夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した 作:ルシエド
更新止まっててすみません。理由は活動報告の方に書いてあります。
しかも文字数もかなり少なくてすみません、一万五千字無いです。
7/30は原作乃木若葉は勇者であるの始まりの日です。
2018年7月30日、丸亀城本丸石垣の上に立つ若葉が海を見つめるところから物語は始まります。
体調の問題で話の切り目が小刻みになり、これからも平均文字数が少なくなって、完結までに予定していた話数が増える可能性もあります。ご了承ください。
千景を背負った竜胆を背負って、友奈は走った。
やがて病院が見えてくる。
特に患者が殺到している、ということもなかった。
マガエノメナの侵略開始から考えれば、四国にはもはや被害の無い地域が存在しないというレベルであったが、最後にティガが四国に満たした光の効果が大きかった。
自分しか治せないティガと、他人しか治せないガイアの合わせ技。
四国全域の人間の脳の損傷、体の怪我は既に治されているため、誰も病院に行っていないのである。
むしろ暴徒にぶっ壊された街の方が、治されていないので直さないといけないので、一番の重傷だったと言えるかもしれない。
なにはともあれ。
シビトゾイガーは消えた。
カミーラの干渉も事実上消えた。
魔王獣も撃破数3、残りも3。カミーラが復活したとしても残りは4。
その他諸々、四国が抱えていた無数の内憂問題は一気に片付いたと言えるだろう。
外患はそのまま残っているが。
心が繋がったことで、ティガの記憶は伝わらずとも、心は伝わった。
かつての虐殺が事実であったことも。
ティガが悪ではないことも。
おかげで、ティガに関する報道が全て事実無根だったと考えていたティガの称賛者も、ティガを悪だと非難していた非難者もごっそり消えた。
ティガが無実だと言う者も、ティガを悪だと信じる者も消えた。
ただ、何か事情があったのだろうと、皆その心で察している。
だって、触れた心が暖かったから。
繋がった心が優しかったから。
それを悪だと思うことなど、誰にもできなかった。
ウルトラマンティガの光のおかげで、混乱も怪我人もなくなった道を進み、誰も運び込まれてくる様子のない病院に友奈は向かう。
が。
ゼットが能力で生み出した――あるいは、蘇らせた――星屑は幾千幾万という数であり、同時に生み出された十二星座も十二体。
酒呑童子でそれらを一掃するだけのパワーをコンスタントに出し続けることは、友奈にとっても軽い負担ではなかったようだ。
「あ」
病院まであと200m、というところでふらついて、その上瓦礫を踏んでしまう。
「わっ、わわわっ」
このままでは転んで三人同時に地面と衝突だ、といったところで、友奈を支える勇者の影。
いいタイミングでいい感じに現れたその少女は、秋原雪花であった。
竜胆と千景をまとめて背負う友奈を見て、"雪花を見捨てず四国まで背負い運んだ"友奈の姿を思い出して、雪花は眩しいものを見るような目をしていた。
「だいじょぶ?」
「あ……せっちゃん!」
「こういうとこで小さい借りも返しとかないと、不良債権積み上げちゃいそうだからねえ」
カガミブネ停止時点で香川にいたのは、雪花と千景のみ。
千景が真っ先に駆けつけティガを助け、高知の北端部(香川南端近辺)にいた友奈が全速力で駆けて次に駆けつけて二人を背負い、香川東端にいた雪花がその次に駆けつけた形。
例えば丸亀城なら、香川東端より高知北端の方が近かったりする。
そうして、雪花は転びそうになった友奈を助け、三人を無傷に抑えてくれた。
つくづく、エースにはならないがいぶし銀な活躍を続けるクレバーな勇者であった。
四番ピッチャーにはならないが二番セカンドで高打率ホームラン無しというタイプ。
「先輩、友奈千景サンドとか良い目見てるねー」
「雪花、今の俺は割とお疲れなんでからかうのは……」
「美少女サンドはやわっこくない?」
「お前なー!」
けらけら、と雪花が笑う。
「おつかれ、ウルトラマンティガ。最高にクールだったよ」
「お前もな。あそこでのコシンプ、最高にクールだった」
「あはは、今日のMVPにそう言われると悪い気はしないね。頑張る気も湧いてくるよ」
「メガネかけてるだけあるな」
「……ん、んん?」
「メガネ掛けてると知的だし、頭いい感じがする。立ち回りが知的なんだ、雪花は」
「その発言は最高に頭悪いと思うなー私は」
眼鏡にどういう信仰を持っているのか。
雪花は呆れた顔で笑う。
四国に来てからずっと、雪花は竜胆の鬱々としたところ、悲惨な表情、立派な立ち姿ばかりを見ていたため、年相応でバカっぽいところが随分新鮮に見えた。
闇に心染めた竜胆より、今の明るい竜胆の方が、雪花には好ましく感じられる。
「あら、コシンプ剥がしに来たのにもう剥がれてる」
「? そうだったのか。変身解除か自爆で剥がれたりすんのかな」
「え゛っ、ちょっと待って自爆が何指してんのか分からないんで説明プリーズ」
竜胆に憑けていた精霊を外そう、と思ったものの、既に外れていたので「取り越し苦労だったかな」……と思う雪花の耳に入って来る、何やら聞き慣れない単語。
雪花は新参。
そもそも自爆を前提とした技があると知らない子であった。
「まず、電子レンジに卵を入れるのを想像してみてくれ」
「いいよそういう説明は!」
ウルトラヒートハッグ。
全身を赤熱化させて抱きつき、発した熱線で敵の体を内側から爆発させ、自分の体もろとも敵を破壊する捨て身の技。
竜胆は威力を引き上げすぎたせいで自分の体も爆散させてしまう技。
技の説明を聞き終わった雪花は、「バカじゃないの」とただ一言言って、空を仰いだ。
戦いの後の入院期間も相応のものとなった。
若葉と千景は一度ブロンズ化された上で粉砕。
友奈と杏は一度寿命が限りなく0になるまで天の神の呪いに侵食。
歌野と雪花はまだ本人達のための端末最適化調整をあまりしていなかったのに、数日ぶっ続けで戦闘、その最後に四国全域を飛び回っての全力戦闘である。
"あ、なんか運悪く心臓止まっちゃいました"がありえるレベルだ。
ティガ リ・ルーツが体の不具合を治し、体の損傷を復元し、体を蝕む祟りなどを光で浄化して、命のエネルギーを与えた……とはいっても、念には念を入れての精密検査は必須である。
"竜胆君がうっかり心臓近くの血管一本修復ミスってました"など洒落にならない。
そして一番わけが分からない状態であり、一番精密検査が必要とされた体であり、一番調査結果がよく分からないことになったのが竜胆だった。
何せ、一度祟り神化、そこから完全暴走の闇の巨人を経て、四国全てに恵みをもたらす一種の光の神と化したのだ。
元怨霊の守護神。
人々を恨んだ怨霊が守護神に転じる流れに似た、死後の存在としての属性の反転。
ウルトラマンティガという名の神は、今多くの運命を覆し、されどまだ覆せていない運命に立ち向かわんとしていた。
ここではない宇宙では、ティガの存在はこう伝えられている。
―――人々の願いに光が応え、この地上に遺わす地球の守護神であり、全ての人の中にも宿る神聖なる魂の光。
―――その人の光と石像の巨人が一体となり、光の巨人は誕生する。
平将門をはじめとする怨霊が守護神になった幾多の逸話に沿って、『ティガダーク』という災厄成す悪夢は『ウルトラマンティガ』という守護神となった。
ティガとは、人であり、神であり、光であり、巨人である。
その本質は、誰の中にもある心の光。
ティガの変身者が、その光を本当の意味で見失うことはない。
さて、そんなこんなで、闇から光へと移り変わった神の一種である竜胆だが。
採血しようとしても、注射器で血が吸えない。
手で触れると暖かいのに、通常の体温計で計っても体温が測定されない。
本人の体重はそのままなのに、皮膚片や爪片を採取すると、それらに質量が観測されない。
人間の体でも常時周囲に思念波の一種を垂れ流している、等々、人間ではありえないような身体的特徴がいくつも発見された。
医者は、今の竜胆の体をこう表現する。
『これはもう……細胞レベル、いや分子レベルで普通の人間ではありませんね』
医療は病んだ部分を治すものだ。
あるいは、壊れた部分を直すものだ。
変わり果てた体のパーツを人間に置き換え直す、となるとかなり判断が難しくなる。
ましてや今の竜胆を人間に戻すには、全身の細胞を入れ替えなければならないので、事実上治療は不可能と言えてしまうものであった。
「まあ、大丈夫ですよ。気にしないでくださいね。
俺に割く時間とかそんな要らないので、他の業務に回してください、お医者様」
けれど気にした様子もなく、竜胆は柔らかな微笑みを浮かべていた。
医者やら看護師やらが申し訳なさそうにすればフォローして、病院に缶詰にされて精密に検査されていた数日の間、病院の中を歩き回って他病人などに話しかけ、柔和な笑みと快活な社交力でコミュニティを広げていく。
治せそうな病気は、医者に断ってから光の巨人の治癒能力で治していった。
老齢のおじいさんは竜胆を孫のように可愛がってくれた。
ティーンの少年は竜胆の友人になってくれた。
年齢一桁の女の子は、竜胆によく懐いていた。
数日で病院を自分の庭のようにしてしまったので、見ていた若葉はたいそう驚いたという。
一足先に病院から開放された千景は毎日見舞いに来ていたが、毎日竜胆のそういう姿を見ていたため、毎日"あーあの頃の竜胆君だ"という感想を抱いていた。
小学生のあの頃そのままの竜胆、ではなく。
成長した竜胆が、あの頃の竜胆を思わせる明るさや振る舞いを取り戻していたのだ。
一番酷い状態だったはずの若葉と千景は、体に傷一つ無いということで真っ先に退院。
友奈と杏も然り。天の神の祟りが穴だらけにしていた二人の命も、ティガが拡散した光に含まれていた技・
雪花はクレバーに"命を賭けて戦いつつも体への負荷を計算して立ち回っていた"らしく、ほどなく病院からフラっと出て行った。
数日後、病室には竜胆と歌野くらいしか残されてはいなかった。
「あー、私の作ったお野菜食べたい。
農地に触りたい。畑の土に触れたい。
うぐぐ、うぐぐぅ、禁断症状が……農業ぅ……」
「俺が治せそうにもない頭の病気を見せてくんのやめい」
「これは頭の病気じゃないわ、宿命……運命よ!
杏さんや竜胆さんと同じ、時を超えたその血の
多分私のご先祖様は三千万年前から農業をやってたのね、私の血がそう言ってるわ」
「ご先祖様から受け継いだ血の代弁を勝手にするんじゃない……
というかなんだよその農家、三千万年前からの戦士の系譜に平然と混ざるな」
「戦国時代だと農民は全国的に、敗戦の武士を狩って奪った鎧や刀を売り払ってたそうだけど」
「嘘だろ!?」
「トラストミー、トラストミー」
本当である。
戦争に負けて逃げている途中、農民に殺され、鎧や刀を奪われて売り払われた武士はそれこそ数え切れないほど存在したという。
農民は強いのだ。
時に戦士より強いのだ。
農業王はもっと強い。
「おう、ウルトラマン」
「あ、竜胆お兄ちゃん」
「また女の子か。刺されんなヨー」
「はいはい、皆さんこれから検診でしょう。寄り道しないでさっさと行ってください」
通りすがりの子供やら大人やらが、扉が開け放たれている竜胆の病室前を通るたび、竜胆にあったかい声をかけていくので、歌野も思わずほっこりしてしまう。
先日までの四国全体でのティガの扱いを、歌野はよく覚えていた。
「残念だなー、と良かったなー、って気持ちがダブルでカムインしてきた感じね」
「?」
「もう四国に永住で良さそうだもの。
いやはや、これはこれでハッピーで良かったわ。
でももう諏訪に誘っても来てくれそうにないから、そこだけ残念ね」
歌野が竜胆の先のことを心配してやる必要は、もうないのだ。
それが歌野にはとても嬉しくて、少し寂しい。
「まだ分かんないんじゃないか? 俺が諏訪に行くか行かないかは」
「もう期待してないわよ。竜胆さんの夜逃げ先候補くらいにしかならないわ」
「夜逃げ……」
「何もかも面倒臭くなったら諏訪にどうぞ、ってアトモスフィアで、ね?」
竜胆はきっと、四国に骨を埋めるだろう。歌野はそう思っている。
歌野は心の勇者。
その心は誰よりも強く、敵味方全ての心を見通し、人の心を守るために戦う。
ゆえに、竜胆以上に竜胆の心のことを分かってくれている。
竜胆が思っている以上に分かってくれている。
だから、竜胆は歌野がなんでここまで言い切っているのか、いまいちピンと来ない。
竜胆の大切な人達の中には、四国に骨を埋めるであろう人が多すぎる。
彼がここを離れていくことはないだろうと、歌野は思っていた。
「俺が今ここに居るのは、お前が優しい言葉をかけてくれたからでもある。
ありがとな、歌野。
諏訪に来るよう誘ってくれたの、嬉しかった。
お前のおかげで俺の心のどこかには希望があって、救いがあって、だから勝てたんだ」
けれども、歌野の優しい言葉が人を救ったことも、また事実。
竜胆が諏訪に行かなかったとしても、歌野が竜胆を諏訪に誘ったことが、竜胆の心に"逃げ道"や"未来"を見せてくれた。救いをくれたのだ。
逃げてもいい、迎えてくれる場所はある、という優しい言葉が、竜胆の張り詰めた心に与えてくれた救いは計り知れない。
心を読まなくても伝わってくる真っ直ぐな感謝に、歌野は思わず頬を掻いた。
『光の巨人』になってから、竜胆の微笑みから影が消えた。
その微笑みが、なんだか歌野の調子を狂わせるのだ。
「どういたしまして」
暇になったなら、二人は益体もない話を始める。
二人が出す話題は年相応、友人相応の話題であり、軽快に心地よく話を転がすことができた。
たとえば、食べ物の話題。
好きな食べ物の話。
そして、野菜の美味しい調理法の話などなど。
「夏場なら野菜カレーもいいわね。
お肉たくさん入れてもいいけど、野菜だけでも十分に旨味は出るのよ」
「へー」
「冬ならやっぱり野菜スープが一番だわ。塩コショウで味を整えるだけで十分に最高ね」
「いいなあ、美味そうだ」
「ふっふっふ。四国のグッドな土地を借りられたことは感謝してるわ。
冬になったらモリモリ野菜使って、夏野菜に慣れた舌にサプライズをお届けするの!」
「そりゃ楽しみだ。でもできれば、冬が来る前に戦いに決着つけたいところだな」
「冬?」
「まあほら……色々とな。それに、戦いを長引かせると、弊害も出て来る」
四国に人間が押し込められて、虜囚の辱めに等しい苦痛と閉塞感を与えられて三年以上。
シビトゾイガーが民衆を操るのに苦労しなかったのは、四国に閉じ込められた状態でバーテックスに脅かされる日々が年単位で続いていた、という前提があったからだ。
追い詰められた人の心は、短慮に走らせやすい。
いい加減、人々の心は限界なのである。
もうそろそろ、決着に向けて動き出さなければまたどこかで破綻しかねない。
いや、見方を変えれば、シビトゾイガーやマガエノメナが無理矢理に爆発させた形になっただけで、人々の心はもうとっくに爆発する段階に足を踏み入れていたとも言える。
ティガの光が人々の心に想いを伝えたことで、限界点は先延ばしにされた。
次に来る限界はいつの日になるだろうか。
できれば、その日が来る前に世界を平和にしたいということなのだろう。
「ああ、そうだ。あの時食べさせてもらった野菜信州そば、上手かったよ。また食いたい」
「おおっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「歌野はいいお嫁さんにもいい母親にもなるぞ、うん。
俺の母親も料理が上手い人だった。父さんはそんな母さんが好きだったんだよなぁ」
以前の竜胆では言わないようなことも言うようになった。
以前の竜胆がよく言っていたことを言わなくなった。
その変化を、成長を、歌野は好ましく思う。
時々気恥ずかしさを覚える言い草には、いつまで経っても慣れる気がしないけれども。
「……ねえやっぱり諏訪に来ない?
あなたはやっぱり、うどん派閥に対抗できる蕎麦派閥の希望……!」
「俺うどんも好きだからちょっと……」
「ちっ」
軽口叩いて話せる友人の距離感は、それだけで心地良い。
「へー、みーちゃんが作った野菜ねえ。俺は……食べたことないな」
「あんまり作ってないけど、とっても美味しいのよ。迷わずドラムスタンプを押せるわ!」
「ドラムスタ……? ああ、太鼓判か! 歌野の太鼓判なら信用できるな」
「やっぱり野菜は愛情よ、みーちゃんは愛深い子だもの」
「へー」
「野菜を食べればね、その味で作った人がどれだけの愛を野菜に込めたか分かるの。
その点みーちゃんはもうちょっとね。みーちゃんの性格なら、もっと愛を込められるはず……」
「みーちゃんは愛を人に対して向けるごく普通の女の子だからじゃねえかなと俺は思う」
「そんな、まるで私がイリーガルな女の子みたいじゃない。野菜に愛を向けるのは普通よ?」
「……愛、愛ってなんだ」
「自由なものよ。カミーラおばさんを見れば分かるでしょ?
たぶんね、あの人が今この地球上で一番他人の迷惑顧みず、自由な愛を振り回してる人よ」
「やめろよネタにしにくい奴を堂々とかつサラっとネタにしていくの!
お前の常時ブレイバーなその胆力は俺から見てもちょっとこえーんだよ!」
竜胆に、歌野のちょっと変な喋り方がちょっと
「うたのーん、御守さーん、体調はどう?」
そこにやってくる水都。
水都の貴重な手作り野菜の噂をすれば影、といったところか。
歌野と竜胆の目が、しゅっと水都の方を向く。
「あ、みーちゃん! 竜胆さんが食べたいって、お願いしたいって!」
「ええっ!?」
「ああ、是非お願いしたい」
「ちょ、ちょっと待って! 最初から説明して!」
食べる(意味深)の誤解を解くのに一分とかからなかったとかなんとか。
そして、神樹の神託が降り、しばらく戦闘がないということが判明した。
となれば、休暇、休暇である。
今日という日まで大侵攻前哨戦、大侵攻、直後の諏訪・北海道・沖縄救援作戦に、その後のカミーラゼット魔王獣のフルコース。皆疲弊の極みである。
大社が課した訓練ノルマも一旦撤廃され、勇者もウルトラマンも皆しっかり休暇を取らされることになったのである。
そして、勇者とウルトラマンは全員、大型バスに詰め込まれて海へ向かっていた。
大型バスの中には大社の人間も大勢詰め込まれていて、とにかく人が多い。
この大社の人間が皆、休暇兼竜胆達が海で心置きなく遊べるよう人払いをするための人達、というのがなんとも恐ろしい。
良くも悪くも、勇者とウルトラマンの知名度は最高なのである。
どこの海に行くか、どう海で遊ぶかもよく考えないとやっていけない。
そんな中、歌野はかなりテンションが上がっていた。
「オーシャン・ザ・トラベル! オーシャン! うーみー!」
「わあ、うたのんのテンションが上がってる……」
「海がない長野民のテンションの上がり方はすげえなあ」
「えっ、あの、私も長野民なんだけど……」
「うみーちゃんも私と一緒に野生を開放するのよ! ハリーハリー!」
「うみーちゃん!? ちょっと変なあだ名増やさないでうたのん!」
「歌野と水都の頭文字で海になるのちょっと面白いなぁ。
みーちゃん、危ないから走ってるバスの中で立ち上がるんじゃないぞ」
「御守さーん!」
テンションが高い歌野の封じ込めを竜胆に期待した水都だが、アロハシャツ麦わら帽グラサンにウクレレという浮かれきった竜胆の姿を見て諦める。
明らかに夏の魔力にやられている。
ガイのウクレレ……ではなく、ボブのウクレレを装備した竜胆のテンションに向かうところ敵なし。彼の心は完全に海に向かっていた。
「一番、秋原雪花!
こじらせてこっ恥ずかしい台詞を言ってた竜胆パイセンのモノマネします!
"何億人守ったら、俺は若葉とちーちゃんを死なせた自分を許せるんだ?"
"何億人救っても……俺は……自分が生きていることを許せない、気がする……"」
「わー」
「似てる似てる!」
「笑えないことなんだけどなんか笑っちゃう」
「続きましてこじらせたパイセンの告白みたいなこっ恥ずかしい台詞のモノマネ第二弾!」
「雪花ァ!」
海に向かっていた意識が引き剥がされ、大社の大人の皆さんをモノマネ一発芸で盛り上げていた雪花に竜胆が飛びかかっていった。
「楽しみだね、ぐんちゃん!」
「……そうね、高嶋さん」
「肌の露出は少ないけど、ぐんちゃんの水着可愛いから! いけるよ!」
「何が?」
「いけるよ!」
「何が?」
「悩殺だよ!」
「何が?」
友奈は分かっていた。千景は分かっていないフリをした。
「ひなた、神託は本当にそれだけだったのか?」
「……若葉ちゃんにはそんなに隠し事できませんね」
「ひなたとの付き合いも長い。隠し事はまあ、なんとなくな。それで、どうなんだ?」
「次の神託で、ほとんどはっきりすると思います。だから、少し待っていてください」
若葉は分かっていた。ひなたは話が確定するまで説明をしなかった。
「あの、真鈴さん? どこを見てるんですか?」
「……杏、また胸大きくなった?」
「背はちょっと伸びました」
「いや、背じゃなくて」
「背はちょっと伸びました」
「むn」
「背が伸びました!」
安芸真鈴は分かっていた。杏は誤魔化した。
竜胆は大社の人達に飴を貰ってコロコロ口の中で転がしながら、バスの前の方で何か機械をいじくっている三好圭吾に歩み寄った。
「何やってんですか?」
「……まったく、本当に無知な子供なんだな、お前は。
いいだろう。この三好圭吾が教えてあげよう。
バスの移動と言えば、バスの天井近くに付いてるテレビでドラえもんを流すものなんだ」
「えっ」
「まあ移動中にドラえもん一本全部見れることはないが……ドラビアンナイトで行くかな」
「手際いいっすね……」
「ああ、最新作の『新・のび太の日本誕生』はないぞ。
日本誕生リメイクの告知が公式で来たのが2015年7月10日。
で、映画の公開予定が2016年3月5日だったからな。
バーテックスの初襲来が2015年7月30日だからそのままポシャったんだ」
「俺が見たことあるのって親が生きてた頃の鉄人兵団リメイクくらいですよ」
「……じゃあ、それにするか」
「え、いいんですか?」
「いいんだよ。ドラえもんは家族と一緒に見たり、家族の思い出と一緒に見るものだ」
「しかしドラえもんに詳しいですね三好さん」
「天才だからね」
「天才だとドラえもんに詳しくなるんですか……?」
旧・正樹圭吾、現・三好圭吾は天才だ。
若くして大社のトップ層にまで駆け上がる才能に、いざとなれば勇者やウルトラマンを切り捨てられる合理性と冷徹さ、豊富な知識と優秀な発明力を持つクールで近寄り難い天才。
無能を嫌い、有能を好む合理の者である。
天才ゆえにドラえもんの過去作全てが頭にインプットされており、劇中の全ての台詞を暗記しているほどの優秀な知識を備えている。
人情味を捨てた口論を展開することも可能なため、三好圭吾と「どのドラえもん劇場版が一番傑作か」で口論した人間は、その全てが反論の余地なく三好に叩きのめされてしまう。
『のび太の宇宙漂流記が一番好き』と言って身内認定されない限り、三好圭吾とのドラえもん劇場版No.1論争で敗者となる運命は回避できないだろう。
「ん?」
席に戻ろうかな、と考えた竜胆だが、竜胆が先程まで座っていた席の周辺の席順が、ガラッと変わってしまっていた。
女子特有の席移動。
竜胆がちょっと勇者の下を離れて大社の人達と話している間に、あっちこっちに皆が席を思い思いに移動したため、竜胆の元の席も、その周辺の席も全て埋まってしまっていた。
若葉は友奈と格闘技の動画を見ていた。
千景と水都は穏やかに話している。
雪花と杏は戦術の話をしているようだ。
歌野と真鈴はちょっとしんみりした雰囲気で、歌野が会ったことのない、球子の話をしている。
空いている席は、ひなたの隣だけだった。
「ここ、座っていいか?」
「どうぞ。お茶、飲みますか?」
「ありがとう。いただくよ」
ひなたは相変わらずだ。
マイペースなように見えるし、ほわっとした微笑みを浮かべているし、大人びた雰囲気には落ち着きがあり、表情を変えないままはっちゃけることもある。
精神的に一番強く見える少女。
だがその実、過去のトラウマ、未来への不安、竜胆の腹を刺した時の鮮明な記憶と、心の中で戦う気丈な少女である。
竜胆も、そのあたりはちゃんと察していた。
女心という未知領域でなければ察せるのだ、彼は。
「お疲れ様です。改めて、その労をねぎらわせてください」
「ひーちゃん達のおかげだ。
支えてもらっていたから、俺は勝てたんだ。
俺一人じゃできることなんてたかが知れてるってこと、俺が一番よく知ってる」
「人が一人の力で、その身に余る大偉業を成そうとする……
そこには必ず、犠牲と悲劇が伴います。御守さんが止まってくれて良かったです」
一人の怨霊神として敵を叩き潰そうとする、個のティガダーク。
皆と共に戦う、群のウルトラマンティガ。
戦いの中で起こった闇から光、個から群、闇の巨人からウルトラマンへの移り変わりは、ひなたの心に安心をもたらした。
だが、竜胆の腹を見るひなたの目には、竜胆の腹を刺した罪悪感がまだ残っていた。
それはひなたにとって、乗り越えなければならない刺突の記憶。
そして竜胆にとっては、自分の許しによって笑い話にしてやらねばならない、友達の苦しみの記憶であった。
ひなたはその記憶を忘れてはならないと考えるし、竜胆は忘れさせてやらないとと考える。
「その、お腹は」
「いつまで気にしてんだ。
傷も残ってないから心配しなくていいんだよ。
ひーちゃんは何も悪くない。俺も全然平気だった。
むしろなんだ、俺の心の痛みを取り除いてくれた功労者と言っても……」
「嘘ですね」
嘘である。
竜胆は肉体も精神も両方ひなたに痛めつけられた。
ひなたを大切に思っていたがために、物理的に刺されたことで肉体は痛み、心をひなたの罵倒に刺された痛みは肉体の激痛を上回った。
本当は、ひなたにこれでもかと傷付けられた痛みは、まだ鮮明に思い出せてしまうほどだ。
だから、竜胆はなんでもないことのように話し、軽い口調で話し、ひなたの内心の重荷を軽くしようとする。
が、竜胆が軽い印象を受ける話し方で話しているのに、ひなたはそれを嘘と断じる。
竜胆は分かっていなかった。
ひなたが抱えるその重荷は、軽くしてもいいが、軽くしなくてもいいものだったのである。
上里ひなたにはその重荷を抱えていく自由も、その重荷を捨てる自由もあり、彼女の心には、その重荷を背負っていけるかもしれない強さがあった。
ひなたは、ただ。
これから先もずっと、竜胆を傷付ける者を許さないために、竜胆が傷付けられることは当たり前じゃないと言い続けるために、あの時の腹を刺した感触を忘れないことを決めたのだ。
竜胆を傷付けたものがなあなあで許されることに、ひなたは抵抗を見せたのである。
「もう、なんでそういう嘘つくんですか?」
「いや、待て待て、別に嘘ってわけじゃ……」
「御守さんは今、一種の光の神です。そして私達は、神の声を聞く巫女です」
「……ん?」
「時々、御守さんの感情の類が思念波に乗って漏れてるんです。
御守さんの神託……と言えば聞こえは良いですが、そんな上等なものでもないですね」
「えっ」
竜胆の嘘は、もうひなたには通じない。
というか、おそらく一定以上の能力がある巫女全員にもう通じない。
巫女とは、神の声を聞く者だ。
神道的には、そこには"神の言葉を人々に伝える"という役目があると言える。
神様が教えてくれる『正解』を人々に伝える。
神様の言葉を正しく伝え、神様の言葉を誤解なく理解させ、神様の精神性を人々に誤解させないようにする。
これまでは、人に味方する神は土着の神と神樹だけだった。
だが、今は違う。
神様初心者の竜胆の思念は、一部周囲の巫女に神託として受信されてしまう。
要するに、思考や感情を時々読み取られてしまうのである。
"神にとっての巫女"を、『理解者』と言い換えるなら。
"竜胆にとってのひなた"も、今や理解者と言えるだろう。
基本的には善人でありながらも完全な悪人と誤解されてきた竜胆。
前回の戦いの以後の四国の巫女達は皆、"竜胆を周りの人間に誤解させない"という役目を与えられたと言えるだろう。
巫女達は皆、竜胆の心を受信できるようになったのだから。
ひなたは自分がちょっと表情を曇らせただけで、「ひーちゃんを笑顔にするにはどうすれば」とあれこれ考え始める竜胆を、ここ数日何度も見てきた。
それを見るたびに、ひなたの中で罪悪感よりも「この人の前では笑顔でいないと」という奮起とやる気が湧いて来る。
ひなたが笑顔を見せるだけで竜胆が無邪気に喜んでいるのが伝わってくるものだから、巫女としての能力が高いひなたは結構照れくさい気持ちになっていた。
「御守さん、私のこと好きすぎじゃないですか……?」
「!?!?!?!」
ひなたが若葉のことを1000くらい好きだとする。
ひなたが、竜胆がひなたのことを100くらい好きだと想像していたとする。
神様になった竜胆が垂れ流す思念波から読み取れた事実は、竜胆がひなたのことを1000くらいには好きだったという事実だった。
竜胆は皆が好きで、皆を愛している。
その中でも、ひなたは上から数えて五人の中に入っている程度には、特別だった。
照れているのはひなたのはずだ。
好感度を直球で叩き込まれたひなたのはずだ。
が。
表情がいつも通りなのはひなただけで、竜胆は口をパクパクさせて顔を赤くしている。
会話の中で優位なのもまた、ひなただけだった。
「こんなに思われていたなんて、実感していなかったので困ります……」
「待て待て待て! 誤解を招くことを言うな!」
「真実ですよ?」
「いや真実かもしれねーけどさ!」
「でも私にとっての一番は若葉ちゃんなので、御守さんのお世話まではできないんです……」
「しなくていいんだよ! 大丈夫だからそういうのは!」
ひなたはちょっと、ほんのちょっとだけ、竜胆に酷いことを言ってみたくなった。
酷いことや悪口を言っても、竜胆から自分への好感が全く変わらないなら、自分の何もかもが受け入れられている気がして、嬉しい気持ちになれる気がしたから。
が、そうはしなかった。
悪口を言って竜胆が傷付いてしまったらと思うと、ひなたはそういうことは言えなかった。
なら逆に褒めて好かれてみようかな、ともひなたは思った。
ちょっと褒めたらどんどん好きになってもらえそう、と思ってしまう。
それは楽しいだろうな、と思いつつも、ひなたはこれも言わなかった。
ありのままの上里ひなたを、御守竜胆はしっかりと見て、その上で好感を抱いてくれている。
変に自分側が取り繕ったりすれば、"ありのままの自分が好かれている"という嬉しさがどこかに行ってしまいそうだと、ひなたは思った。
これまで人と人という関係性だったひなたと竜胆が、神と巫女という関係性に変貌したことで、ただでさえひなたに勝てそうになかった竜胆が更に勝ち目を失っていた。
「こうなって初めて知ったんですよ?
『御守さんって私の笑顔こんなに好きだったんだな』って」
「……いや、それは、なんだ、その」
「あなたが皆の笑顔をどれだけ好いてるか。それが分かるのは巫女の特権で、少し嬉しいです」
「ひーちゃんお前、俺のことからかってない?」
「いえいえ、からかってませんよ?」
ふふふ、とひなた。
ぐぬぬ、と竜胆。
竜胆が親しい友に対し抱く親愛は大きい。
周囲の人間が想像しているものよりも遥かに大きい。
「ただ、御守さんはこんなに私のこと好きだったんだな、って」
「からかってんじゃねーか!」
ひなたは新たな関係性を得たことで、ひなたに腹を刺されてもひなたを抱きしめた時の竜胆の心の動きを正確に理解していた。理解してしまっていた。
それは竜胆の羞恥心的には、悪夢も悪夢である。
過大評価も過小評価もなく好感を理解されてしまうというのは、盛大な羞恥を伴うのだ。
そんな竜胆とひなたを、反対側のバスの席から、千景と水都が見つめていた。
「どういうことなの、あれ……?」
「いや、あれは……
ひなたさんがわざと御守さんが恥ずかしがる言い方をしてるんじゃないかな……」
「……? あ、なるほど。藤森さんも巫女だから、竜胆君の心が聞こえるのかしら……?」
「私はひなたさんほど巫女の能力は高くないからおぼろげだけどね。
それでも御守さんの心はなんとなく分かるよ。
上手く言えないんだけど……
巫女にしか感じられない御守さんの優しさ思念みたいなものが、周りの人皆に向いてるんだ」
「それは、なんというか、納得するしかないわね」
「いつも皆の幸せを願ってるんだよ、あの人」
「知ってるわ」
「うん、だよね」
竜胆からひなたへの好感はトップクラスに大きい。
竜胆から水都への好感は結構大きい。
だからひなたはからかいのネタにしながらも嬉しそうだし、水都は意外に大切に思われていることに驚きつつも、四国組の誰よりも自分が軽い存在であることを再認識する。
竜胆にとってやはり四国の仲間達は特別で、歌野・水都・雪花はそれに一段劣っていた。
"昔からの仲間を大切にする"。
竜胆のそういった一面を再認識し、水都はなんだかほっとする。
自分が予想以上に竜胆に好かれていたことに嬉しさはあるが、それよりも何よりも、竜胆が昔からの仲間をとても大事にする人物であったことが再認識できたことの方が嬉しかった。
「感情移入しちゃってるなあ」と小声で呟いて、水都は四国で昔から戦ってきた勇者達とウルトラマンを見る。
(でも、なんというか……
意外だな。ひなたさんはなんで『それ』を話題に出さないんだろう?
ひなたさんにとっては意外なことじゃなかったのかな。
竜胆さんにとって一番特別な女の子って、土居球子さんって人なのかなこれ)
見えない思念が、土居球子という少女に関する思念が、竜胆から水都に伝わっている。
"ちょっとでも蔑ろにしてはならない"という鉄の意志が感じられる。
"誰にも侮辱させない"という鋼の意思が感じられる。
"彼女の死を無駄にしない"という絶対の決意が感じられる。
既に死んでいる、というこの上ないほどの特別性。
仮に竜胆がこの先の生涯で『一番大切な女の子』を作ったとしても、彼の中の球子の位置に滑り込むことはできないだろう。
だって、『一番大切な女の子』が出来たところで、『一番特別な女の子』が入れ替わるわけがないのだから。
「私にも巫女の力があったら、なんて思って、羨ましくなるわね……」
竜胆の思念を頭の中で噛み砕いている水都の横で、千景が小声でそんなことを言う。
「どうして?」
「それなら、竜胆君の気持ちが分かるから。
口では優しいことを言っていても、竜胆君の本心がどうなのかは分からない。
……分かる時もあるけど、竜胆君は、本心を頑として隠す時もあるから」
「心配?」
「ええ、時々ね。巫女のあなた達が羨ましい」
神様の心の声を聴く力。
神様の力を借りて戦う力。
どちらの能力が上等なのか、というものはない。
本来、巫女と勇者の能力は神様に選ばれたという意味で同格で、こういったちょっとしたきっかけがあれば、勇者でも巫女を羨んだりするものなのだ。
水都は、くすりと微笑む。
「でも巫女は巫女で、皆きっと、勇者の皆の戦える力が羨ましかったりするんだよ」
「……隣の芝生でしかないのかしらね」
「うん。皆違う、皆できることとできないことがある。
だから助け合うんだ、って御守先輩なら言うんじゃないかな」
「言いそうだわ……うん、絶対言う」
水都は歌野という光に、千景は友奈という光に惹かれた者。
であればこそ、"嫉妬"に共感もするし、"羨ましい"という気持ちに理解を示し合える。
奇妙な形に、助け合うこともできる。
「もしどうしても御守さんの心が知りたいなら、私に聞けばいいよ。
プライバシーまではバラせないけど……
必要な時は、私が神様の声を伝える巫女みたいに、その心を伝えられるから」
「ありがとう、藤森さん。ちなみに今、竜胆君は何を考えてるのか分かる?」
「え゛っ」
「……え? な、なにその反応」
「……聞きたい? 本当に?」
「そういう言い方されて聞かなかったら夜も眠れないんだけど……え? どういうこと?」
水都が複雑そうな、嫌そうな、悩ましいような表情になる。
口元をもごもごさせ、何か言おうとして言わない。
いや、言おうとしている、けれど言わない、の以前に、言いたくない、といった顔だ。
だがやがて、苦悩の果てに水都は口を開き、竜胆の心から漏れた声をそのまま伝えた。
私しーらないっと言わんばかりに。
千景に嘘をつかない水都の友情ゆえの誠実さが、竜胆を遠回しに追い詰める、そんな一幕。
「『しかし海で水着のひーちゃんとちーちゃんが並んだら胸が……
いくらなんでも残酷すぎる……
俺が気遣って乳の暴力から守らないと。俺は全ての暴力からあの子を守る』……だそうです」
千景は椅子を殴った。
ひなたは平然と微笑んだままだった。
御守竜胆は郡千景の絶対的な味方である
心も体も守ろうとするよ!
胸を守る、胸を盛る、一字しか違わないというのにそこには竜胆にとって可能と不可能の絶対的な壁がある……あ、次回はちょっとですが水着回とサッカー回です(恒例感)