ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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抽選会……其れは隊長のドロー力が問われる場Byみほ      間違ってはいないけど、正解とも言い難いわそれは……Byエリカ      テストなら△って言う所ですね♪By小梅


Panzer114『第63回戦車道高校大会抽選会です』

Side:みほ

 

 

第63回戦車道全国高校大会の抽選会場である日本武道館は、戦車乗り特有の闘気で満ち溢れてる……やっぱり、抽選会独特の雰囲気って言うのは堪らない感じだよ。戦車乗りとしての本能が刺激される気分だね。

本当なら戦車隊全員で抽選会に来たかったんだけど、会長さんが『マジノには勝てたけど、大会はこんなもんじゃないだろうからアタシ等は練習してるよ。』って言って抽選会に参加してるのは、私とエリカさんと小梅さんと梓ちゃんとクロエちゃん。

そして戦車の知識が有るって言う事で、マジノ戦後に作戦参謀に昇格した優花里さんとエルヴィンさんの計7人……間違いなく一番参加人数の少ない学校だろうね。

 

 

 

「いやはや、始めて来たが此れは凄いな?

 まるで此れから世界大戦が始まるんじゃないかと言う位の熱気だな……君もそう思うだろ秋山?」

 

「同感でありますエルヴィン殿!まさか、これ程の戦車乗りの闘気を間近で感じる事が出来るとは思っても居ませんでしたから、其れを味わえただけでも感動でありますよ!!」

 

「優花里……貴女、今のセリフだけを聞くと大分危ない奴みたいに聞こえるから注意しなさいよ?」

 

「善処するであります逸見殿!!」

 

 

 

とは言え、人数の少なさで周りの学校に圧倒されるなんて言う事も無く、大洗の面々は至って平常運転。

経験者なら兎も角として、今年から始めたばかりの優花里さんとエルヴィンさんが平常運転って言うのは凄い事だね?メンタル面で言うなら、経験者5人に次ぐ強さだって言えるよ。……其処に同率で華さんも加わるけどね。

 

 

 

「確かに華さんのメンタルの強さは凄いですよね?」

 

「愛のある処分とは言え、実の母親からの勘当を喰らっても、ショックを受ける事は無かったですから……で、その事をチームの皆に話したら、あゆみが五十鈴先輩をロックオンしちゃったんですけど如何しましょう西住隊長?」

 

「いっそ、華さんに吶喊させれば良いんじゃないかな?」

 

冗談じゃなくて本気でね。

華さんもあゆみちゃんも砲手だからお互いに学ぶ事も多いだろうし、華さんの『アノ』集中力をあゆみちゃんが身に付けたら、其れは大洗にとっても有難い事だからね。

 

これは、ポジションごとのディスカッションも、練習の中で行った方が良いかも知れないね――うん、本格的に考えてみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer114

『第63回戦車道高校大会抽選会です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抽選会場に集まってる学校は全部で16校――どこもかしこも強いのは間違い無いけど、その中でも特に強烈な闘気を放ってるのはサンダースとプラウダとアンツィオ。

其れとは少し変わって、強いけど流れる水の様な静かな闘気を纏ってるのが聖グロで、風の様に流れる闘気を放ってるのがマジノだね。

ヤッパリ強豪、古豪チームが注目を集めてる訳なんだけど、その中で私達が注目されてるのって……

 

 

 

「まぁ、間違いなく貴女とお供2匹のせいでしょうね。」

 

『ガウ♪』

 

『キュ~♪』

 

「だよねやっぱり。」

 

隻腕って言うだけでも注目されるのに、虎と狐を引き連れてたら注目もされるのは当たり前だよね……去年の抽選会場の東京ドームは、中に入れて貰えなくて外で待たせてたから、虎と狐を見た人はいても其れが私のお供だとは思わなかっただろうし。

 

其れは其れとして、此れだけのチームが集まってるにも拘らず、会場には本来居るべきの学校の姿がない――黒森峰の戦車隊が、未だ会場入りしてないんだよね。

まぁ、未だ抽選開始までは時間があるし、お姉ちゃんが隊長である以上は遅刻なんて言う事は絶対に無いと思うんだけど……まさか事故とかがあった訳じゃないよね!?

 

 

 

「其れは杞憂よみほ。噂をすれば何とやら……黒森峰のお出ましよ。」

 

「成程、王者は遅れて現れる、ですか。」

 

 

 

王者は遅れて現れる……名言だね小梅さん。

でも、お姉ちゃんを先頭にして黒森峰が会場入りした瞬間に、会場の空気は張り詰めたモノになったのは間違い無い――黒を基調とした揃いのパンツァージャケットを纏っての一糸乱れぬ行進には、圧倒的な迫力があるからね。

黒森峰の両隣であるヴァイキング水産高校や、BC自由学園は恐慌状態だよ――BC自由に至っては、三白眼の褐色肌の人と、ブロンドヘアーの人が『王者の隣とは光栄なのか不幸なのか……』『此れが王者のオーラ……素晴らしい』とか、意味の分からない事を呟いてたからね。

……可成りは距離が離れてる大洗の面々にまで聞こえるボリュームで言った事を呟いたとは言えないのかも知れないけど――何方かと言うと静かな絶叫って言った方が近いかな?

 

 

 

「其れは分かりませんが……しかし、他校の生徒として黒森峰を見ると、一体どれだけ異様な集団なのかが良く分かりますよみほさん。

 大凡女子高生とは思えない程の厳しい表情に、まるで軍隊であるかのような厳粛な雰囲気……中身は普通の女子高生だって言う事を知ってる私でも、思わず唾を飲みましたよ。」

 

「私は中学の頃は黒森峰は対戦相手だったから慣れてるけど、中等部と高等部では雰囲気が可也違うのは間違いないと思う……特にお姉ちゃんと近坂先輩は中学の時とはまるで別人だよ。

 去年はそんなに感じなかったけど、仲間から対戦相手に変わっただけで随分とハッキリと感じるようになるモノだね……」

 

ホント、小梅さんの言うように私だってホンの一瞬だけど黒森峰の雰囲気に呑まれそうになったからね?……でも、いくらお姉ちゃんが率いる黒森峰であっても、私も大洗の皆も呑み込まれないよ!

 

 

 

「呑み込まれる訳ないでしょみほ。雰囲気に呑まれてるようじゃ、試合で良い動きをする事なんて出来ないし、ましてや勝つ事なんて出来やしないわよ。」

 

「寧ろ、私達で他校を呑み込んでやりましょう、西住隊長!」

 

 

 

逆に私達で他校を呑み込むか……其れも良いね梓ちゃん。――大会が始まる前から、大洗女子学園に注目の的を集めるって意味でも悪くないと思うしね。

 

 

 

 

 

 

と言う訳で始まった抽選会。

各校の隊長が壇上に上がって、箱の中からクジを引いて行って1回戦の組み合わせが決まる訳だけど、クジを引く順番は、去年の優勝校がトップで引いて、次に準優勝校、ベスト4は2校同時に引く事が決まってて、残りの学校は運営側がクジとかアミダなんかでランダムに引く順番を決めてるみたい……まぁ、黒森峰に居た頃に直下さんから聞いた情報だから、ベスト4以外のクジ引き順に関しては可成り怪しいモノであるのは否定できないけどね。

 

そのベスト4の1回戦は見事にバラバラになったね?

王者黒森峰は13番、準優勝のプラウダは3番、ベスト4の1校であるサンダースは7番、もう1校のベスト4の青師団は10番と言う結果になって、準決勝まではぶつからない形になったね。

其れからクジ引きは続いて行き、聖グロは9番で青師団との1回戦、アンツィオが6番でマジノが5番……アンツィオvsマジノは若しかしたら結構良い試合になるかも知れないね。

 

 

 

『続いて、県立大洗女子学園。』

 

「はい!」

 

そしていよいよ大洗の番。

抽選箱は壇上の中央に位置してるから、其処に行くまでには如何したって裂の真ん中に居るお姉ちゃんの前を通る事になる訳で……自然と視線を向ける事になっちゃったのは仕方ないよね。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

お姉ちゃんも私の視線に気付いて視線を向けて来たから、暫し見つめ合う事になっちゃったんだけど、此れには会場がどよめいて、マスコミからはカメラのフラッシュが凄い事に……まぁ、当然と言えば当然かな?

戦車道界隈に於いて『西住』の名は有名だし、黒森峰の前人未到の10連覇の偉業達成の立役者って言われてる西住姉妹が、全く異なる学校の隊長として抽選会に参加して、しかも壇上で視線を交わしたとなれば、其れだけで可成り記事になるだろうからね。

 

でも、だからと言って私もお姉ちゃんも何を如何する訳じゃない――軽く笑って其れでお終い。戦車乗りには其れでも充分だから。

其れでは気を取り直してクジを引かせて貰います……大洗の今のレベルを考えれば、1回戦は知波単かポンプル辺りがベターなんだけど、強豪と当たるなら其れは其れで大歓迎だよ。

 

果たして私達の初戦の相手は何処になるのか……戦車道の神様は如何応えるかな?――ドロー!!

 

 

 

『県立大洗女子学園、8番。』

 

 

 

引いたクジの結果は8番……って言う事は、1回戦は7番を引いたサンダースとって言う事になるね?――今の大洗にとっては練習試合で戦った聖グロやマジノ以上の強敵だけど、相手にとって不足は無い、寧ろ大歓迎だよ!

1回戦が無名の大洗だって言う事で喜んでたのは今年入学したサンダースの新入生かな?……少なくとも、2年生以上の生徒は私が大洗の隊長だって言う事を知って息を飲んでたみたいだからね。

尤も壇上に居る隊長のケイさんと、中学時代の戦友であるナオミさんだけは、私と戦える事を楽しみにしてたみたいだけど。

 

そして全ての抽選が終わった結果、組み合わせは、

 

 

・大会1日目

 

・ヴァイキング水産高校vsコアラの森学園

・サンダース大学付属高校vs大洗女子学園

・聖グロリアーナ女学院vs青師団高校

・BC自由学園vs継続高校

 

 

・大会2日目

 

・プラウダ高校vsポンプル高校

・マジノ女学院vsアンツィオ高校

・ヨーグルト学園vsワッフル学院

・黒森峰女学園vs知波単学園

 

 

 

って言う結果に――少なくとも黒森峰とプラウダと聖グロが1回戦を落とす事は無さそうだね。

去年の4強がばらけた上に、黒森峰とプラウダ以外の1回戦はどんな結果になるか分からない試合ばかりだから、此れは割と良い感じの組み合わせになったと思うよ。

 

で、組み合わせが決まったらそれぞれ1回戦を戦う学校の隊長同士が握手をする訳なんだけど、此れがまたマスコミのシャッターの凄い事。

全国紙では黒森峰が凄いんだろうけど、地方のローカル紙は地元校をピックアップするモノだから、明日の茨城新聞の一面には、私とケイさんが握手をしてる写真が掲載されるんだろうなぁ……ちょっと恥ずかしいかも。ケイさんってば握手するだけじゃなく、空いた左手で肩を抱き寄せて来たからね?

アメリカンな校風のサンダースらしいと言えばらしいけど、流石にちょっと照れたよアレは……お姉ちゃんが微妙に殺気を放ってたのは無視するとしてね。

 

其れで、抽選が終わった後は今度は選手宣誓を行う人を決めるんだけど、此れは『選手宣誓を行いたい隊長は、挙手してください』って言うアナウンスが流れた後で希望者が挙手して、其の後で抽選を行う形で決定される。

挙手したのは私と、ケイさん、アンチョビさん、エクレールさん、西さん、ノンナさんの計6名……ノンナさんは絶対にカチューシャさんの代理だよね?組み合わせ抽選もノンナさんだったし。

カチューシャさん具合でも悪いのかな?

 

 

 

「いえ、カチューシャは今日の抽選会が楽しみで眠れなくなってしまい、夜遅くまで起きていた結果出発の時間になっても、其れこそ布団を引っぺがそうが、寮内のスピーカーボリュームを最大にしてモーニングコールしても、フライパンを金槌でガンガン叩いても目を覚ましてはくれなかったので、副隊長である私がカチューシャの代理で抽選会に参加したのです。」

 

「そうだったんですか……取り敢えず病気じゃなくて良かったです。」

 

楽しみで眠れないって、カチューシャさん小学生じゃないんだから……いや、小学生と見間違えるくらいに小さいけど。

兎も角、此の6名でクジを引いて決定される訳で……全員がクジを引いて、その結果は――今回は、私の引きの強さが勝ったみたいだね?

 

 

 

「流石は軍神みほだわ、見事選手宣誓の権利を勝ち取るとはExcellent!」

 

「西住妹の選手宣誓……隻腕の軍神の宣誓となったら、こりゃ盛り上がるぞ!」

 

「ふふ、素敵な選手宣誓を期待していますわ、みほさん。」

 

「西住みほ殿が、何ゆえ大洗女子学園と言う場所で隊長をしているのか、些か謎でありますが、此れは楽しみであります!」

 

「カチューシャに伝えたら喜びそうなモノですが、みほさんの選手宣誓を楽しみにして今回と同じ状態になって、開会式に不参加と言うのは幾らなんでも笑えませんので当日まで伏せておいた方が良さそうですね。」

 

「……其れが良いと思いますノンナさん。」

 

で、私が選手宣誓をする事が決まった事で、またフラッシュが……明日の茨城新聞の一面は私とケイさんのツーショット付きの大洗の1回戦決定か、其れとも選手宣誓は大洗の隊長のどっちになるのやら。

其の一団の中によし恵ちゃんの姿があったのを確認すると、明日の学園新聞の内容は決定だけどね――会長さん、よし恵ちゃんも会場入りさせるならそう言って下さいよ……彼女は、カメラマンとしてって言う事なのかも知れないけどさ。

 

 

 

「1回戦はサンダース、のっけから強敵とってのは如何にも貴女らしい引きだわみほ――BC自由学園とかコアラの森と当たるよりもキツイのは間違いないけど、だからこそ此の1回戦を突破できれば皆の自信になるわね!」

 

「其れもですけど、選手宣誓の権利まで勝ち取るなんて、凄いです!インパクトのある選手宣誓を期待してます西住隊長!」

 

「エリカさん、梓ちゃん……うん、試合も選手宣誓も全力で頑張るよ!!」

 

其れで、此れで抽選会は終わりなんだけど此れから如何しようか?

学園艦に戻るにしても、東京湾から大洗の学園艦への連絡船が出るのって18時だからあと5時間後……凄く時間が余ってるんだけど、折角だから東京観光でもしちゃおうか?

抽選会参加者は公欠扱いだから、此れもある意味で特権だしね。

 

 

 

「ウム、其れは名案だな隊長。東京見物と言うのも良い物だ。」

 

「ならスカイツリー行ってみたいです!!」

 

「秋葉原行ってみたいネ。二次元文化の聖地と言うのを見てみたいヨ。」

 

「明治神宮で必勝祈願でもして行きましょうか?」

 

「いや、其処は陸軍名将の乃木大将が祀られてる乃木神社の方がよくないかしら小梅?」

 

「戦車道は陸戦ですから、其方の方が合ってるでありますよ逸見殿――まぁ、乃木将軍の時代に戦車は有りませんでしたが。」

 

 

 

あは、皆ノリノリだね?

其れじゃあ東京観光に向かって、パンツァ~……

 

 

「「「「「「「フォーーー!!」」」」」」」

 

 

 

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と言う訳で東京観光をした訳だけど、結構色んなところに行けたね?

先ずはクロエちゃんの希望の秋葉原に行ったら、駅を降りてすぐにメイドさんと遭遇して、アニメと漫画の専門店では初音ミクに会って、カードショップでは遊戯王の歴代主人公(DM~5D's)に扮したレイヤーさんと写真を撮った序に、生デュエルを見せて貰って、コスプレの完成度が高いだけじゃなくて、プレイングもまるでアニメを見てる様な素晴らしさに吃驚したよ……特に闇遊戯の人は、何であのデッキを回せたのか謎だね。

 

其れからスカイツリーの展望台に上ったら、まさかの雲が下に有るって言うレアな光景を見る事が出来た。此れは運が良かったね――展望台から地上までノンストップのエレベーターで行ったら耳の奥が痛くなったけど……まさか、飛行機に乗らずにアレを経験するとは思わなかったよ。

 

乃木神社では必勝祈願のお参りをして、皆でお御籤を引いて、その結果は私と梓ちゃんが大吉、エリカさんと小梅さんと優花里さんが中吉、そしてエルヴィンさんとクロエちゃんが吉って言う結果。

皆いい結果だったけど、私の大吉の細かい運勢は、『勝負事・苦戦しても勝てる。恐れず大胆に行くべし』って出てたから、何とも良い感じがするね此れは。

 

で、一通りの観光を終えた私達は、戦車喫茶『ルクレール』で休憩中。

優花里さんが教えてくれた戦車をテーマにした喫茶店なんだけど、ウェイトレスさんが軍服を着用してたり、店内は戦車関連のポスターが幾つも張られている上に、呼び鈴はFIAT2000戦車……徹底ぶりが半端ないよ。

しかも、ケーキは戦車型で、其れをドラゴンワゴンの模型が運んでくるんだから、完全なる戦車マニアの為の喫茶店だね。

 

時に優花里さん、上野駅前のヤマシロ屋で戦車のプラモデル沢山買ってたみたいだけど……

 

 

 

「此れは趣味なんですよ~~。

 折角なので、大洗の戦車隊の戦車を揃えてみようと思いまして……折角なので製作用と保存用を買った次第であります!!」

 

「あ、そうなんだ……」

 

「君は本当に戦車が好きだな秋山……まぁ、私もドイツ戦車が大好きだから人の事は言えないかも知れないが。

 まぁ、其れは良いとして、1回戦の相手であるサンダース大学付属高校と言うのはどんな学校なんだ隊長?名前から察するに、アメリカ戦車を使ってくるのだとは思うが。」

 

 

 

此処でエルヴィンさんが、大会の事に話題を転換して来たか……うん、確かに作戦会議は大事だからね。

サンダース大学付属高校は、戦車道を行ってる学校の中では保有戦車数が一番多い裕福な学園だよ――学園艦のサイズも、大洗の2.5倍って言うマンモス校だからね。

そして、エルヴィンさんの予想通りアメリカの戦車を使ってくる学校だよ――M4シャーマンをメインに、ファイアフライも織り交ぜた部隊編成って言うのが特徴かな。

 

戦車の性能的には最強中戦車って言われるパンターと、最強重戦車の呼び名も高いティーガーⅡがあって、高性能中戦車のⅢ号とⅣ号、足の速いクルセイダーに待ち伏せ最強のⅢ突がある大洗の方が有利なんだけど、ファイアフライには中学の時に、私の車輌で砲手を務めてたナオミさんが乗ってるから油断はできないかな?

ナオミさんの超正確な砲撃は、的確に敵戦車のウィークポイントを狙ってくるからね。

 

とは言え、サンダースが1回戦からファイアフライを導入して来るかどうか不確定――ケイさんの性格を考えれば、導入してくる可能性は高いけど、こればかりは当日までは分からないからね。

せめて、事前に出てくる車輌が分かれば良いんだけど……

 

 

 

「ふむ、そう言う事ならサンダースを偵察して見ては如何だ?試合前の偵察はルールで認められているからな。」

 

「偵察でありますか、其れも手でありますな?」

 

「でも、バレたら捕まって拘束される……費用対効果を考えたら、あんまりお勧めは出来ないわよ?……学校によっては、トンデモない扱いされる事も少なくないからね。」

 

「因みに、黒森峰は捕らえたスパイは如何してたんですか赤星先輩?」

 

「通称『アウシュヴィッツ収容所』に強制連行して、試合当日まで独房の中です――まぁ、これも一種のロールプレイの範疇なので、独房でもシャワーとトイレは有りますし、ちゃんと食事も支給されるんですけどね。」

 

「まぁ、三食ソーセージとジャガイモってのはキツイと思うけどね。私だったら3日で音を上げるわマジで。」

 

「うん、其れはドイツ人でもキツイ。」

 

 

 

だよね……其れで、何ナチュラルに混じってるのかなお姉ちゃんと直下さんは?

 

 

 

「「「「「「え゛?」」」」」」

 

「なんだ気付いてたのかみほ?」

 

「思いっきり溶け込んでだけど、気付かない筈ないでしょお姉ちゃん?其れに直下さん。

 滅茶苦茶ナチュラルに混ざってくれてたから凄く馴染んでたのは事実だけど、誰も気付かなかったらどうする心算だったのか一言。」

 

「そのまま気付かれるまで普通に混じっていただけだが?」

 

「……直下さん、お姉ちゃんは戦車以外では時々ポンコツな所があるからその辺をサポートして欲しいんだけど、頼めるかな?」

 

「あ~~うん、了解。時に必勝祈願でお賽銭備えて柏手打たせて貰っても良いでしょうか隻腕の軍神殿!」

 

「うん、其れは止めてね直下さん。」

 

で、なんでこんな所に居るのお姉ちゃん?

 

 

 

「なに、偶然私達も此処に来たんだが、みほ達が居たのでちょっとな。 

 其れは其れとして、如何やら大洗でも戦車道を続ける事が出来た様だが、中々良い仲間に出会えたようだなみほ?……その天然パーマの子と、ドイツの軍帽を被ってる子は中々やりそうだからな。」

 

「秋山優花里さんとエルヴィンさん――あぁ、エルヴィンって言うのはソウルネームで本名は松本里子さんだけど、2人とも戦車に詳しいから中々頼りになるんだ。」

 

もっと言っておくと、優花里さんは私のパンターの装填士で、エルヴィンさんは他の戦車の車長だよ――どんな戦車に乗ってるかは、今は秘密にしておくけどね。

 

 

 

「まぁ、そうだろうな。

 順当に勝ち上がって行けば、お前達と当たるのは決勝戦だ……だから、其処まで勝ち上がって来いみほ。――其処で雌雄を決しよう。」

 

「勿論、言われなくてもその心算だよ。」

 

尤も、1回戦がサンダースだからそう簡単には行かないと思うけどね――そうでしょ、ケイさん?

 

 

 

「ふっふ~ん?気付いてたのねみほ?」

 

「ケイさん程の戦車乗りのオーラは、ドレだけ巧く隠しても同じ戦車乗りには分かりますから。」

 

「成程ね。

 でも、私が危惧してるのはサンダースが大洗に勝てるのかって言う事よりも、黒森峰が1回戦を突破できるかって事なのよね……みほだけじゃなく、エリカと小梅まで失った黒森峰は、可成り戦力が下がってるみたいだし?」

 

「……何が言いたい、ケイ?」

 

「言わないと分からないまほ?……みほ率いる遊撃隊のない黒森峰なんて恐れる相手じゃないって言ってるのよ。Did you understand?」

 

「貴様……!」

 

 

 

は~いスト~ップ!!

ケイさんはお姉ちゃんを挑発しないで下さい!そしてお姉ちゃんも其れに乗らないで!――私の事が出て来たから激昂するのは分からないでも無いけど、黒森峰の隊長が他校の隊長の挑発に乗ったとか笑えないから!!

 

 

 

「く……確かにそうだな。

 まったく、お前はダージリンの次に敵に回したくないよケイ……お前やダージリンの前では、冷徹な黒森峰の隊長で居るのに多大なエネルギーが必要になるからな。」

 

「貴女は気真面目過ぎるのよまほ……だから、私やダージリンのからかい対象になるのよ――少しは肩肘張らずにいても良いんじゃない?」

 

「……善処するよ。」

 

 

 

と思ったら、此れは如何やらちょっとしたコミュニケーションだったみたいだね……お姉ちゃんが誰かにからかわれてるって言う光景はちょっと新鮮だったかも。

まぁ、其れには安心したけど、だけど試合は全力で行きますよケイさん?

 

「今大会は大洗のジャイアントキリングの連発にする心算ですから……サンダースにはその最初の犠牲者になって貰いますからその心算で。

 覚悟は良いですね?」

 

 

 

――轟!!

 

 

 

「うわお!相変わらずみほの闘気は凄いわね?……OK、楽しみにしてるわ大洗との1回戦を!」

 

「はい、私も楽しみにしていますよケイさん!」

 

最高の試合にしましょうケイさん――其れこそ、戦車道の歴史に残る位の試合をね!

でも、最高の試合をするのは当然ですけど、此れだけは言わせて貰いますケイさん……勝つのは私達大洗女子学園です!――黒森峰の遊撃隊で車長を務めていた私とエリカさんと小梅さん、私の一番弟子である梓ちゃんとその右腕のクロエちゃん、そして素人でありながら聖グロと引き分け、マジノに勝った大洗の面子が力を合わせれば、どんな相手にだって勝てるって信じてますから。

 

 

 

「Great!其れ位の気概が無いと面白くないわ……1回戦、楽しませて貰うわみほ。」

 

「その期待には応えますよケイさん。」

 

「みほとケイの戦い……瞬きすら許さんかもな。」

 

 

 

そんな試合にする心算だからねお姉ちゃん。――ふふ、此れは最高の1回戦になりそうだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う事があった後で、東京湾に移動して連絡船で大洗に戻った訳なんだけど……次の日に、マッタク持って予想外の事が起こってくれたね。

まさか、優花里さんが学校を欠席するなんて事は、全然考えても居なかった事だったよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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