ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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此れが最終決戦!Byみほ        受けて立とう!Byまほ


Panzer136『決着!最強の姉妹喧嘩です!!』

Side:みほ

 

 

奇襲で2輌、そして梓ちゃんの奮闘で3輌と、計5輌の戦車を撃破出来たのは大きいね――特に梓ちゃんがエレファントを撃破し、ヤークトティーガーを道連れ撃破したのは最早勲章モノだね。

 

 

 

「受勲だけでなく昇格もであります!Ⅲ号でドイツの名立たる重戦車を4輌も撃破したのは快挙でありますよ西住殿!

 澤殿の獅子奮迅の活躍もあり、今や流れは完全に大洗の物であります!此のまま一気に押し切ってしまいましょう!!それが一番です!」

 

「そうかも知れないけど、焦りは禁物だよ優花里さん。」

 

確かにこのまま勢いでって言うのは悪くないけど、只勢いに乗っただけじゃ足元を掬われちゃうから、勢いに乗る前に地盤を固めないとだよ。

特に相手は絶対王者の黒森峰だから何が起きても不思議じゃないからね。

 

 

 

『大洗女子学園、クルセイダー走行不能。』

 

 

 

言ってる傍からクルセイダーが撃破された訳だし。

まぁ、クルセイダーの紙装甲を考えたら、高火力のドイツ戦車を相手に今まで良く生き残っていたと賞賛するに値するよ――えっと、皆さん無事かな?

 

 

 

『大丈夫です隊長!此れ位は気合と根性で何とかりますから!!』

 

「あ、そのテンションがあるなら大丈夫だね。」

 

此処でクルセイダーが離脱したけど、磯辺さんの事だから煙幕で視界を潰しつつ、誘導してたんだろうね……私達に目が向かないように。

ふふ、此処まで御膳立てされて勝てなかったら嘘だよね。

 

此れで準備は全て整ったから、後は役者を舞台に上げるのみ!――其の舞台で、お祖母ちゃんの戦車道を討ち砕くだけだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer136

『決着!最強の姉妹喧嘩です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

決勝戦もいよいよ佳境に入って来た。

大洗の残存車輌はパンター、Ⅳ号、ティーガーⅡ、ポルシェティーガーの計4輌――其れに対して、黒森峰は未だに10輌以上の戦車が残っている状態だ。

フラッグ車を先に倒した方が勝ちとは言え、単純に数の事だけを言うなら黒森峰の方が遥かに上なのだから黒森峰有利は変わらない筈だが、既に撃破された大洗の戦車の隊員は、略全員が大洗の勝利を信じて疑っていなかった。

 

 

「かいちょ~~!残存戦力は倍以上!勝てるのでしょうか!?」

 

「大丈夫だってか~しま。西住ちゃんを信じなよ。」

 

 

……略全員が大洗の勝利を信じて疑っていなかった――まぁ、桃の場合は基本ヘタレである事が原因で、僅かでも不利な状況だと必要以上に不安になってしまうのだろうが。

 

 

「大丈夫だ河嶋先輩。隊長殿は必ずや黒森峰の首を取る。

 作戦参謀としてグデーリアンと共に決勝戦の作戦会議に参加したのだが、西住隊長は黒森峰に勝つ為に30通りもの作戦を考えてていただけでなく、私やグデーリアンの意見も聞いて更にその作戦を発展させてしまったのだからな。

 そしてこの状況もまた、隊長が考えた作戦の1つの流れに過ぎない……残存戦車すら、隊長の望み通りの物が残っているのだからね。

 尤も、副隊長のⅢ号が重戦車を4輌も撃破すると言うのは、予想していなかっただろうけれど。」

 

「この状況すら西住ちゃんのシナリオの範疇内ってことかい?……隻腕の軍神殿の予測眼はハンパないねぇ?」

 

 

其れでも、エルヴィンの放った一言には、大洗の勝利を更に確実にすると思わせる物が有った――決勝戦用に30通りの作戦を考え、更にエルヴィンと優花里の提案を受け入れて作戦を発展させ、今の状況すらその作戦の範囲内でしかないと言うのだから。

 

 

「西住隊長は必ず勝ちます……こう言う大舞台で西住隊長が負けた事は一度もありませんから。」

 

「梓……確かに!

 そんじゃあアタシ達は、隊長が勝つ為に全力で応援しよう!!せーの!フレー!フレー!!お・お・あ・ら・い!!!」

 

 

更に、副隊長である梓が『絶対に勝つ』と言った事で、一気に熱は伝わり、あゆみの号令で大洗の戦車隊からは割れんばかりの大洗へのエールが贈られる。

 

そして其れは観客席へと伝染し、大洗の大コールが巻き起こる!!

元々、今大会は黒森峰がヒールへと転じた事も有り、黒森峰の試合は総じて対戦校へのエールが多かったのだが、此の決勝戦はその比ではない。

無名の大洗が黒森峰相手に互角以上に戦っていると言うのもあるだろうが、其れ以上に観客の心情的には高校戦車道の歴史が変わる瞬間を、黒森峰が築いた絶対王政を打ち破るのを見たいと言う思いが強いのだろう。

 

そしてそうなればこの人達が黙っている筈がない。

 

 

「ヨッシャア!最高だぜ!!

 黒森峰相手に此処までとは、魅せてくれるぜみぽりん!!否、みぽりんだけじゃなく、Ⅲ号で重戦車を4輌も撃破した澤ちゃんも最高だぜ!

 此処からがラストバトルだ!黒森峰のフラッグ車に、パンターの75mm砲のケンカキックだオラァ!!」

 

「はっはっは!良いねぇ、コイツは最高だ!

 コイツは正に20年前の、大洗の戦車道が廃止になる前の最後の大会の再現だぜ!!

 あの時は僅差で大洗が負けちまったが、今度は大洗が勝たせて貰うぜぇ?……やっちまえやみほちゃん!!」

 

 

客席では黒のカリスマこと蝶野正洋と、優花里の母である秋山好子が『悪役全開』のエールをもって大洗を全力応援!!

そして其れにつられるように会場の大洗コールは過熱して行く――この瞬間、会場は黒森峰にとっては完全なアウェーの空気になったのは間違いないだろう。

 

同時に其れは、みほの戦車道は観客すら味方に付けると言う、西住かほの戦車道では絶対に出来なかった事をやってのけた証明でもあったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

客席が盛り上がっていた頃、試合のフィールドでも動きがあった。

大洗のフラッグ車を探していたまほの前に、何の前触れもなくみほの駈るパンターが躍り出て、更にはキューポラに腰掛けたみほが、挑発的な笑みを浮かべながら親指で首を掻っ切る動作をした後にサムズダウンした後に急発進!

あからさまな挑発ではあるのだが、隻腕の軍神がやると異様に様になっているのだから性質が悪い。

 

 

「みほ……良いだろう、お前の策に乗ってやる!!」

 

 

もっとも其れでもまほは冷静な思考を失わず、パンターを追撃するのだが……此処で又しても邪魔が入った。

 

 

「おぉっと、急発進は危ないわよ?」

 

「出会い頭の衝突事故もあるから注意しないと。」

 

 

まほのティーガーⅠがみほのパンターの撃破を目して追撃を開始すると同時に、其れを追いかけようとした黒森峰の部隊の前に砲撃が撃ち込まれて動きを止められてしまったのだ。

其れにより生じたまほ車と黒森峰の部隊の間にエリカのティーガーⅡとナカジマのポルシェティーガーが前に躍り出て分断に成功する。

しかもティーガーⅡとポルシェティーガーが並走する事で黒森峰の部隊が前に出るのを防いでいるのだ。

 

只それだけならば後ろから攻撃してしまえば良いとも思うだろうが、そんな事はエリカもナカジマも分かっている。分かっているので……

 

 

「ホイっとな♪」

 

「近坂先輩、少し此処で大人しくしてて下さい。」

 

 

――ボウン!!

 

 

「此処で煙幕ですって!?」

 

 

伝家の宝刀、目暗ましの発煙筒発動!!

広い草原や荒野ならば兎も角、路地で仕切られた市街地で此れをやられたら堪ったモノではない――通れる道が限られている為、視界が悪い状態で動けば、最悪建物に突っ込んで白旗なんて事にもなりかねないからだ。

故に、草原や荒野で喰らった時以上に足止めを余儀なくされ、結果として部隊はまほ車と完全に分断されてしまったのである。

 

こうして始まった追いかけっこだが、みほを追うまほ、そのまほを追うエリカとナカジマは一切の攻撃を行っていなかった。

まほは、この状況で攻撃してもみほならば全て回避し無駄弾を撃つ事になると思っており、エリカとナカジマは攻撃が避けられてみほを誤爆する事を避ける為に、敢えて攻撃をしていないのだ。

 

 

「(さてと、何時までも追いかけっこと言う訳では無いだろうが、一体何処へ私を連れて行く心算だ?何処に連れて行くにせよ、追いかけっこが始まってそろそろ3分……煙幕も晴れて黒森峰の部隊も動き出す頃だ。

  そろそろ目的地に到着しないと追い付かれて状況は逆に不利になるぞ?)」

 

 

だが、何時までも追いかけっこをしていられる訳では無い。

追いかけっこ開始から既に3分が経ち、発煙筒の煙も晴れ始め、黒森峰の部隊も追撃を開始している……此のまま追いかけっこを続けていれば、目的地で黒森峰の部隊がまほに合流して一気に形勢が逆転しかねないのだから。

 

 

「(みほの狙いは恐らくまほとの一騎打ちでしょうけれど、この市街地の何処で其れを行う気かしら?――其れと、Ⅳ号は一体何処に?)」

 

 

客席のしほが見守る中、みほが動きを見せた。パンターを廃校と思われる建物の中へと進めたのだ。

当然まほも其れを追って中に入るが……

 

 

「其れじゃあ此れで――」

 

「――蓋は出来たわね。」

 

 

その入り口をポルシェティーガーとティーガーⅡ、2輌の重戦車で塞いでしまう。もっと分かり易く言うなら、ポルシェティーガーが入り口に後から斜めに突っ込み、入り口からはみ出た部分にティーガーⅡが後面を接する形で停車しているのだ。――当然、回転砲塔の動きには妨げが出ない形でだ。

此れで廃校の中庭にはみほのパンターとまほのティーガーⅠの2輌のみが残された――何れこの場に到着するであろう黒森峰の部隊が、ポルシェティーガーとティーガーⅡを撃破するまでの間は、完全な一騎打ちの舞台が出来上がったのだ。

 

 

「さぁ、此処が私達の決戦の場だよお姉ちゃん。」

 

「四方をコンクリートの壁に囲まれた廃校の中庭……入り口はポルシェティーガーとティーガーⅡが塞いでいるから外から入る事も、中から出る事も出来ない――成程、ケージマッチと言う訳か。

 だが、悪くない。数で劣る大洗が確実に黒森峰を倒すには、フラッグ車との一騎打ちが最善の策であり、その一騎打ちを行えるのはお前かエリカしかいない。小梅や澤は、指揮官としては優秀だが一騎打ちの様な戦いには向いていないからね。

 この状況もお前の作戦の範囲内なのだろうが、西住流に撤退の文字はない――此処で決着をつけるしかないな。」

 

「うん、決着を付けよう。行くよ、お姉ちゃん!」

 

「受けて立つ!来い、みほ!!」

 

 

そして、此のコンクリートの檻の中で史上最大の姉妹対決の火蓋が切って落とされた!

鋼鉄の蒼い豹と、鋼鉄の黄土の虎が唸りを上げ、主砲から挨拶代わりの咆哮を放ち、そのまま激しい戦車戦に突入!!

攻防力ではまほのティーガーⅠの方が有利だが、機動力に関してはみほのパンターの方が遥かに上回る――何よりも、限られた空間での戦闘である為、互いに『真面に直撃すれば一撃必殺』の状況だ。

完全に一瞬の判断が勝負を分ける戦いであると言えるだろう。

 

何れにしても此れが最終決戦になるのは間違いない――退屈な追いかけっこを見せられていた観客も、このシチュエーションに一気にヒート0状態だったのがヒート100になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

みほとまほが廃校の中庭で激闘を繰り広げて居る頃、廃校の外には黒森峰の部隊が到着していた……してはいたが、廃校の中に入る事までは出来なかった。――ティーガーⅡとポルシェティーガー、2輌の大虎が入り口を完全に塞いでいたからだ。

 

 

「煙幕で目暗ましをしたのは、確実にみほとまほの一騎打ちを完成させる為だった訳か……やってくれたわね逸見!!」

 

「褒め言葉と受け取っておくわ近坂先輩。

 さぁどうする?まほさんを助けに行くには私達を倒すしかないわ……まぁ、私達は動けないから的も同然だけど、私達だって黙ってやられてやる心算は毛頭ないわ。

 そうね――私達が白旗判定になる頃には、そっちも全滅してる、文字通りの道連れにしてやるわ。」

 

 

其れに凛は歯噛みしてエリカを睨みつけるが、エリカはそんなのは何処吹く風とばかりに受け流し、反対に飢えた肉食獣を思わせる獰猛な笑みを浮かべて威嚇と挑発を行う。

その壮絶とも言える笑みに、凛以外の黒森峰の隊員は気圧されてしまった――エリカが黒森峰に居た頃には見せた事のない凶暴性に、本能的な危機を感じたのだろう。

 

その凶暴性は元々エリカの中に有ったモノだが、黒森峰へと進学し、厳しい規律の中で生活して行く内に其れは次第に形を潜めて行った。

だが、みほと出会い、更に去年1年はみほ率いる遊撃隊の一員として戦って来た事で、再びその凶暴性が表に出てき始めていた――そして、大洗に転校し、黒森峰の規律から解放され、みほの自由な戦車道を完全な状態で体験する事で、遂に形を秘めていた凶暴性が完全に復活したのである。

 

 

「そうそう、エリカの言う通りだね……2匹の鋼鉄の虎に食い殺されたい奴だけかかって来ると良いよ。」

 

 

そして、その凶暴性は伝染するらしく、ポルシェティーガーの車長であるナカジマも、普段の温厚な彼女からは想像も出来ないような壮絶な笑みを浮かべて手招きする。……モンキーレンチを手にしてる辺りが実に自動車部っぽいが。

 

 

「吠えるわね……上等よ!

 全車一斉砲撃!!ティーガーⅡとポルシェティーガーを撃破せよ!!」

 

「「「「「「「「Jawohl!!(了解!!)」」」」」」」」

 

 

「此処が踏ん張りどころ!!ナカジマ先輩『欠陥兵器』の根性を見せるわよ!!」

 

「OK!絶対に隊長の所には行かせないからね!!」

 

 

大洗の火力と防御力トップ2と黒森峰の重戦車軍団との戦いも此処に開幕!

大洗のティーガーⅡとポルシェティーガーは動く事が出来ないから的も同然なのだが、只の的にはならずに最強の88mm砲で黒森峰の部隊を攻撃!

 

 

――キュポン!!

 

 

『黒森峰、ティーガーⅠ3号車、ティーガーⅠ5号車、行動不能。』

 

 

その攻撃は的確に弱点を狙っており、ティーガーⅠを2輌沈黙させる――如何やら、廃校の外での戦いも、中庭での戦い以上に目を離せないモノになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、中庭での戦いは、何方も退かない一進一退の攻防が続いていた。

まほのティーガーはパンターの機動力に決定打を与える事が出来ず、みほのパンターは攻撃を当てる事は出来るモノの、全てティーガーⅠが『食事の角度』を取って弾く為決定打を与える事が出来ないでいるのだ。

此のまま互いに決定打を欠いた状態が続けば、有利になるのは黒森峰だ――普通に考えれば、攻撃してくるとは言え動かぬ的と化したティーガーⅡとポルシェティーガーを撃破出来るのだから。

 

つまり、戦いが長引けば長引くほど大洗が不利になるのだが、そうであるにも拘らず、みほの顔には笑みが浮かんでいた――それも、只の笑みではなく、勝利を確信した笑みが。

 

 

「此れより最後の作戦を開始する!『ドラマティックバトル』開始!!小梅さん!!!」

 

「その命令を待っていましたよみほさん!!」

 

「な!小梅だと!?」

 

 

みほが最後の作戦の開始を宣言すると同時に、廃校の一部が爆ぜ、中から小梅のⅣ号が姿を現す――そう、小梅率いるオオワシチームはウサギチームが驚異の重戦車四重殺を成し遂げた後、いち早くこの場に到着し、今の今まで建物の中で息を潜めていたのだ。

重戦車であるティーガーⅡやポルシェティーガーでは出来なかった重要な役目――中戦車のⅣ号だからこそ出来た出来たトリックプレイだ。

現実に、Ⅳ号の登場はまほの予想の範囲外であったのだから、其の効果は絶大だろう。

 

そして、此れこそがみほの作戦の全容だ。

まほを一騎打ちに誘い込み、その実は1対2の状況を作り出して確実に相手を撃破する……正に、一騎打ちを挑まれたら絶対に逃げないまほの性格を見事に利用した作戦と言えるだろう。

 

 

「クソ……まさかⅣ号が潜んでいたとはな――いや、そもそもにして私も今の今までⅣ号の存在を忘れていた……いや、忘れさせられていた。

 此れが、お前の力かみほ……!」

 

 

何にせよ、此れで此れまでの決定打を欠いた状況は打開された――同時に其れは軍神の力が完全開放された事を意味する。

 

 

「小梅さん、左サイドを!」

 

「了解ですみほさん!」

 

 

みほが的確な指示を出し、小梅は其れに正確に応え、ティーガーⅠに着実なダメージを与えて行く――無論ティーガーⅠも反撃するが、パンターとⅣ号D型改の機動力を同時に捉えるのは難しく決定打を与える事が出来ない。

反面、パンターとⅣ号からは結構な攻撃を貰っており、如何に食事の角度で防御するとは言ってもダメージの蓄積は見逃せない物が有るだろう――既にティーガーⅠの正面装甲は結構ボコボコになっているのだから。

 

そして――

 

 

「行くよ、小梅さん。」

 

「了解ですみほさん。」

 

 

ティーガーⅠの前にパンターとⅣ号が縦列し、次の瞬間に猛ダッシュ!!

当然まほはパンターを撃破せんと砲撃を命じるが、其れは避けられ、更に両翼に分かれる形で戦車ドリフトを行い、ティーガーⅠの後部を取ろうとする。

無茶な軌道で、履帯が切れ、転輪も吹っ飛ぶがそんな物は関係ない。

 

 

「此れで……!!!」

 

「終わりです!!」

 

 

ティーガーⅠの後部を捉えたパンターとⅣ号は、同時に主砲を発射!!

略ゼロ距離から放たれた超長砲身75mmと長砲身75mmはティーガーⅠの弱点を的確に捉え……

 

 

――バガァァァァァァァァン!!!

 

 

――キュポン!

 

 

 

『黒森峰、フラッグ車行動不能。よって此の試合、大洗女子学園の勝利です!!』

 

 

まほのティーガーⅠを、フラッグ車を白旗判定に!!

同時に其れは大洗が決勝戦を制した事を意味する――今この瞬間に、戦車道の歴史は塗り替えられたのだ。

 

 

 

「オラァ!此れが大洗の底力だ!見たかオイ!

 みぽりんの前では黒森峰ですら有象無象に過ぎねぇ……大洗だけ見てりゃいいんだオラァ!!」

 

「よくやったぜみほちゃん!!

 其れでこそ大洗の戦車道を継ぐ者だぜ……隻腕の軍神の名は、大洗の代名詞になるかもな!!」

 

 

……其れに興奮している黒のカリスマと好子ママは取り敢えず放置するとして、大洗女子学園が史上初となる快挙を成し遂げたのは間違いない事であり、その事実に会場は大いに沸いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

みほもまほも実に立派な戦いぶりだったわ――でも、最後はみほが勝ち己の道を示したか……みほの才能は大洗に転校した事で開花したのかも知れないわね。

 

まぁ、何れにしてもみほは己の道を示し、その上でお母様の言う西住流を打ち破りました――其れでも、未だみほを認めませんか?

 

 

 

「いや……こうして結果を突き付けられては認めぬ事は出来ぬ……それ以前に、この戦いでワシの考えが如何に歪んでいたかという事を実感させられた。

 しほよ、ワシは家元の座から身を引く……じゃから、お前が新たな西住流の家元となり、新たな時代を引っ張って行け――尤も、お前が提案した賭けに負けた時点で、ワシは家元ではなくなったのだからね。」

 

「お母様……新家元の名、謹んで継がせて頂きます。」

 

お母様はみほを認め、そして私を新たな家元に指名したか……如何やら、この一戦を観戦した事で、『最強不敗』を掲げて来た自分の考えが如何に的外れだったのかと知ったといった所なのかも知れないわ。

 

何にしても、みほもまほも良くやったわ……何方も西住流の名に恥じない立派な戦いだったわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

勝てた……勝った!!

此れで大洗の廃校は無くなったし、私の戦車道を示す事が出来た……本当に、最高の決勝戦だったよ。

 

 

 

「負けたよみほ。完敗だ。

 西住流とは大分違うが……」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ。

 だが、其れがお前の戦車道なのだろうな……他の誰にも真似できないお前だけの戦車道――存分に堪能させて貰ったよみほ。お世辞抜きで、実に見事だった。」

 

「お姉ちゃん……見つけたよ、私の戦車道!!」

 

「ふ……そうだな。

 あのまま黒森峰に居たのではお前の才能は埋もれていただろう……だが、大洗に来た事でその才能が存分に発揮されたのだろうな。

 おめでとうみほ、お前がナンバーワンだ。」

 

 

 

アハハ、お姉ちゃんにそう言われると照れちゃうよ。

 

 

そして閉会式。

王者の証である真紅の優勝旗を授与された訳だけど、流石に右腕一本では重い……!!

 

 

「おっと!」

 

「ったく世話が焼けるわね?」

 

 

んだけど、よろめいた所でエリカさんと沙織さんがサポートしてくれて、優勝旗を落とさずに済んだよ――何にしても、私達が一番になったんだから、其れを誇らないとだよ!!

 

「私が!」

 

「「私達が!!」」

 

 

「「「今大会の覇者だ!!」」」

 

 

でもって、私とエリカさんと沙織さんが優勝旗を持って掲げた姿はマスコミの皆さんに写真を撮られまくって週刊戦車道の表紙を飾る事になっちゃちゃうんだけど……ゴシップネタで話題になるよりは遥かに良いかな。

 

何にしても、今年の王者は大洗!!其れについては、誰にも文句は言わせないからね――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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