ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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何とか100話で大洗に行けそうだよ?Byみほ      でも100話で原作に入る訳じゃないのよね?Byエリカ     ですね……ぶっちゃけ作者が死にかけてますBy小梅


Panzer99『みほとエリカと小梅の向かう先は?です』

Side:みほ

 

 

『人の口の戸は建てられない』とはよく言った物で、週が明けて3日が経つ頃には、黒森峰の機甲科には、今年度が終わると同時に私と、エリカさんと、小梅さんが黒森峰から去るって言う事が知れ渡っていた。

お姉ちゃんや近坂先輩が言いふらすとは思えないし、私達も何も言わなかったんだけど……若しかしたら、ちょっとした会話の彼是から、知られたのかもね。

 

 

 

「何で、みほ達が黒森峰から去らなきゃならないんだよ!!そんなの納得できないっての!!

 みほは仲間の命を助けた上で勝利を手にしたのに、其れを破門にするって――!!てか、みほだけを破門するだけじゃなくて、逸見と赤星まで破門するとか、何考えてんだ、あの梅干しババアは!?

 ちょっくら、家元にヤークトパンターの88㎜をブチかましてくるわ。」

 

「うわ~~!其れは流石に駄目だよ理子さん!!

 幾ら西住流の家でもヤークトパンターの88㎜を喰らったら只じゃ済まないから!――尤もお母さんと菊代さんは、無事かもしれないけど。」

 

でも、其れは駄目だよ!

怒りに身を任せて暴力を振るったら、其れはお婆ちゃんと同じになっちゃうからね……私達は、お婆ちゃんの西住流を否定する為に黒森峰から去るんだよ。

 

そして、だからこそ、貴女には此処に残って欲しいんだよ理子さん。

私達が去った後で、隊長を支える事が出来るのは理子さんだけだからね……お姉ちゃんの事、お願いね?

 

 

 

「分かった……だけど、お前達が何処に行こうと私達は仲間だ!其れだけは変わらないからな、みほ、逸見、赤星!!」

 

「はい、忘れませんよ理子さん!」

 

「忘れたくても、貴女を忘れるのは難しいわよ直下。」

 

 

 

うん、絶対に忘れないよ理子さん!――貴女もまた、遊撃隊の大事な仲間だったんだからね。

……こんな事やっといてなんだけど、私もエリカさんも小梅さんも、今年一杯は黒森峰に在籍してるんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer99

『みほとエリカと小梅の向かう先は?です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:梓

 

 

第62回全国高校戦車道大会は、ハプニングがあったけど、最終的には西住先輩率いる遊撃隊が其の力を発揮して、プラウダのフラッグ車を撃破して、10連覇を達成!

表彰台で、真紅の優勝旗を手にする西住先輩と、姉隊長はスッゴクカッコ良かった。

 

で、その先輩達に少しでも近づくために、夏休みは西住流の本家で黒森峰との合同合宿!!

私は今年で都合3度目の参加なんだけど、そうであってもマダマダ学ぶ事は多いから、戦車道って言うのは奥が深いんだって実感出来る。

 

 

 

「ホント、学べば学ぶほど深いわぁ。

 こう言っちゃなんだけど、ドイツは戦車道の強豪国なんて言われてるけど、日本も相当にレベルが高い……って言うか、私が暴れまくってたドイツのジュニアリーグなんて、お遊びの延長だったんじゃないかって思えるわ、日本の大会に出た今では。」

 

「そうかなぁ?ツェスカは強いと思うよ?

 今年の大会では、僅差とはいえ勝つ事が出来なかったし。」

 

「其れがオカシイのよ!

 私はグルントシューレ(小学校)の頃から戦車道やってるのに、ハウプトシューレ(中学校)から始めたアズサが略互角になってるなんて事は普通は有り得ないわよ!?」

 

「いや、そう言われても困るんだけど……」

 

マッタクの素人で、変なクセが付いてなかったからスポンジが水を吸収する様にドンドン色んな事を覚える事が出来たのかも知れないし、自分でも気付いてなかったけど、思った以上に私は戦車道が肌に合ってたらしくて……何より私の場合、師匠が普通じゃございませんので。

 

 

 

「其れを言われると何とも……アズサのレーラァ(師匠)は妹隊長だったわね。

 確かに、あの人から教わったんならアズサの急成長も頷けるわ……今のアズサなら、黒森峰の高等部に入学しても、行き成りレギュラーになれるんじゃない?」

 

「ん~~……其れは如何だろう?

 今年の黒森峰の中等部の3年生にはツェスカ以外にも強い人は居たし、持ち上がり以外の受験組でも結構優秀な人は居るから、私が即レギュラーって言う事も無いと思うけど……」

 

特に今年の準決勝で戦った学校の隊長の『辺古美甘(へこみかん)』さんとか、可成り強かったし。

時にツェスカは進路は如何するの?中学は今年で卒業だけど、帰国しちゃうのかな?

 

 

 

「こっちに来た時は、中学卒業までの留学予定だったんだけど、気が変わったから手続きして日本国籍取ってこっちにいる事にしたわ。」

 

「え?そうなの!?」

 

「そうよ。そして、私にそうさせたのは貴女よアズサ。

 今年の大会では勝つ事が出来たけど、練習試合とかでの戦績を合わせれば、大会で勝って漸く星が並んだって言う所でしょ?……貴女と戦車道を続けたいと思ったのよ。

 チームメイトか、其れともライバルであるかは抜きにしてね。」

 

 

 

其れは、嬉しい事を言ってくれるねツェスカ?……私としても、ツェスカがドイツに帰らないのは嬉しいよ?

日本に居るなら、高校でも戦車道が一緒に出来るから!――でも、そうなると高校はやっぱり持ち上がりで黒森峰に?

 

 

 

「そうなるわね。

 正直言って楽しみなのよ、天下の西住姉妹が揃ってて、逸見先輩と赤星先輩もいる黒森峰で戦うのが……まほ隊長の攻撃的な戦車道に妹隊長の奇策・搦め手上等な戦術が加わったら、其れはもう最強でしょう?」

 

「最強だよ!今年の大会だって、姉隊長の剛の戦車道と、西住先輩の柔の戦車道が見事に噛み合ったからこその結果だから!!」

 

「そうなのよ!――って言うかアズサ、そう思ってるって事は、さっきはレギュラーなんてとか言ってたけど本当は……」

 

 

 

うん、私は黒森峰を受験しようと思ってる。と言うか、黒森峰からスカウトも来てるんだ。

私が去年までは西住先輩の副官だったのは結構知られてたみたいなんだよ?……まぁ、其れだけじゃ何て言う事は無いんだけど、今年の大会で負けたとは言え、西住先輩同様に黒森峰を追い詰めたって言うのがスカウトの決定打になったみたいなの。

何よりも、黒森峰に行けば、また西住先輩と戦車道が出来るし、今度はツェスカと一緒に戦う事が出来るしね。

 

 

 

「ふむ、ツェスカだけでなく、澤も黒森峰にか……此れは、来年の黒森峰も安泰だな?」

 

「まほ……じゃなくて、西住隊長!!」

 

「姉隊長!!」

 

い、いらしてたんですか?一体何時から……

 

 

 

「澤の『戦車道は奥が深い~~』あたりからだな。」

 

「ほとんど最初から!?」

 

「今まで黙って聞いていたんですか!?……趣味悪いですよ西住隊長?」

 

「いや、余りにも熱く語っているので話しかける機会を逸してしまってな。

 そう言えばツェスカ、副隊長が探していたぞ?……戻った方が良いんじゃないのか?」

 

「へ?

 あぁ、そう言えばミーティングをするって言ってたっけ!ごめんアズサ、私戻るわ!!」

 

 

 

は~い、ミーティング確りねツェスカ隊長。

……なんて言うか、ツェスカもすっかり隊長職が板についたと言うか、此れは互いに来年度の新隊長を選ぶのに苦労するかも――それで?

 

 

 

「ん?」

 

「いや、そんな不思議そうな顔されても困るんですが、私に何か用が有ったんですよね姉隊長?

 だから、ツェスカをこの場から引き剥がしたんですよね?」

 

「……正解だ。中々の鋭さだ。」

 

 

 

私の師匠は貴女の妹君ですよ?

あの人が師匠なら、否が応でも感覚的な事は――特に相手の思考を予測する事に関しては鋭くなりますって。……と言うか、其処が鋭くならないと、校内模擬戦で西住先輩に何も出来ずに倒されちゃいますので。

尤も、西住先輩は、こっちが予想した事を普通に超えてくるんですけどね……

 

 

 

「其れがみほだからな。

 さてと、お前への要件だが澤……お前は黒森峰に来ない方が良い――否、来るべきではないと言うのが正しいか?」

 

「え?」

 

黒森峰に来るべきじゃないってどういう事ですか?

黒森峰からスカウトが来てるし、私は黒森峰で、また西住先輩と戦車道をやりたいのに……何か、私に黒森峰では受け入れられない欠点があったんですか?

 

 

 

「そうじゃない。お前の戦車長としての能力は私も買っている。

 だが、それ以上にお前がみほの事を慕っている事も知っている……だからこそ、お前は黒森峰に来るべきじゃない――来年度の黒森峰には、みほとエリカと小梅は居ないからね。」

 

「へ?」

 

西住先輩と、逸見さんと赤星さんが居ないってどういう事ですか姉隊長!?

あの3人は、遊撃隊の柱であり、黒森峰の10連覇に貢献した人達ですよね!?――普通に考えれば、来年も西住先輩と逸見さんと赤星さんが中心になって行くって思ってたのに……何で――!!

 

 

 

「此れはオフレコで頼みたいんだが……予てより、危惧していたお婆様とみほとの対立が、大会でのみほ達の救出行動を機に表面化し、その末に、みほとエリカと小梅は、西住流を破門されるに至ったんだ。

 西住流を破門された生徒が、黒森峰で戦車道を続けるのは難しい……と言うか無理だ。

 なのでみほ、エリカ、小梅の3人は、来年度からは別の学校に通う事になるんだ。――寄港日にも関わらず、みほが実家に戻って来てないのは、そのせいだな。」

 

「そんな……って言うか家元は馬鹿ですか!?

 西住先輩達を破門にするだなんて……あの3人が居なくなったら黒森峰の戦力ダウンは避ける事が出来ないって思う筈ですけど………」

 

「思わなかったのだろうな。

 マッタク持って愚かとしか言いようがないが……此れでみほを西住流と言う名の檻から解き放つ事が出来たと思えば悪い事でもないさ。

 だが、エリカと小梅も一緒に行くとは言え、やはり心配はある――転校先に戦車道がなかった場合、一から戦車道チームを立ち上げる必要もあるからね。」

 

 

 

確かに、姉として心配するのは分かります――戦車道チームを一から立ち上げるとなったら、可成りな事になると思いますし。

しかし何と言うか、ヤッパリ家元は駄目ですね色々と?正直言って、しほ小母様が家元になった方が良いと思います。

 

 

 

「私もそう思う……まぁ、みほ達の転校は、改革の狼煙なのだけどね。

 ――澤、みほの為にお前の進路を変えて欲しいと言ったら、お前は怒るだろうか?――黒森峰には進学せずにみほ達の助けになってくれと言ったらお前は……」

 

「それが、私は黒森峰に行かない方が良いって言う事ですか?」

 

「……その通りだ。

 自分でも、可成りとんでもない事を言っている自覚はあるし、お前に『みほの為に犠牲になれ』と言うに等しい事を言っているのも分かっている!……だが、其れでも私は、みほの戦車道が間違いではなかったと言う事を証明したい。

 その為にも、みほにはお前の力が必要なんだ澤……私の我儘で悪いが、みほにお前の力を貸してやってくれないか?」

 

 

 

……分かりました。

そう言う事なら、不肖・澤梓、喜んで姉隊長の『お願い』を聞きます!――私は、西住隊長達の編入先の学校を受験します。

其処に戦車道があるかどうかは分かりませんが、無いんだったら新たに作れば良いだけの事ですしね……時に、西住先輩達の転校先って言うのは分かりますか、姉隊長?

 

 

 

「其れは未だだ、お母様が色々と考えているしね。

 だが、みほ達の転校先が決まったら、真っ先に君に伝えよう梓……早い方が色々と説得も楽だしね――お前の様な子が、みほの後継者で良かったよ梓。

 みほを……妹を、宜しく頼む。」

 

「その任、有り難く拝任致します。」

 

まさか、西住先輩と、逸見さんと赤星さんが西住流を破門にされ、来年度からは黒森峰じゃない別の学園艦で暮らす事になってたとは予想外にも程があるけど、姉隊長のおかげで内情が知れたのは良かった。

若しもそうじゃなかったら、西住先輩の居ない黒森峰に入学して、虚しい日々を送るだけになったかも知れないモノ。

 

でも、これでツェスカとは高校でも一緒のチームでは戦えない事になっちゃったか……西住先輩達の転校先が決まったら、黒森峰には行かない事を伝えて、謝らないとね。

 

果てさて、西住先輩達は何処に転校するのか――取り敢えず、転校先の学校が最強になるのは間違いない気がする。

 

あ!あとオフレコって言われてたけど、クロエにだけは話しておかないと。クロエってば『高校は梓と同じ学校に行くヨ。』って言ってたからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

「其れで奥様、みほお嬢様達の転校先は何処になさるおつもりでしょうか?

 此度の件は黒森峰以外の学校には伝わっていませんので、みほお嬢様達に他校からの勧誘が来る可能性は極めて低い訳ですが……」

 

「そうでしょうね……尤も、諜報能力に長けた聖グロリアーナは『黒森峰と西住流で何か問題が起きた』位は把握してるでしょうけれど。」

 

まほが、みほ達が襲撃された事件を秘密裏に調べて貰った事からも、黒森峰に不穏な空気が渦巻いている事は把握しているでしょうしね。

ホントに、腹が立つくらい諜報能力に長けていますからね、あそこは……試合に勝ったとはいえ、現役時代に学園艦に入り込まれて何度煮え湯を飲まされた事か……今思い出しても腹が立つわ、ちよきちめ。

 

 

 

「聖グロリアーナの伝説的ノーブルネームである『アールグレイ』、その初代が千代様でしたからねぇ……そのノーブルネームを受け継いだ逸見エリカさんのお姉さまの実力は相当なのでしょうね。

 で、転校先は如何なさるのですか?」

 

「それなんだけど、みほ達を戦車道がある学校に行かせる気は無いの。

 何故と思うでしょうけど、戦車道のある学校は、夫々の学校でドクトリンの基本があるから、其処に転校させたら、結局はみほをその学校の型に嵌める事になるわ。」

 

今年はまほが遊撃隊を組織した事で、黒森峰内部でもある程度自由に出来ていたけれど、それでも中学時代のみほと比べれば可成り窮屈そうだったのは否定できなかったでしょう?

だからいっその事、戦車道のない学校に転校させて、其処で一から戦車道チームを作らせようかと思っているのよ。

 

 

 

「成程、悪い案ではないと思いますが、如何にみほお嬢様でも一から戦車道チームを創るのは無理があるのではないでしょうか?

 中学の時の様に、超弱小校を立て直すならば兎も角として……」

 

「えぇ、無理でしょうね。

 でも、過去に戦車道を行っていたけど、今は廃止している学校だったらどうかしら菊代?」

 

「過去に戦車道を?……!!

 奥様、まさかみほお嬢様をあそこに転校させる心算なのですか!?」

 

 

 

そのまさかよ。

彼女の性格的に、戦車道が廃止になるからと言って全ての戦車を処分したとは考え辛いでしょう?何らかの裏技を使って、隊長車をはじめとした何輌かは残されている筈だわ。

なので、其れを確認するために電話をね……操作が一々面倒になって来たから、そろそろスマホに変えようかしらね。

 

 

 

――ドォン!ドォォン!ドォォォン!!

 

 

 

呼び出し音が戦車の砲撃音って……まぁ、彼女らしいと言えば彼女らしいわね。

 

 

 

『もしもし、秋山ですが……』

 

「秋山……そう言えば、今の貴女は『秋山』だったわね?」

 

『んん?その声……若しかしてしほちゃん!?久しぶりね~~~!!』

 

 

 

えぇ、久しぶりね好子。

元気そうで安心したけど、昔と比べて随分と丸くなったみたいね?『大洗の荒熊』の異名で恐れられてた頃からは想像も出来ないわよ?

 

 

 

『その名前は止めてよ、結構黒歴史なんだから其れ。まぁ、貴女や千代ちゃんと全力で戦った思い出でもあるけれどね。

 其れで、如何したの今日は?貴女から連絡を寄越すなんて珍しいじゃない?』

 

「聞きたい事があってね。

 大洗女子学園は、貴女が隊長を務めた代を最後に戦車道が廃止になったのだけれど、当時使って居た戦車は如何したのかしら?」

 

『戦車?確か20輌の内11輌は売り払ったけど、隊長車であるⅣ号を含めて9輌は学園艦に至る所に隠して、紛失届の書類を捏造した記憶があるわ。

 でも、なんでそんな事を聞くのかしら?』

 

 

 

来年度、そっちに娘1人とその友人2人を行かせるからよ。

新たな地で戦車道を始める為にも、今の大洗にドレだけの戦車が残っているのか知りたかったの。

 

 

 

『えぇ!?娘って……どっち?』

 

「みほよ。其れと、逸見エリカさんと……赤星小梅さんよ。」

 

『みほちゃんの方だったか~~……って、逸見エリカと赤星小梅ぇ!?

 其れマジなのしほちゃん?……ウチの娘、その3人の大ファンだから大洗に来る事を知ったらテンション爆上がり間違いなしなんだけど。』

 

 

 

『本気』と書いて『マジ』よ好子。

何時かそうなるとは思っていたけど、お母様とみほの対立が決定的になって、みほと逸見さんと赤星さんはお母様から西住流を破門になった

のよ。

西住流を破門になった以上、黒森峰には居られないからね……だから、大洗に転校させる事にしたの。

戦車道の名門校に転校と言う選択肢もなくは無いのだけど、其れではみほの戦車道をするのは少し難しいから、いっその事戦車道がない所に転校させて、一から戦車道チームを立ち上げさせようと思ってね。

そう言う意味では、過去に戦車道を行っていた大洗は最適だったのよ。

 

 

 

『あっちゃ~~……かほ小母さまは遂にやっちゃったか~~。

 何時かはとんでもない事になる事にとは思ってたけど、まさかみほちゃん達を破門にするとはね……あのババア、マジで殺すか?』

 

「……口調が昔に戻ってるわよ好子。」

 

『あらあら、あはは……でも、そう言う事なら了解したわしほちゃん。

 娘にもそれとなく話をしておく。あの子ったら、戦車と戦車道が大好きだから、きっとみほちゃん達の事を手助けしてくれると思うからね。』

 

 

 

そう……恩に着るわ好子。

今度機会が有ったら、千代も呼んで一度会いましょう?最後に会ったのは、みほが生まれた時だからもう16年でしょう?

 

 

 

『そうね、其れも良いかも知れないわ――だけどまぁ、何か面倒な事になってるみたいだが、無理はするなよしほ?みほちゃん達の事以外でも、必要な事があれば言えよ?

 ガチで遣り合った奴の頼みを断る程、薄情じゃないからなオレは。』

 

「だから口調が戻ってるわよ好子。」

 

でも、だからこそ頼りになるわ好子。――みほ達の事を、それとなくサポートしてあげて。

 

 

 

『其れは、私じゃなくて優花里――私の娘の役目。

 私達は既に一線を退いた身……表舞台は次代に任せて、裏方に回るでしょ?』

 

「ふ……そうだったわね。」

 

だけど此れで大洗には戦車が残されてる事が分かったから、みほ達の転校先としては充分ね?

こんな事を言ったらアレだけど、黒森峰が10連覇を達成した事で、その立役者である遊撃隊のトップ3である『西住みほ』『逸見エリカ』『赤星

小梅』のネームバリューは相当だから、戦車道を復活させれば、そのネームバリューに飛びつく子だって少なくない筈。

経験者は望めなくとも、其れが逆にみほにとっては武器となる――未経験者であるからこそ、みほの戦術をストレートに受け入れる事が出来ると言えるもの。

 

ふふ、此れは面白い事になりそうだわ。

20年前、準決勝で千代率いる聖グロリアーナを打ち破り、決勝で私が率いる黒森峰をあと一歩まで追い詰めた大洗が、みほ達によって蘇るのだからね。

そして、みほの戦友であるアイスブルーのパンターと漆黒のティーガーⅡも大洗に行く事になるから、大洗の戦車も強化される事になるわ。

 

嘗ての強敵が、今度は改革の力強い味方になるか……貴女達ならきっと、お母様の西住流を食い破る事が出来るわ、みほ、エリカさん、小梅さん。

 

貴女達の力が西住流を変えてくれる事を願って居るわ――そして願わくば、お母様の心を折ってくれる事をね。

お母様の西住流は、もうこの世には不要なものだから、完全に否定した上で排除しなくてはならないのだから……そして、その上で新たな西住流を確立しなくてはだからね。

 

お母様……貴女の時代はもう終わりです。そろそろ退場して頂きますよ――!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

黒森峰での残りの時間はあっという間に過ぎ、気が付けば3学期の修了式も終わって、私とエリカさんと小梅さんは、今日を持って黒森峰から……熊本から去る事になる。

 

短い間だったけど、此の1年の思い出はきっと忘れないよ――って言うか、忘れろって言われて忘れるのが難しいからね。

 

 

 

「大会での10連覇は言うまでも無いけど、学園祭も盛り上がったからね……私とみほと小梅のディアンドル姿が大人気だったって言うのは、流石に思う所があるけどね。」

 

「あはは……まぁ大人気だったんだから良いとしましょうよエリカさん?

 学園祭も大盛況でしたけど、修学旅行も楽しかったですよ?行先は北海道で……まさか富良野の『ハイジ牧場』でセントバーナードに押し倒される事になるとは思いませんでしたけど。」

 

「あはは……まぁ、其れもまた良い思い出だよ。」

 

黒森峰の思い出が多いのは良い事だしね。

 

お母さんが転校先に選んだ『大洗女子学園』の寄港日と同じになるように、このカーフェリーは大洗港に到着するみたい……まぁ、戦車の運び込みが楽で良いけどね。

……ロンメルとアンドリューが普通に乗れた事に関しては、最早何も言わないけど。

 

さて、そろそろ出港だね?

 

 

 

「そうね……さらば黒森峰ね。」

 

「Good Bye……今度は戦車道の試合で会いましょう。」

 

 

 

此れで熊本ともお別れだね……バイバイ。

って、アレは――

 

 

 

「全員整列!西住みほ遊撃隊長、逸見エリカ遊撃隊員、赤星小梅遊撃隊員に敬礼!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「Ja!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

理子さん!!其れに、遊撃隊の皆!!

理子さんの号令の下に全員が整列して、ドイツ式の敬礼を……ありがとう、最高の見送りだよ理子さん!!ありがとう……ありがとう……!

 

 

 

「みほ、逸見、赤星……たとえ学校が違っても、私達は仲間だ――其れだけは絶対に変わらないからな!!」

 

「うん、分かってるよ理子さん!!」

 

「私達が仲間である事は変わらないわ……!」

 

「直下さん達も、息災で!!」

 

「おうよ!!じゃあな……ダチ公!!」

 

 

 

うん、それじゃあね。

今度会う時は敵同士かも知れないけど、貴女達との思い出は決して忘れないって誓うよ――西住流を破門されて、黒森峰から去る事になっても、黒森峰での1年は嘘じゃないからね。

今度は、大会で会おうね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:???

 

 

いんや~~、まさかウチが統廃合の対象になってるとはね~?……アンコウの養殖なんて言う超レアな事をやってるんだから見逃してくれても良い気がするんだけど、其れだけじゃパンチ力が足りなかったか。

まぁ、其れなら其れで戦車道を持ち出した訳だけど、此れは結構行けたかもね?今の会話は文書こそ交わしてないけど、会話内容はボイスレコーダーに録音したからね。

 

 

 

「其れは流石ですが、しかし戦車道の大会で優勝すると言うのは可成り難易度が高いかと……」

 

「んな事は分かってるよかーしま。」

 

だけど、アタシは負け戦をする心算は毛頭ないんだよねぇ?……戦をする以上は勝たないとだからね。

其れに、戦車道の復活だって伊達や酔狂で言った訳じゃないんだ――小山、確か来年度から、大洗に編入してくる生徒がいたよな?

 

 

 

「そうですね?

 えぇっと、『西住みほ』さんと、『逸見エリカ』さんと、『赤星小梅』さんですね。」

 

「その3人か!!」

 

如何やら未だツキは私達を見放した訳じゃないみたいだねぇ?

隻腕の軍神と、孤高の銀狼、そして慧眼の隼がウチに来てくれるなら、未だ望みはある……悪いけど君達の力を貸してもらうよ西住ちゃん、逸見ちゃん、赤星ちゃん?

 

大洗を救うためにも、君達の力は絶対に必要になるからね――其の力、大洗の為に使って貰うよ?例え、どんな手段を使っても絶対にね!

働いて貰うよ……大洗の為にも全力で!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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