ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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さぁて、ガンガン行くよ!!Byみほ        最高の戦車道を見せてやるわ!Byエリカ     銀狼と、ハヤブサの攻撃、受けきれますか?!By小梅


Panzer123『此れが本当のアンツィオ戦です』

Side:みほ

 

 

まさかデコイを、其れも書き割りの物を使った罠を仕掛けてくるとは思わなかったよ――私が此れまで頭に叩き込んだ、ありとあらゆるの戦車道の戦術でも、書き割りのデコイを利用した物は存在しなかったからね……デコイの数が完璧に合ってたら少しヤバかったかもしれないよ。

 

 

 

「流石の貴方でも、未知の戦術を相手にした場合には勝つ事が難しくなると言う事かしら?……難しいだけで、最終的には勝つんだろうけどね。

 だけどみほ、仕掛けを見破った今、私が此処で待機してる必要はないわよね?っと言うか、暴れてナンボでしょう!!」

 

「うん、今度はこっちから攻める番だよエリカさん。」

 

アンチョビさんの事だから、デコイを見破っても第二第三の矢があるかも知れないけど、受けに回ったら流れを持って行かれるから、此処からはこっちから仕掛ける!

 

「ウサギとアヒルは、そのまま偵察を行いつつ、会敵したらそのまま交戦を開始。カルロベローチェの挑発には乗らない様に注意して。

 但し、フラッグ車を発見した場合には、無理に交戦せずに必ず連絡を入れるように。――頼んだよ!」

 

『了解です、西住隊長。』

 

『根性で、頑張ります!!』

 

 

 

此方は部隊をあんこう、オオワシ、カバのチームと、ライガーとカメのチームに分けて行動して行くよ。

単独行動のウサギとアヒル、そしてチームプレイの私達って言う異なる戦い方でアンツィオにプレッシャーをかけて調子付かせないようにしたいから、くれぐれも無理して撃破されましたなんて言う事にならない様に。

 

 

 

「了解だ!……って、なんで全員で私を見るんだ!!」

 

「……だって、生徒会が一番それやりそうだし。CV-33を舐めてかかって返り討ちに遭う可能性が否定できないんだけど?」

 

「うむ、逸見の言う事は否定出来ん。」

 

「すみません、私も否定できないです。」

 

 

 

ホントに、深追いして撃破されたとかは止めてよカメさんチーム……若干不安が拭えないから。

それにしても、本物の戦車と見分けがつかない程の書き割りを作るとか、アンツィオの美術レベルは相当高い気がするよ――兎に角、此処からが本当のアンツィオ戦だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer123

『此れが本当のアンツィオ戦です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

アンツィオの書き割りを破壊したウサギチームは、みほの命令通り偵察を続けながら森の中を進んでいた――アヒルチームも偵察を続けているが、其方は梓の提案で森の外を偵察中である。

 

 

「アレは……セモヴェンテとカルロベローチェが1輌ずつ?」

 

「ふむ、樹木の生え方のおかげで、如何やら此方には気付いていないようだヨ?」

 

 

そうして森を偵察中、梓はセモヴェンテとCV-33のコンビを発見。

クロエの言うように、向こうからは此方が死角になっているらしくウサギチームのⅢ号に気付いた様子はない――となれば奇襲の一発で最低でもCV-33は撃破出来るだろう。

 

 

「でもさ、また偽物かもしんないよね?」

 

「!!」

 

 

だが、あゆみの放った何気ない一言が、戦車乗りとしての梓の勘が即座に反応した。

確かにあゆみの言うように、偽物である可能性も充分にある――そもそも、アンツィオが先程破壊した書き割り以外の張りぼてを用意していないと言う事は誰にも断言する事は出来ないのだから。

 

 

「(確かにあゆみの言う通りだけど、此処は如何するのがベターだろう?もしも偽物だったら、弾を無駄にする事になるけど、偽物かどうか確かめようとして機銃を撃って本物だったら1対2の状況で戦う事になる……あのデコイがあったからこその二択――アンチョビさんの狙いが、此方の選択肢を増やす事にあったんだとしたら、あのデコイは充分その役割を果たしたって言えるかな?

  さて、無駄弾を撃つか、其れとも1対2か……)

 クロエ、仮にあの2輌を同時に相手にする事になった場合、相手の攻撃はドレだけ避ける事が出来る?」

 

「そうだナ……Ⅲ号はティーガーⅠよりも小回りが利くから、セモヴェンテの砲撃なら全弾回避も不可能じゃないヨ。

 CV-33の機銃ではⅢ号の装甲を抜く事は出来ないから、実質避ける攻撃は1輌分だからね。」

 

 

即座に頭の中で思考を纏め、その上でクロエに回避の自信の程を聞き、再び考える。

クロエの操縦技術の高さは、中学時代の3年間、同じ戦車に乗っていたから良く分かっており、その腕前ならばセモヴェンテの攻撃を全て回避すると言うのも決してビッグマウスではないと思っているのだ。

 

 

「(クロエの操縦技術があれば全弾回避も可能……そうなればそれだけ相手に無駄弾を撃たせる事が出来る――なら此処で打つ一手は!)

 あゆみ、CV-33に照準!」

 

「了解!……照準セット完了!」

 

「……撃て!!」

 

 

その思考の果てに梓が導いた答えは、機銃で確認するのではなく、主砲を一発ブチかます方だった。

機銃を撃とうが、主砲をかまそうが、相手が本物であったら其処から交戦状態になるのは間違いない。――ならば、機銃で確認して1対2になるよりも、セモヴェンテとのタイマンの方が遥かに楽だ。

加えて、クロエの回避能力ならばセモヴェンテに弾薬の過消費を起こさせる事が出来ると考え、デコイであった場合の1:0交換よりも、本物であった場合の1:1交換+αを選択させたのだ。

 

 

――ドガァァァァァァァン!!

 

――キュポン!!

 

 

『アンツィオ高校、CV-33行動不能。』

 

 

そして、その選択は大当たり!

Ⅲ号の砲弾は、見事にCV-33にヒットして吹き飛ばし、撃破の証である白旗判定を上げさせる――つまり、この場に居たアンツィオの戦車は、デコイではなく本物だったと言う訳だ。

 

 

「んな!?一体何処から!!」

 

「あそこだ、あの木の向こう!!大洗のⅢ号だ!!」

 

 

行き成りCV-33が撃破された事に驚いたのはセモヴェンテの搭乗員達だ――無理もない、デコイに気を取られている筈の大洗を此れから強襲する所を逆に奇襲を喰らってしまったのだから。

 

だが、其れは逆に言うとⅢ号の存在を認識したと言う事でもある。

セモヴェンテの砲手がスコープで見た先には、確かにⅢ号が存在していた――だからこそ、確信する、マカロニ作戦は失敗したのだと。

完全に出鼻を挫かれた形だが、其処で凹まないのがアンツィオの戦車乗りだ。

 

 

「ドゥーチェの策を見破るとは、流石は隻腕の軍神が率いる大洗……だけどな、アンツィオは負けねぇぞ!!」

 

「そう来ないと面白くありません……かかって来な!」

 

 

即座にⅢ号に向かって突撃!

其れに応えるように、梓は挑発的に手招きすると、手招きした手をサムズダウンして煽った後に、その場を急速離脱!――隻腕の軍神の一番弟子は、中々に挑発も巧かった様だ。

 

ともあれ、此れが本当のファーストコンタクト――そして、此れが合図となって試合は動き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「CV-33がやられたとは……此れは、マカロニ作戦は見事に見破られたようだな?」

 

「まぁ、みほっすからね……早い段階で見破るんじゃねぇかとは思ってたっすけど。」

 

「だよな。」

 

 

CV-33撃破の報を聞いたアンチョビは、即座にマカロニ作戦が見破られた事を看破していた――だがしかし、アンチョビに焦りの色はないどころか、その顔に浮かんでいるのは強者と戦える事の喜びを感じている笑みだ。

 

 

「いやはやマッタク持ってみほは凄い奴だな?

 マカロニ作戦をいとも簡単に見破って、更に此方の戦車を撃破して来るとは――虎の勇猛さと、女豹の狡猾さを併せ持った強さは、健在どころか、より磨きがかかっている様だ。

 此れも、今年から戦車道を復活させた大洗に所属しているからも知れん……決められた型のない自由な戦車道こそがみほの強さだからな。

 ならば、此処で待っている必要は最早ない!私達も動くぞ、雛菊!パニーニ!!」

 

「了解しましたドゥーチェ。」

 

「任せておいてくださいドゥーチェ!」

 

 

自分達の作戦を看破し、攻勢に出て来た大洗に対して『待ち』は悪手と考え、セモヴェンテとCV-33をお供に引き連れアンチョビも出陣!

一見するとP-40、セモヴェンテ、CV-33のチームと言うのは貧弱に見えるが、CV-33が一緒に居るからこそ、機動力で相手を掻き乱した所へのP-40とセモヴェンテの高火力が効果的に決まるのである――正に、対戦車戦性能皆無の豆戦車も使い様と言う所だ。

 

アンチョビは、そのまま森の中を突き進み、少し開けた場所に出た。

本来ならば此処で一度停車し、他の隊員から現在の状況を聞く所なのだが――

 

 

「え?」

 

「あれ?」

 

 

此処でバッタリ、みほ率いる小隊とエンカウント!

みほも此処で一度エリカや梓と連絡を取ろうと思っていたらしく、完全に偶然ではあるが同じ場所に到着してしまったのである。……まぁ、こんな偶然もまた戦車道の面白さなのかも知れないが。

 

 

「あ……ある~日、森の中。」

 

「戦車に、出会~~った。」

 

「生い茂る森の道~~。」

 

「戦車に出会~~~った~~~~♪」

 

 

で、エンカウントした隊長同士は何を思ったのか、プロなんじゃないかと思う様な歌声を披露し……まるで示し合わせたかのような見事な歌声がスピーカーから流れた瞬間、観客席がドッと沸いた。

観客的にも、此れはアリだったのだろうが、大事なのは歌声ではなく、此処でエンカウントしたと言う事であり……

 

 

「敵フラッグ発見!Offener Kampf!!」

 

「まさか、こんな形で会敵するとはな……上等だ!Combattimento aperto!!」

 

 

其処から一気にオープンコンバット!!

みほとアンチョビの指示の下、互いに的確な砲撃と、超絶技巧の操縦で木が生い茂った森の中とは思えないような、激しい戦車戦を展開して行く――まぁ、この攻防のせいで森の木が戦車砲で圧し折られて、攻撃の度に見通しが良くなってはいるのだが。

 

だがしかし、こう言った場所での戦いはみほもアンチョビも大得意。

直接相手のフラッグ車を狙うだけでなく、敢えて砲撃で木を倒して相手のフラッグ車の上に倒そうとしたり、機銃で杉の実を弾けさせて花粉の雨を振らせたりと、奇策裏技上等の戦車道が展開されて行く。

 

 

「みほ、お前幾ら何でも、蜂の巣を落とすとか酷くないか!?危うくキューポラの中に入る所だったぞ!殺す気か!!」

 

「刺されたくらいじゃ死にませんよ?」

 

「アホたれ、私に限っては確実に死ぬんだよ!!」

 

「……若しかして、アナフィラキシー?」

 

「その通り!!」

 

「其れは……てへ♪」

 

「誤魔化すな!!」

 

 

会話だけを聞くと、何ともアレだが、中学時代に最強と称されたまほを倒したアンチョビと、そのアンチョビを倒したみほの戦いは、中学の頃の戦いよりも白熱している様だ。

 

 

「ん?あのマークは……たかちゃん?」

 

 

そんな中、セモヴェンテの車長兼装填士の雛菊は、大洗のⅢ突のパーソナルマークを見て、そのマークが幼馴染がSNSのスタンプとして使っていたモノだと気付き、Ⅲ突に幼馴染のたかちゃんが乗っていると確信する。

 

 

「ドゥーチェ、長砲身75mmは私に任せて下さい。」

 

「雛菊?……分かった、任せたぞ!!」

 

 

なので、Ⅲ突の相手を自ら引き受けて交戦を開始!

幼馴染だからこそ、真っ向勝負で勝ちたいと言う所なのだろう。

 

 

「隊長、我等はセモヴェンテの相手をする!――其方は任せた!!」

 

「エルヴィンさん……御武運を!」

 

「任せろ!

 隻腕の軍神の祝福を受けた、我等大洗に負けはない!!」

 

 

そして、Ⅲ突もまたセモヴェンテとの一騎打ちを決め、突撃砲同士の戦いの火蓋が切って落とされる!――互いに回転砲塔を持たないが故に、この戦いは装填の速さと、操縦技術の高さが勝負を分ける事になるだろう。

 

 

「後は絶対に晒さない筈……でも側面なら!!!」

 

 

「Ⅲ突の主砲なら、何処に当てても撃破出来る!!」

 

 

幼馴染同士のバトルは、とても激しい物になる可能性がバリバリだった――尤も、その熱気はスクリーンを通して観客に通じたらしく、セモヴェンテとⅢ突のバトルが始まった瞬間、観客は大盛り上がりだったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、森の外を偵察していたアヒルチームは……

 

 

「こんな所で会うとは奇遇ね磯辺……此処からは、力を合わせて行きましょうか?」

 

「OK逸見!根性メガマックスーーーーー!!!」

 

 

エリカ率いる小隊と合流していた。

エリカも典子も合流を狙っていた訳では無いのだが、そうであってもこうして合流して戦力を増強してしまう辺り、みほの部隊編成は的確だったと言わざるを得ない――其れこそ、この合流すらも見越していたのではないかと思う程だ。

 

だが、大洗最速のクルセイダーと、大洗最強火力のティーガーⅡが合流したら、此れは相手にとってはとても怖い組み合わせだろう――特にアンツィオにして見れば、足で撹乱してデカい一発をブチかますと言う自分達の戦闘スタイルを奪われたに等しいのだから。

 

 

「根性メガマックスって、正直意味が分からないけど……だけど、その意気やよしよ!!

 ちょろちょろ煩い、アンツィオのネズミを一匹残らず駆除してやるわ!!――磯辺、気合と根性の貯蔵は充分かしら?」

 

「充分も充分!寧ろ、溢れ出して飽和状態!!」

 

「なら問題ないわね――ブチかますわ!!」

 

 

そして実際にこの組み合わせの強さは凄まじく、クルセイダーがアンツィオのCV-33以上の機動力を持ってして相手の動きを制限し、足が鈍くなった所に、ティーガーⅡの88mmが炸裂し、CV-33を次から次へと駆逐していく――如何に機動力が武器のCV-33であっても、その機動力を殺されてしまってはどうにもならない。

銀狼の駆る黒虎の爪牙の餌食になるだけだった。

 

だが――

 

 

――バゴォォォン!!

 

――キュポン!!

 

 

『38(t)行動不能。』

 

 

弾き飛ばされたCV-33がぶち当たって白旗判定となったカメチームは、何とも言えない位に間抜けであったとしか言いようがないだろう……まぁエリカは最初から生徒会は当てにしてなかったのだが……

 

だが、其れでも数の上では優位に立つ事が出来たのだから、この戦闘は決して無駄ではなかっただろう。

 

 

「あ、此処までっポイ――根性でも駄目だったか。」

 

 

――ブシュゥゥゥ……

 

――キュポン!

 

 

『クルセイダー、行動不能。』

 

 

だが、戦闘中にリミッターを解除したクルセイダーが、此処でエンジンに限界が訪れて白旗判定――リミッター解除の影響ゆえの白旗判定なので撃破された訳では無いのだから大したモノだが。

 

何にしても、大洗もアンツィオも互いに戦車が撃破され、試合は一気にクライマックスの様相を呈して来た――其れだけは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の各地で激しい戦車戦が展開される中、みほとアンチョビの戦いもまた、白熱していた――其れこそ、中学時代の決勝戦での激突以上だと行っても過言ではない。

何方も一歩も退かない、観客の目をひきつけてやまない戦車戦――其れこそ、2回戦であるにも拘らず年間ベストバウトにノミネートされてもオカシクない試合が展開されているのだ。

 

 

「ククク……はっはっは!!!

 楽しい、楽しいなぁみほ!!やはり戦車道と言うのはこうでなくてはいかんよ!――心の底から試合を楽しみ、そしてその上で勝ってこその戦車道だ!

 お前は、其れをよく分かっているみたいだなみほ!!」

 

「戦車道は楽しく、此れは基本ですよアンチョビさん。

 でも、楽しんだ上で勝てれば其れは最高ですよね――だから、勝たせて貰います!!!」

 

「楽しんだ上で勝つか――確かに其れは最高だな!!」

 

 

パンターの砲撃をP-40が躱してⅣ号に攻撃すれば、Ⅳ号は其れを躱してCV-33にカウンターを叩き込むが、CV-33は持ち前の機動力で其れを回避して戦車プレス!!

 

だが、其れはパンターによって阻止され、CV-33は白旗判定だ。

 

 

「相討ちか……流石だねひなちゃん。」

 

「流石はたかちゃん……一筋縄ではいかなかったね――勝てると思ったんだけどなぁ。」

 

 

同時にタイマンを行っていたⅢ突とセモヴェンテは仲良く相討ちになってターンエンド――だが、此の展開はアンツィオにとっては嬉しくない事この上ない……火力で圧倒的に劣る結果となったのだから。

 

 

そして――

 

 

 

「此れで終わりだよ!!」

 

「此れでバトル終了です!!!」

 

「さぁて、覚悟は出来てる?私は出来てる!!」

 

 

Ⅳ号と、この場に駆けつけたⅢ号とみほのパンターが、アンチョビのP-40をロックオン!!――此れはもう逃げ場は何処にもないだろう。

 

 

「一気に殲滅する!!――撃てぇ!!」

 

 

 

――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

 

――キュポン!

 

 

『アンツィオ高校、フラッグ車行動不能――大洗女子学園の、勝利です!』

 

 

如何にイタリア最強の重戦車であっても、ドイツが誇る高性能中戦車であるⅢ号、Ⅳ号、パンターによる十字砲撃を喰らっては堪ったモノではない――実際にP-40は白旗判定になってしまったのだから。

 

ともあれ、白熱の2回戦を制し、大洗女子学園は次のステージへと駒を進める事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

ふぅ……何とか勝つ事が出来た――でも、今回の勝利は、アンチョビさんがアンツィオを選んだからこそのモノだと思う……もしも戦車道に必要な彼是が金で買えるとなったらアンチョビさんはアンツィオに行ってなかっただろうからね。

 

でも、だからこそアンチョビさんは其の力を発揮できたんだと思う――型に捕らわれない戦車道は、アンチョビさんもだからね。

 

 

 

「いや~、負けた負けた!相変わらずお前は凄いなみほ!!――楽しませて貰ったぞ、此の試合。」

 

「アンチョビさん………はい、私も楽しめました!!」

 

次の機会があったらその時は、最高の試合をしましょう!――時に、アンツィオの皆さんは何をしてるんでしょうかアンチョビさん?

机をセッティングしてテーブルクロスまで用意して……あの、何が始まるんでしょうか?

 

 

 

「我等アンツィオは、食には糸目をつけん。

 試合後のもてなしこそ、アンツィオの本領だ――心行くまで楽しんで行ってくれ。」

 

「あはは……噂に聞いた試合後の晩餐会、まさか自分が参加するとは思わなかったですアンチョビさん?」

 

「なんだ、初体験か?なら、思い切り楽しめ――こういうイベントは楽しんだ奴の勝ちだからな。」

 

 

 

ですよね♪

勿論、思い切り楽しませて貰います――其れに、ノリのいい音楽がなってるから、踊らないのは損だしね。

 

「Wurden Sie bitte tanzen, Erika??(一曲踊って頂けますかエリカ?)」

 

「Wenn das dein Wunsch ist, lass es mir Miho. (みほ、其れが貴女の望みなら仰せのままに。)」

 

 

 

片膝をついて、仰々しく私に礼をしてくれたエリカさんの手を取って、そのままイタリアのノリの音楽に合わせてステップとビートを刻んでダンスの大披露!!

負けても、こんな事が出来るなんて、アンツィオは心底試合を楽しんでる……そう言う事だね。

 

 

 

「まぁ、そう言う事だ――今回は負けてしまったが、次にやる時は私達が勝つ!!覚えておけよみほ!!!」

 

「勿論、再戦を楽しみにしていますよアンチョビさん……でも、今回は私の勝ちです――次はまた、誰もが魅了されるような、そんな戦車道をしたいモノですね。」

 

「だな――次の準決勝、必ず勝てよ!!」

 

「はい、勿論です!!」

 

準決勝の相手は間違い無くプラウダだから、その辺は考えて作戦を立てて行かないとなんだけど……今日この時は、アンツィオの持て成しを最大に楽しむべきだよね!

 

 

其れじゃあ、宴会もぱんつぁーふぉー!!!

 

 

 

「「「「「「「「「「「合点だい!!」」」」」」」」」」

 

 

 

取り敢えず、此の2回戦は、良い試合だったと思う――互いに全力を出す事が出来たんだからね。

そして、この戦いに誓うよ――必ず優勝するってね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:雛菊

 

 

負けちゃったか……たかちゃんとも相討ちだったからね――まさか、此れだけの僅かな期間で此処まで強くなったって言うのは少し信じられないわ……一体、どんな事をしたのたかちゃん?

 

 

 

「特に何も――しいて言うなら西住隊長の命令通りに練習しただけって感じかな?――でも、楽しかったよひなちゃん。」

 

「其れは私もだよたかちゃん――西住隊長の策はハンパないわね……」

 

「たかちゃんじゃない――私は、カエサルだ!!!」

 

 

 

たかちゃん!……そっか――なら、私は『カルパッチョ』ね。

次の相手は強豪プラウダだろうけど、みほさん率いる大洗女子学園なら、きっと互角に渡り合う事が出来る筈――次に会うその時を、楽しみに待ってるよ、たかちゃん。

 

次の準決勝も、頑張ってね――貴女達の勝利を、願ってるわ大洗女子学園!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 




キャラクター補足



・カルパッチョ

本名『湖城雛菊』。中学の頃にみほと戦った事のある戦車乗りで、中学卒業後はアンツィオに進学した。
アンツィオの生徒としては、珍しく落ち着きのある性格で、突っ走る事の多い戦車隊隊員の良いストッパーにもなっている。
ペパロニと共に副隊長を務め、動のペパロニと静のカルパッチョでアンチョビをサポートする。
大洗女子学園のカエサルこと『鈴木貴子』とは、小学校からの幼馴染で、互いに『たかちゃん』『ひなちゃん』と呼び合う仲。

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