ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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同じ欧州なのに、何でドイツとフランスの戦車は此処まで性能差が…Byみほ         ドイツの化学力にフランスが追いついてなかったんでしょうねByナオミ


Panzer9『1回戦の相手はフランス戦車団です』

Side:みほ

 

 

 

大会の1回戦の相手は『大阪府立浪花中学校』――一昨年の準優勝校だから、気を引き締めて行かないとだね……尤も、一昨年の準優勝校に手間取ってるようじゃ、お姉ちゃんが率いる黒森峰には到底及ばないから、先ずはこの1回戦はかっちり勝っていきたいですね。

 

 

近坂部長、試合会場のフィールドはどうなっていますか?

 

 

 

 

「ちょっと待ってね……OK、出たわ。

 

 私等と浪花中の試合の会場は、広い草原に、小高い丘や、小規模の林が点在する、比較的見通しの良いフィールド……そんな感じだわね。

 

 見通しいが良いから相手の動きを掴みやすいけど、逆に言うなら見通しが良いせいで待ち伏せ作戦には向かないわ…如何する西住隊長?」

 

 

「相手の出方にもよりますが、隠れられる場所が少ないなら、最初から待ち伏せ作戦は捨てて行こうかと思います。

 

 寧ろ、見通しの良いフィールドなら、動きを止めているよりも動いて相手を探した方が効率的ですし……サーチ&デストロイは浪漫ですから。」

 

 

「アンタ、顔に似合わず、時々サラッと怖い事言うわよね?」

 

 

「褒め言葉と取っておきますね♪」

 

 

とは言え、此方は隊員の殆どが戦車道未経験者で、如何に短期間で驚くほど成長したとは言っても、他校の隊員との錬度の差が大きな物であるって言うのは間違いないから、そこは戦術と戦車の性能でカバーしていかないとだね。

 

 

 

 

「お~~~、燃えてんなみほ?」

 

 

「燃えるのは結構だけど、何かみほの纏う闘気が金色になって来てる気がするんだけど……私の見間違いじゃないわよね、つぼみ?」

 

 

「見間違いじゃないわよナオミさん……私にだって、みほさんが纏う黄金の闘気が見えているから。」

 

 

「つまりみほは、超サイ○人に覚醒する一歩手前ってか?」

 

 

「いや、違うからね!?」

 

 

私は人間だから!地球人だから!!野菜をもじった名前を冠した人が集まった某戦闘民族じゃないから!普通の戦車女子だからね私は!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer9

 

『1回戦の相手はフランス戦車団です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、初戦の作戦会議です。

 

相手の保有戦車は分かりませんが、基本的に私達は、パンターとⅢ号の足回りの強さを生かしての機動戦を軸にして、其処から誘い込み等を利用して、Ⅲ突とティーガーⅠの前に敵を誘き出して撃破する形を取りたいと思います……質問は?

 

 

 

 

「隊長ー、今度の1回戦も、前の練習試合の時みたいに相手の戦車全滅させるんですか?」

 

 

「その必要はありません。

 

 大会はフラッグ戦なので、相手のフラッグ車を撃破すれば其処で試合終了になるので、殲滅戦の時のように、相手車輌を全て撃破する必要は無いんです。」

 

 

勿論、学校によっては、フラッグ戦であっても相手を殲滅する場合がありますけど、私達はあくまでもフラッグ車を狙ったスマートな戦い方で行こうと思っています。

 

無論、相手もそう簡単にフラッグ車を無防備にはしないでしょうけれど。

 

 

 

 

「妥当な判断ね、みほ。

 

 可成り腕が上がってきたとはいえ、私達の学校は、他の学校と比べると、隊員の錬度に差があるんだから、ルールがフラッグ戦ならば、徹底してフラッグ車を狙う――悪くない作戦だと思うわよ。」

 

 

「みほさんの立てる作戦は、作戦の大柱が確りしているにも係わらず、どんな戦局であっても対応できる柔軟さがあるのがポイントよね?

 

 と言うよりも、作戦の大柱だけ作って、細かい部分は実際の試合の場での状況に合わせて指示する感じって言った方が正しいかしら?」

 

 

「まぁ、其れで良いんじゃねーの?

 

 特に今年の1年は、アタシも含めてお前等3人以外はド素人なんだから、事前に彼是細かく指示されるよりも、大まかな部分だけ決めといて、後はその場その場で指示された方が分かりやすいってモンだ。

 

 アレだよ、宮本武蔵の攻撃を鍋の蓋で止めたって言うオッサンのアレみたいなもんだろ?」

 

 

「塚原卜伝の無手勝流?」

 

 

「そうそう、其れ。」

 

 

 

 

無手勝流……言われてみればそうかも。

 

車長専任免許取るために頑張ってた時も、蝶野さんに『みほさんの考える作戦は、次の一手が読めない。予想してもその斜め上を行くわ。』って言われた事があるからね?

 

 

でも、戦車道の無手勝流って言うのも悪くないかも♪其れが、此の大会で何処まで通じるかって言うのも楽しみだしね。

 

そう言えば近坂部長、浪花中学校はどんな戦車を使っているんですか?

 

 

 

 

「確か、フランスの戦車を使ってた筈よ?

 

 軽戦車のルノーR40と、重戦車であるルノーB1bisが主戦力で、切り札にARL-44を備えた布陣だったと記憶してるわ。」

 

 

「ルノーR40とルノーB1bisは兎も角として、ARL-44とは、レギュレーションギリギリの車両を使ってるんですねぇ……違反じゃないですけど。」

 

 

「んあ?ギリギリなのか?」

 

 

「ARL-44は、試作機の完成は大戦後だけど、設計そのものは大戦中で、終戦時には木製のモックアップだけは完成してたから、ギリギリだけどレギュレーションの範囲内なの。

 

 でも、完成は戦後って言う事もあって、主砲は90mm、正面装甲は120mm傾斜装甲って言う、ティーガーⅠ以上の攻守力を持ってるんだ。」

 

 

「うわ、マジでルールすれすれだ其れ。」

 

 

 

 

とは言っても、最高速度はティーガーⅠより劣るし、ルノーR40とルノーB1bisに至っては、あらゆる性能で此方の戦車の方が性能面で上回るから、多分何とかなると思う。

 

尤も、この性能の戦車で、一昨年は準優勝だったって言うんだから、虎の子のARL-44をとっても効果的に使っているんだろうけれどね。

 

 

でも、相手がフランス戦車を使ってくるなら、此方のフラッグ車は近坂隊長のティーガーⅠで決まりですね。

 

ティーガーⅠなら、後面を狙われない限りは、ルノーR40とルノーB1bisに撃破される事は先ず有りませんから……お願いできますか、部長?

 

 

 

 

「隊長直々の使命を断る理由はないでしょ?OK、フラッグ車を務めさせて貰うわ。」

 

 

 

 

お願いします。

 

となると、おそらくはフラッグ車であろうARL-44を如何に撃破するかだね?

 

120mmの傾斜装甲を抜けるのは、ティーガーⅠだけだけど、側面や後面なら、パンターやⅢ突の主砲で抜く事は出来るから……うん、ARL-44に対して、此の作戦で行くのがベスト!

 

 

其れじゃあ、1回戦までの残り3日、確りと練習しようか!!

 

 

 

 

「そう来なくちゃな!!やるぞテメー等!!!初戦突破の為にも、汗水流して練習だーーーー!!!!」

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

「……相変わらずね、青子は……いっその事、副隊長もこの子に変えた方が良いのかしら?割と本気で、そんな事を考えてしまうわ最近は。」

 

 

 

 

あはは……青子さんは周りのテンション上げるの得意ですからね?取り敢えず、ノリと勢いはこの学校の誰よりも凄いって言うのは間違いないですから。

 

でも、あのテンションは練習でも試合中でも、チーム全体の士気を上げてくれるから、絶対に必要なのは間違いありません。

 

 

そして、青子さんが折角皆のテンションを上げてくれたんだから、皆には大会前にもう2段階ぐらいステップアップして貰おうとしようかな?其れが出来れば、1回戦は間違いなく突破できると思うから♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:ナオミ

 

 

 

という訳で1回戦当日。

 

実際に見てみると、今日の試合のフィールドは本気で見渡しが良いわね?って言うか、日本で地平線が見えるような場所があったって言う事に、若干驚いてるわ。

 

 

其れは其れとして、試合前の車輌チェックは欠かせないわ。

 

照準良し、トリガーの動作良し、シートのグラつきもないし、此れなら停止射撃で外す事は先ず無いから、思い切り暴れてやろうじゃない相棒。

 

 

 

 

「調子良さそうですね、ナオミさん?」

 

 

「えぇ、調子は上々よみほ。今日の私は、どんな相手にだって砲撃を命中させる自信があるわ。」

 

 

「其れは、頼りになります♪

 

 でも、実際に今日はナオミさんに頑張って貰う事になると思いますから、宜しくお願いしますね?」

 

 

 

 

任せなさいみほ、貴女が撃破しろと言った車輌は全て撃ち抜いてみせるわ。

 

何よりも、戦況によってはARL-44を撃破する事も念頭に置いておかないとなんだけど、此れだけの強力な戦車を撃破するって言うのは、砲撃手の勲章だから、この手で撃破したいのが本音よ。

 

 

何にしても、この1回戦は、絶対に勝つわよみほ?

 

 

 

 

「勿論ですよナオミさん!」

 

 

「毎年1回戦負けの弱小校の快進撃ってモンを見せてやろうじゃねぇか!」

 

 

「弱小校と呼ばれるのは今日までの事……此れからは『強豪』と呼ばせてあげるわ!!」

 

 

 

 

って、私が言うまでもなかったか。――って、ん?

 

 

 

 

「えっと、明光大の隊長さんは何方でっしゃろか?」

 

 

「明光大の隊長は私ですけど……何かご用ですか?」

 

 

 

 

やって来たのは浪花中の生徒と、其れに引き摺られてきた浪花中の隊長?……試合前に一体何の用かしら?この前みたいに、みほを馬鹿にしに来たって言うなら、力尽くで追い返すわよ?

 

 

 

 

「あ~~~……其れに付いてはホンマに堪忍したって!

 

 こっちって言うか、うちらの隊長が全面的に悪いのは分かってるんやけど、ウチらの隊長って基本ヘタレのクセに、頭に血が上り易い上に喧嘩っ早うてなぁ……毎度毎度、喧嘩売ってから後悔してるんよ?

 

 今回も、落ち着いてから『西住流に喧嘩売っちまったぁ!もうお終いだぁ!』って、世界の終りみたいになってしもたからね。」

 

 

「ヘタレのクセに喧嘩っ早いって馬鹿かソイツは?勝てねぇ喧嘩売るんじゃねぇっての。」

 

 

 

 

この間みたいにみほを馬鹿にしに来たって言う訳じゃないみたいだけど、喧嘩っ早いヘタレって言うのはどうにも救いようがない感じがするわ。

 

って言うか、青子に『馬鹿』って言われたら、ある意味でお終いよ?

 

 

 

 

「ちょっと待てナオミ、其れは暗にアタシの事を馬鹿って言ってんのかオイ?」

 

 

「端的に言えばそう成るわね。」

 

 

「アタシは馬鹿じゃねぇ!」

 

 

 

 

果たしてそうかしら?

 

この間の数学の小テスト……隊長の得点は?

 

 

 

 

「えっと、89点だよ。」

 

 

「操縦士!」

 

 

「83点ね。」

 

 

「そして私は85点……で、装填士は?」

 

 

「35点!~~~~って、あるぇ?」

 

 

 

 

現実を受け入れなさい青子。

 

まぁ、其れは良いとして、其方の隊長は使い物になるのかって言うのが心配になって来たんだけど、大丈夫なんでしょうね?隊長が機能しなくなってるチームに勝っても嬉しくないわよ?

 

 

 

 

「ほら、しゃっきりしなさい隊長!!」

 

 

「はいぃぃぃ!!この前はマジ調子に乗ってスンマセンでしたぁ!!

 

 この通り謝るんで、如何か命だけは勘弁して下さい!!ホンマに自分でも、頭に血が上ったとは言え言い過ぎたって思っとりますからぁぁぁ!」

 

 

 

 

と思ったら、腰を90度に曲げて、いっそ清々しい程の謝罪をして来たわね相手の隊長は。

 

其れ以前に、やってから後悔する位なら、そもそも喧嘩なんて売らなければいいと思うんだけど、この人の性格的に、其れは難しい物があるんでしょうね?

 

 

さて、どうするみほ?

 

許すも許さないも貴女次第――相手の隊長さんの生殺与奪権は貴女にある状況だから、ドドンと判決を言い渡しちゃってくれるかしら?

 

 

 

 

「じゃあ無罪で。

 

 私としても、1回戦を軽んじたと思われても仕方のない事を言っていましたから、其れに反応して怒るのは、ある意味で当然の事ですからね。

 

 だから、咎める事は出来ません。

 

 其れよりも、今日の試合は良い試合にしましょう。どちらが勝っても恨みっこなし……互いに全力を尽くして戦いましょうね?」

 

 

「勿論やぁ!!

 

 てか、アンだけの事言った私を許してくれるとか、ドンだけ心広いんやアンタは!!……許してくれた礼として、うち等も慢心を捨てて全力で行かせて貰うで西住!!」

 

 

 

 

無罪か……まぁ、みほならそうでしょうね。

 

って言うか、無罪と分かった瞬間に、相手の隊長は復活したわ……本気でヘタレで喧嘩っ早いお調子者みたいね?――尤も、隊長を務めてる位だから、戦車乗りとしての能力は高いのかもしれないけれど。

 

 

でも無罪放免になった事で、相手の隊長は立ち直ったみたいだから、簡単に勝つ事は出来ないでしょうね?隊長の士気って言うのは、隊員の士気に直結するから、隊長が立ち直ったなら、隊員だって本来の力を発揮できるようになってるでしょうし。

 

 

 

だけど、それでも私達が勝たせて貰うわ。

 

そして、教えてあげるわ、西住みほって言う『軍神』が率いる戦車道チームがドレだけの物なのかって言う事をね……悪いけれど、貴女達には私達の踏み台になって貰うわ浪花中!!

 

 

行くわよみほ!

 

 

 

 

『1回戦第6試合、明光大付属中学校vs大阪府立浪花中学校……試合開始!』

 

 

 

 

「行きましょう!Panzer Vor!(戦車前進!)」

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「Jawohl!(了解!)」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

覚悟はできてるわね浪花中?

 

悪いけれど、貴女達には新生明光大が公式戦で最初に撃破した学校になって貰うわ――既にみほの中では無数の戦術が出来上がってるか

 

ら、どんな事態に陥っても其れに対処する事が出来るからね。

 

 

丸ごと喰らってやるわ、浪花中――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:まほ

 

 

 

始まったか、みほの試合が。

 

相手は、圧倒的な戦車の性能の差があるにも拘らず、一昨年と去年、黒森峰と互角にやり合った相手だから警戒していたんだが……どうやら其処まで、警戒すべき相手ではないようだな。

 

 

というか、事前のやり取りを見る限り、明らかに隊長は人選ミスだ……隊長を引き摺って連れて来た子の方が隊長を務めた方が良かったかもだからね。

 

 

まぁ、そんな事は如何でも良い事だ、私に直接関係する事ではないからね。

 

先ずは見せて貰おうかみほ?お前が一体どんな戦い方をするのか、どんな戦車道をするのかじっくりと見させてもらう事にしようじゃないか?

 

 

 

 

『Panzer Vor!!』

 

 

 

 

そして、浪花中の隊長には同情してしまうよ……よりにもよって、1回戦の相手がみほであったという事にね。

 

妹贔屓をする訳ではないが、今の中学戦車道界隈で、みほを倒す事が出来るのは私だけだ……私以外の誰にもみほを倒す事など出来ない。

 

それこそ、私と互角張り合う安斎でも、みほに勝つ事は出来ないだろうからね。

 

 

だから、その力を思い切り見せつけてやれみほ!!一切の手加減をしない方向で徹敵的に、骨の髄にまでぼろぼろな!!!

 

 

 

如何やら今年の大会は、去年以上に面白いモノになるのは、間違いなさそうだ……なので、試合で戦う事を楽しみにしているよみほ!!

 

 

必ず勝ちあがって来い!私も其処には到達するからね。

 

 

とは言え、先ずは1回戦――さて、どんな試合になるのか、楽しませてもうらおうじゃないか?此の試合はエリカと赤星も、よく見ておけよ?

 

今年の明光大は、私達が優勝する上で、安斎率いる『愛和学園』に匹敵する難敵になるであろう事は間違いないだろうからな。

 

 

 

 

「「はい……!」」

 

 

「良い返事だ。」

 

 

さて、ティーガーⅠの力も持ってしても撃破は簡単ではない、フランスのモンスター重戦車ARL-44を相手に如何戦うか、見せて貰うとするぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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