他人事ではいられない。当事者だ。

 いつまでも弱いまま、醜いまま、そのままでいられるとは思うな」

 

「私は、守ってもらっておいて、他人事のようにウルトラマンを見る者を許さん」

 

「信じるがいい! 私が貴様達を滅ぼす未来を!」

 

「信じるがいい! ただ一人残った最後のウルトラマンが、奇跡を起こす僅かな可能性を!」

 

「天はいつでも―――貴様らを見ているぞ!」

 

■■■■■■■■■■

 

 

 人々が信じたウルトラマンは、皆死んだ。

 残った巨人はウルトラマンに非ず、ティガダークのみ。

 四国の人々の不安は推して知るべし。

 ティガ擁護も、ティガ叩きも、一気にその熱を加熱させていた。

 

 ある者は言った。

 もうティガを信じるしかないはずだ、と。

 ある者は言った。

 ティガが最後に残ったのも不自然、バーテックスがティガを人々が支持するよう仕向けるようなことを言っているのも不自然だ、と。

 

 ある人は、手の平を返してティガ排除の考えをやめ、ティガを応援することにした。

 ある人は、自分が攻撃されるのは嫌だから、ティガを応援も非難もしなかった。

 ある人は、ティガを応援しない奴はクズだと周りを罵倒し始めた。

 ある人は、そういった人間を見て、ティガとそれに味方する人間もまとめて悪と見る気持ちを大きくしていった。

 

 それぞれにティガを信じる理由があり。

 それぞれにティガを信じない理由があった。

 

 最悪なのは、ティガが嫌われる理由の多くが今や、ティガと直接関係ないという点にあった。

 

 ティガの過去の、ティガの悪性を盲信する者。

 当時の報道が正しいと思い込もうとする者。

 周りに合わせるためにティガへの非難を継続する者。

 引っ込みがつかなくなった者。

 そして『ティガ信者が嫌いだから』という理由でティガを嫌う者。

 

 今現在、かなり多くの人間が、『こういう理由でティガを嫌っている』というだけでなく、『前言を撤回したくない』『自分が間違っていると認めたくない』『だからティガには悪人でいてほしい』という思考から、『ティガが悪という結論ありきで、悪である理屈を探していた』。

 なのでティガが悪であるという理屈には一部無理があるのだが、それを指摘したところで、そんな大人達が心改めるということはないだろう。

 彼らは結論ありきで見つけた理由を盲信しているからだ。

 

 ティガを嫌うという結論ありきで、ティガを嫌って当然、と言い切る理屈を探している。

 

 ただ、これを異常と言うのは少し違う。

 "自分の心を守るため"の結論を探すのも人間として普通の心理。

 そのために結論ありきで理屈を探すのもよくあることだ。

 どこにでもある普通の醜悪である。

 牽強付会、漱石枕流といった四字熟語は、こうした人間が昔からずっといるということを証明しているようなものだろう。

 

 更に言えば、今の四国にはシビトゾイガーがいる。

 世間が乱れれば乱れるほどに、シビトゾイガーによる話題誘導は効力を増す。

 世間はカミーラの望んだ通りにしか動かなくなっていく。

 

 だが子供は、そういった醜悪を持つ大人のような生き物には、なれない。

 色んな意味で未熟で、色んな意味で頑なになりきれていない。

 だからたびたび揺らぐのだ。

 ティガは悪い人なのかな、と。

 

「でも……おれ達の味方だと思いたいよな。ティガ」

 

「ん」

 

 四国は今、最大の危機を突きつけられ、とんでもない混乱と動乱の中にあり、ティガを非難する者と肯定する者のどちらが多いかすら分からない。

 毎日毎日、違う意見の人間達が罵倒し合い、人間同士の憎しみや確執が加速しているというのが現状だ。

 シビトゾイガーは、四国の人類総数から見れば圧倒的少数である。

 シビトゾイガーが適度に煽っていくだけで、人は勝手に、バーテックスに対する敵意よりも急激に、違う意見の人間に対する敵意を膨らませていく。

 

 なんとも奇妙な話だが。

 彼らは仲間割れがしたいわけでもないのに、人間同士で争い合いたいわけでもないのに、『あいつらが俺達の方に絡んで来るんだ』という意識を()()()持ったまま、言い争っている。

 自分の主張の正しさを疑っておらず、自分が他人を不快にさせていることに無自覚で、自分が言い争いの原因になっても気付かない。

 シビトゾイガーが煽るには、格好の状況が出来上がっていた。

 

 この子供達はそういった人の輪から少し外れた、子供達のコミュニティの中に生きている。

 

「いいやつだったらいいよね、ティガ」

 

「んだね」

 

 彼らは、そんなに難しいこと考えずに、日々を生きている。

 

「かっこいいしな、ティガダーク」

 

「かっこいいしね」

 

「かっこいいもんね」

 

 昔から、特撮番組で"悪役が子供に大人気になる"ということは、かなり多いらしい。

 子供はその人が悪いことをしていようが、強くてかっこよければ好きになるからだ。

 だから子供達はティガも好きだった。

 かっこいいからだ。

 黒に染まったティガダークは、男の子達を魅了する。

 

 子供達が大人ほどに、ティガが正義か悪かを気にしていない理由は単純だ。

 かっこいいから、どっちだろうと好きになる。

 正義だろうと悪だろうと、かっこよくて守ってくれるならそれでいい。

 それだけなのである。

 『ヒーロー』も『ダークヒーロー』も、子供達は好きなものなのだ。

 

「どうなんだろうなあ、本当の話は。おれさ、遠目に見たことあるんだよな、人間のティガ」

 

「マジ?」

 

「マジマジ。ふつーのあんちゃんだったよ。体でかかったけど。

 なんか人殺しには全然見えなくて、その時はそれが逆に怖かったなぁ」

 

 分かりやすく悪人な殺人犯と、一見していい人に見える殺人犯と、怖いのはどちらだろうか。

 この子供に関しては、後者の方が怖く感じたようだ。

 

「いい人なのかな」

 

「一番大事なのはいい人かどうかではないのよ」

 

「?」

 

 そんな子供達に声をかける少女がいた。

 

「一番大事なのは、いい人だと信じられるかどうか、なの。

 本当にいい人であるかどうかなんて、中々確かめられないもの。

 実際にいい人でも、周りがいい人だと信じられない人じゃ意味がないわ。

 だからこそ……"周りに信じられてる人"ってのは、価値があるんだから」

 

「誰この人?」

「知り合い?」

「おれは知らん」

 

 その少女は、唐突に湧いてきた農夫であった。

 

 その少女の手に握られるは大きなショウガ。

 ショウガの花言葉は『信頼』である。

 

「心に従いなさい。

 信頼は頭じゃなくて、胸の奥から湧いてくるの。

 その人が信じられるかどうかは、あなたの心だけが知っているのよ」

 

「あなたは一体……?」

 

 ふっ、と少女は笑み、鼻先に付いた泥を指先で拭った。

 

「ファーマー・ザ・キング―――白鳥歌野」

 

 この場にツッコミは不在である。

 

「ふぁ……ファーマー・ザ・キング……!?」

 

「ファーマー・ザ・キング……まさか……!」

 

「知っているのかよっちゃん!?」

 

「いや別に。特に意味もなく『まさか』って言っただけだけど」

 

「紛らわしいんだよォ!」

 

 ファーマー・ザ・キングは子供達に背を向け、去っていく。

 

「私はティガを信じてる。あなた達も自分の心に従ってみなさい」

 

 四国という閉じた空間の外からやってきた諏訪の者達は、四国に"ティガにとっては良い"新しい風を吹き込んで、子供を中心に小さな変革をもたらし始めていた。

 ファーマー・ザ・キングが去った後にも、子供達の胸の内に残るものはある。

 

「農家のお姉さん……」

「農家……でいいんだよな多分」

「……自分の心に従え、か」

 

 愚民を導いてこその王。

 

 

 

 

 

 農業王はもののついでに子供達を諭し、当初の予定通り飲み物を買って畑に帰る。

 畑では歌野がいない間もせっせと畑を耕していた竜胆が、汗をタオルで拭いていた。

 その手には手錠がない。

 その手に握られているのは鍬である。

 首輪に続き、大社は手錠も外してくれたようだ。

 これでもう、耳に付いた発信機くらいしか、彼の体に取り付けられた抑止力はない。

 

「おかえりー」

 

「ただいまー」

 

 歌野が望めば、農地を手配するくらいの度量が大社にはあったし、歌野が頼めば、一緒に農地を耕してくれるくらいの寛容が竜胆にはあった。

 

「ティガって四国だと評判よくないのね」

 

「まあな」

 

 竜胆が苦笑する。

 言い換えれば、"苦笑で済ませてしまっている"。

 苦笑で終わらせて、民衆への仕返しも罰も与えようとはしていない。

 

 一瞬であっても、精霊・覚でその心を覗いたことがある歌野には、その苦笑から目に見えるもの以上のものを感じ取れる。

 竜胆は人の愚かさに何も感じないほど聖人でもなく、かといって自分に都合の悪い大衆意見を変えようとするほど支配的にもなれず。

 "みんなの願い"を尊重する竜胆は、とてもウルトラマンらしかった。

 

「そういう意味であんまアトモスフィアよくないな、って言ったら不快に思う?」

 

「思わんよ。素直でよろしい」

 

 歌野からすれば、今の四国の空気には、どこか懐かしいものすら感じられる。

 嫌に思いはするものの、驚きはない。

 既に一度諏訪で似た嫌な空気を感じたことがあるからだ。

 "そういう空気はあるものだ"と、割り切れる。

 

「シビトゾイガーさんがいるにしたって、ちょっと気分が悪くなるわ」

 

「歌野が教えてくれた情報、本当助かったよ。

 おかげで俺は、人間に失望しきらなくて済んだ気がする」

 

「シビトゾイガーのせいだと思えるからかしら?」

 

「ああ。……まったく、諜報戦でバーテックスに負けてるなんて怖い話だな」

 

 "シビトゾイガー"の存在を露見させたこと、これは現状歌野の最大の功績と言っていいかもしれない。それほどまでに大きなものだった。

 

 シビトゾイガーの存在は、通常露見しない。シビトゾイガーはある理由から変質した星屑だが、こんな諜報戦を行えるバーテックスなど、類似するものが他にいないからだ。

 カミーラの頭の中を覗くことでシビトゾイガーの存在を知覚できたことは、治安を維持する大社などにとっても、望外の幸運であったと言えるだろう。

 

 だが、即座に何もかも解決するという話でもなかった。

 

 シビトゾイガーの存在が発覚したのはいい。

 既知と未知では雲泥の差だ。

 だが、普通の人間とシビトゾイガーの見分けはつかない。

 しかも、他の人間を食ってその人間に化けているということは、戸籍調査や家族への聞き込みをしてすら判別は不可能だということだ。

 

 それだけでなく、シビトゾイガーの存在を大々的に公表すれば、絶対にパニックになる。

 人が人を疑い、最悪殺し合いに発展するだろう。

 ティガの支持者は、シビトゾイガーの企みだったんだ! と主張する。

 ティガの非難者は、シビトゾイガーがティガを擁護して陰謀を企んでいる! と主張する。

 おそらくは、そうなるだろう。

 お手軽に貼れるレッテルは、人と人の対立を確実に加速させる。

 

 そして事実、現在の四国には、ティガ・勇者・大社を擁護して持ち上げ、対立する意見を過激に攻撃するシビトゾイガーが居た。

 ティガ・勇者・大社を非難して"一般人の不満"を口にし、対立する意見を過激に攻撃するシビトゾイガーが居た。

 シビトゾイガーの存在の公表は、事態を最悪な方向にしか転がさない。

 

 そこで大社は一計を案じた。

 

 "天空恐怖症候群の新たな症状が発見された"と称して、『ありえないデマを流し、他人を混乱させる嗜好を得てしまう』というものを発表したのである。

 

 もちろん、これは大嘘だ。

 そんな症状などありはしない。

 だがこれで人々は、他人の話に『デマかもしれない』と多少身構えて接するようになった。

 

 また、シビトゾイガーが煽ろうとして流した噂の多くに対し、"どうせデマだろ"とレッテルを貼って話す人間の数も、これで一気に増えた。

 大社の工作で『これまでに流れたデマまとめwiki』といった風のサイトも作られ、過去にシビトゾイガーが実際に流したデマなどが、証拠や検証付きで否定され、サイトにまとめられ、拡散されていった。

 三好圭吾を中心とした大社の活動的な者達による、情報工作の賜物である。

 マスコミや報道なども上手くコントロールされ、シビトゾイガーの活動の効果は抑制されていった。

 

 『大社の嘘と偽装』。

 それが、バーテックス側の戦術に綺麗に突き刺さっていた。

 

 ティガを嫌うものはまだ多く。

 四国は全体的に、絶望、恐怖、諦観に包まれていて。

 人々を守る巨人や勇者に対する非難は、ネットを見ればそこかしこに蔓延している。

 だがまだ皆、踏ん張っていた。諦めていなかった。

 巨人も、勇者も、巫女も、大社も。

 

「ねえ、竜胆さん」

 

 歌野は竜胆に提案する。

 

「全部終わったら諏訪に来ない?」

 

「諏訪に?」

 

「四国に居ても居辛いでしょ、これじゃ」

 

「……」

 

「戦いが全部終わったら、私達は諏訪に帰る。

 諏訪は復興しないといけないから、戦いの後もベリーハードよ!

 でもね、諏訪の人で、あなたが嫌いな人って一人もいないと思うの。守ってくれたしね」

 

 それは、全てが終わった後の未来で、竜胆が何の後腐れもなく幸せになることができる、一つの道の提示だった。

 戦いの後の未来設計をあまり明確に考えられていない竜胆に示された、明るく幸せな未来の可能性だった。

 

「……嬉しいこと言ってくれるな。ありがとう、歌野」

 

 それが、竜胆はただ嬉しくて。ただ喜ばしくて。

 

「考えておくよ」

 

 だからこそ、少し考える時間が欲しかった。

 

 "自分のような罪人が幸せになる"ことを受け入れるには、抱えた苦悩に対し何か答えを出す必要があったが、竜胆はまだその答えを出せていなかったから。

 

「竜胆さんはかぼちゃみたいな人ね」

 

「かぼちゃ? いや何故野菜で例える……」

 

「カチコチで、頑丈で、重くどっしりと構えてる。

 岩にぶつかっても砕けない!

 それでいて、『強い外側』と『甘い中身』のベストマッチ!」

 

「お前の前でそんな甘いことばっか言ってたりはしてなかったはずだろ!」

 

「ふっふっふ、甘ちゃんと他人に言われる人は、大抵グレートな人なのよ?」

 

 諏訪の人達はいつでも、"他人に甘いウルトラマン"を愛し、受け入れてくれる。

 過去に何をしたかなんて関係ない。

 今ここにいる、人を守るために頑張れるウルトラマンを、諏訪の人達は見てくれていた。

 

 

 

 

 

 諏訪の勇者がそうであるように、諏訪の巫女もそうであった。

 畑仕事を終えた竜胆が、歌野がした話をすると、話を聞いていた水都がくすくすと笑う。

 竜胆と水都は机の上に並べた本をペラペラとめくりながら、言葉を交わしていた。

 水都の膝の上では、牛鬼がくてっとしている。

 

「うたのんらしいなあ」

 

「でもな、嬉しかったんだ。

 俺のこの嬉しさ、あんま伝わってないかもしれないが」

 

「ううん、伝わってるよ。御守さんはその気持ち、ちゃんと顔に出してますから」

 

「そっか」

 

 友奈から一時的に預かっている牛鬼の頭を、水都が撫でる。

 心地良さそうな声を、牛鬼が漏らした。

 

「御守さんが諏訪にいたら、それはそれで楽しそうかな」

 

「農業をひたすらやらされそうだ」

 

「あはは、うたのんですから」

 

 諏訪の二人が丸亀城の仲間に加わってから、未来のことを話す時間が増えた。

 未来のことを考える時間が増えた。

 それはきっと、竜胆にとってはいいことだったのだろう。

 

 竜胆の視線が、水都の膝の上の牛鬼に向けられる。

 なんとも不思議な存在だった。

 普通ではないことをする存在で、まだどこから来たのかすら分かっていない存在で、誰もこの存在がなんであるかを知っていない。

 確かなことは、神樹が牛鬼を認めていることと、竜胆達の味方であることくらいのものだ。

 

「牛鬼……こいつなんなんだろうな」

 

「なんというか、妖怪というより……貴船神社の貴布祢雙紙(きふねぞうし)の牛鬼みたいですね」

 

「きふねぞうし?」

 

「貴船神社の秘伝の書です。

 昔は見れる人間が限られた、秘密の書だったとか。

 ……あ、海を隔てた四国より、諏訪の方が地続きの分話が伝わりやすかったのかな」

 

 でも貴船神社は京都だから四国の方が近いのかな? なんて色々と考える水都だが、余計な思考は脇に置いておいて、話を続ける。

 

「昔、昔。

 貴船明神が全ての人を救うために、天上からこの世界に降りてきました。

 そのお供をしたのが『仏国童子』……『牛鬼』だったのだそうです。

 ところがこの牛鬼、饒舌で自分勝手なもので、神に見放され追放されてしまったのだとか」

 

「それは……なんというか、妖怪の牛鬼とは、全然違うんだな」

 

「天から地上に来た。

 神に仕えていたが、見放され、追放された。

 天から来たけれども、一時は鬼を従え天と神に反抗していた。

 それが貴船神社の伝承における牛鬼なんです。

 この牛鬼は、妖怪の牛鬼のような恐ろしいものより、それに近いかなって」

 

「まあ、なんというか、イメージ的にはそっちの方が近そうだが……」

 

 沢山本を抱えたひなたが、そこにやって来る。

 

「そういう意味では、友奈さんに一番に懐いているのも、納得かもしれませんね」

 

「ひーちゃん」

 

「友奈さんの武器は、『天ノ逆手』ですから」

 

 高嶋友奈が神より授かった武器は、唯一神話において()()()()()()()()

 天の神に地の神が負け、事代主がタケミカヅチに国譲りを迫られた時、打った特殊な手打ちであったと言われるものだ。

 

「御守さんは、前に私が天ノ逆手に関してした説明を覚えていますか?」

 

「……メモした内容はまだ大事に取ってある」

 

「……忘れちゃったんですね。

 御守さんらしいです。水都さんも居ますし、少しおさらいをしておきましょうか」

 

 天の逆手。

 これは国を奪われた大国主の息子・事代主が打ったものであるため、一部の書籍では"天を呪う所作である"と書かれることもある。

 が、実際に神話でそういう意味で使われたかというと、そうでもない。

 なので例えば、2010年発行の『古事記と日本書紀』では「この行為は呪詛ともいわれるが、はっきりしない」とすぱっと切り込んでいたりする。

 この辺に疑問符を打つ書籍は、結構多いのだ。

 

 ならば何故、天の逆手が呪詛の行為として認識されたのか。

 これは平安初期に成立した歌物語『伊勢物語』の九十六段で、他者を呪う行為として、『天の逆手を打つ』という言い回しが使われたからである。

 これが転じて、事代主が打った天の逆手に呪いの意味が付随し、事代主が天を呪った……という解釈が生まれたというわけだ。

 

 ところがこの『天の逆手は呪いである』説、現代でこそ論じられることはほとんどないが、江戸時代の論争に関する書籍を紐解くと、当時ですら色々と言われた記録が残っている。

 

 例えば1790年発行の『古事記伝』の十四巻で国学者・本居宣長は、「逆手は吉兆両方の意味で打つものである」と主張している。

 橘守部は『鐘のひびき』で「いや逆手(さかて)栄手(さかて)の意だよ文脈から見てわかんねーのか」と煽り。

 伊勢貞丈は子孫への案内書『貞丈雑記』にて、1763年に「天の逆手に呪いの意味を持たせたのは伊勢物語が本文に合わせて勝手に創作しただけだろ」とぶっちゃけている。

 

 友奈の手に宿っているのは、"そういうもの"だ。

 

 呪いでもあり、祝いでもあり。

 闇と言うことも、光と言うこともできる。

 人へ向けられた呪いの伝承が、天へ向けられた呪いであると解釈されたもの。

 なればこそ、使い手である友奈次第で、『どんな意味の逆手にもできる』。

 他者を殴る拳にも、他人に差し伸べられる手の平にもなる。

 神はその『手』を、友奈に託した。

 

 勇者の武器の中で唯一、天への反逆の意を込められた武器というものは、神に逆らい追放され鬼を率いてヤンチャしていた『牛鬼』という存在と、神話的に相性が良いのかもしれない。

 

「ひーちゃんの爪の垢でも煎じて飲めば俺の頭もマシになるかね……あ、これセクハラになる?」

 

「なりませんよ、もう」

 

 ひなたが分かりやすくまとめた神話の情報のおさらいに、水都はひなたの分かりやすい語り口への感心と、知識豊富な彼女への尊敬の両方の感情を覚えた。

 竜胆もまた、おさらいで知識を再定着させる。

 ひなたが神話に関する勉強をしたのは、若葉達のためだ。

 精霊をよりよく定着させるためだ。

 彼女が分かりやすくまとめた神話のお話は、勇者の精霊の定着率をぐんと上げている。

 

 そんなひなたを見る水都の目に、尊敬の念がこもるのは当然のことだった。

 

(ひなたさん、凄いなぁ……

 まだ全部の勇者とウルトラマンとの絡みを見たわけじゃないけど……

 皆がひなたさんを信頼してるのがよく分かる。

 私みたいにうたのんに頼りきりになってる関係じゃない。

 ひなたさんは巫女として、皆と対等で、助け合う関係を作ってる人なんだ……)

 

 水都は何もできないタイプの巫女だ。

 運動、勉強、特筆して何もできない。

 何もできない自分を恥じ、自分を嫌い、ひなたのような巫女に憧れ、尊敬する。

 が、水都は何もできないなりに頑張っていて、無力であっても人を助けようとする。

 彼女は徹底した弱者であり、彼女が振り絞る"弱者の勇気"が、周りの皆を強くするタイプ。

 

 対しひなたは、自分にできることをして、目に見える形で勇者達を支え、分かりやすく勇者達を助けている。

 神話を噛み砕いて解説し、精霊と勇者の親和性を引き上げたり、常に彼らが帰る場所を守り続けることなどがそうだ。

 そして何より、精神の安定度が水都とは段違いである。

 常に「あらあら」と言って微笑んでいそうな雰囲気がある。

 上里ひなたは、藤森水都の理想の巫女のイメージに、結構近い人なのであった。

 

「また髪伸びてきたみたいですね。切りましょうか?」

 

「うん、近い内に頼む。ひーちゃんの手付きは優しくてうっかり寝そうなくらいなんだよな」

 

「ふふふ。褒めても何も出ませんよ」

 

 良い信頼関係があるんだな、と、水都は思う。

 

「その代わりと言ってはなんですが、若葉ちゃんの新しい写真何か撮れませんか?

 できれば私では絶対に取れない、御守さんにだけ見せる表情がいいんですけど……」

 

「ひーちゃんならともかく、俺だとな……

 若葉も変に恥ずかしがるというか……女の子らしい反応で反撃してくるというか……」

 

「ああ、若葉ちゃん、男の子にそんな反応する若葉ちゃんも愛らしいです……!」

 

「ひーちゃんは若葉の話になると本当無敵の人だわ、うん」

 

「そんなに褒めないでください。照れちゃいます」

 

 良い信頼関係って言って良いのかな……? と、水都は思った。

 

「あ、ちょっと失礼します」

 

「あ、こっちもだ。ごめんなさい」

 

 その時、ひなたと水都のスマホのLINEに、一報が入った。

 二人はスマホの画面を操作し、ひなたは若葉の、水都は歌野のメッセージを見る。

 

『竜胆と子作りをすることになって―――』

 

 ひなたの心臓が一瞬止まった。

 

『竜胆さんと子作りをすることになって―――』

 

 水都の心臓が一瞬止まった。

 

「「 なっんですっかねえッこれッ!? 」」

 

「ええええっ!?」

 

 二人の巫女が我も忘れて竜胆に跳びかかり、掴みかかる。

 危うく三人まとめて転びそうになったが、竜胆が抱きとめ、三人分の体重を支えてなんとか事なきを得た。

 

「御守さんも! 若葉ちゃんも! そういうこと私に隠さない人だと思っていたのに!」

 

「確かにそうかもしれないけど俺達にどういうイメージ持ってんだお前!」

 

「なんで私に断りもなしにそういうことするんですか!?」

 

「落ち着け!」

 

 お前に許可取れば良いのかよ、と竜胆は思ったが、どういう返答が返って来ても凄く怖いことになりそうだったので、口にはしなかった。

 

「あの、あの、うたのんは私の唯一の友達で……

 ……他に親しい人なんていなくて……幸せにするのはいいけど、取らないで……」

 

「ああ、大丈夫、大丈夫、みーちゃん達の仲が疎遠になるとか天地が逆転してもないって」

 

「……私、私みたいなのは、まともに友達も作れなくて。だから、だから……」

 

「落ち着け。それと自分に自信を持て、な?」

 

 水都は歌野が自分の近くに"いてくれている"と思っていて、歌野が自分の物だとも思っていないし、自分が歌野の友達に相応しいとすら思っていないが、歌野が自分と少しでも疎遠になりそうなことは恐れてしまう。そんな子だった。

 

「待て、待て、落ち着け。

 俺は何も知らない。

 ノットギルティ、ノットギルティだ」

 

「ノットギルティ……?」

「ノットギルティ……?」

 

「確かに俺は女心が分かってないとか女の子の考えてることが分かってないとか言われるが……」

 

「ギルティ」

「ギルティ」

 

「流石にここまで何も察せてないなんてことはない!

 俺の察しが悪くて俺だけ何も気付いてないってことないから!

 俺が気付いてないだけで進行してた案件ってことはまずないからな!」

 

 その時、ひなたと水都のスマホが振動する。新しいメッセージが届いたようだ。

 

『すまないひなた、打ち間違い、消し間違いだ。今のやつは"お菓子作り"の間違いだな』

 

 すっ、とひなたの表情から混乱と興奮と憤怒が消える。

 

『ソーリィ、変なとこ消したまま送信しちゃってたわ。今のは"案山子(かかし)作り"の間違いね』

 

 すっ、と水都の表情から困惑と恐怖と絶望が消えた。

 

「勘違いでよかったですね、御守さん」

 

「ご、ごめんなさい、御守さん……」

 

「……いや、いいよ、いいけどさ」

 

 スマホの向こう側で"しまったしまった"と頭を掻いてそうな若葉と歌野の表情を想像し、空を見上げ、思いっきり息を吸い、長いセリフを一息に吐き出した。

 

「機械に堪能なイメージは確かに若葉にも歌野にもねえよ!

 でもこんなミラクル十年に一度も無いってレベルだよ!

 なんでこんな余計なとこで強敵を打ち倒すに等しいミラクル起こしてんだよ!」

 

「ごもっともです」

「た、確かに……」

 

 はぁ、と溜め息一つ。

 必要な資料と本は、三人が持ち寄ったことで今、ここに揃った。

 ぼちぼち余計なことを話していないで、本題を進めなければならない。

 

「そろそろ本題に入ろう」

 

 二人の巫女が姿勢を正す。

 

「俺と歌野が四国防衛。

 友奈が北海道援軍。

 杏が沖縄援軍。

 それぞれに動くことの是非と、そうするならどう動くか、という話について」

 

 竜胆達は、"次の作戦"に向けての準備を始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 諏訪の救出は終わった。

 さて次は北海道、沖縄、いきたいところであったが。

 そこでひなたと水都に、神樹の神々からのお告げがあった。

 

「北海道と沖縄の結界は既に崩壊した」

「現在、両地域からの避難民がこちらに向かっている」

「彼らを救出せよ」

 

 との、神託である。

 驚かなかった者はいなかった。

 北海道と沖縄の生き残りが全滅すれば、今度こそ本当に四国以外の人類は全滅だ。

 

 救援に行くのはいいが、また敵地を突っ切ることを考えれば、リスクはあまりにも大きい。

 しかも現在、若葉と千景は諏訪救出戦の反動が肉体に来てしまったせいで、すぐには出撃できない状態だ。

 動かせるのは竜胆・友奈・杏・歌野のみ。

 その歌野も、四国勇者システムを歌野の体に合わせて調節しないといけないことを考えれば、四国から離れた場所に行かせたくはない。

 

 そういうわけで、ティガと歌野を四国防衛に、友奈を北海道脱出組の救援に、杏を沖縄脱出組の救援に送ることとなった。

 神樹曰く、「この救援で敵が待ち伏せていたりすることはない」とのこと。

 それに加えて「間に合うかは分からない」とのこと。

 つまりタイミングによっては、全滅した避難民達の死体を見に行くだけに終わるかもしれない、ということだ。

 

 友奈と杏の安全は確保されている……とは言うが、念には念を。

 四国で竜胆が待機していれば、状況への対応力に幅が出る。

 友奈か杏に、何かがあったとする。

 友奈か杏が、スマホで四国に連絡を入れる。

 竜胆がティガに変身し、数十秒で駆けつける……そういう事が可能なのだ。

 ある程度の距離まで来てくれれば、竜胆が旋刃盤に皆を乗せて回収、という諏訪の人々に対して使った手段だって使えるだろう。

 

 一切旋回や消耗を考えないティガブラストの直線全力飛行がマッハ30弱。秒速10km。

 四国から北海道北東端まで直線距離で1400km。

 北海道南端までなら1000kmもない。

 ティガ活動時間180秒の内、100秒から140秒を使えばすぐに行ける、ということだ。

 

 逆に沖縄なら、四国から那覇まで850km。

 85秒しか使わないので、往復で170秒、ティガの力なら無理をすれば沖縄の生き残りを乗せて往復することも不可能ではない。

 

 が。

 リスクは大きい。

 四国の防衛戦力をこんなに分散し、一日一回しか変身できない竜胆を贅沢に使う作戦を立てるなど、四国を守るという観点から見れば論外と言っていいレベルの愚策だ。

 それでも助けに行くことが決まったのは、神託の中の一節が無視できなかったからである。

 

「闇薙の剣は回収された。残るものは北海道の勇者が一つ、沖縄の勇者が一つ持つ」

「三千万年越しに、今こそ三つを一つの場所に」

「ティガの下に」

 

 闇薙の剣と同じ格の扱いのものが、あと二つ。

 ならば見逃せるわけがない。

 ただでさえ、今の四国は半ば詰んでいるのだ。

 ゼットが傷を癒やして戻って来たなら、その時点で詰む。

 ならば多少の危険は承知の上で、北海道と沖縄の秘宝を回収しなければならない。

 

 勇者の数を増やし、秘宝がもたらす何らかの強化を得られれば、もしかしたら奇跡のように勝機を掴み取れるかもしれない。

 マリンスペシウムといい、今は小さな勝利の可能性を積み上げていくしかないのだ。

 あとは、決戦の時が来た瞬間に、巨人と勇者が勝利を掴み取れるかどうか、である。

 

 その瞬間の勝利の可能性を上げるため、今は皆が危険な領域に足を踏み入れるべきなのだ。

 

 

 

 

 

 友奈と杏の出立の日、竜胆は牛鬼に頼み込んでいた。

 

「なあ、お前も友奈か杏について行ってくれよ。

 焼け石に水かもしれないけど、一体分の戦力があるのとないのとじゃ全然違うだろ」

 

「もきゅ」

 

「……話聞く気がねーなお前」

 

「きゅ」

 

 よく分からない生物だが、牛鬼が友奈に好意的なのも、一定の戦闘能力(?)を持っていることもまた事実である。

 友奈達にできればついて行ってもらいたいところなのだが、そうそう上手い話はないらしい。

 この気まぐれさがあるから、牛鬼を戦力として数えられないのだ。

 

「ビーフジャーキーやるからさ、な?」

 

「もっきゅ」

 

 竜胆がちょっと高そうなビーフジャーキーを、一袋開け、牛鬼の前に置く。

 牛鬼はもそもそとビーフジャーキーを食べ始めたが、竜胆の言うことを聞いてくれそうな気配はまるでない。

 言葉なくとも、やる気の無さがひしひしと伝わってきた。

 

「……駄目か。悪かったな、無茶言って」

 

 竜胆は牛鬼の頭を優しく一撫でして、杏と友奈の見送りに向かう。

 

 バーテックスの支配地域において、ヘリや船は使えない。

 使えばバーテックスに群がられて戦闘と消耗が頻発してしまう、というのが大社の見解だ。

 なので四国外での移動は、陸路を超人的な体力で走ることが基本である。

 が。

 それで沖縄まで行けというのは、無理にもほどがあるというものだ。

 

 友奈と杏は今日出発するが、巫女達の尽力により神託の授受をギリギリまで粘ることで、ギリギリまで情報を集めることができた。

 神樹曰く、沖縄の人間達は船で続々脱出するとのこと。

 それなら、四国の方から船を出す必要はない。

 杏だけ応援に出して、合流してもらえばいい。

 その後は船で四国に直行してもいいし、船を捨てて陸路をこっそり四国まで戻ってきてもいい。

 

 友奈の場合は青森まで行って、青函トンネルを通って北海道まで徒歩で行くルートだ。

 いずれにせよ、友奈も杏も、避難している最中の人達を見つけなければ話にならない。

 

 本州の北端と南端まで行くだけなら、勇者の脚力なら一日で終わる。

 問題はどのくらいの時間で、避難民達を見つけられるか。

 見つけた後、避難する人間達をどのくらいの時間で四国まで連れていけるか。

 安全と時間の勝負になるだろう。

 いざとなればティガが回収に行くか行かないかの判断も迫られるだろうし、臨機応変な対応が求められる。

 

 走力に勝る友奈が北海道の側にあてられ、いざとなれば島と島・本州と島・船と陸地の間にある海水を凍らせて橋に出来る杏が沖縄の側にあてられた。

 大侵攻という最大の綱渡りは終わったものの、各々が全力を尽くす綱渡りは、未だ継続して続いている。

 

「友奈、杏、準備は出来たか?」

 

「バッチリ! いつでもばっちこい、って感じだね!」

 

「うん、大丈夫。ただ、いくら準備をしても、どう転がるかが分からないのが不安かな」

 

 友奈は元気に、杏は少し不安そうに返答する。

 暗い空気が嫌いで、内心怖くても元気な自分を演じる友奈。

 臆病で、慎重で、怖がりながらも、怖がる自分を無理して隠さずとも戦える杏。

 二人の返答の違いは、表向きの性格の違いだろう。

 が、不安を抱いていることに変わりはなく。

 

 不安を抱いている二人に、竜胆は地面に還るプラスチックで出来た箱に、輪ゴムで割り箸を留めたものを、手渡した。

 

「ほれ」

 

「? リュウくん、なにこれ?」

 

「二人に弁当。

 形見分けでケンの料理の本とか結構貰ってさ。

 実はこそこそ影で色々練習してたんだ。まあ独学なんだが」

 

「「 ! 」」

 

「流石にうどんは入れられなかったが、普通の出来にはなったと思うから。道中食べてくれ」

 

 ケンの死が五月。

 今が七月。

 強くなるため、戦いに勝つため、時間の多くを割いてきた竜胆は、レシピをなぞるようにして料理を作って、特筆するほど美味しいわけでもない料理を作るのに、二ヶ月もかかってしまった。

 集中力もあって努力も苦にしない彼らしくもない。

 牛歩のような成長だった。

 

 友奈と杏は、弁当箱をちょっと開けて中身を見てみる。

 不揃いな野菜。微妙な色合いの唐揚げ。

 "少し教えたら何でもこなしてしまう天才"のイメージと、"何教えても覚えない頭の悪い少年"の二つのイメージがあった二人は、思わず吹き出してしまう。

 格闘と比べたら、あまりにも才能がなくて。

 けれども、頑張った跡は確かに見えて。

 

 しかも白米の上に海苔で可愛らしい友奈の顔、杏の顔がデザインされていた上、「がんばれ!」の文字まで海苔で書かれていたものだから、友奈と杏はほんわかした気分になってしまう。

 

「リュウくんはかわいいなあ」

 

「!? いや待て、その感想はおかしくねえか!」

 

「りっくん先輩は可愛いなあ」

 

「おい……おい!」

 

「だって……ねえ? アンちゃん」

「ですよね、友奈さん」

 

「いや、おかしいだろ!

 ケンだって弁当はこんな感じに作ってたし!

 父さんだって母さんだって弁当はこういう風に作ってた!

 弁当の中身自体にそんなこと言われる理由はないはずだ!」

 

「ねー」

「ねー」

 

「おいコラ!」

 

 友奈も杏も、思わず笑顔になってしまう。

 "周りの男の子"からではなく、"周りの大人"から『どう在るべきか』を学んできた竜胆は、ところどころが普通の男の子からズレていて、それがなんだかおかしかった。

 男の子が女の子に初めて作るお弁当の中身としては、この弁当は少し可愛らしすぎた。

 

「帰ったら皆で料理とかしようよ。きっと楽しいよ?

 リュウくん一人で作ってるよりも、ずっとね。たぶん!」

 

「あ、いいですね、それ! 皆でお食事会とかしたら、もっと素敵になりそうです」

 

「……分かった、分かった、帰ったらな。

 でもその時は、俺の弁当で笑った理由、教えてくれよ」

 

「うん。その約束守るため、ちゃんと無事に帰ってくるね」

 

「ですね。まずは無事に帰って来ること。私も、友奈さんも」

 

 竜胆はスマホを取り出し、二人に見せる。

 

「危なくなったらすぐに連絡しろよ。

 杏も、友奈も、俺にとっちゃ何よりも大事な、かけがえのない人だ。

 何にも優先して、全速力で飛んで行って必ず助ける。だから、必ず連絡しろ」

 

 頷く少女二人。

 連絡すれば最速で来てくれるということを、二人は疑いもしていない。

 

「うん。信じてる」

 

 まず、杏が結界の外に出て行った。

 続いて友奈も結界の外に出て……行く前に、竜胆の耳元に口を寄せ、囁くように言う。

 

「リュウくんがピンチの時は、絶対に私が駆けつける。絶対、絶対にだよ」

 

 四国の外で友奈がピンチになったら竜胆が助けに行く、という話だけでなく、四国で竜胆がピンチになったら、友奈が助けに来るなんて話もし始めて。

 

「私が泣いてると、一緒に泣いてくれる友達なんて、あんまりいないもんねっ」

 

 そんなことを言い捨てて、にこやかに笑って、友奈は結界の外に出て行った。

 

「……一緒にちゃんと泣いたことがあるのが、俺だけだっただけで。

 そういう友達はお前の周りにいっぱい居ると思うぞ、友奈。まったく」

 

 友奈はあんまりいないと言い、竜胆はいっぱいいると言った。

 

 そんな関係。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友奈、杏が出立してから戻って来るまでの間に、八月に入った。

 元より、最短でも数日という話であったが、流石に数日も会っていないと、竜胆の胸の内に心配する気持ちが湧いてくる。

 

 友奈達の連絡は、大社が受け取っている。

 丸亀城の仲間同士で連絡し合うと、余計な心配や余計な影響を与え合ったり、長電話をして充電もできないのにスマホの電力を過剰に消耗してしまう可能性があるから、という話だった。

 まあ一理はある。

 竜胆達は友奈達の現状を知らないまま、友奈達の遠隔サポートを、大社に任せていた。

 

 三好圭吾。

 彼が大社に居る以上、"そういうペテン"はないと竜胆は信じられるのだ。

 生前、三好圭吾が正樹圭吾だった頃、三ノ輪大地と話していた内容も、竜胆は覚えている。

 アグルが死んだ後の三好圭吾の言動も、竜胆は覚えている。

 そして、大地の妻と、竜胆の間で結ばれた、"子供に大地のことを竜胆の口から教える"という、あの約束。

 

 あの約束がある限り、三好は竜胆をあらゆる意味で裏切らない。

 三好が三ノ輪に対する友情を失わない限り、三好は竜胆を裏切らない。

 竜胆の中に、そんな確信があった。

 

「あ、また負けちった」

 

 汗を流す鍛錬を一通りこなした後、夜に千景の部屋に集まり、竜胆・若葉・千景での対戦ゲーム大会が開かれていた。

 笑えるくらいの千景無双。

 竜胆と若葉が組まなければ到底千景には敵わない。

 

 なのに、何故か千景は若葉と竜胆がチームを組むことを許さない。

 竜胆と若葉が組んで、二人で息を合わせて自分に立ち向かってくるというシチュエーションを、何故か断固として許さない。

 なので一対一対一のまま、千景がひたすら勝ち続ける感じになっていた。

 

「俺が見送りに行く前に皆見送り済ませていなくなってたとか、寂しかったんだよなあの時」

 

「なんだ、そんなことで寂しさを感じるのか? 情けない。

 日本男児たるもの、その程度のことで揺らがない鋼鉄の心が要される。

 私の祖母など、乃木の家に迎える婿の選定基準が特に厳しいことで有名で……」

 

「乃木さん、自分語りの類とか、そういうのいいから。

 でも、そうね。

 私ももうちょっと見送りに残ってれば、もう少し長く話せたかしら……」

 

「ちーちゃんには何か話したいことあったのか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「話したいことがなくても、話したいって思うものじゃないの?

 何か話したいことがあるから話しかける、って決められてるわけでもないし。

 話してるだけで楽しい人なら、何話しても楽しいじゃない。高嶋さんとも、竜胆君とも」

 

「……確かに、そりゃそうだ。

 よし、今晩は一晩中だって付き合うぞ。

 存分に話しかけてこい。存分に話し相手になってやる。

 今日は友奈が居ない分、二倍増量でお相手してやるぜ、ちーちゃん」

 

「ふふっ、ゲームの相手と話し相手、それでもう十分に二人分よ。でも、ありがとう」

 

「……」

 

「……乃木さん? その表情は何? 黙ってないで何か言ったらどう?」

 

「ん、いや、そうだな。

 変な間違いが起こらないよう、私も付き合って二人を見守ろう」

 

「……起こるわけないでしょ」

 

 千景は継続して圧倒的だったが、反射神経と体力で勝る二人は時間経過で徐々に有利になっていき、ゲームに慣れてきた二人と眠くなってきた千景が互角になってきた頃には、三人の内の誰かが代わる代わるうとうとするようになってしまっていた。

 訓練疲れもあり、その内三人揃って寝落ち。

 翌朝早朝、真っ先に起きた竜胆は、周囲の惨状を見て眉を顰めた。

 

「うっ……いかん、いつの間に寝てたんだ、俺は」

 

 とりあえず、まずは自分の目を手で覆って視界を半分ほど塞ぎながら、ゲームの途中で寝落ちしたことでR16くらいの格好になっている二人の服やらスカートやらを整える。

 続き、しまいっぱなしの布団を敷く。

 千景を、細いガラス細工でも扱うように丁寧に抱え、ベッドに寝かせる。

 若葉を、細い花を扱うように丁寧に抱え、布団に寝かせる。

 風邪を引かないように二人のお腹あたりにシーツを掛けて、開けっ放しだった窓を少し閉め、朝の気温に合わせた風通しにする。

 

 ゲームの電源を切り、ゲームをしまい、部屋を片付け、軽く箒とちりとりで綺麗にする。

 ゴミ箱のゴミ袋を取り出し、新しいゴミ袋をゴミ箱に詰め、取り出したゴミ袋は口を縛って外に出しておく。

 水の入ったペットボトルを千景と若葉の枕元に一本ずつ置き、竜胆は部屋の外に出て、千景の部屋産のゴミ袋をゴミ出しに行った。

 

 誰に言われるでもなく、自ら望んでやっていく。

 細かなところに、仲間への確かな愛が感じられる行動の数々であった。

 

「……?」

 

 そして、その途中で見てしまう。

 

「……やべえ、寝ぼけてるな」

 

 

 

 丸亀城前で泣きそうな顔でうずくまっている、『身長40mの藤森水都』を。

 

 

 

「ん? んんん? 夢じゃない? 現実? ウッソだろ……」

 

 竜胆は常人離れした速度の脚力で駆け、水都に駆け寄る。

 泣きそうな顔をしていた水都が、頼りになる人を見つけたと言わんばかりに、その表情を明るくさせた。

 

「みーちゃん! おいどうした!」

 

「み、御守さん! 分かんないです、朝起きたらこうなってて……」

 

「せ、成長期……」

 

「ジョーク飛ばしてる場合ですか!?」

 

「す、すまん。ジョーク飛ばしたつもりはなかったんだが。

 ……常識的に考えたら、天地どっちかの神か、バーテックスが原因だろうが……」

 

 妥当な思考である。

 竜胆は木を蹴って、反対側の家の壁を蹴って、また別の建物を蹴って跳び、相対的に六階建ての建物程度の高さの塀の上まで軽快に跳び上がる。

 そこから遠くまで見渡してみるが、結界内に異常はなかった。

 結界自体にも揺らぎは見えない。

 

 ただ、早朝とはいえ街に人は皆無ではないようで、水都を見た人達が徐々に街にざわめきを生み出していた。

 

(樹海化の気配も無いな……)

 

 しからば、結界内に怪獣はいない。

 いや、シビトゾイガーはいるのだろうが、神樹が感知している範囲ではバーテックスは一体も居ないということだ。

 

「どうしよう、どうしたら……」

 

「みーちゃん、立ち上がるな。あと歩き回るのも駄目」

 

「で、でも!」

 

「パンツ見えてるぞ」

 

「―――!?」

 

「服も一緒に巨大化してるのは不幸中の幸いか……」

 

 竜胆と水都の顔色が、一気に変わった。

 バーテックスの企みにより――シビトゾイガーの企みのいくつかよりも遥かに大きく――竜胆の心が揺らされてしまった瞬間であった。

 

「……大丈夫、平常心、平常心、俺ももう高校生相当の年齢、女子のパンツごときで……」

 

「……見ました?」

 

「やめろ、思い出させるな。思考が乱れる」

 

「……うわぁーん、見られたぁー!」

 

「巨大化云々で動揺してるのは分かるが落ち着け!

 まずは落ち着け! パンツ隠して……って、違う、まずは俺が落ち着けっ……!」

 

 『巨大フジモリ』という超弩級のインパクト。

 竜胆の精神に叩き込まれた予想外のショック。

 水都の女の子メンタルに響いた結構なダメージ。

 竜胆は呼吸を整え、呼吸がもたらす精神安定作用にて平常心を取り戻す。

 

(若葉とちーちゃんは……

 医者はある程度大丈夫だって言ってたが、あまり出したくないな。

 歌野は万全だ。

 早起き農家だし、みーちゃんがこうなってる以上、もうこっちに向かってるはず。

 俺は? 三分をどこで使うかだな。

 とりあえず変身を温存して、仲間に連絡入れて、仲間と連携しながら結界外を調査しよう)

 

 竜胆は水都をなだめつつ、最適解を考えていく。

 

(だが、なんだ?)

 

 水都が巨大化しただけでも驚きだ。

 ここからどう転がるか全く読めない。

 竜胆の胸中に一抹の不安と……よく分からない違和感が芽生える。

 どこか。

 何か。

 巨大化した水都とは別のところに、何か嫌なものを感じる。

 常人では気付けず、竜胆程度に化物ならうっすらと何かを察し、けれど竜胆程度の"外れ具合"では明確に知覚できない『それ』。

 

(なんか、気持ち悪い)

 

 それは、闇に敏感な竜胆の感覚をすり抜ける、微細な光の感覚。

 

 

 

 

 

 何か、不可視のものが四国結界を通り抜けて、四国の中へと染み込んできていた。

 

 四国結界は優秀だ。

 それは土着の神、国津神、そして神樹の中に還っていった数々のウルトラマンの全ての力が合わさって作り上げられた、多重多層防御結界。

 たとえ世界を焼き尽くす炎が放たれたとしても、世界を塗り替えるような大偉業が成されたとしても、この結界の内側に変化はない。

 

 だというのに、その何かは、結界を越えてきた。

 

 それは結界にその威力の99%以上を削がれ、1%以下のエネルギーと影響力にて、四国内部に浸透していく。

 四国結界が急場しのぎに強まる。

 それでも、0.5%程度は通ってしまう。

 

 貫通したそれは、『電磁波』だった。

 

 異常なまでの出力だが、結界を越えられた理由はそれだけではない。

 その電磁波には、"次元を超える"という特性があった。

 なればこそ、空間と時間を操作して人間を守る四国結界のシステムとは、相性が悪い。

 時間を止める樹海化は事実上、強大なだけのエネルギーを概念的にシャットアウトできる究極の守りであるが、ブルトンの例を見れば分かるように、時空や次元を操る能力を前にすれば、ただの力比べになってしまう。

 

 結界の壁を越えた電磁波は、キラキラと邪悪に輝いていた。

 

 光も電波も同じく電磁波。なればこそそれは、光り輝く電波のようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元自衛隊の武装船団が、丸亀城前の海域に現れる。

 嫌な予感がした竜胆が、ブラックスパークレンスを懐から抜く。

 

 武装船団の砲塔が、一斉に水都の方を向く。

 瞬間的に、竜胆が時計回りに腕を回して、高速でブラックスパークレンスを掲げる。

 

 元自衛隊の武装船団が、一斉に砲火を放つ。狙いは水都。

 瞬時に、最短最速で変身したティガが、自衛隊の砲火の全てを体で受け止めた。

 身体強度が低下しがちなティガダークの体に、痛みが走る。

 

 人を守るためだけに作られた自衛隊の兵器が、人を守るために自衛隊に入った人達の敵意が、体が大きくなっただけの無力な少女に、その火力を向けていた。

 

『……おい。何してる!』

 

 繰り返される海上自衛隊の砲撃から、ティガが体を張って水都を守る。

 ティガの体に弾かれた砲弾の欠片が、水都の頬をピッと切り裂き、その頬に切り傷を付けてしまっていた。

 

「ひっ、ひぃっ、きゃっ!?」

 

『ぐっ……!』

 

 そして同時刻。

 四国の多くの場所で、ティガと水都に向けて、殺意を向ける人達が現れていた。

 

「殺せ!」

「殺せ!」

「殺せ! まとめてだ!」

 

 それだけでない。

 街のいたるところで口喧嘩を始める人達が現れ、その人達が殴り合いを始め、一部の人間は殺し合いまで始めようとしているのだ。

 ただ、目の前の人間を傷付ける。

 ただ、目の前の人間を攻撃する。

 目障りな人間を排除する。

 不快な人間を排除しようとする。

 人間の本能の中にある、凶暴性という名の獣に従って。

 

「殺す!」

「殺してやる!」

「死ね!」

「くたばれ!」

 

『な……なんだ!? 何が起こってる!?』

 

 竜胆は海上自衛隊の攻撃から水都を守りながら、四国の人々の殺し合いを止めようとするが、そこで今度は水都が街を破壊し始めた。

 水都の巨大化した腕が、その体重を活かし、街のビルを破壊する。

 

『!? バカ、何してる!』

 

「か、体が勝手に!」

 

 そして、街を破壊した水都に対し、街の人々の怒りと憎悪が噴出する。

 

「街を壊したぞ!」

「殺せ!」

「あいつも結界の外の化物の仲間なんだ!」

「大きいぞ!」

「ずっと人間のふりをしてたんだ!」

 

 その手に包丁、金属バット、多種多様な様々な武器、人によっては『人間の肌にかけてはいけない危険な薬剤』を持った者までもが、水都を狙って走ってくる。

 一人一人が、水都への明確な殺意を持っていた。

 全員が、水都を殺したくてたまらないという顔をしていた。

 

 その様相は、まるで水都という蝶に群れでたかろうとするアリのようだ。

 彼らは体のサイズ差をまるで気にせず、水都に対する攻撃衝動に突き動かされ、水都を殺害せんとしている。

 普通の女の子よりも"こういうもの"に弱い水都は、青ざめた顔で後ずさった。

 

『これ一体、何が起こって……うっ』

 

 ティガの手が空を走る。

 その手は海上自衛隊の砲撃から水都を守り、民衆を足止めし水都を守る光弾を放ち―――水都の首を、刎ねようとした。

 

「え?」

 

 水都の首を刎ねようとした右腕を、ティガは咄嗟に左腕で切り飛ばす。

 それでなんとか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『―――今の、は、ヤバかった』

 

「み、御守さん……?」

 

『悪い。お前を守ってやりたいが……』

 

 何かが笑っている。

 結界の外で笑っている。

 遠く離れた場所から笑っている。

 "それ"は笑って、民衆や自衛隊やティガの体を、最悪な方向に操っていた。

 

『俺がみーちゃんを殺す可能性、0じゃない』

 

 電磁波を通して皆に叩き込まれた指令は、ただ一つ。

 

 "近くの物から順に、大切な物から順に、全てを破壊せよ"であった。

 

 

 




 四国には元自衛隊の武装船団が残っていて、国も自衛隊もなくなった今になっても、勇者に守護者の座を取って代わられた今になっても、人類を守るため戦ってくれている……っていうのわゆの設定、どっかでしっかり使いたかったんですよね

【原典とか混じえた解説】

●巨大フジ隊員
 初代ウルトラマンの仲間、科学特捜隊のフジ・アキコ隊員が、メフィラス星人の企みによって巨大化させられてしまったもの。
 「言葉も記憶も全て喪失しロボットのように動かされている」と推察された。
 耐久力は上がっているようだが、戦闘力が特に上がっているというわけでもなく、少し街を破壊したくらいで目立った活躍もないまま元の大きさに戻された。
 要するに、用途は100%特定人物への煽り目的である。
 基本的には、巨大化させた人間の身内に対する精神攻撃くらいにしか使えない。
 巨大フジモリ・ミトの身体強度はさほど引き上げられておらず、流れ弾の小さな破片が肌に当たっただけでも大変なことになりかねない。

 ちなみに初代ウルトラマンでメインヒロイン・フジ隊員を演じた桜井浩子さんの身長は155cm、水都の身長は152cmなので、ガタイの差を度外視すれば『怪獣としての規格』はほぼ同格であると思われる。



●魔王獣
 『あるもの』が宇宙から飛来し、そのエネルギーが地球の六種属性エレメントと結びついた結果生まれた、極めて強力でデタラメな能力を持った怪獣達の総称。
 恐ろしい力を持ち、結びついたエレメントによっては外宇宙の生物を模した大怪獣、宇宙恐竜の強化型、果ては邪神の類すら生み出してしまう。
 守護者としての地球の化身がガイア、アグル。
 邪悪としての地球の化身が魔王獣。

 『あるもの』が宇宙から飛来したその地球には、天にも、地にも、海にも、神がいた。
 古来より続く神の力の混ざった自然が、その地球にはあった。
 魔王獣は、そこから生まれた。

 宇宙の彼方から飛来して、地球に根付き大怪獣と成る、空の星であり邪神たりえる者。
 ゆえに星辰。
 地球を滅ぼす地球の化身。
 『勇者』の物語の最後に立ちはだかるならば、それは『魔王』以外にはありえない。

●光ノ魔王獣 マガエノメナ
・魔神 エノメナ
 光の星辰。
 原作における、『異次元の魔神』。
 三千万年前にこの地球上で倒された、異次元の魔神の残滓が、『ある存在』の影響で怪獣化したもの。
 地球の光のエレメントを捻じ曲げ、心歪める波動として周囲に絶え間なく放散する存在。

 エノメナが放つ紫光を伴う異常な電磁波は、人間の脳内に恐怖ホルモンの一種を作り出す。
 このホルモンは攻撃衝動、殺人衝動を引き起こし、人間は最初は地獄の苦しみを味わうが、やがて発狂した様子で街を破壊し、互いに殺し合うようになる。
 そして人間の脳のあらゆる部分が破壊される、と原作において説明された。
 この醜い光景が、エノメナを楽しませる最高の娯楽。
 マガエノメナにもこの習性は受け継がれている。

 しかもこの電磁波は、()()()()()()()()()()というありえないほどに強力なもの。
 エノメナは電磁波を撒くだけ撒いて、敵が来るとさっさと異次元に逃げる。
 撒いた電磁波は放置していても広がる上、エノメナ自身は異次元から醜く殺し合う人間達を眺めていても、何ら問題はないからだ。
 また、雷撃を纏う爪、青色の破壊光弾、瞬間移動能力と、戦闘においても強力な能力が備わっている。
 原作においては
「悪魔」
「魔神は指一本動かさずに……人類を滅ぼすことができる」
 と語られた。
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