ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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決勝戦、血が沸くね!Byみほ        拳も滾って来たわ!Byエリカ       では、大暴れと行きましょう♪By小梅


Panzer131『決勝開幕!ラストバトル其の一です!』

Side:みほ

 

 

いざ決勝戦!!

試合前の挨拶って言う事で、梓ちゃんと一緒に来た訳なんだけど……お姉ちゃんの目には、思わず身を固くしちゃったよ――だって、私の前に現れたお姉ちゃんは、底の見えない暗く濁った眼をしていたんだから。

 

お婆ちゃんの言う西住流を続けて来た事で疲れちゃったのかな?

 

「試合前にこんな事言うのは如何かと思うけど、大丈夫お姉ちゃん?」

 

「大丈夫だ、問題ない。

 其れよりもみほ、いよいよ此処まで来た……私は手心を加える心算は全く無いのでな……お前の、お前達の持てる力の全てを持って私達に挑んで来い。

 今年の黒森峰は、お前達の数倍は強いからな。」

 

 

 

うん、お姉ちゃんも良い感じに乗ってるみたいだね。

って事は、その濁った眼も演技なのかも知れないね――其れだけの演技が出来るお姉ちゃんに驚きだよ。『搦め手は苦手だ』なんて言ってたけど、中々どうして、出来るみたいだよ。

並の戦車乗りじゃ、あの眼に圧倒されてたかもだよ――私と梓ちゃんには効果が無かったみたいだけどね。

 

まぁ、何にしても此れがファイナルだから、勝たせて貰うよお姉ちゃん……否、黒森峰女学園隊長、西住まほ!!

 

 

 

「ふ、そう来なくては面白くない……お前の戦車道の真髄、見せて貰うぞみほ!」

 

「言われるまでもないよ……これ以上、御託は要らないよ!」

 

「だろうな、始めるしよう。」

 

「其れでは、これより第63回戦車道全国高校生大会決勝戦、大洗女子学園vs黒森峰女学院の試合を始める!お互いに、礼!」

 

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

 

さてと、ここから泣いても笑っても最後の試合が始まった――目指すは優勝だけだから、黒森峰の連覇は此処で終わりになる!って言うか此処で終わらせるからね!!

ファイナルバトル、思い切りやらせて貰うよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer132

『決勝開幕!ラストバトル其の一です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

ついに始まった決勝戦。

絶対王者である黒森峰に、今大会のダークホースである大洗が挑むと言う構図はとても分かり易く、言ってしまえば観客が最も見たい展開だったのは間違い無いだろう。

 

 

取り敢えず先ずは、両校のオーダーから見て行く事にしよう

 

 

・大洗女子学園

 

パンターG型×1(フラッグ車兼、隊長車)

Ⅲ号戦車J型改(L型仕様)×1

ティーガーⅡ×1

Ⅳ号戦車D型改(H型仕様)×1

Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)×1

クルセイダーMk.Ⅱ×1

38(t)改(ヘッツァー仕様)×1

ルノーR35改(R40型仕様)×1

ソミュアS35×1

ポルシェティーガー×1

 

 

 

・黒森峰女学院

 

ティーガーⅠ×5(内212号車は隊長車兼フラッグ車、222号車は副隊長車)

ティーガーⅡ×3

パンターG型×2

ヤークトパンター×2

Ⅳ号駆逐戦車/70(V)×2

Ⅲ号戦車J型×3

ヤークトティーガー×1

エレファント×1

???×1

 

 

 

と、この様なオーダーだが、大洗の戦車構成で驚かされるのは、新たに追加されたソミュアS35とポルシェティーガーは兎も角、準決勝までに使用していた戦車は、パンターとティーガーⅡとクルセイダーを除いて全てが強化改造されていると言う事だろう。

38(t)をヘッツァーに改造するのと違い、他の戦車は主砲の入れ替えや、シュルツェンの搭載だけだから出来たのだろうが、Ⅲ号とⅣ号とⅢ突を所謂最終形態にまで強化したのは見事と言えるだろう。

尤もこの改造は、H型仕様になったⅣ号と、ヘッツァー仕様になった38(t)を見たみほが『他の戦車も改造できないかなぁ?』と呟いたのが、自動車部の面々の耳に入り、やる気に火を点けてしまった結果なのだが……取り敢えず戦力が強化された状態で決勝に臨む事が出来た訳だ。

 

 

一方の黒森峰は、今大会徹底して来た『圧倒的な火力で相手を殲滅する』を究極的に突き詰めた構成であり、みほ、エリカ、小梅が在籍して居た頃とは全く異なる戦車構成となっていた。

みほ達が居た頃は、重戦車も当然使ってはいたが、主力は機動力のある中戦車だった。

其れが今年は、機動力など知らぬとばかりに兎に角高火力の重戦車をメインにしての殲滅撃滅極滅戦術を繰り返し、決勝戦ではヤークトパンターとエレファントと言う化け物まで投入して来たのだから、火力殲滅上等此処に極まれりだ。

もっと言うのならば、両校に一車種だけ認められている『シークレット権』を使って隠している戦車がある辺り、更なる化け物を用意していると考えて間違い無いだろう。

 

だがしかし、この構成は余りにも酷いとしか言いようがない。

準決勝までは車輌数は同数だったが、大洗の戦車数は黒森峰の半分しかない――にも拘らず、言い方は悪いが『数の暴力でのリンチ』としか思えない構成に観客席では……

 

 

「ガッデーム!!アイアム、チョーノ!!

 黒森峰ぇ!テメェ等にゃ、プライドってモンがねぇのかオラ!チャンピオンってのはな、相手の持てる力を全て受けて、その上で勝つ義務が有るって事を知らねぇのかアー!?

 圧倒的な火力で相手に何もさせずに一方的に殲滅する試合なんざ、見てる方だってつまらねぇ!エー、オイ、ガッデメラ!!」

 

 

黒のカリスマが盛大にブチ切れていた。

nOsのメンバーであるレスラー仲間にケンカキックをブチかまして、STFで絞め上げる程にブチ切れていた。(其れでもレスラー仲間を狙ってるのを見る限り、未だ理性は残っていたのかも知れないが……)

 

 

だが、其れもまた当然かも知れないだろう。

今年の黒森峰は、1回戦から『礼節など犬に食わせてしまえ』と言わんばかりの戦い方をして来た上に、決勝で(客観的に見れば)格下の相手に対しての滅殺上等な戦車構成となれば非難が出るのは然りだ。

黒のカリスマ以外の観客も、この黒森峰の戦車構成には物申したい者は居るだろう。

 

 

しかし、黒森峰の戦車構成に怒りを感じているのはあくまでも大洗を応援する観客だけの話。

 

 

「重戦車をメインにした火力重視のチーム構成のある意味での究極形だね?」

 

「そうね。

 問題はこのシークレットだけど……まほさんは何を使ってくる心算かしら?」

 

「お姉ちゃんは、多分私が最終的には市街地戦に持ち込むだろう事は予想してる筈だから、そうなると、市街地の何処かに此のシークレットが――多分マウスが配置されてると考えた方が良いだろうね。」

 

「マウス……アレを持ち出してきますか。」

 

「最強の化け物ネズミ……姉隊長は、其れだけ西住先輩を警戒してるって事ですね。」

 

「私だけじゃなく、エリカさんと小梅さん、そして副隊長の梓ちゃんもだけどね。」

 

 

実際に戦う大洗の隊長をはじめとした経験者組は、黒森峰の戦車構成からシークレットが何であるかまで予想していた――大凡、絶対王者に挑むダークホースと言う感じではないが、其れだけリラックスしている証拠かもしれない。

そして、この戦力差を見ても尚、隊長が恐れをなしていないと言うのは、他の隊員にとってはこの上なく頼りになるものだろう――実際に、経験者以外のメンバーも、絶対王者に此れから挑むと言うのに、緊張はまるで感じられないのだから。

 

或いはこの適度な余裕は、準決勝でみほ達経験者が『自らピンチを演出して、其処から逆転勝ちする』と言う事をやってのけたからなのかもしれない――あの状況から逆転できたのだから、どんな逆境でも跳ね返せると、良い意味で開き直っているのだろう。

 

 

――クイクイ……

 

 

「ん?如何したの紗希?」

 

「……頑張る。」

 

「紗希……そうだね、頑張ろう!!」

 

 

そして滅多に喋らない丸山紗希の一言で、大洗女子学園の闘気は一気にオーバードライブゲージを満タンにし、スーパーコンボレベルゲージをレベル3にし、クラフトポイントを200にする。

何だか意味不明かもしれないが、其れ程に闘気が漲ったと言う事だ。

 

そんな事をしている内に、両校ともスタート位置に戦車の配置が完了!

 

 

「其れでは、第63回戦車道全国高校生大会決勝戦、黒森峰女学院対大洗女子学園、試合開始!!」

 

 

「Panzer Vor!!」

 

 

「Panzer Marsch!!」

 

 

 

試合開始と同時にみほは『Panzer Vor』、まほは『Panzer Marsch』と、言葉は違うが、何方も『戦車前進』の意味を持つ掛け声で戦車を進軍させていく。

大洗にとっては廃校阻止のため、黒森峰にとっては11連覇のため、みほにとっては祖母の戦車道を否定し、己の戦車道を示す為、まほにとってはみほの戦車道の正しさと祖母の西住流の間違いを示す為の戦いの幕が今此処に上がった。

 

 

「さぁ、始めようかお姉ちゃん!」

 

 

進軍を始めた戦車で、みほはキューポラから身を乗り出し、パンツァージャケットの上着を肩に引っ掛けた状態の『軍神モード』となり……

 

 

「見せてみろ。そして魅せてみろみほ、お前の戦車道を。」

 

まほもまたキューポラから身を乗り出し、黒森峰のジャケットの特徴とも言える略帽を頭から外して握り潰す。

如何やら此の決勝戦は、夫々の思惑以外に、『史上最大の姉妹喧嘩』の要素も織り込まれているらしかった。(喧嘩と言うのは少し違うかもしれないが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

さて、漸く試合が始まりましたか……数の上では黒森峰の方が圧倒的に有利でしょう。そして、勿論練度でも。

普通に考えれば、半分の戦力で、しかも隊員の殆どが素人なのだから黒森峰の勝利は絶対と言う所なのでしょうね――此れが一回戦であったのならば。

大洗は名立たる強豪を撃ち破って決勝戦まで駒を進めて来たのだから、決して侮れる相手ではないわ……寧ろ、最も警戒すべき相手であると言えるわね。

みほ達経験者がどんな訓練をしたのかは分からないけれど、其れでも此れだけ短期間に一流とまでは行かなくとも、一流と互角に戦える一流半になったと言う事は、大洗にはダイヤモンドの原石が眠って居たと言う事なのだから。

 

 

 

「そしてそのダイヤモンドは、試合の度に研磨されて輝きを増すだけでなく、試合の最中にも輝きを増すのですから、戦う側としては驚異ですよ奥様……彼女が隊長を務めていた二十年前の大洗とは違った怖さがありますよ、みほお嬢様の大洗は。」

 

「えぇ、その通りね菊代。」

 

此れまでの試合を見ると、みほは一見搦め手や奇策を駆使して戦っているように見えるけど、いざ試合を決める時になると敵フラッグ車を確実に撃破する為に私が教えた西住流を使って居るからね。

一回戦で使った高速スイッチも私が教えた『敵フラッグ車を孤立させる方法』をみほなりにアレンジしたモノだった訳だし。

加えて、幼い頃からまほの戦車道を見て来たみほは、恐らく母親である私以上にまほの戦車道を知っている上に、黒森峰のドクトリンも理解しているでしょうから情報アドバンテージは大洗にあると見て間違い無いわ。

加えて今年のまほは、お母様の『西住流』を否定すべく、その戦い方を徹底している……あの戦い方ではみほに勝つ事は難しいわね。

 

 

 

「ふぇっふぇっふぇ……ようやく始まったのう、しほや。

 戦力差は歴然な上に、練度に於いても黒森峰の方が遥かに上である状態で、更に黒森峰の指揮官は何れは西住流の後継者となるまほ。

 如何考えても大洗の勝利は望めぬなぁ?」

 

「……其れは如何でしょうか?

 みほにとって車輌数の差などはハッキリ言って問題ではありません――まさか、あの子が10歳の時に、たった1輌で門下生の操る5輌の戦車を瞬く間に撃破したのをお忘れですかお母様?」

 

「所詮は、子供相手に油断した大人の甘さがあってこそじゃ。

 その甘さが無いまほの前では、みほの一切は通じんじゃろうて……大洗の強運も此処までよ。」

 

 

 

成程、そう来ますか。

ならばお母様、一つ勝負をしませんか?

 

 

 

「ほう、勝負じゃと?ワシに何を挑むかしほよ。」

 

「簡単な事です。

 此の試合、何方が勝つか賭けませんか?――もしもお母さまが勝ったのならば、お母様の西住流こそが正道であると言う事を信じ、私はそれを門下生に伝えて行く事を約束しましょう。」

 

「其れは良い事じゃが……億に一つも有り得ぬが、ワシに何を賭けさせる心算じゃ?」

 

「私が勝ったら、その時は家元の地位を私に明け渡して貰います。」

 

「何じゃと!?」

 

 

 

驚く事でもないでしょう?

島田流はとっくに先代が隠居して、千代が新たな家元となっているのですから――にも拘らず、西住流は未だに皺だらけの老人が家元を務めていると言うのは、些か威厳がありませんからね。

あぁ、これはあくまでも私からの個人的な誘いなので断っても構いませんが……西住流の家元ともあろう御方が、逃げたりはしませんよね?

 

 

 

「良いじゃろう……大洗が黒森峰を下したその時は、家元の座はお前にくれてやろうしほ!

 じゃが、黒森峰が勝ったその時は、お前はワシが死ぬその時までワシに従って貰う!そして、みほに勘当を言い渡し二度と西住の敷居は跨がせんからな!!」

 

「どうぞご自由に。」

 

その様な事態にはならないでしょうからね。

 

さて、オーロラビジョンに映し出されている両校の進路は、大洗は草原をひた走ってその先にある高台を目指しているみたいで、黒森峰は大洗の道中に有る林を目指しているみたいね?

これは、黒森峰は電撃戦を仕掛ける心算のようね……大洗を真っ向から火力で圧倒すると思ったのだけれど、そんなのはみほなら読んでいると考えたのかも知れないわね。

 

この作戦が果たしてどんな効果を生むのか、とても楽しみではあるわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

しほの読み通り、大洗の部隊は高台を目指していた。

数で劣る以上、少しでもアドバンテージを得たいと思うのは当然の事であり、上から攻撃出来る稜線を狙うのはセオリー通りと言えるだろう。

尤も、みほの場合はそのセオリー通りにプラスαが有るから定石通りには行かないのだが。

 

 

「此処まで来ても黒森峰は仕掛けて来ない……大艦巨砲主義での殲滅は、決勝戦では使ってこないのかな?」

 

「あの戦車構成を見る限りでは、其れは考え辛いですが……」

 

 

だがみほは、黒森峰が仕掛けて来ないのが気になっていた。

其れは副隊長の梓も同様で、大洗が進撃すれば必ず黒森峰は真っ向から受けて立った上で圧倒的な火力で殲滅してくると予想していたにも係わらず、此処まで出黒森峰の戦車は1輌たりとも現れていないのだ……其れを不審に思っても仕方ないだろう。

 

 

「(こちらを警戒してるのかな?其れとも、足の遅い重戦車で固めたからもたついてる?……どちらにしても、攻撃が来ないのなら好機だね。)

 此のまま全速前進!稜線を取るよ!!」

 

「先ずは有利な状況をね?そんじゃあ、行きますか!!」

 

 

其れでもまずはフィールドアドバンテージを得ようと、稜線を目指して進撃し、途中にある林の前に差し掛かったところで其れは起きた。

 

 

 

――ドォン!ドォン!ドォン!!

 

――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 

 

 

「「「「!!!」」」」

 

 

突如林の中から戦車砲と機銃が飛んで来たのだ。其れも無警戒だった横っ腹から!!

幸いにして大洗の左翼側に居たのは最強クラスの防御力を誇るティーガーⅡとポルシェティーガーだったために撃破される事は無かったが、これは完全に大洗側からしたら完全に奇襲だった。

 

 

「(まさかの電撃戦!!……やられたなぁ、此処はお姉ちゃんに読み負けたみたいだね?……だけど、これでやられる私じゃないよ!!)

 応戦!但し、砲弾を消費したくないので機銃で対応して!隙を見て発煙筒を!!」

 

「閃光弾でもOKです!先ずは此処を離脱する事を考えて下さい!」

 

 

其れでも慌てず、みほと梓は部隊に指示を出して行く――此処は流石の師弟の連携と言った所だろう。

だが、其れでも倍の戦力差があるのでは、隙を見て発煙筒や閃光弾を放つ機会は中々訪れず、此のままでは大洗がジリ貧になるのは確実だろう。

 

 

「妹様……せめて私の手で!!」

 

 

そんな中で嘗ての遊撃隊の一員だった狭山サトルはみほのパンターに狙いを定める――他の誰かに討たれるくらいなら、己の手でと言う事なのだろう。

その照準は、アイスブルーのパンターの弱点である後部装甲に合っている……故に、後は砲手に『撃て』と命じれば其れでゲームセットだ。

 

 

だが、ここで大洗にも、黒森峰にも予想だにしない事態が起こった。

 

 

「えぇっと、こんな時は如何すれば良いぞな~~?」

 

 

決勝戦からチームに加わったアリクイチームのももがーが操作を誤って急発進し、そのまま林の中の黒森峰の部隊に突撃!特攻!捨て身タックル!!何とも、実に見事である。

いかにみほに鍛えられたとは言え、其れは最低限のレベルだった故に、緊迫した状況で操作を誤ってしまったのだろう。

 

だが、此の操作ミスは思わぬ効果を齎してくれた。

 

 

 

『大洗女子学園、ソミュアS35行動不能。黒森峰女学院、パンター行動不能!』

 

 

 

突撃によってソミュアS35は撃破判定になってしまったが、その突撃によってパンターを道連れにしていたのだ。

運が良いと言えば其れまでなのかも知れないが、その運を手繰り寄せたのは間違い無くみほ達の――否、大洗の廃校阻止の目標が此の強運を引き寄せたのだ。

 

そして、これにより黒森峰の部隊には刹那の瞬間ではあるが虚を突かれ動きが止まってしまった――其れは精々1秒程度の時間だが、みほからしたら、戦場で確実に相手の動きが1秒止まると言うのは好機でしかない。

 

 

「(猫田さん……貴女達の犠牲は無駄にはしないよ!!)

 『ピカピカモクモク作戦』開始!先ずはこの場から離脱するよ!!」

 

「了解よみほ!!喰らいなさい!!」

 

 

その隙を突いて、全車から発煙筒と閃光弾が投げ込まれ、直後に林から昼間でも明るく見える閃光が溢れ出し、同時に白煙がモクモクと上がる……撃破判定は無いので、黒森峰の部隊は無事なのだろぐうが、この視覚的ディスアドバンテージを喰らったら直ぐには動けないだろう。

 

 

「裏をかいた心算だったんだが、其れにすら対処するか……とは言えこの煙幕では追えんな――煙幕が晴れ次第、大洗を追撃する!!」

 

「「「「「「「「「「Ja!!」」」」」」」」」」

 

 

アリクイチームが撃破されたが、相手のパンターも巻き込んだのだから実質上はイーブンと見て良いだろう――そもそも車輌差があるのだから1:1交換ではイーブンではないかと思うだろうが、その後の事を考えればイーブンと見ても問題は無い。

 

アリクイチームの特攻のおかげで、大洗はあの状況を脱する事が出来たのだから。

 

如何やら此の決勝戦は、戦車道の歴史に名を残すような試合になるのは略間違い無いだろう――何はともあれ、第63回戦車道全国高校生大会決勝は、ここからが本番だと見て間違い無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

まさかあれだけの重戦車を揃えた上で電撃戦を仕掛けてくるとは思わなかったよ……此れは、完全に私が読み負けた結果だね。

だけど、アリクイさんチームのおかげで、私が望む盤面まで持って行く事が出来そうだね……ふふ、悪いけどお姉ちゃんには徹底的に付き合っって貰うから其の心算で居てね?

 

決勝戦は、ここからが始まりなんだから!

私の持てる全てを投入するから、全部受けて貰うよお姉ちゃん!!――うぅん、お姉ちゃんだけじゃなくて絶対王者黒森峰女学院!!

 

 

 

――轟!!

 

 

 

「軍神招来……来ましたねみほさん!!」

 

「インストールしたのは上杉謙信……あぁ、これは負けないわね。」

 

「元より勝つ心算だったけどね。」

 

兎に角多くのお客さんが望んでるのは、大洗の大物食いだと思ってるから、其れには応えない訳には行かないから……其れを成し遂げるだけだよ!!

もう10年間も王者の椅子に座ってたんだから、そろそろその椅子を受け渡して貰うよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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