オリ兄の死は弟の運命を正すか? 作:ドラゴン・タトゥーのオカマ
«何が起こった!?»
«分かりません!!けれも儀式が失敗しました!!»
«無事か小僧!!»
本来ならば軽い罪の魂を労苦で以て贖わせる為の儀式、「タルタロスの秘儀」にて兵藤正自を死神にへと転生させる手はずであったが、失敗。
儀式を執り行った夜の女神ヘカテーと、見守っていたタナトスとオルクスは慌てて駆け寄るも、そこにあったのは………
「……ル………ァ……」
言葉にならぬ呻き声をあげる霊魂のみであった。
「レイナーレ様レイナーレ様、アーシアちゃんの事で良い知らせと悪い知らせと頭の痛くなる知らせがあるんでございやすが、どれから聞く?」
昼の3時ごろ、書類を片付けるのも一段落済んで熱々の珈琲を啜っていると外から食糧を買って帰ってきたフリードが珍しく真面目な顔でこんな事を言ってきた。良い珈琲豆が手に入って美味しく飲んでいるというのに一気に気分が消沈してきた、大概真面目な顔の時のフリードが言うことは面倒が起きたという報告なのだ。今回も例に漏れず面倒事の報告なのだと思うと正直聞きたくない。書類地獄から抜け出したばかりなんだから私の代わりに誰か聞いて解決してくれないかしら、チラリと同胞を見る。
もきゅもきゅとシュークリームを食らうミッテルトは首をかしげている。頬にクリームをつける様は可愛いけどよく分かってないみたいだからダメ。
珈琲に砂糖を入れないと飲めないカワラーナは2個以上入れようとするも私が砂糖壺を抑えている為恨めしそうな顔で唸っている。しっかりしてる様に見えてミスがあんまりにも致命的だしねぇ……カワラーナもダメ。
残るはドーナシーク……そっと視線を送ると、逆に心底嫌そうな顔で返された。私のより濃い珈琲をアイスで飲む猫舌の中年はどうやらやりたくないらしい。
あー嫌だ!!
「………いい知らせから教えてちょうだい……」
「ウィッス。ならいい知らせ……アーシアちゃんは駒王町にちゃんと着いてたぜ。他の堕天使に見つかることなく安全な状態だ。」
それを聞いて私は安心した。
あのおっちょこちょいな娘がこの町に無事に来れるのか自体不安であったから、それを聞けてよかった。意図せず私の口角が上がろうとしているので、マグカップで口元を隠す。
「うんうん、無事についてよかったねぇ……これで話が済んだらどれだけ良かったんだろうな……」
あっ、遠い目をして現実逃避をしようとしてる顔だ。珈琲を収めた胃がキリリと鳴り始める。どうやらドーナシークも同じものを感じ取ったらしく、眉間の皺を更に濃くして、口が寂しいのかビターチョコを噛みながら濃いアイスコーヒーを飲み干している。どんだけ苦いのが好きなんだ。
「すっごい悪い知らせはね、アーシアちゃんを追っかけてる上級悪魔もこの町に入ったんだよね……」
多少の事で動じないよう覚悟を決めていたのだが、予想以上に悪い状況で思わず手にしていたマグカップを落とした。
「……ウッソでしょぉ………」
「………嘘だったらどれだけよかったか……」
フリードの濁った目を見て真実なのだと悟り天を仰いだ。
Holy shit.,本当この世は地獄だわ。
…………………………
………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
光ささぬ冥府にて、俺はどれほど過ごしたのだろうか。
1ヶ月か、それとも3ヶ月か。とても長い間ここにいるような感覚がある。
己の死が遠い過去のようだ、身を貫く激痛と俺を殺した女の顔はよく覚えていない。いや、それ以前の俺が生きていた頃の記憶すら薄れていっている。
もはや俺にとってどうても良いことなのだろう。実際、何故自分があそこまで必死に現世に戻ろうとしたのか分からなくなってきた。
……このまま消滅してもいいのではないだろうか。
思い出せない事のために残留した所で何になるというのだ、このまま転生して……
―――なんでっ……なんで笑ってるんだよ兄ちゃん!!
(……っ)
―――嫌だ!!兄ちゃんを置いて行けるわけねえよ!!
(……そ、うだ……)
―――寝るんじゃねえよ!!まだ……まだ兄ちゃんに教えてもらうこといっぱいあるんだよ!!
(……俺には……待っている奴が……)
待っている奴がいるじゃねえか………!!
―――
冥府にて消えかけていた魂が再び燃え上がった。
彼の者の名は兵藤正自、言わずもがなこの作品の元凶である。
何故彼がここまで焦っているか?
単純な話だ、彼は死神になる事は叶わなかった。
転生の儀は失敗に終わり、彼は死神になれないだけならまだしも人の姿する保てなくなっていた。
何が原因で失敗したのかは不明である、どちらにせよ儀式が失敗した事により、男の魂は大きく摩耗した。
と言っても、大した弊害を被ってはいない。たかが記憶を六割喪っただけである。家族との記憶、前世の記憶……兵藤正自という人間を構成していたものが全て消え去っただけである。
今ここにあるのは剥き出しの力であり、己の手を握って泣き叫ぶ一人の少年を探す一人の男であった。
古い言葉にこんなものがある。
意味は自己を思索することが自己証明の他にならない、と指す。
自己思索する事が存在証明と言うならば、今自分が何者か喪いつつある彼が、
不定形の彼が、弟の事を思索するとどうなるか……弟の姿を以て自己を定義したらどうなるのか……
球状の霊魂が変化し、一人の少年にへと姿を変えた。
レ「そういや、面倒な知らせがあるって言ってたわね……そっちは?」
フ「いや本当面倒な事になってやしてね……いや、上級悪魔の手にアーシアちゃんが堕ちてないだけ喜ばしいとも言えるんですが!!」
レ「勿体ぶらずに言いなさいよ。」
フ「その、ね……アーシアちゃん今レイナーレ様が殺し損ねた神器保有者と一緒にいるんすよ。」
レ(絶句)
死後の世界には時がないという設定です。
時というものを観測するのは生きとし生けるモノのみでありますので、死せし者が集まる冥府には時の概念がないのです。それ故に地上と時の流れが大幅に違います。
オリ主の転生失敗の原因はオリ主の転生特典とリアス・グレモリーの愚行のせいです。3:7でリアス・グレモリーがやらかしました。多分勘の良い読者様は気がついていると思うのでハマオンストーン投げつけてあげてください。