ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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白熱した戦いだったね♪Byみほ      此れこそ戦車道よね!Byエリカ      ですねBy小梅


Panzer118『白熱しまくりの1回戦です!』

Side:エリカ

 

 

去年は真面に試合に臨んで来たけど、今年はやらかしてくれたわねアリサは――まぁ、ドローンでの空撮と比べれば、通信傍受は可愛いレベルではあるけどね。

 

だけど、みほが其れを許すかと言ったら其れは否だわ。

 

その証拠に、通信傍受を逆手に取っての戦術を仕掛けた訳だからね――通信傍受を逆利用して嘘情報を流すとか、本気で敵にだけは回したくないわねみほは。

普通だったら、思い付いても実行には移さないレベルの事を、一切戸惑わずに選択して実行しちゃうんだから。

 

でも、その決断のおかげで漸くこっちに流れが傾いてくれたわね?

通信傍受のせいで散々っぱら踊らされた訳だから、今度はこっちがアンタ達をキリキリ舞いさせてあげるわよ!

 

「坂口、全速前進!戦局が動いたけど、私達がファイアフライの撃破を優先するのは変わらない!

 フラッグ車は本隊が仕留めるだろうから、私達はサンダースの最大の牙を折って勝利をより確実な物とする!異論はないわね?」

 

「あいー!!」

 

「其れじゃあ、その旨隊長に知らせておきますね~~、スマホで。」

 

「では、蛍狩りと洒落込むか。」

 

「あの、なんで蛍狩りなんですか八神先輩?」

 

「そう言えば何でだ?」

 

 

 

いや、知らないで言ってたのアイン!?あのねぇ、ファイアフライってのは蛍の事だからよ。

何で戦車にって思うかもしれないけど、蛍は欧米で『獰猛な肉食昆虫』って認識があるから、その辺の理由から戦車の名称に用いたって訳。

まぁ、幾ら獰猛な肉食昆虫でも、猛獣である虎の敵じゃないけどね!

 

 

 

「虎が蛍を捕らえるのって難しいんじゃ……」

 

「ちょろちょろ逃げ回られちゃうかも~~?」

 

「あいーーー!」

 

 

 

不吉で余計な事言ってんじゃないわよ1年組!兎に角、行くわよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer118

『白熱しまくりの1回戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:梓

 

 

西住隊長が嘘情報を流してくれたおかげで、サンダースの部隊を此方の思惑通りに動かして、フラッグ車を孤立させる事に成功したし、そのフラッグ車を発見する事も出来た。

後は本隊の前にフラッグ車を引き摺り出すだけ……攻撃開始!

 

 

 

「了解したぞ副隊長!よーし、根性入れて行くぞーーー!!」

 

「「「おーーーー!!!」」」

 

 

「何なのよアンタ等、暑苦しいわね!!」

 

 

 

……其れは、何と言うかちょっとだけ同意しますけど其れがアヒルチームですので。

取り敢えずあゆみ、決定打にならない所に適当に打ち込んで。クロエは着弾と同時に全速バック!私達の事を、アリサさんに『追いかけさせる』よ!

 

 

 

「了解!っても、果たして巧く当たるかな?」

 

「巧く当てる必要は無いヨあゆみ。何処でも良いから当てれば良いんダ――仮に撃破してしまったら、其れは其れで一切問題ないしネ。」

 

「そう言う事だから、緊張しないで。……撃て!!」

 

「えぇい、当たれぇ!!」

 

 

 

――ゴン!!

 

 

 

当たったのは、シャーマンの正面……やっぱりⅢ号の主砲じゃ抜けないね。

でも此れで良い!クロエ緊急離脱!アヒルチームも離脱してください!この場でのこれ以上の戦闘は、一切意味を成しませんので、西住隊長の指示通りに!

 

 

 

「了解!そんじゃ、逃げるぞーーー!!」

 

「アリサさん、アディオース!!」

 

「ちょっ、待てこら!逃がす訳ないでしょうが!!」

 

 

 

良し、追って来た!

後は西住隊長が率いる本隊の前まで誘導するだけ――其処まで行けば、略勝利が確定するから、残る不安要素はファイアフライだけになるけど、其れはきっと逸見先輩が討ち取ってくれるだろうからきっと大丈夫。

大洗のジャイアントキリング、絶対に達成してみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

通信傍受を逆手に取られ、Ⅲ号とクルセイダーの奇襲を受けたアリサは、その場から離脱した2輌を追って全速前進していたのだが、中々追い付く事が出来ないでいた。

クルセイダーがリミッターを解除していない状態ならば、機動力では略互角なのだが、其れでも追い付く事が出来ないでいたのだ。

 

 

「そぉれ!此れでも喰らえ!」

 

 

その理由はクルセイダー――アヒルチームの車長である磯辺典子だ。

何と典子は、バレーボールのサーブ宜しく、車内に緊急用の信号として積む事がルールで許可されている発煙筒をシャーマンに向かって打ち込んで、視界を塞いでいたのだ。

 

視界が真っ白な煙で覆われてしまっては、下手に進む事は出来ないし、攻撃する事だって不可能だ――機銃で攻撃するなら兎も角、主砲を放つのは、無駄弾を撃つ事になりかねないのだから。

 

 

「煙幕とか、本気でウザいわね……機銃で煙幕晴らしなさい!」

 

「え~~?機銃で攻撃とかカッコ悪くない?」

 

「んな事言ってる場合じゃないでしょうが!!」

 

 

アリサの乗るシャーマンの車内では、少々コント染みたやり取りが行われていたのだが、既にアリサ車は完全包囲の罠に嵌っていた――否、梓達を追いかけた時点で罠に掛かっていたのだ。

 

 

「来た来た……全車、突撃ーーー!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

開けた平原に梓達とアリサ車が現れた所で、待機してた本隊が、みほの号令で突撃開始!

パンター、Ⅳ号、Ⅲ突、38(t)の4輌による挟み撃ちとも言える攻撃が、サンダースのフラッグ車であるアリサのシャーマンに炸裂したのだ。

 

 

「嘘!待ち構えられてた!?」

 

『Hey!ちょっと、どうなってるのアリサ?』

 

「只今大洗の部隊に攻撃されてます!若干ピンチです!!!」

 

『はぁ!?何だってそんな事になってるのよ?』

 

「つ、通信傍受がバレたみたいです……」

 

『……このおバカ!戦車道は常にフェアプレイって言ってるでしょ!!――マッタク持って余計な事してくれて……まぁ、其れを見破ったみほは本気で凄いと思うけどね。』

 

 

この事態を異常だと感じたケイの問いかけに対して、アリサはアッサリと通信傍受を告白……アッサリと言ってしまう位に、精神的なダメージを負っていたと言う事なのだろう――尤もアッサリと言ってしまった事で、ケイの怒りに触れた様だが。

 

 

『怒られてやんの!やーい、バーカ!』

 

「この声はエリカ!アンタ、馬鹿にしてんの!!」

 

『馬鹿にしてるですって……舐めて虚仮にしてんのよ。

 まぁ、アンタが姑息な手段を使うのは今に始まった事じゃないけど、其れもみほの前では全く意味無いのよね……って言うか、通信傍受で勝てると思ってるとか、アンタみほを舐めてんの?

 アンタ如きの猿知恵でみほが如何にかされる訳ないでしょ?アンタとみほとのレベルの差を知りなさい、そばかすツインテール。』

 

「むっきー!殺す!殺し切る!!」

 

『ティーガーにカモられたM4で私を殺し切るぅ?流石はサンダースの副隊長……あぁ、『元』でしたね。』

 

「元じゃなくて現よ!!」

 

 

其処に通信傍受を利用したエリカの挑発が入り、アリサは完全に乱心状態!

エリカの言ってる事は冷静になれば其処まで激昂する事でもないのだが、エリカの物言いと態度で、怒りのボルテージをMAXにするには充分だったらしく、アリサは其方に気を取られてしまっている。

 

此のまま行けば大洗の勝利が確定するが、そうは行かないのが大会だ。

 

 

「マッタクアリサは……此のままじゃ負けるから増援をだけど、どちらも被害がない事を考えると、大洗は最初から3輌のビハインドが有るのと同じ訳だから――OK、4輌は私と一緒に来て。

 ファイアフライは、独自に動いてくれていいわ。」

 

 

此処でサンダースの隊長であるケイはアリサを助ける為に本隊を動かすが、あくまで動くは己を含めて5輌――独自に動いているファイアフライと、絶賛ピンチのフラッグ車を合わせての合計7輌と、大洗の戦車数に合わせての戦いを命令したのだ。

 

勝利を第一に考えるのならば、このケイの選択は悪手だろうが、ケイは元より勝利よりも如何に試合を楽しめたかに重きを置く人物であり、勝敗は二の次な上に、何よりもフェアプレイを信条にしている――故に、車輌数で劣る相手には、同じ車輌数で戦うと言う選択をした所で不思議は無いのだ。

 

 

 

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程なくして盤面は『Ⅲ号とクルセイダーを追うシャーマン』、『そのシャーマンを追う大洗の本隊』、『更にその大洗の本隊を追うサンダースの本隊』、『獲物を求めてフロントラインを目指すファイアフライと、其れを阻止しようとするティーガーⅡ』と言う4つに分けられた――大洗とサンダースの追いかけっこは同じフィールドで戦っている訳なのだが……ファイアフライとティーガーⅡは、追いかけっこが行われている場所から、少しだけ離れた場所で会敵しての戦闘となっていた。

 

 

「退け、エリカ!道を開けろ!!」

 

「そう言って、アンタなら道を開けるかしらナオミ?」

 

 

追いかけっこが行われている場所はそう遠くないので、ナオミとしては即時本隊に合流しようとしていたのだが、合流直前にエリカとエンカウントしてしまったのだ――合流したいナオミと、ファイアフライ撃破が目的のエリカが鉢合わせになって戦闘にならない方がオカシイ。

 

カタログスペック上は、互いの戦車の攻撃力は略互角で、防御力はティーガーⅡが、機動力ではファイアフライの方が上である為、総じて戦えば五分なのだが、大洗のティーガーⅡ――明光大時代の活躍から密かに『シュバルツティーガー(黒い虎)』と呼ばれている――は、レギュレーションギリギリの魔改造が施されている為、機動力までもがファイアフライと互角になっている為、エリカの方が絶対的に有利なのだ。

 

 

「矢張り敵に回すと厄介だなそいつは……最強の攻防力を持ってるティーガーⅡに機動力までついたら、其れはもう最強じゃないか。」

 

「そう言う割に、的確にこっちの弱点を狙いながら致命傷を避けるアンタも相当だと思うけどねナオミ!」

 

「中学時代の相棒だ、そいつの事はお前よりもよく知ってるよエリカ。」

 

 

であるにも拘らずエリカが一方的に押し切る事が出来なかったのは、ナオミが中学時代に此のティーガーⅡに乗っていたからだ。

何度も共に激戦を勝ち抜いて来たからこそ知っている黒いティーガーⅡの特性――其れを熟知しているナオミが、砲手でありながらも指示を出して互角の戦いを演じていたのだ。

 

だが、エリカとて並の戦車乗りではない。

実力至上主義の黒森峰で、中等部とは言え隊長を務めたその実力は確かな物であり、現在の大洗では実力的にはナンバー2の戦車乗りなのだ――故に、搭乗戦車の事を相手の方が知っているからと言って不利にはならない。

 

 

「確かに中学時代、此の子は貴女の相棒だったんでしょうけど、今は私のPartner(相棒)……いえ、Comrades(戦友)よ?

 なら私は、私のやり方でこの子を活躍させるだけ――何よりも、此の子の事は貴女の方がよく知ってるかもしれないけど、ティーガー全般に関してなら、黒森峰に居た私の方が遥かに詳しいのよ!

 坂口、思い切り突っ込みなさい!!」

 

「あい~~!了解~~!!」

 

 

何よりも、エリカにはナオミにはない内に秘めた野獣の凶暴性がある。

本来ならば、車長であるエリカは常に冷静でなくてはならないのだが、エリカに限っては理性も冷静さも吹っ飛ばしてしまった方が遥かにパフォーマンスが向上するのだ。

 

その切り替えをマニュアルで出来るエリカは大したモノなのだが、その凶暴性を解放した瞬間に、ティーガーⅡはその名の通り『虎』となった。

其れも、圧倒的な力を持った黒い虎に。

 

 

「真正面から突撃とか本気かエリカ!」

 

 

凶暴性が解き放たれたからこそ行われた正面特攻に、ナオミは驚くが、直ぐに操縦士に指示を出して回避するが、ティーガーⅡは其れに超反応するかのように軌道を修正してまた突撃して来る。

明らかに超熟練者でしか出来ない動きだが、ティーガーⅡの操縦士である桂利奈はエリカの闘気に中てられたせいでアドレナリンが可成り出ているらしく、その影響で普段では出来ないような操縦テクニックを披露しているのだ。

 

バックしながら撃つファイアフライと、其れを避けながら突撃して砲撃を行うティーガーⅡの攻防は、見ている側からしたら手に汗握る好勝負だが、其れを行っている選手にとってはコンマ1秒たりとも気を抜く事が出来ない戦いであり、其れはつまり先に神経が参った方が撃破されると言う事でもあるのだ。

 

野獣と化したエリカと、スナイパーのナオミのこうした攻防は暫く続いたのだが……

 

 

「アイン、ファイアフライの後方1mの所に撃って!」

 

「了解した。撃ち貫く!」

 

 

何度目かの突撃と同時に、ティーガーⅡがファイアフライの後方の地面を砲撃し、その地面を抉り取る――正にファイアフライのバックのルートであった場所を!

此れが前進方向への攻撃ならば緊急停止も出来ただろうが、後方バックでは中々そうは行かない上に、ファイアフライの車長はキューポラから身を乗り出さないタイプだったので後方への着弾の確認が遅れてしまった。

 

 

 

――ガクン!!

 

 

 

「しまった!!」

 

 

結果、其れが致命傷となり、ファイアフライはティーガーⅡが作ったクレーターに嵌って身動きできなくなってしまったのだ。

度重なる突撃は、ファイアフライのバックのタイミングとスピードをエリカが計る為に行っていたのである。……野獣の凶暴性に加えて、こう言う観察眼まで備えていると言うのは恐るべきモノだろう。

 

 

「最初からこれを狙ってたのねエリカ……やられたわ。」

 

「銀の狂犬は、只相手を噛み殺すだけじゃない。確実に噛み殺す為の策を練る頭脳も有るって事よナオミ。

 みほクラスの戦車乗りが車長だったら分からないけど、本来は砲手である貴女が、限定的とは言え車長の代わりを務めたのが敗因――砲手が其れに集中できなくなれば攻撃力はガク落ちだからね。」

 

「その子の事はサンダースでは一番知ってるからと思っての行動が裏目に出たか……見事だよエリカ。」

 

 

――ズドン!!

 

――パシュン!

 

 

『サンダース、ファイアフライ行動不能!』

 

 

直後、ティーガーⅡの超長砲身88mmが火を噴き、ファイアフライを撃破。

これにより、サンダースは最強の戦車を失い、戦局は一気に大洗有利に傾いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

エリカとナオミが激戦を繰り広げていた頃、大洗とサンダースの追いかけっこもまた白熱していた。

サンダースのフラッグ車であるアリサ車は、後方の大洗の攻撃を避けつつもⅢ号とクルセイダーへの攻撃を仕掛け、アリサ車を追う大洗の本隊は後方から迫って来るサンダースの本隊を攻撃しつつアリサ車を狙い、サンダースの本隊は大洗の本隊への攻撃を徹底。

 

大洗の本隊にフラッグ車であるⅣ号が居る事を考えると、状況は五分だがフラッグ車が1輌でいるサンダースの方が僅かに不利だと言える。

 

 

が、両校の隊長にとってはそんな物は些細な問題、無問題!

 

 

「Wao!やっぱり貴女との試合はExcellentねみほ!最高のEcstasyを感じちゃうわ!」

 

「其れは光栄ですケイさん。私もとっても楽しいですから!」

 

「OK、OK!そう来なくっちゃね!

 でも、楽しいからこそ勝って終わりにしたいわよね?――楽しんだ上で勝つ事が出来たら、其れはもう最高だもの♪」

 

「其れについては諸手を挙げて賛成です――諸手を上げる事できませんけど。」

 

「あ~っはっは!ナイスジョーク!」

 

 

みほもケイも、『戦車道は楽しむ物』との認識を持っている故に、試合の行方を決める追いかけっけこの最中でも此の状況を楽しんでいるのだから相当だろう。

 

 

『大洗、38(t)行動不能!サンダース、シャーマン行動不能!』

 

 

その激戦の中で、互いに仲間が撃破されて行くが、数に変わりはなく決定打を欠く戦いとなっていた。

このまま行けば泥試合になる所だが――此処で大きく試合が動いた。

 

 

『サンダース、ファイアフライ行動不能!』

 

 

エリカのティーガーⅡと戦闘を行っていたファイアフライが撃破されたのだ。

 

 

「ナオミがやられた!?」

 

「よし、やってくれたねエリカさん!」

 

 

そして其れを合図に試合は大きく動く。

 

 

「磯辺先輩、今です!」

 

「了解だ副隊長!」

 

 

まず、アリサ車に追われていたⅢ号とクルセイダーが急ブレーキを掛けてアリサ車に追い抜かさせると、其れと入れ替わる形でみほのアイスブルーのパンターと、フラッグ車である小梅のⅣ号が前に出てアリサ車を捉える。

 

このスピードスイッチにサンダースは虚を突かれて対処が一瞬遅れてしまう――そもそもにして、フラッグ車同士の一騎打ちでもない限り、フラッグ車が前に出る事ないのだから、驚くのも無理は無いが。

 

だがしかし、たかが一瞬、されど一瞬。

超一流の戦車乗りにとっては、敵戦車の動きが確実に1秒止まったと言うのはこの上ない好機なのだ。

 

 

「合わせて小梅さん!」

 

「ブチかましましょうみほさん!」

 

 

一瞬動きの止まったアリサ車を挟み撃ちにする形でみほのパンターと小梅のⅣ号が主砲を放ち、

 

 

「此れで終わりね……敗北をその身に刻み込みなさい!」

 

 

更にファイアフライを撃破したティーガーⅡが高台から現れて必殺の88mm砲をブチかます!!

アリサ車に三方からの攻撃を避ける術はない。

 

 

「そ、そんな!私達が1回戦負けだなんて……何でよ、タカシーーーー!!!」

 

 

――ズドォォォォォォン!!

 

――バガァァァァァァァン!!

 

――滅びのブァーストストリィィィィム!!

 

 

……一部妙な砲撃音が混じったが、パンターとⅣ号とティーガーⅡの砲撃はアリサ車に吸い込まれるように向かって行き、そして着弾!!

 

 

――キュポン!!

 

 

『サンダース、フラッグ車行動不能!大洗女子学園の勝利です!!』

 

 

その結果、サンダースのフラッグ車は行動不能となって試合終了。

無名の大洗女子学園が、4強の一角とされている強豪サンダースを打ち破ると言うジャイアントキリングを成し遂げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

ふぅ……勝てた。

通信傍受に気付く事が出来なかったら危なかったけど、其れに気付けたお陰で通信傍受を逆利用できたから勝つ事が出来た――エリカさんがファイアフライを撃破してくれた事も大きな勝因だね。

 

 

 

「Hi!みほ、中々に刺激的な試合だったわ!

 其れとゴメンね、通信傍受とかして……此れについては言い訳のしようもないわ。」

 

「あ、気にしないで下さい――私も偵察とかしちゃったし。」

 

「ノンノン、偵察はルールブックでOKとされてるけど、通信傍受はOKでもNGでもないから、合法でもあって非合法――つまりはグレーゾーンだから其れと比べたらダメよ。

 ザッツ戦車道!フェアプレイが基本でしょ?」

 

 

 

ケイさん……マッタク持ってその通りですね。

こっちの車輌数に合わせてくれたのも、ケイさんのフェアプレイ精神の現れって言う所だと思うし。――でも其れを踏まえると、通信傍受なんて事をしたアリサさんはどうなるんだろう?

 

 

 

「アリサ……後で反省会ね?」

 

「死刑宣告!?」

 

「ま、受け入れるんだな。」

 

 

 

……如何やら、反省会とやらが待ってるみたいだね。

通信傍受は自業自得だから同情はしないけど、この反省会を期に、隊長に勝利をプレゼントする場合でも手段を選ぶ必要があるって言う事を学ぶと良いよアリサさん。

其れを学ぶ事が出来たら、貴女はきっと最強クラスの戦車乗りになるだろうからね。

 

其れは其れとして、楽しませて貰いました――最高の試合を、ありがとうございますケイさん!

 

 

 

「其れはこっちのセリフよみほ――2回戦も頑張って。

 私達の優勝の悲願、貴女に託すわ。」

 

「その思い、受け取りました。必ず優勝して見せます!!」

 

「OK Great!貴女達の活躍を期待してるわ!」

 

 

 

なら、その期待には応えるだけです!――必ず、今大会で大洗を優勝に導いてみせますから!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

その後は、両校とも撤収作業なんだけど、その作業の最中にメールを受信した麻子さんの様子がおかしい……麻子さん、何かあったの?

 

 

 

「おばあが、倒れた。」

 

「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

お婆さんが!?

其れは直ぐに病院に行かないと!――でも、此処からじゃ陸路じゃ間に合わないし、海路でも間に合わないよ!?……って、靴と靴下脱いでなにしてるの麻子さん!?

 

 

 

「泳いでいく!」

 

「ちょ、其れは無理だよ麻子!!」

 

「放せ沙織。私はおばあの元に行かなきゃならないんだ!」

 

 

 

ま、まさか泳いでいくと言うとは予想外だよ麻子さん。

でも、其れだけ麻子さんにとってお婆さんは大切な存在なんだよね?――なら、何としてもお婆さんが入院した病院に連れて行きたいけど、この状況じゃ其れは難しいモノだよ。

 

 

 

「なら、私達のヘリを使ってくれ。」

 

「お姉ちゃん!?」

 

此処でまさかのお姉ちゃんの援軍!

パイロットは近坂先輩だから不安は無い……程なくして、ヘリに麻子さんと沙織さんが乗り込んで、一路麻子さんのお婆さんが入院した病院に向かってマッシグラ――あのスピードなら間に合うだろうね。

 

えっと、ありがとうお姉ちゃん。

 

 

 

「気にするなみほ、これも戦車道だ。」

 

「うん、そう言われると何も言えないよお姉ちゃん。」

 

でも、そのお陰で麻子さんをお婆さんの元に向かわせる事が出来たから良かったよ――明日はいよいよ黒森峰の1回戦だから、絶対勝ってよお姉ちゃん?

 

 

 

「無論その心算だ――決勝の舞台で待っているぞみほ。」

 

「望む所だよお姉ちゃん!」

 

大洗も黒森峰も、戦うためには決勝戦まで駒を進める以外の選択肢は無いからね――必ず勝ち残ってよお姉ちゃん!

 

 

 

「勿論だ……遊撃隊が無くとも黒森峰は健在だと言う事を示してやるさ。」

 

「確かに。遊撃隊がなくなって弱くなったとか言われたらアレだもんね。」

 

でも、先ずは麻子さんのお婆さんの状況確認が最優先だね――麻子さんと沙織さんが先行したけど、私達も行った方が良いだろうと思うし。

撤収作業が終わり次第、私達も本州へ移動するから、此処でお別れだね。

 

 

 

「そうだな……決勝戦まで来るのは決して楽な道のりではないと思うが、お前なら出来ると信じている――必ず勝ち上がって来い。」

 

 

お姉ちゃん……うん、約束するよ!

私達は必ず勝ってお姉ちゃん達と戦うって!!――決勝戦で合いまみえる時を楽しみにしてるよ、お姉ちゃん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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