とある科学の異能干渉≪アビリティジャック≫   作:どうも厨二です

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3話 「やっと初日終わった……(ゲッソリ)」by夜衣

「夜衣!無事だったか!」

 

エレベーターから自分の部屋のある七階の廊下に出た夜衣を迎えたのは、安心したような表情の上条当麻だった。

 

「そっちもな」

 

お互いに無事だったことを喜びあったところで、これからどうするかを話し合う。

 

「もういい時間だし、なんか食いに行くか?」

 

「あー、確かに今日はもう自炊する気力もねぇしな。んじゃ、オススメの店の案内よろしく」

 

「任せとけ」

 

そんな上条の頼もしい案内で辿り着いたのは、外にもある知らぬものはいない庶民の味方、ファミレスだった。

 

「……ま、上条に穴場とか期待するだけ無駄だったか」

 

「どういう意味でせぅ!?」

 

 

 

「知ってるのか?」

 

「上条さんだってそれくらいの一つや二つ……あれ?」

 

「大方、近場で安く適当に済ますから、そんな場所探したことすらないんだろ」

 

「ぐはっ!なぜ今日会ったばかりのお前がそれを!?」

 

「……なんつーか、分かりやすい奴だよお前は」

 

メニュー表を眺め、何にするか悩む。

 

学園都市に来て最初に口にしたのがふざけた飲み物だっただけに、ここは美味いものを食べたい。

 

初日くらい金額無視して高いのを頼むのもありかとは思うが、それで舌が高い味を覚えるのも怖い。

 

「うーん……お?」

 

迷いながらメニュー表をめくっていくと、気になる商品を見つけた。

 

『ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニア』

 

「…………いや待て、これはあれだ。物珍しさで頼んでみたら大失敗ってパターンだ。過去二十三回経験した俺に、この程度のイージートラップなど通用しないぜ」

 

「なに言ってんだお前?」

 

「気にするな、どれにするか迷ってな」

 

「そんなん適当でいいだろ。あ、確かお前の見てるそれとか、人気商品だったはずだぜ」

 

「すいません、ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニア一つ」

 

あっさりと先ほどの考えを覆して頼む夜衣。こういうものはポピュラーならば当たりの可能性が高いのだ。

「いやー、楽しみだ」

 

初めて食う料理の美味へ想いを馳せる夜衣だが、それが叶うことはなかった。

 

何故なら料理を運んできたウェイトレスが直前で躓き、上条に盛大に品をぶっかけたからだ。

 

その後もわざととしか思えないウェイトレスのドジが、上条を襲った。

 

しかし上条の対応は、怒るでも焦るでもなく、やんわり許すという手慣れたもの。

 

夜衣は、不憫なものでも見るような目で、

 

「上条……強く、生きろよ?」

 

「やめて!そんな哀れみの目で上条さんを見ないでぇっ!」

 

二回ほど台無しなった料理が、ようやく無事にテーブルに置かれた時には、腹の減りすぎでグーグーうるさい合唱が鳴っていた。

ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニアは、そんな言うほど美味しくなかった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

学生がほとんどの学園都市の終電や終バスの時間帯は、外と比べてはるかに早い。

 

その時間帯を過ぎても行動している人は、あまり多くない。何故なら、移動には歩きを使わないといけないわけで、夜道を歩いているとその時間が最も活動が活発な不良たちに絡まれる可能性が高いからだ。

 

特に最近は、無能力者の集まりで出来た武装集団、スキルアウトの活動が目立ち、学校でも注意が呼びかけられていた。

 

そんな夜の街を、何も知らないお嬢様が、ちょっとした好奇心から一人出歩いてみようものなら、格好の餌食となる。

 

そして生来の不幸体質兼お人好しである上条当麻は、いつものようにそんな場面に出くわし、いつものように助けるために行動を起こした。

 

つまり何が言いたいかというと、

 

「初日から何回不良との追いかけっこしなきゃなんねぇんだよ!」

 

「喋ってる暇あったら足動かせ!」

 

二人揃って仲良く不良(八人)に追いかけられていた。

 

二人が走る路地裏は、昼間に比べてさらに光がなく、もし足場に缶でも転がっていたら気づかずに踏んで悲惨な末路になりそうだ。

 

夜衣はもう追いかけっこがトラウマになりつつあり、いっそのこと負けてもいいから闘りあったほうがマシだ、といつもの彼なら絶対思わないことを考えていた。

「なぁ!八人なら一か八かで勝てるんじゃねぇか!?」

 

「あいつら多分スキルアウトっつー武装集団のメンバーだ!武器持ってるかもしんねーから、絶対戦わないほうがいい!」

 

「マジかよ……不良に電撃に炎の次は武器かよ。どんな街だよここ」

 

「愚痴ってる暇あったら足を動かす!」

 

上条のアドバイスにより、撒けば応援を呼ばれる可能性があるとのことなので、相手のスタミナ切れによるリタイアのために適度な距離を保ち続ける。出来ればもっと早く、具体的には昼の時に教えて欲しかった。

 

しかし酒とタバコで体を壊していると予想していた不良たちは武装集団を名乗るだけあって鍛えているのか、中々スタミナ切れしてくれない。

「……なぁ、上条。もう三キロ走って脱落者ゼロなんだけど」

 

「言うな。俺だって予想外だよちくせぅ」

 

後ろから聞こえる怒鳴り声には息切れが若干混じっているとはいえ、まだまだ余裕がありそうだ。

 

(こうなれば、手は一つ……)

 

「撒いてさっさとお家に帰ろう」

 

「いやだから応援呼ばれるんだってば」

 

「スタミナ切れとかもう無理だろコレ。ヤりあうのが現実的じゃないなら、撒くしかないって。追い付けない苛立たしさから応援呼ばれりゃ本末転倒だしな」

 

「ぐ、確かに……」

 

それにこのままだと、夜衣たちのほうが先にバテる可能性だってある。夜衣はこの街に来るまでの長旅から、ほとんど休みなしで行動していて今すぐ座り込みたいくらいだし、上条だって昼間に走りまくったばかりだ。

 

上条もそれを理解してか、夜衣の作戦に同意した。

 

「でも、どうやって撒くかな……」

 

このまま普通に走っても、疲れた二人では撒くのは難しい。

 

「! そうだ! 夜衣、こっちだ!」

 

突然、上条は今まで走っていた路地から逸れ、少し開けた道に出る。

 

それに着いていくと、上条が周りにあった廃墟の一つに入っていった。

 

「な……バカかあいつ!」

 

建物なんて逃げ場のない場所に入るなんて、自ら袋の中のネズミになるようなものだ。

 

慌てて止めようとした夜衣の声を遮り、上条は小声で、

 

「(いいから!音をたてずについてこいっ)」

 

「……っ!」

 

どのみち、既に後の祭り。ここまで来れば、引き返したところで入り口辺りで追っ手と鉢合わせになる。ここは上条を信じ、前に進む以外に道はなかった。

 

いくつかの寂れた廊下を曲がり、一つの部屋のドアを開ける。

 

そこには使えそうなものは何もなく、窓ガラスのない窓枠から夜風が不気味な音を立てて入ってきていた。

 

「……なるほど。上条ってこういう知恵は回るんだな」

 

「へっへーん、何回も経験している上条さんならこの程度ちょちょいのちょいですよ……うぅ、自分で言ってて悲しくなってきた」

 

半泣きになりなった上条を慰め、二人は出来るだけ静かに窓枠から外に出た。

今頃、スキルアウトたちは廃墟の中を徹底的に調べているはず。その間にトンズラをする算段だ。

 

二人は迅速かつ静かに、その場から離れた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

「クソが、はめやがったな……!」

 

夜衣たちが廃墟から見つからず、既に逃げているとわかり、スキルアウトのリーダーが毒づく。

 

「どうします?応援呼びますか?」

 

「当たり前だ!ナメられたまま逃がしてたまるかよ!」

 

リーダーの怒声に、慌てて携帯を取り出す部下の男。

 

頭をかきむしりながら、近くにあった空き缶を八つ当たりに蹴りあげる。

 

それが男たちの、運のつきだった。

 

蹴られた缶は、リーダーの方へ返ってきた。

 

壁に弾かれたとか、そんな次元の話ではない。

 

蹴った時とは比べようもない、それこそ弾丸のごとき速度で水平に飛んできた缶は、リーダーの腹に刺さった。

 

「あ……ッ、がぁッ……!」

 

悲鳴をあげることすら出来ず、うめきながらうずくまる。

 

「な、何だ!?」

 

「ちくしょう誰がやりやがった!?」

 

リーダーのうめき声を聞いたところで、スキルアウト達は敵の警戒を始めた。

 

しかし今回は、その行動が外れだった。

なにせそれは、『相手』から見れば臨戦態勢をとっているようにしか見えないからだ。

 

「ンだァ?人様の頭に空き缶投げるなンてナメたマネするから誰かと思えば、タダのザコでしたってかァ?」

 

暗闇で目立つ真っ白な髪と、血を求める飢えた獣のように鋭い真っ赤な瞳。

 

小さくか細い身体に反比例して、その殺気は受ければ涙を流しながら地べたを這いずり逃げ出したくなるほど恐ろしかった。

 

スキルアウトは、言葉を発しようとするが、口がパクパク動くだけでうまくいかない。

 

身体中から嫌な汗が出る。

 

彼らは知っていた。

 

能力者に反感を持つ彼らにとって、目の前の相手は最も倒したく、そして不平等を体現したかのような存在だからだ。

 

何も言えない彼らに、相手は言った。

 

「まァ、相手が誰かとかどォでもイイか。誰が相手だろォが、結果が変わるワケでもねェしなァ」

 

口が裂けたようにつり上がった三日月の形をした笑みは、スキルアウト達の戦意を喪失させるには充分すぎた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「……ん?」

 

先程までいた廃墟からかなり離れた表通りへ通じる路地を走っていた夜衣は、突然立ち止まり後ろを振り返った。

 

「どうしたっ?」

 

「いや……なんかさっきの廃墟のほうから悲鳴が聞こえた気がして」

 

夜衣の言葉を聞いて、上条はため息を吐いた。

「廃墟からここまでどんだけ距離があると思ってんだよ……さっさと行くぞ、まだあいつらが追ってきてるかもしれないからな」

 

「あぁ」

 

その後二人は無事、何かのトラブルに巻き込まれることもなく、上条の不幸スキルが発動することもなく、普通に(全力疾走で)学生寮までたどり着くことができた。

 

こうして夜衣真琴は、記念すべき学園都市での初日を終えた。

 

何やら今日一日で一週間分の体験をした気がするが、きっとここではこれが日常なんだと言い聞かせる。

 

そして文字通り、こんなものは本当に日常の一部でしかなかった。

 

例えば、学園都市第三位に夜衣の能力解析のために付きまとわれた。

身体検査(システムスキャン)結果用紙に『総合結果無能力者(レベル0)』と書かれてあるものを見せても、気にせずバンバン電撃を撃ってきて大変だった。

 

例えば、学園都市の五本の指に入るほどの名門校、常盤台中学の女王様に絡まれた。

 

たまたま彼女の厄介事に巻き込まれた時に助けたら、その際レベル0の夜衣に能力が効かなかったことで興味を持たれ、お付き人達に彼氏と勘違いされたりして本当に大変だった。

 

例えば、車を盗難したスキルアウトの茶髪男を、隣のクラスの担任である巨乳の警備員と追いかけた。

 

スキルアウトの仲間が茶髪男を助けに来て、仲間もろとも捕まえることに成功したが、顔を覚えられたのか、しばらくの間スキルアウトに追いかけられる日々が続いて本当に本当に大変だった。

 

例えば、もはや日課となっていたスキルアウトとの追いかけっこをしていたら、変な服のハチマキ男が爆発とともに現れた。

 

彼はスキルアウトを一瞬で蹴散らし、礼をしようとする夜衣に何故か勝負を挑み、爆発衝撃波音速パンチをかましてきて、それを捌きながら説得するのが本当に本当に本っっっ当に大変だった。

 

そんな、非日常が日常となり、もうどんな体験したって驚くもんかと精神が強固になった夜衣にも、転機が訪れる。

 

正確には、転機のきっかけとなる、長い長い物語の始まりが、だ。

 

それは、夜衣にこれまで以上の非日常を見せ、そして様々な世界を体験させた。

 

 

その物語の始まりは、なんの前触れも予告もなく唐突に、四月から三ヶ月経った夏空の下訪れる。

 

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