ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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砲弾の弾頭を氷に変えたらどうなるかな?Byみほ        威力は変わらず、相手への安全性が高まるんじゃない?Byエリカ      着弾したら氷結とか面白そうですねBy小梅


Panzer126『演出された窮地と暴露された真実です』

Side:まほ

 

 

遂に大洗の、みほの準決勝が始まったな。

相手は去年の準優勝校であるプラウダ――普通に考えれば、今年から戦車道を復活させた無名の大洗に勝ち目はないと考える所だが、みほとエリカと小梅、そして澤が大洗に居る以上はその限りではないな。

 

確かに大洗は、今年から戦車道を復活させ、隊員の殆どが素人であるのは間違いないだろうが、だからこそみほの能力を最大限に発揮する事が出来る――みほには決まった型がない戦車道こそが最も向いているからな。

 

黒森峰の様な決められたドクトリンが無い大洗ならば、みほの好きなようにする事が出来る――つまり、大洗の戦車隊はみほが作り上げたモノであり、そのレベルは相当な物と見て間違いないだろう。

 

戦車の性能差があったとは言え、2回戦では、あの安斎が率いるアンツィオを退けた訳だからな。

 

みほが率いる大洗ならば、プラウダが相手であっても勝ってしまうかも知れないな――自由な戦車道が出来る環境になった事でエリカと小梅も黒森峰に居た頃よりも生き生きとしているからな。

 

 

 

「大洗8に対して、プラウダ15……戦力差はハッキリしておるな。

 大洗の戦車で、プラウダの戦車に対抗できるのは、パンターとティーガーⅡ、長砲身化したⅣ号とⅢ突……部隊の半分しか存在してないのでは、プラウダの精鋭に勝つ事など奇跡みたいなもんじゃ。」

 

「其れは、やって見なくては分かりませんよお祖母様。」

 

みほは、不利な状況でこそ圧倒的な力を発揮する戦車乗りです。

そして、此の準決勝はプラウダが絶対有利なフィールドで行われるのです――この圧倒的に不利な状況こそがみほの真価が発揮される場面だと言えるでしょう。

 

只、これだけは確実に言えますよお祖母様――西住みほと、その仲間達をあまり侮るべきではありませんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer126

『演出された窮地と暴露された真実です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

さてと、見渡す限りの銀世界って言うのは美しいけど寒いねヤッパリ。

準決勝の相手はプラウダだから、地の利は相手に有るのは間違いないね――となると、如何するべきかって話になって来るんだけど、さて此処はどうするのが良いかな?

 

「私としては慎重に攻めるのがベターだと思うんだけど、皆は如何思う?」

 

「否、此処は一気に相手を攻め立てるのが上策だろう隊長?

 恐らくだが、プラウダの連中だって大洗が奇襲を仕掛けてくるとは思ってはいまい――向こうの隊長は此方を侮ってなかったので何とも言えないが、奇襲は有効だと思うぞ?」

 

 

 

奇襲……成程、戦術としては悪くないかもね。

だけど、この雪の中での奇襲はリスクも伴う――雪のせいで視界が悪いし、猛吹雪でホワイトアウトが起きるレベルだった場合は、戦車を確認する事すら出来ないからね。

 

でも、雪が小降りの今なら真正面からぶつかるって言うのはアリかも知れないね?

 

 

 

「ちょ、貴女本気で言ってるのみほ!?」

 

「至って本気だよエリカさん。」

 

で、エリカさんが待ったを掛けてくるけど、実はこれはちょっとしたお芝居――すんなり決まるよりも、少し議論が合ってから決めた方が説得力がある事は珍しくないからね。

で、そう言うのを仕掛ける役目は小梅さんよりもエリカさんの方が向いてるからって事でなんだけど……でもエリカさん、『貴女に食って掛かるから』って言うのはちょっと違うんじゃないかな。

 

 

 

「貴女ねぇ、こう言うフィールドは行き成り天気が変わるなんて事よくある事でしょ?

 今は小降りでも、電撃戦仕掛けようとして発進した瞬間に吹雪にでもなったらどうすんのよ!立ち往生した所をプラウダに包囲されてゲームセットよ?」

 

「確かにその可能性が無くは無いけど、今スマホで天気図を確認したら、雪雲はこれ以上の発達はしないみたいだし、風も弱い状態が続いてるから吹雪になる可能性は低いんだよ。

 だったら、奇襲からの電撃戦で仕留めるのは悪くないと思うんだ――其れに、皆やる気に満ち満ちてるみたいだから、其れを発揮して貰えば何とかなると思わない?」

 

「……確かに、其れは言えてるかもしれないけど……

 アンツィオじゃないけど、ノリと勢いに任せるってのは案外馬鹿に出来ないモノがあるわ――もしもアンツィオに強力な戦車が有ったら黒森峰と並ぶ強豪校になってた可能性は否定できないしね。」

 

 

 

隊長はあの安斎さんだからね。

中学時代にお姉ちゃんを破った安斎さんが強力な戦力を手に入れたら、多分最強なのは間違いないと思うよ。

 

 

 

「中学時代に戦力があった安斎隊長を倒してる貴女が言っても説得力が無いわよみほ。

 でも、猛吹雪になる可能性が極めて低いなら、奇襲からの電撃戦って言うのも悪い手じゃないわね――寧ろプラウダを速攻で破ったとなれば大洗への注目はもっと集まるって事になる訳か。」

 

「そう言う事だよエリカさん。」

 

「OK、なら仕掛けましょう――プラウダの連中に、大洗の底力がどれ程の物か見せてやろうじゃない?」

 

 

 

と言う訳で、事前の打ち合わせ通り、最終的には私の意見が通る事にね。

でもエリカさん、犬歯を覗かせてニヒルに笑うのはちょっと反則だと思うよ?……エリカさんてば極上の美人さんだから、そんな顔をしたら不特定多数の人を魅了しちゃうからね。

 

 

 

「其れは、貴女も魅了しちゃったのかしらみほ?」

 

「アハハ、私はとっくに魅了されちゃってるよ?戦車乗りとしてのエリカさんにだけどね。」

 

「あら、其れは光栄だわ。」

 

 

 

まぁ、もしも今のが客席のオーロラビジョンに映ってたら、観客の何人かは魅了されて、ファンレターやラブレターが急増するかもしれないけど。

それはさておき、此処はノリと勢いに任せて奇襲からの電撃戦を仕掛けようと思う――皆も其れで良いかな?

 

 

 

「「「「「「「いいとも~~~!!」」」」」」」

 

 

 

あはは、バッチリな返しだね。梓ちゃんも、副隊長としてノリノリだし。

なら、その意気のまま一気に行くとしようか?――改めまして、Panzer Vor!!

 

 

 

「「「「「「「Jawohl!!」」」」」」」

 

 

 

でも、此れは偽りの作戦に他ならないから、確実にプラウダに看破されて手痛い反撃を喰らう事になるだろうね――まぁ、其処までが織り込み済みだからさして問題にはならないんだけどさ。

 

でも、此れ等の仕込は全て、生徒会が私達に隠していることを暴露させるための事だから、その為には徹底的に窮地を演出しないとだよ。

絶対的な窮地に陥ったその時に、人は隠し切れない本音を口にするものだからね――だから、教えて貰いますよ会長さん、貴女達が私達に隠して居る事をね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

準決勝第2試合となる大洗vsプラウダの試合が遂に始まった。

雪が降りしきる極寒の中でも観客席は超満員札止め状態!秋山夫妻と、五十鈴家の使用人である新三郎――だけでなく、五十鈴流華道の家元の五十鈴百合も観戦に来ている事から、この一戦の注目の高さが伺えると言うモノだろう。

何よりも、西住流の家元である西住かほ、西住流師範の西住しほ、黒森峰女学園隊長の西住まほが観戦に来ていると言う事が、戦車道関係のマスコミ陣の注目を引いていた。

 

 

その準決勝で、先に動いたのは大洗だった。

特に部隊を分散させるでもなく、プラウダの陣営に向かって行く――戦車道を僅かでも齧った者ならば、其れが電撃戦の布石である事を理解しただろう。

 

 

 

其れは兎も角として、行き成りの雪上戦では当然不具合も発生する。

大洗の新チームであるカモチームが雪の中で立ち往生して動けなくなってしまったのだ――履帯が雪に止められた訳では無いので、単純にゴモヨが操縦に慣れていないだけなのだろう。

 

だが、そのピンチを救ったのは意外にも麻子だった。

パンターの車長であり隊長でもあるみほに『直ぐ戻る』とだけ伝えると、そのままカモチームのルノーR35に飛び乗り、半ば強引に操縦席を奪い、実地訓練で戦車の性能と操作を叩き込んだのである。

 

これによりカモチームの動きはスムーズになり、此れならば戦力として申し分ないレベルだ。(僅かなレクチャーで覚えたゴモヨも凄いが。)

 

カモチームがスムーズに動けるようになった後は、雪の進軍何とやらの如く、グングン雪原を進んで、プラウダ陣営の方に近付いて行く。当然周囲を警戒しながらだ。

 

 

「西住隊長、前方に戦車発見!プラウダの戦車と思われます!」

 

「アレは……T-34/76!

 プラウダの主戦力の戦車――思った以上に進軍して来てたみたいだね?」

 

 

そんな中、アヒルチームの典子が前方にプラウダの戦車を発見し、みほも其れを確認。――主戦力の中戦車が、思った以上に進軍して来た事に驚く振りをしながら指示を出して行く。

 

 

「此処まで進軍して来てた事は予想外だったけど、逆に言うならフラッグ車も上がって来てる可能性が高い。

 此のまま先制攻撃を行って、一気に流れを掴むよ!(……アレは囮、此方をおびき寄せる為の罠だよね。)」

 

「了解したわみほ!(まぁ、如何考えてもキルゾーンへの誘導役よねアレは。)」

 

「何時でも行けます!(カチューシャさんも引っ掛かるとは思ってないでしょうけど、実際に引っ掛かったらどんな反応をするのでしょうか?)」

 

「西住隊長、行きましょう!(西住隊長から話は聞いたけど、まさか本当にこんな事になるなんて……本当に凄い事考えるなぁ西住隊長は。)」

 

 

車長を務めている経験者4人は、夫々の思いを抱きながらも攻勢に出る旨を口にし、他のメンバーにも其れを伝染させていく――経験者が言うのだから大丈夫だと言う、少々乱暴ではあるが安心感を与える為に。

 

 

「其れじゃあ、攻撃開始!!絶対に逃がさないように!!」

 

 

そしてみほの号令によって攻撃開始!

8輌の戦車の主砲が一斉に火を噴き、砲弾の雨がプラウダの戦車を襲う!――が、T-34/76は見事な雪上ターンを決めると、反撃する訳でもなくその場から離脱してしまう。

 

 

「逃がすか!!」

 

「追うぜよ!!」

 

 

勿論それを今の大洗がみすみす逃す筈がない。

アヒルチームとカバチームが我先にと飛び出したのを皮切りに、カメチームとカモチームも其れに続く。(カモチームではそど子が『敵前逃亡は校則違反に値するわ!』とか訳の分からない事を言っていたが。)

 

 

「(……取り敢えず、第一段階は成功かしらね?)」

 

「(そうだね、問題は此処からだけど。――取り敢えず、打ち合わせ通りにお願いするね、梓ちゃん、小梅さん。)」

 

「(お任せ下さい西住隊長。)」

 

「(到着したら、スマホに連絡を入れますから。)」

 

 

残された経験者達は、チームメンバーに悟られないようにハンドサインのみでやり取りすると、みほとエリカは追撃を行った仲間達を追い、梓と小梅は其れとは別の方向に進んで行った。

 

 

「みぽりん、オオワシとウサギが離れて行っちゃったけど良いの?」

 

「良いんだよ沙織さん、此れもまた作戦の内だから。」

 

「どんな作戦でありますか、西住殿!!」

 

「其れは、実際に見てのお楽しみかな。」

 

 

無論それを不思議に思う沙織達だが、其処は流石のみほと言うか何と言うか、隊長とであると言う事と経験者であると言う事を存分に使って、巧い具合にはぐらかし、先に進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

先行したカバ、アヒル、カメ、カモの4チームは、逃げるT-34/76を中々仕留められずにいた。

誤解無き様に言っておくが、決して彼女達の腕が悪い訳では無い――言うなれば戦車の性能差、もっと言うならフィールドの条件があまりにもプラウダに有利である事が仕留められない原因だった。

 

そもそもプラウダの戦車は大戦期のソ連の物を使用しており、当然寒冷地での、特に雪上では無類の強さを発揮する戦車ばかりなのだ。

履帯もまた、雪上走行に対応したモノを使っているので、雪上の機動力に関しても大洗の戦車とは比べ物に成らない程に高いのである。(一応大洗もドイツ製の戦車に限っては雪上用の履帯に履き替えてはいるが。)

 

 

「ちょこまかと……佐々木、思い切りスパイクを叩き込んでやれ!!」

 

「了解ですキャプテン!!」

 

「いい加減往生するぜよ!!」

 

「いや~、中々当たんねーなー?かーしまじゃなくても、此れはきついかもな~。」

 

「か、会長~~!?」

 

 

この追いかけっこはまだ続くかと思われた矢先だった。

 

 

――ドゴォォォォン!!

 

 

「「「「!!!!」」」」

 

 

突如、大洗の部隊の前に砲弾が着弾!

砲弾は手前に落ち、其れに伴い急停車した事で撃破はされなかったが、此れには追撃を行っていた全員の背中に冷や汗が流れた。何故か?

其れは、その砲撃は追っていた戦車が放ったモノではなく、全く別の戦車が放ったモノだったからだ。

 

そして見渡してみれば、何時の間にか周囲にはKV-2とIS-2を除くプラウダの全車輌が自分達を取り囲んでいた――この状況に、漸く自分達が致命的なミスをしてしまったと気が付いたのだ。

 

 

「しまった……誘われていたのか!!」

 

「サーブ権を奪われたどころか行き成りの逆マッチポイント!!」

 

 

だが、気が付いたとしても時既に遅し。

如何考えてもこの状況を脱出するのは不可能――唯一の救いは、今この場にフラッグ車がいないと言う事か。

 

 

「如何やら、ミホーシャ達のチームは中々出来るみたいだけど、素人オンリーのチームは所詮は素人だったみたいね?

 まさか、あんな見え見えの罠にかかってくれるとは思わなかったわ――まぁ、流石にミホーシャの弟子が乗るフラッグ車は来なかったみたいだけどね。」

 

「何ぃ!

 此れは西住の指示だぞ!一気に攻めると、逃がすなと!!」

 

「ミホーシャが?有り得ないわね。

 そもそもその『一気に攻める』って言うのは本当にミホーシャが提案した事なのかしら?」

 

 

T-34/76のキューポラを開けて現れたカチューシャは、フラッグ車が居ない事に内心舌打ちをしつつも、この状況に陥ったのは所詮は素人だと言って揺さぶりをかけ、桃の反論に関しても其れを潰すかのように言い放つ。

 

だが、言われた大洗の面々は全員が『そう言えば』と言う顔になる。

みほは『如何行こうか?』とは聞いたが、最初から『一気に攻める』とは言っていなかった――あくまでも自分達が提案した案を採用しただけに過ぎないのだ……と言う事は、この状況は己が作り出してしまった状況であるのだ。

最終的に決断したのはみほとは言え、提案したのは自分達……もしもあの時提案しなければ、誰もがそう思ってしまうのは仕方ないだろう。

 

 

「何よりも、ミホーシャ達が此処に居ないのが良い証拠よ。

 きっとミホーシャ達は途中で嫌な予感がして追撃を思い留まったんだわ――逃がすなって言うのを言葉通り取った貴女達の負けなのよ。」

 

「「「「………!!」」」」

 

 

グゥの音も出ないとはこの事だろう。

基本的にみほの指示は大雑把なモノであるが、其れは『大筋はこうだけど、後は好きなようにやってくれていい』との表れであり、実際にサンダース戦も、アンツィオ戦も夫々が自分で考えて行動して来た。

其れなのに、今回はみほの言うがままに行動し、そして窮地に陥っている――今更ながらに準決勝まで駒を進めた事で浮かれていた事を自覚させられてしまったのだ。

 

4対13では分が悪い所の騒ぎではない。全チームが撃破される事を覚悟したが――

 

 

「そうはさせないよ!」

 

「やっぱり、キルゾーンへの誘導が目的だったのね……罠だと思って少し考えたのは正解だったわ!」

 

 

其処にみほのアイスブルーのパンターと、エリカの漆黒のティーガーⅡが駆けつけプラウダの戦車を攻撃!

今まさに袋の鼠を狩らんとしていたプラウダにとって、この攻撃は完全な奇襲となり、ホンの一瞬ではあるが隙が出来る――そして、その僅かな隙は、みほとエリカにとっては充分な時間だ。

 

 

「一度体勢を立て直すから付いて来て!丁度澤ちゃんと小梅さんから連絡があったから!」

 

「殿は私が勤めるわ!全員みほに続きなさい!!」

 

 

号令をかけ、其のまま一気に雪原を驀進してプラウダの作ったキルゾーンを突破する!

無論プラウダも追ってくるが、其処は最強の攻撃力と防御力を誇るティーガーⅡが殿を務める事で追撃を弾き飛ばし、逆に超長砲身の88mm砲を持ってしてプラウダの一団に一撃を喰らわす。

撃破出来なくとも、追撃の手を一時止めるには充分だ。

 

程なく大洗の部隊は、廃墟に到着。

その入り口では小梅と梓が待機しており、ペンライトで部隊を廃墟の中へと誘導して、モノの数分で全車輌が廃墟の中にログイン完了。

 

 

だが、その数分後にはプラウダの部隊がその廃墟を取り囲む形となり、戦局は一気に大洗絶体絶命の盤面となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:カチューシャ

 

 

完全にやったと思ったのに、あそこから仲間を助けてキルゾーンから脱出するとは、流石ねミホーシャとエリーシャは。

だけど、私の罠に気付いたのなら、如何して追撃して来た連中を止めなかったのかしらミホーシャは?……勿論、アイツ等がミホーシャの静止を聞かずに特攻してきた可能性が無くは無いけど、ちょっと解せないわ。

 

そして今の状況……廃墟に逃げ込んだミホーシャ達をカチューシャ達が取り囲んでいるけど、如何やらウメーシャとミホーシャの弟子は、先に此処に来ていたらしいけど、如何して?

 

まるで『この状況になると予想してた』みたいじゃないのよ!!

 

 

 

「そうであるのかも知れませんよカチューシャ。」

 

「でも、だとしたらどうしてそんな事をする必要があるのよノンナ?」

 

「此の試合、言っては何ですが、観客が望んでいるのは大洗のジャイアントキリングであると言って間違いないでしょう。

 黒森峰が決勝の椅子を勝ち取った現状では、最早全国大会のお決まりとなったプラウダvs黒森峰の組み合わせではない決勝戦を見たいと言うのもあるかも知れません。

 ですが、みほさんはただ勝つだけでなく、中学の頃から観客の印象に残る試合をしてきましたので、此の試合も印象に残る試合にしようとしているのかも知れませんね。」

 

「どれってどゆ事?」

 

「分かり易く言うのならば『軍神の戦車道はエンターテイメントでなくてはならない!ピンチを演出し、鮮やかに逆転勝利をする!』と言った所でしょうか?」

 

 

 

何処の絶対王者の考えよ其れは?

でも、若しもミホーシャがこの窮地すら作戦として考えてたのだとしたら、正直恐ろしいとしか言いようがないわ……其れはつまり、私達はミホーシャの思惑通りに動いたって事なんだから。

 

でも、仮にそうだとしてもこの状況を覆すのは難しいわ!

取り敢えずは降伏勧告をしてみようかしら?――ミホーシャが其れを受け入れるとは思えないけど、受け入れないなら受け入れないで、この状況を如何やって打破するのか見てみたいしね。

 

猶予時間は3時間もあれば充分かしら?――さて、この窮地をどう切り抜けるか、見せて貰うわよミホーシャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

一応これで、作戦の第二段階は成功って所かな?

全車廃墟に乗り込んで、プラウダの追撃を振り切ったからね――尤も、建物の外は多分包囲されてるからピンチであるのは変わらないけどね。

 

加えてプラウダからの3時間の猶予付きの降伏勧告まで来て、一気にチームの士気は最低レベルにまで低下したかな。

 

 

 

「西住隊長……隊長の機転のおかげで、フラッグ車は無事ですけど、この状況ではもう勝つのは難しくないでしょうか?

 プラウダの戦力は此方の倍近く……しかも周囲を包囲されていてはとても勝ち目はありません――包囲網の中にはプラウダのフラッグ車はないみたいですから、逆転の一手も難しいかと……」

 

「うん、確かに此れは可成り厳しいね。」

 

更にそこに、梓ちゃんと共に追撃を掛ける――隊長と副隊長が諦めモードになったら、略ゲームオーバーだからね。

 

 

 

「流石の隻腕の軍神でも、この状況をひっくり返すのは簡単じゃないわ――降伏するのも一つの手だと思うわよみほ?

 少なくとも素人集団を率いてのベスト4って言うのは、誰の目から見ても快挙以外の何モノでもないわ……其れに相手は、去年の準優勝校であるプラウダなんだから、降伏しても恥じゃないわ。」

 

「そうですよね……今年負けちゃったらなら、また来年頑張れば良いだけですし。」

 

 

 

エリカさんと小梅さんも良い感じに言ってくれるね。

確かにこの戦力でベスト4って言うのは世間的に見れば大健闘した方だと思うし、今年は駄目だったけどまた来年って言う希望が持てるから、此処で降伏しても良いかなって気はしてくるよ。

 

 

 

「ダメだ、降伏など有り得ん!!」

 

 

 

でも、此処で河嶋先輩が降伏は駄目だって言って来たね?

その気持ちは分からなくもありませんが、何故ダメなんですか?――高校最後の思い出に、戦車道の全国大会で優勝して名を上げたいって言う気持ちは分からなくもないですけど、ハッキリ言って状況は絶体絶命です。

此処は、素直に降伏して来年に繋げるべきだと思いますが?

 

 

 

「ダメだ、其れじゃあダメなんだ!!

 此処で降伏したら来年などない――この大会で優勝できなかったら、大洗女子学園は、廃校になってしまうんだぞ!!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

「廃校ですって!?」

 

「此れは、流石に予想外でしたよ!?」

 

「廃校だなんて、此れはまさかの展開ですね……」

 

 

 

うん、まさかこの展開は予想してなかった。

生徒会が何か隠してる事は予想してたけど、その隠し事がまさかこれ程の物だったとはね――学園艦が廃校になるって言うのは、只学校が無くなるって事じゃなくて、学園艦で暮らしていた全ての人の生活の場がなくなるって言う事だから、事は可成り重大だよ。

 

だけど逆に燃えて来たよ――私が優勝しなきゃならない理由が増えたからね。

 

でも、先ずは聞かせて貰えますか会長さん、如何して大洗が廃校の対象になってしまったのか、その辺を出来るだけ詳しく。

 

 

 

「OK、勿論だよ。

 本当は最後の最後まで隠しておきたかったんだけど、こうなった以上はこれ以上隠す事は出来ねーからね……包み隠さず話させて貰うよ。」

 

「お願いします。」

 

果たしてどんな経緯で大洗は廃校の対象になったのか――そして、其れを回避する術が如何して戦車道の全国大会優勝なのか、包み隠さず聞かせて貰いますよ会長さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 




キャラクター補足


・カチューシャ

プラウダ高校の戦車隊の隊長。
小学生かと思ってしまう位に小柄だが、此れでも立派な高校3年生――身長に関してはコンプレックス在り。
態度は不遜にして尊大な部分があるモノの、根は素直で仲間思い、相手の実力を認める度量もあったりと、隊長としての器量は充分備えている。
自分が認めた相手の事を『○○ーシャ』と言うあだ名で呼ぶが、現在その呼び方をされているのはみほとエリカと小梅のみ。


・ノンナ

プラウダ高校の戦車隊の副隊長。
隊長であるカチューシャとは反対に大柄な体格で、性格的にも大らかで、基本的に誰が相手であっても敬語で話す。
この性格的に正反対な2人だからこそ巧く行っている部分があり、ノンナの突っ込みにカチューシャが噛みつくのもお互いに信頼しているからこそ。
また車長としてだけでなく、砲手としての腕も可成り高く、サンダースのナオミと共にトップ砲手の1人として数えられている。

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